【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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すがる救いの、行く先は

――――

 

 やっぱり、私は本当は分かっていた。

 どんなに頑張ったって私は、ヒロトにとって本当に特別な相手になんてなれないって。

 

 ――なのに私は無駄な事ばかりしていた。ヒロトを困らせて、ただ振り回していただけなんだ――

 

 

 

 イヴさんが生き返る事を知って、私は色々考えたんだ。

 だってヒロトも喜んでいたから。本当は彼も、イヴさんと一緒にいたいと分かっているから。

 

 ――ヒロトのためにも私が距離を置くべきだよね。それが彼にとって、一番いいから――

 

 そうするべきだって私は思いもした。

 でも……そう考える事は、とても辛くて。だから自分でどうしたいのか……悩んでいた。

 

 

 

 さっき息抜きで公園に来ていた時だって、私はヒロトの事をずっと思い悩んでいたの。

 すると――そこで。

 

『ここで会うだなんて、偶然だな』

 

 ヒロトもそこに来ていたんだ。

 私は複雑だったけど、でも会えて嬉しかった。

 だって彼の事が大好きだから。だけど――

 

『やっぱり俺には、イヴへの想いがあるから。GBNの楽しさと大切な事を教えてくれて、かけがえのない思い出をくれた、彼女の事が……』

 

 話をしていて分かったの。  

 やっぱりヒロトの心にあるのはイヴさんだって。今でもずっと、大切な存在だって。

 

『もう分かったでしょ? いくら貴方が想おうとも願おうとも、そんなのはクガ・ヒロトにとっては無価値で今ではただ邪魔なのよ。彼はイヴに、一筋なんですから』

 

 頭をよぎったのはあの『ワタシ』がしていた話。

。結局は私はヒロトにとってそこまで大切なんかじゃなくて、むしろ私が想いを持つ事は、彼にとって邪魔になっているのかもしれなかった。

 だって彼はイヴさんに一筋だから。――だから。

 

『もう――いいの』

 

 そんな感情が先走って私は言ったんだ。

 それから私がヒロトの迷惑になっていた事も謝って、イヴさんの想いの応援も伝えて――彼から去った。

 

 

 これで良いんだって、自分に言い聞かせて。

 

 

 

 ――――

 

 そんな事があった昨日から……私はほとんど、自分の部屋に閉じこもっていた。

 今日は日曜日。まだ学校は休みで、家にいたって何の問題だってないから。

 ……けど。

 

「ヒロトくん、また来たけれど。……会わなくていいの?」

 

 聞こえるのは家のインターホンの音。

 多分ヒロトが様子を見に来たのかな。だけど、今は。

 

「ごめん、今は会いたい気分じゃないの。ヒロトには今留守だって……お願い」

 

 私はどうしても、会う勇気がなかった。

 これじゃダメだって分かっているのに、ヒロトと会うのが、それに彼の事を考えるだけでも胸が苦しくなる。

 

 ――もう訳が分からないよ。ヒロトを想うだけでも苦しくて、会いたくないけど……私は今だって――

 

 それでもまだヒロトの傍にいたい思いもあるの。彼がイヴさんの事を想っているのも分かっていたけど、それでも私は一緒にいたいって。

 本当にイヴさんに一筋で私の事なんて、それに比べたらちょっとでしかなくても、それでも構わない。ただ――傍にいられたら私は幸せだって。

 

 

 

 ずっと、そう思っていたし……自分でもそう思おうともしていた。

 

 ――でも、実際にそうなると寂しいんだ。ただ一緒にいれたら平気だなんて、思えるわけないよ――

 

 寂しいけど……でも。

 ヒロトはただ無理をしていただけなんだ。

 時間をくれれば――。彼は言っていたけど、それは私を傷つけたくないから、気を遣おうとしていたくらいに過ぎなくて。

 

 ――ずっと好きな人がいるのに、それに比べたら私は。なのに――

 

 それで一緒になれたって、余計に辛くなるって思うから。

 

 

 だから、ヒロトと無理して付き合うくらいならいっそ……私が諦めた方が。

 どっちにとっても良いに決まっている。

 

 

 全部、全部、分かっているけど。……だけど。

 

「ぐすっ……ひぐっ」 

 

 毛布にくるまって、声が外に漏れないように私は泣いた。

 もうどうしようもなくて行き場のない思いを振り絞るように。

 

 

 ――だけど本当はすごく嫌だよ。わがままなのは分かっているけど、イヴさんにヒロトを取られるのが嫌だ。私の事を……見て欲しいんだ――

 

 その気持ちをヒロトに伝えたら、もしかすると――。

 だけど、本当に彼が迷惑に思っていたら?

