【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
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後日、私達はクジョウ・キョウヤさんに招待されてGBN内のとある場所に。
「……」
ヒロトと私、それにカザミさんにパルくんとそれに……クジョウさん本人も。
「ここはGBN運営側のための施設だ。だから一般のダイバーは基本立ち入りは出来ないけれど、今回は特別だ」
「……ここはまるで研究施設みたいな、感じの場所ですね」
パルくんの言うとおり、白い壁と機械の多いどこかの研究所みたいな施設の中。
私達はその通路を歩いているけど、横に見えるいくつもの部屋では白衣を来た人たちが幾つものモニターを見て作業をしていたり、調べ物ををしているみたいだった。
「ああ。ここでは主にGBN内のシステム、プログラムの調査に研究、解析を行う場所だよ。
GBNのプログラムは絶えず変化を繰り返し、アップデートもまた行っている。それは彼らの働きがあってこそだ」
そんな風にキョウヤさんは説明する。
「へぇ、それは凄いな! 俺たちがこうしてGBNを楽しめているのもそのおかげなんだよな。
ところで……さ」
カザミさんはこんな事を、続けた。
「ヒロトとそれにヒナタちゃん。この数日の間、何だか少し距離があるんじゃないのか?」
「……えっ?」
いきなり言われて、少しドキッとした。
「あ、はは……別にそんな事はないよ。ねぇヒロト」
「……ああ。大したことじゃない、カザミの考え過ぎだ」
私とヒロトは一緒になって、そんな事はないって伝えた。
「うーん、そうかな? だって前より話さないし、それにほら、一緒にいたって二人の距離も離れているしさ。
今だってヒロトもヒナタちゃんも少し離れて歩いてるし、やっぱり――」
「俺たちは全然大丈夫だ。だからカザミ、これ以上は気にしないで欲しい」
「……分かったよ。ヒロトがそこまで言うならもう気にはしないさ」
そうは言っても、カザミさんはまだ心配で気にはなっているみたいだった。
……だよ、ね。だって言っていることは間違ってないかもだから。
遊園地の事があってから、一見私達はいつものように過ごしていた。
別に、私だって気にしてなんていないよ。だってこれまでの関係がどうかなる訳なんて、ないし。ヒロトだって気にする事じゃないと思うから。
だからいつも通り。これまでとは何にも変わらない。
そうだって思うけど……。
やっぱり、どこかヒロトとは距離がある感じがする。
もちろん他愛のない話をしたりだってするけど、前よりも上手く話したり付き合ったりすることがどこか少し、出来ないような気もしていた。
――イヴさんが復活するかもって。嬉しい事だよね。
だってヒロトだって嬉しいはずだし。彼がそうなら、私にとっても――
半分自分に言い聞かせているけど、どこかに何かがつっかかっている感じがする。
それに辛くて悲しくて、心に穴が空いたような、そんな気持ち。
――ここまで複雑な思いをするのも、初めてだよ――
でも、ずっとそんな事を考えてたってしょうがないよね。……きっと。
私が気持ちを切り替えようとすると、こんな声が聞こえた。
「あの、すみません」
それはパルくんの、キョウヤさんに対して尋ねた言葉だった。
「どうかしたのかい? 気になることがあるなら、遠慮なく聞いてくれたまえ」
「僕たちはこうして揃っているのですけれど……メイさんは?
