【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
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そこにいたのは、もう一人の私。
自分と全く同じ姿をしていて、声だって私と同じ。……だから聞き覚えがあったんだ。
――さっきの湖で一瞬見たのはこの子なのかな。けど私だって名乗っているなんて。……姿と声は同じだけど――
彼女の着ている巫女服は黒くて、髪も瞳もまるでここの闇に溶け込むように、同じく黒色をしている。
けれど口調や雰囲気は私と、全然違う。
表情は笑ってているけど、周りに漂わせる雰囲気にはそんな感情なんて少しもない。
あの真っ黒な瞳……その奥には楽しいとか嬉しいとかそれとは全く真逆の、暗い負の感情が渦巻いている感じがするんだ。
目の前には私自身だって名乗る、私そっくりな相手。あれは誰なんだろう。でも、一つだけ心当たりがある。
さっきカザミさん達のガンプラがコピーされて現れたのを、私は見ていた。それがミラーミッションの特性なら……。
「もしかして……ミラーミッションで作られた私のコピーなの?」
私はそう『ワタシ』に尋ねた。
「コピー……私が貴方の、ね。まぁ半分正解……と言った所かしら」
そして彼女は、私の顔を覗き込むようにして、続ける。
「でもそんなのほんの些細な事だわ。
『ワタシ』は貴方の一番の理解者、何しろ『私』の事ですもの。
だから――救ってあげたいのよ。……ふふふっ」
どんな感情を抱いているのか分からないような、不思議な微笑みを目の前の『ワタシ』は私に向けた。
でも――彼女の言った言葉。
「救うって? 私、そんな事なんて望んでいないよ。
誰かに救ってもらいたいなんて。今だって、私は救われるような事なんてないし……十分に幸せで満足しているから」
『ワタシ』は私を救ってあげるって、そう言ったけど意味が分からない。
だけど目の前の『ワタシ』の表情は、そんな私の感情を見透かしているような感じだった。
「シアワセ、ねぇ」
自分で反芻するように呟く彼女。そう思ったら彼女は急に……。
「ねぇ? 本当に貴方は幸せだって。彼と一緒に幸せになれると、そう思っているの?」
次の瞬間、『ワタシ』は急に後ろに回り込んで耳元で囁く。
「それはきっと無理よ。だって彼、クガ・ヒロトは貴方の事なんて。
――どうせ大して想ってなんていないんだから」
心に氷の刃を突き立てるような、言葉。
「なんで、そんな事を言うの」
「ムカイ・ヒナタ、貴方だって分かっているでしょう?
例えどうやっても彼の一番になんてなれはしないって事が、ね」
淡々と諭すように話す彼女。
「何しろクガ・ヒロトにとって大切なのはあのELダイバーの少女、イヴなのよ。それに比べれば貴方への想いなんてほんの少し程度。
それだって分かっているはずなのに、なのに貴方は――」
「ヒロトは私の事を、ちゃんと想ってくれているよ! イヴさんの事は昔仲が良かった友達で、ヒロトだって大切にしていたのは分かっている。
でも私の事だって、きっと」
たまらず私は、『ワタシ』に強く言い返したけど。
「きっと――何?」
今度は私のすぐ右横に並ぶ『ワタシ』
横にならぶ顔立ちは本当に私そのものだったけど、向けられた視線はとても冷たかった。
「じゃあ何で二年間、貴方の事を放っておいたのかしら」
放って置かれたなんて、そんな事――。私は反論しようとしたけど構わずに彼女は続ける
「『ワタシ』は貴方であるから、その間どれだけヒロトの事を想っていたのかよく分かるのよ。彼がイヴと一緒に過ごして、そして失ってからの間どれだけ気にかけて心配していたのか。
きっと誰よりもクガ・ヒロトの事を想っていたのでしょうね」
するとまた、彼女は私の今度はすぐ目の前に。
「……けど、対して彼は? 貴方が彼の事を想っている間ずっとイヴの事しか頭に無かったし、そもそも他なんて見てすらいなかったのよ。
確かに現実世界では一緒に過ごしていただろうけどね、その間さえムカイ・ヒナタの事なんて殆ど想ってもいなかった。何しろ彼が本当に想っていたのは――イヴなのだから。」
「……」
「貴方はずっとクガ・ヒロトに寄り添っていたけれど、それは彼に届くことなんてなかった。
それに彼の心が開いたのはエルドラに行って、そこでの出来事があったから。
エルドラの住民や世界を守ると言う思いとイヴが託した願い、ビルドダイバーズの仲間がいたから。そう、特にイヴの生まれ変わりであるELダイバー、メイによってなのよ。
結局『ワタシたち』は何も出来ていない、想いまでも届いていない。最後まで彼の大切な存在とは言えないのよ。どうしたって二の次……いいえ、もしかするとそれすら及んでいないかもしれないって。
くくく、ふふふ……っ。一緒に過ごしていても、彼の心には貴方の事なんて殆どない。そんなのって……放って置かれたのと同じなのよ。
……ふっ、くすすっ……あははははっ!」
途端、『ワタシ』は数歩後ろに後ずさり、高笑いをする。
負の感情の詰まったような暗い笑い。……悲しんで、絶望しているようなそんな……。
「……違う、そんなのは違うよ。ちゃんと私の事をヒロトは想っている。
だってずっと私に優しくしてくれて、エルドラの事だって教えてくれたんだ。
……私だってヒロトにとって大切な人なの、でないと……」
あの『ワタシ』はきっと、私なんかじゃない。
でないとあんなに酷い事なんて言えない。そんな話なんて出まかせに決まっているよ。
だけど……、だけど……私は。
目の前の『ワタシ』は笑うのを止めた。
「それは幼なじみだからに過ぎないのよ。だから優しくしないわけにはいかなかった、エルドラの事も教えないわけにはいかなかった……それだけの事よ」
そして今度は穏やかに、こう続けたんだ。
「ねぇ、本当に大切な相手と言うのは、たった一人を誰よりも思えるそんな相手だって思うのよ。つまりクガ・ヒロトにとってはイヴに向けられるもの。
『私』だってそれはよく分かっているはず。だからこそ、貴方だって。
そう、エルドラで彼からイヴの話を聞いたときに……」
―――――
「イヴがもういないと。
それを聞いて貴方は、心の何処かで――『安心』したんでしょう?」