 そう考えると怖くて。それにそんな自分勝手なわがまま、言えないよ。

 

 

 

 やっぱり、私一人だけだとずっとこんなままだ。

 

 誰でもいいから――救って欲しかった。

 

『揺れる想い、それはとても辛いもの。ですから――私が救ってあげる』

 

 そんな時に思い出したのはあの『ワタシ』からの言葉だった。彼女はまた会いたいと、私を救うと……そう言ってた。

 

 ――それにあの後、メールがまた届いていたんだ。内容は――

 

 今日の夕方五時、GBNのあるエリアでまた会いたいって『ワタシ』は伝えていた。

 

 

 会って何をしたいのか、正体だって分からない相手。気味も悪くて怖いけれど、もう会いたくなんてないけど……でも。

 

 ――もしかすると本当に私を救ってくれるなら――  

 

 それなら私はあと一度だけあの人と、もう一人の『ワタシ』と会って話をしたかった。

 

 

 ――だってこんなに苦しい思いなんて…………イヤだから――

 

 

 

 

 ――――

 

 私はお母さんに一言伝えてから、そのまま家を出た。

 向かう先はガンダムベース。あそこでGBNにログインが出来るから。……そして。

 

 

 ――あっと言う間に、着いた感じだね――

 

 目の前のガンプラの専門店――ガンダムベースの入り口に来た私はふと立ち止まっていた。

 

 ――私、これで……いいのかな――

 

 本当ならちゃんとヒロトと直接話し合った方がいいって、今更だけど思っていた。

 私たちがどうした方がいいのか、二人で。

 

 ――だって幼なじみだもん。話せばもっと良い方法だって――

 

 でも、同時に私の頭をよぎったのは、カザミさんにパルくんそしてメイさん、ビルドダイバーズのみんなの傍でイヴさんと二人で幸せそうに笑い合う――ヒロトの姿。

 

 ――ううん。ヒロトにはビルドダイバーズのみんなに……イヴさんがいるもん。本当に大切に想う人が。私はもう――

 

 そう思うとやっぱり……。

 

 

 

「やぁ! ここで会うなんて、偶然だなヒナタちゃん」

 

 するとそんな時に、見知った顔が現れて私に声をかけて来た。

 相手は、私がアルバイトをしているガンダムカフェの店長さん。

 

「本当に偶然ですね……ここで会うなんて」 

 

「ちょっと散歩にな。それでガンダムベースにも通りかかったら、こうしてヒナタちゃんにも会えたわけだ」

 

 朗らかな笑顔を店長さんは私に向けてくれる。

 

「ここに来たと言うことは、もしかしてGBNをプレイしにかい? たしか最近始めたって聞いた気がするからもしかして……とな」

 

「うん、そうなの」

 

 私はそうこたえた。

 

「成程な。ならヒロトともっと一緒になれる時間が増えたってわけか。

 きっと、もっと絆が深まって行くんだろうな。そしていつかは……」

 

「……」

 

 店長さんが言いたいことは、私にも分かるんだ。

 ヒロトともっと親密に。本当は私だって――そう出来れば良かった。

 

 

「……なぁ」 

 

 すると店長さんは、心配しているみたいな感じだった。

 

「正直さ、やっぱり今のヒナタちゃん、変だよ。

 まるで辛いのを我慢していると言うか、もしかしてヒロトの事かい」

 

「それは、その……」

 

「もし辛いなら相談に乗るよ。ヒナタちゃんとヒロトとの仲、本当に応援したいから」

 

 親身になってくれる店長さん。

 きっとこの人は、良い相談相手になるかもしれない。――だけど。

 

「ありがとう、気にかけてくれて。でも今は大丈夫なの。

 また相談したくなる時があったら……その時には」

 

「そうか……分かった。その時には遠慮なんて要らないから、いつでも相談しにきてくれよ」

 

 まだ心配しているみたいだけど、店長さんは私の気持ちを酌んでくれた。

 

 

 私は店長さんに別れを言うと、そのままガンダムベースへと。

 

 

 今は……彼女が私を助けてくれるかもしれないから。

 

 

 

 ――――

 

 一人でGBNにログインした私は……約束をしていたエリアへ。

 

 ――どこに連れて行くのだろう――

 

 私はあるガンプラ――モビルスーツの手の平に乗って、空を飛んで移動していた。

 その機体はログインしたばかりの私を出迎えて、ここまで連れて来てくれたんだ。……けどそれは。

 

 ――ヒロトのガンプラ、アースリィガンダムが、どうして――

 

 見上げるとそこには、本来はヒロトのガンダムであるはずのアースリィガンダムの姿があった。

 けれど本当は綺麗な白と青のモビルスーツなのに、私を乗せたアースリィガンダムはまるで影のように黒い色をしている。

 あれは何だろう? でもそれはまるで……。ミラーミッションで見たガンプラのコピーとよく似ていた感じがするんだ。

 

 

 

 そんな黒いアースリィガンダムに乗って私は、目的の場所に到着しようとしている。

 スピードと高度を落としてモビルスーツは地面に着陸すると、私を乗せている手のひらをゆっくりと下に。

 私はようやく地上へと降りた。だけど……。

 