ここには来ていないのでしょうか」
確かにその事は私も気になっていた。メイさんだけが今、この場所には来ていなかったから。
もしかしてまたバグの調査か何かかな。そう考えていたけれど。
「ああ。彼女なら君たちよりも先にここに来ているとも。
何しろ実際に、見てもらった方が早いと思うしな。……さて」
話していると私達は、ある部屋の扉の前に到着していた。
「ここは研究室の一つだ。君たちに見せたいものとそれに、メイもこの部屋にいる」
キョウヤさんはそう言って、カードキーを取り出すと扉の側にある装置にかざし、扉を開ける。
「……ヒロト」
彼はヒロトに視線を向ける。
「君がずっと望んで来た願い。それはこの先にある」
そう言ってキョウヤさんは、先に入っていった。
「だってさ。ヒロトもきっと待ち遠しいよね」
私はそう言ってヒロトを見た。だけど――
「本当に、俺はイヴと……」
彼はそう言うと、続けて先に入って行った。
――あっ――
彼は私の事なんて見ていなかった。きっと声だって聞こえても、いないんだ。
「……」
カザミさんもパルくんも続けて部屋へと。
するとパルくんは、私の手を引くと。
「行きましょうヒナタさん」
「あっ……うん。そうだね」
今は私も一緒にいないと。
みんなが行った最後に、私はパルくんと部屋に入ることにした。
――――
入ったのは、少しだけ暗めの部屋。ここにもモニターがいくつもあって、研究員が色々調べている感じだった。
そして、先に入っていたヒロト達が見ていたのは。
「あれは、メイ」
部屋には大きなガラスの窓みたいなのがあって、その向こうにはメイさんが、一人白い部屋の中で椅子に座っていた。
ハイテクな感じの椅子に座って、周囲にも何だか色んな機械が置いてある。
それにメイさんも。身体のあちこちにケーブルを繋げて、それに頭にはヘッドギアも。まるで……何か検査しているみたい。
私も一緒にその様子を見ていると、キョウヤさんがある事を教えてくれる。
「これは今、メイのデータを解析している所だ。
正確には――彼女の内部にある、イヴのデータを」
「イヴの……データを」
ヒロトにとって大切なELダイバーの少女、イヴ。今は消えてしまったけど、そのデータの一部はメイさんに引き継がれている。
生まれ変わりみたいなものなんだよね。けど……
「けど今更、メイの中にあるイヴのデータを調べてどうするんだよ?
だって本人はもういないんだぜ、今更一部分だけ調べたところで」
「――その質問については、私が応えよう」
カザミさんの言葉に答えたのは、また別の誰かだった。
「こうして姿を見せることなど、普通はないのだが。
我々としても今回の試みは興味深いものだ。だからこそ」
そう言って現れたのは一人の人……ではなかった。
「あれは、SDガンダムフォースのガンダイバーですか。
と言うことは……」
パルくんの言う通り、私達の目の前にいたのは人間大のSDガンダム。丁度、彼のエクスヴァルキランダーみたいな姿の……ガンダムだった。
多分水中用のような外見で、水色とオレンジ色をしている機体。だけど、あれは見たところダイバーなのかな。
彼? はふと私に少し視線を向けると、こう話をする。
「どうやら君とは初めて会ったみたいだ。なら改めて自己紹介をしないとな。
……私はGM(ゲームマスター)。このガンプラバトル・ネクサスオンライン、GBNの運営に携わる最高責任者だ」
GBNの最高責任者、そんな人がここに来るだなんて。
「にしても、チャンピオンだけでなくGMまでもここに来ているとはな。これは相当に凄い事をしてるって訳か!」
そう言うカザミさんにGMさんは答える。
「ああ。……今、イヴのデータの解析をしていると言うのは既に話した通りだ。
だが同時にメイ――ELダイバーの構造もまた調べてもいる。
この二つのデータさえあれば、もしや消えたELダイバーも復元が可能だと我々は考えている」
彼の話す事、それにみんな驚いていた。
そんな中でメイさんも向こうの部屋でヘッドギアとケーブルを外して、私達の所へと。
「やぁ、みんな来てくれたのか」
入って来た彼女はそう声をかけた。
「ずっと調べられていたんだな。身体は大丈夫か?」
ヒロトは心配そうだけど、メイさんは。
「解析と言っても身体には何一つ害もないし、痛みもない。
それに、ヒロトが言うほどずっと調べぱなしではない。実際今回の解析に関してはここまででもあるしな」
「今回の? と言うと……」
今度はまたGMさんが説明をする。
「データの復元は、簡単にはいかないとも。何しろイブの残ったデータはほんの僅かだ。
それを復元するとなると少しずつ残ったデータから要素を拾い上げ、それをELダイバーの構造と照らし合わせて、試行錯誤しながら復元を試すしかない。
今回の一解析にしても、それを元にどれだけ復元が可能だと言うのは正確にはまだ不明だが、おそらくはほんの数%だ。復元が形になり次第、また彼女には解析を頼むこととなるものの、たった数%だけでもかなりの時間を要するだろう」
説明は難しくてよく分からないけど、それがきっと凄い事だって言うのは、何となく分かる。
でもまだ信じられないかも。
「そんな事……実際に出来るのですか?」
パルくんも同じ事を考えているみたいだった。すると……。
「大変ではあるが可能性としてはな。何しろ消えたものを僅かな手がかりで修復しなければいけない。恐らく一年以上、いや数年はかかるだろう。
それに我々も努力はするが、必ず成功するかも分からない。全て手を尽くそうと完全に元のイヴが復元出来るかも確実ではなく、もしかすると復元自体が不可能で徒労に終わるかもしれない」
「……」
「しかし、彼女は自らの身を犠牲にしてまでこの世界――GBNを救ってくれた。ならば我々も彼女のために、手を尽くさなくてはならない。
……ヒロト」
GMさんはヒロトに最後に伝えた。
「君のためにも、復元には全力を尽くす。
何しろイヴは君にとって、一番大切な人なのだからな」
――――
それから研究所を出て、私達はGBNのロビーで過ごしていた。
「良かったじゃないかヒロト! またイヴと再開できるかもしれないんだぜ?」
「そうですよ。だってずっと探していたんですよね、僕も嬉しいです」
カザミさんとパルくんはヒロトにそう声をかけていた。
「ありがとう、二人とも。俺もまだ信じきれてはいないけれど……イヴとまた会えるかもしれないなんて。
俺はとても幸せなんだ」
ヒロトは本当に幸せそうに、嬉しそうに笑っていた。
「それに……メイ。
君がいたからこそ、俺には希望が生まれたんだ」
「私もヒロトの助けになれて良かった。
叶うことなら、やはり生き返ってもらいたいものな。GMの言う通り時間はかかるかもしれないが、私は彼らに協力して復活が叶うよう尽力を尽くすつもりさ」
「……」
ヒロトにカザミさん、パルくんにそしてメイさん。四人とも本当に嬉しそう。
私はそんな四人を少し離れて眺めていた。
――私は――
ヒロト達と、私。まるでその間には見えない壁があるみたいな気がした。
姿は見えていても決して近づけなくて、触れることも出来ないような……寂しい気持ち
――またヒロトはイヴさんに会えるんだ。大切に思っていた人と。
きっと私も喜ぶべきだって、分かってはいるけど――
どうしてもそれが出来ないでいた。
胸がギュッと締め付けられて苦しくて、喜ぶことなんて出来はしなかった。
――それにこれ以上みんなといるのも、何だか辛いよ――
ずっと我慢してはいたけれど、どうしようもないくらいに辛くて、苦しい。だから――
私は一人でそっと、みんなから離れたんだ。
――――
ロビーから去って私は街中へと降りた。
周りには高層ビルが立ち並んで、人もたくさんあるいている近未来的な街。
周りにはこんなに沢山人がいて賑やかなのに、私だけ孤独な感じがする。
――また勝手に離れちゃったな。前にもGBNで同じことを、やったし――
この前にもヒロトから、こんな風に一方的に離れた事があった。
けど、前は一言伝えてからだったけど、今回は誰にも言わないでいなくなった。
――こんなの、もっと悪いことだよね――
また私は後悔した。
やっぱり今頃ヒロト達が心配しているだろうって、そうも思ったけれど多分。
――でもみんなは、イヴさんが生き返るかもしれないって喜んでいるし、私のことは――
みんな……特にヒロト、一番喜んでいたのは彼だもん。私なんて眼中にないくらいに。
私だってイヴさんがもし生き返ったら、こうなることくらい分かっていた。だから……
『イヴがもういないと。
それを聞いて貴方は、心の何処かで――『安心』したんでしょう?』