 ――ここはとても、寂しい場所だよ――

 

 降りた場所は荒れ果てた荒野だった。

 生き物の気配もなくて、ただ冷たい風の音が響くだけの寂しい場所。そして……

 

 

 私のすぐ目の前には、広い荒野にただ一つ佇む、巨大なスペースコロニーの残骸がある。

 まるで地面に突き刺さった墓石のような雰囲気。風の音はそのボロボロになった無数の真っ暗な亀裂や穴から、ひゅうひゅうと絶え間なく聞こえていたんだ。

 

「……ふふふ」

  

 そのスペースコロニーに空いた洞窟のような穴から、現れた人影。

 人影の正体は――あの黒い『ワタシ』だった。

 

「来てくれると思ってたわ。きっと……ね」

 

 『ワタシ』は暗闇からゆっくりと私に歩み寄る。

 

「ねぇ。話の前に、聞きたいことがあるんだけど」

 

「何かしら?」

 

「あのガンダムは一体何なの? だってあれは――」

 

「クガ・ヒロトのアースリィガンダムって言うんでしょ。ふふっ」

 

 私の問いに含み笑いをする彼女。

 

「あれはミラーミッションのシステムを使って生み出した『お人形』さん。

 私はね色々なお人形さんを好きに、たくさん作れちゃうのよ。作るために必要なデータは『あるモノ』を使えば幾らだって用意が出来るから」

 

 それを聞いて私は後ろのアースリィガンダムをちらっと見た。

 あれはやっぱりコピーなんだ。

 

「それで……話したいことは? 『ワタシ』が聞いてあげるわよ」

 

 不敵に見据えて来る『ワタシ』に、少し下を向いてしまう。

 

「本当は会いたくなんてなかったんだ。だって酷いことばかり言うし」

 

「あらあらあら、それは失礼したわね。

 でも、これでも貴方のためを思ってなのよ」

 

 相変わらずの様子でそう言う『ワタシ』。

 やっぱり気味が悪いけど、でも。

 

「それでもあなたは私の事をよく知っている。

 それに私を救ってくれるって、そう言っていたから」

 

「……ふーん」

 

「――『ワタシ』の言う通りかもしれない。ヒロトにはもっと大切な人がいるから、私なんて大した存在じゃなくて。私の想いなんて無意味なんだって。

 だから諦めた方が、離れた方が良いかもってそうも思えて来るの。ヒロトにとってもそれが幸せかもしれないし」

 

 そう言いながらまた……泣きそうになる。

 

「でも、苦しいんだよ。それにやっぱり諦めるのが嫌なんだ。私はヒロトと一緒にいたくて、ちゃんと……振り向いて欲しい。

 諦めないんじゃなくて――諦められないだけ。だけどそれだけ私はヒロトが好きなの。

 私には彼が一番だから。……ずっと一緒に過ごして来た大切な幼なじみだから」

 

 例えヒロトにとっては違っても、私はヒロトの事が一番に大切で好きなんだ。

 その感情が今はもう――辛くてたまらない。

 

 

 

 

「そう……ね」

 

 『ワタシ』は考えるようにして、こう続ける。

 

「やっぱりワタシの方が間違えていたのね。

 『私』はそれほどヒロトが好きなんだって。あれから考えて分かったのよ。

 例え届かなくても、それでも彼の事を想い続ける。それがムカイ・ヒナタですものね。

 だけど――」

 

 すると彼女は薄く微笑んで、私に手を差し伸べる。

 

「言ったでしょう? そんな『私』を『ワタシ』は救ってあげられるのよ。

 ……さぁ、だから私の手を」

 

 どうして手を差し伸べるのか分からなかった。

 

 ――けれど、本当に救ってくれるなら――

 

 私にはもう信じるしかなかった。だからその手を、握ったんだ。

 

 

 

 その瞬間、私の意識は遠のいていく。

 急に薄れる意識の中、最後に見たのは『ワタシ』とそして……。

 後ろのスペースコロニーから次々と姿を現す、黒いモビルスーツの影だった。 

 

 

 

 

 ――――

 ――

 

 

 くっ……くくく。

 

「ふふふ、あはははははっ!」

 

 そうよ。ワタシが……ワタシだけが『私』を、ムカイ・ヒナタを救えるのよ。

 本当に、可哀そうな貴方。――けれど

 

 ――例えどんな手段だろうと、何を犠牲にしても構わないもの。

 出会った時からそうすると決めたのだから。そして――

 

 後ろに控えているのは私の可愛い『お人形』さん達。

 

 ――報いだって、受けるべきなのよ。『ワタシたち』から大切なものを奪った、その全てに――

 

 でもね……ムカイ・ヒナタ。   

 

 

 ――貴方はただ、眠っていればそれでいいわ。

 全てが終わるまでは良い夢をね――

 

 

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