あの時の言葉通りだった。分かっていたから、私がヒロトに一番に想ってもらいたかったから……。だから例えほんの少しだとしても、そんな事を考えてしまっていた。
きっと今だって。
――こんなのってとても悪いことだって分かっているのに、自分ではどうする事が出来ないでいるの。
……どうしたら――
私が考えている、その時。――誰かからメールが届いた。
こんな時に誰だろう、そう思いながら私はメニューを開く。
――えっとメッセージは、一体誰から――
私は送り主とメールの内容に目を通した。
するとそれは……
――――
街に立ち並ぶ高層ビルの一つ。
私は一人でエレベータに乗って、上の階へと向かっている。
――ヒロト達ともたいぶ離れてしまったかな――
そんなことも考えながら、私はエレベーターが目的の階に着くのを待っていた。
――あのメール、いったいどうして。だってあれは――
今でも信じられなかった。
私に送られて来たメール。その内容は、私に会って話をしたいと言うもの。
そして……そのメールの相手は。
ビルの屋上階に、エレベーターは到着した。
エレベーターから屋上、そこで私は一人の人物を見かけた。
「待っていたわ……ムカイ・ヒナタ」
頭に黒いフードをかぶって全体もマントに身を包んだ誰か。
顔は見えないけど、その声は私にとって聞き覚えがあるものだった。だって……。
「私達、会うのはミラーミッション以来だね。……もう一人の私」
そう言うと相手は隙間から見えていた口元に、微笑みを浮かべてフードを外した。
現れたのは――私と全く同じ顔。
「ふふふ、そうね。……一週間ぶりと言うべきかしら」
――あの事はただの幻、夢なんじゃないかって思いもしたけどそれは違った。
また私の前に現れた、黒い姿の私。彼女は一体。
「また会うなんて、思わなかった。それにここはミラーミッションなんかじゃないのに」
私のコピーならミラーミッションにしか現れないはずなのに。今こうしてGBNで会うことも、信じられなかった。
「言ったでしょ、『ワタシ』は『私』、ムカイ・ヒナタなのよ。
ダイバーである貴方がここにいるならワタシだって。当然でしょ?」
『ワタシ』は青い空を見上げて続ける。
「でも、外の世界――GBNはとても素敵な場所ね。ワタシはずっとあの暗い洞窟にしかいなかったから、それがどれ程綺麗だと思ったか。
みんなこの世界が好きで、楽しんでいるのがワタシでも分かるもの。
本当に反吐が出るほど…………忌々しいくらいに」
「もしかして、GBNが嫌いなの?」
「……ええ」
私に向けられた『ワタシ』の視線。その黒い瞳の中に一瞬、憎悪の炎がちらついたように見えた。
「ワタシはね、GBNもガンプラも大嫌いなのよ。
とっても憎くて憎くて堪らないのよ。そして……」
すると『ワタシ』は言い過ぎたとばかりに首を横に振る。
「……ううん、ワタシとしたことが余計な事を口にしたわ。だから忘れて頂戴な。
『私』にはそんな感情なんて、似合わないのだから」
不思議な言い回し、聞いていると変な気持ちになりそう。
「メールは見たよ。……私に話があるって。
でも、今はあまり話がしたい気分じゃないの」
メールの送り主は、私――ムカイ・ヒナタからだった。もしかしてって思ったら、やっぱりその正体は彼女。
でも私はあまり話はしたくなかった。けどそれでも、気には……なっていたから。
「ごめんなさい。本当ならもう少しちゃんとするべきだったんだろうけれど、あれから私も忙しくて、なかなか時間がとれなかったのよ。
でも、ずっとまた貴方に会いたかったのよ。……『私』の事が気がかりだったから。
だけどね――」
『ワタシ』はうっすらと冷たく微笑む。
「さっき偶然、みんなが話しているのを聞いたのよ。
………あらあら、いくらワタシでもこれは想定外。まさかイヴが復活するかもだなんて、ね」
「それも知っていたんだ」
「ええ。と言っても、ある意味ではワタシの予想通りだけれど。
例えイヴが復活することになろうと、なるまいと、どの道貴方は裏切られる運命だったのよ」
くくく……。小さく笑い声をあげて『ワタシ』は屋上の手すりに腰掛ける。
「だから忠告したじゃあないの。あまり希望なんて持たない方がいいって。
ほら? 貴方の願いなんて結局裏切られて、踏みにじられたじゃない。
……いいえ」
急に『ワタシ』は笑うのを止めて、無感情な声で言った。
「裏切られたどころか、初めからクガ・ヒロトは貴方の事なんて見てすらいなかった。いや……むしろ今は邪魔者としか思ってないのよ」
「でも、私はちゃんと仲良く出来ていたんだよ。勇気も出して告白だって。……どうして」
小さい声で、自分に言い聞かせるように、ただ呟くことしか出来なかった。
「これまで仲良く出来ていたと思っていたのは、ただヒロトが気を遣っていただけなのよ。
そして、イヴが復活すると分かった今は? 彼にとって貴方は自分とイヴとの間に割り込む邪魔な存在にしか過ぎないわ。
あーあ、クガ・ヒロトにとってはずっといて当たり前、ただ自分の助けになってくれる便利で都合の良い相手くらいとしか思っていないのに、貴方が一方的に想いを寄せて来たんですから。
きっと……本心ではさぞ、迷惑だと思っていたのでしょうよ」
「迷惑――私が」
思い浮かんだのは、遊園地で告白した時のヒロトの様子。
私の事を拒絶して、目をそらして……イヴさんの事を想っていた彼のこと。
――さっきだって、ヒロトはイヴさんをずっと気にしていたんだ。私の事なんて目に入らないくらいに――
「もう分かったでしょ? いくら貴方が想おうとも願おうとも、そんなのはクガ・ヒロトにとっては無価値で、今ではただ邪魔なのよ。彼はイヴに一筋なんですから。
……それに、これからどうするつもり? 最初会った時には彼と一緒にいるのを諦めないと言ったじゃない。こんなになったのに…………今でも、それは変らないの?
同じ『ワタシ』同士じゃない。ねぇ……教えてよ?」
「――」
もちろん――。そう答えようとしたんだ。
けどその言葉がどうしても出てこない。それに心の底からそう思うことも、出来ないでいた。
イヴさんが生き返るかもしれないって知ってから、ヒロトは彼女の事を思っている感じだった。
……ううん。本当はその前から、二年前にイヴさんと出会ってからずっと彼女の事が大切だった……私よりもずっと。
どれだけ私が想っていても、その想いには敵わない。
それをこんな形で思い知らされて……私は。
「もう自分でも分からないの。……今の私には」
それくらいしか、私は言えなかった。
「成程、ね」
すると『ワタシ』は一言呟くと。
「やっぱり諦められないのね。かと言って未だと、想い続けるのもずいぶん苦しくなったのね。
揺れる想い、それはとても辛いもの。ですから――私が救ってあげる」
ふふっと彼女は微笑んで、ゆっくりと私に歩み寄る。
「きっと今は考えきれないと思うわ。だから三日後にまた、話をしましょうよ。
『私』がどうしたいのか、その時に聞かせて欲しいの。そしたら……」
私のすぐ隣を『ワタシ』は横切った。
「場所はまた後で伝えるわ。
だからね、待っているわよ。ムカイ・ヒナタ」
最後にそんな言葉を聞いて、振り返るともう『ワタシ』の姿は消えていた。
――私がどうしたいか、か。でも、何だか自分でも分からないよ――
私からの想いなんて、結局はヒロトにとって無価値だって。
信じたくなんてない。けれどもう分からなくなって来たんだ。
「……ヒナタ」
すると屋上にまた誰かがやって来た。
やって来たのは、ヒロト一人だけだった。
「……一人だけなんだ。みんなは?」
「手分けして探したから、みんな別の場所だ。
いきなりヒナタがいなくなって、それで心配になって。もちろん俺だって――」
心配? 心配って、どれくらいなんだろう。だってヒロトにとって私の存在なんて。
「……大して、思ってなんていないのに」
「何か言ったか?」
ヒロトはそう、私に聞き返す。
「別に、なんでもないよ」
「……そうか」
何だか彼もどうすれば良いか分からないみたいだけど、それでも普通に装っているみたいだった。
でも私もヒロトも、どこかぎこちなくて……よそよそしい。
やっぱり私たちの間には越えられない壁がある。
姿は見えるのに、近づけないし触れられないような、透明な壁が。
その向こうにはカザミさんたち大切な仲間と、そして……ヒロトの一番すぐ傍にはイヴさんがいる。
――私は、それを遠くから見守ることしか出来ない。
でもヒロトは、イヴさんがいればきっと幸せなんだ。それで幸せなら私も――
これまでだって私はそう思って来たし、満足していた。
けれど……
――今は何だか寂しくもあるんだよ、ヒロト――