【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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始動する悪意(Side カザミ)

 ――――

 

 俺とパル、それとメイは、何気なく立ち寄ったエリアで過ごしていた所だ。

 レンガ造りの建物が並ぶ近代風な古めかしい街のエリア。ここは∀ガンダムの舞台の一つ、イングレッサの街を再現した場所なんだぜ。

 

「カザミさん、これからどうしましょうか」

 

 街の通りを歩きながら、一緒に歩くパルはそんな事を聞いてきた。

 

「そうだな。さっきまではミッションで結構バトルしまくったからな。

 今はこーして適当にここでゆっくり、ブラブラしようぜ」

 

「……ですね。ここの雰囲気はガンダム作品にしては珍しくてそれに、僕も好きですから」

 

「だよな。ただガンダムの舞台って言うか、まるでタイムスリップした感じもあるけどさ」

 

 街の建物は産業革命期……だったかな、ちょうどそんな昔風な感じだぜ。

 空には飛行船とかも浮かんでいるし、ちょっとファンタジックでもあるな!

 

 

 まぁ、町はそんな感じだが、周りを見ると他のダイバーは相変わらずコスプレだとか、好き勝手な恰好をしているんだけどな。

 

「サンギョウカクメイ? ふむ、それは何なのだ?」

 

 さっきの言葉に首をかしげて、メイは俺に聞いてくる。けど参ったな。そうは言っても……。

 

「うーん、俺も歴史はあんま得意じゃないしな。簡単に言うと蒸気機関だとか、鉄工だとか、技術が発展しだした昔の時代さ」

 

「たしか∀ガンダムの舞台が、科学文明が後退した地球などですからね。このイングレッサだって、これでも作中の地球上では進んだ街みたいですよ」

 

「そうそう! パル!」

 

 パルの言葉には俺も同意だ。

 

「なるほど、そう言うものなのか」

 

「ああ、そうだぜ。それにメイ、こうして付き合う時間を作ってくれてありがとうよ。

 何だかよく分かんないけど、前より大変な事になっているんだろ? そんな中でさ」

 

「まぁ……少しなのだが」

 

 メイはやや複雑そうな感じで、こう続けた。

 

「運営からによると、例のシステムのバグが悪化しているとの事らしい。

 前はごく僅かで大したものじゃなかったんだが、一週間以上前を境にバグが変異したと言うか、まるで別物のように大きくなっているみたいだ。

 今ではもうGBNにそれなりの害を及ぼしかねない程にな」 

 

「メイさん。前の話では、バグが小さいから発見が難しかったのですよね。

 なら今ならもしかすると」

 

 パルの言いたいことは分かるぜ。けどメイは首を横に振る。

 

「いいや。これもまた妙なのだけれど、バグは変化しようとも、その源がどの辺りであるのかは分からないままなんだ。

 上手くは言えないけれど、何だ、今度はまるで誰かにバグそのものが発見されないよう隠蔽されているような……」

 

「もしかするとその一連も誰かによる仕業かもしれないってわけか。けど、それをして何になるってんだ。

 まさかGBNに悪意を持っている人間でもいるってのか? ……まさか!」

 

 GBNは楽しくて、誰にだって愛されるネットゲームだ。なのにそれに対して敵意を向けるなんて信じられるかよ。

 

「それもまた考えられなくもない。

 何しろ二年前のブレイクデカール騒動もGBNに敵意を持っていた人間、シバ・ツカサによるものだったからな」

 

 

 

 メイのそれを聞いて俺も思い出した。

 ブレイクデカールと言う、ガンプラを強化させる代わりに、GBNのシステムにバグを引き起こすアイテムがばら撒かれる事件があった事を。俺もそれについての話は一応耳にしていたから。

 事件の黒幕はシバ・ツカサと言う男。その動機はGBNの登場によってこれまで人気だったゲーム、GPD――ガンダム・プラモデル・デュエルが衰退した事と、GPDが好きだったシバにとってはGBNが認められなかったからだ。

 

 

 ……と言うのもGPDはガンプラを現実世界で実際に動かして、戦わせるゲーム。当然戦うたびに互いにガンプラは傷つくし、そこが一種の緊張感で本物のバトルである実感があるから良いと考える奴もいれば、やっぱりそれが嫌だと考える人間だって多くいる。

 俺だって自分のガンプラが壊れるって考えると……やっぱ嫌だしな。

 それでGBNが登場してからはそっちに人が流れて、シバはその事が許せなかった。

 自分の好きなゲームがGBNのせいで人気をなくして行くことと、それに仮想世界でガンプラが傷つく心配のないGBNは本当のバトルじゃないと、そう思ったんだろう。

 だから――彼はGBNを目茶苦茶しようと、あんな真似をした訳だな。

 

「……シバは自分の大切なものがGBNに踏みにじられたって、そう思っていた。

 だからああ憎んで、か」

 

 自分でも考えてみれば複雑だぜ。

 

「たしかにGBNは面白いけどさ、場合によってはどこかで誰かが傷つくきっかけにも、なるって事だろ。

 うーん、考えると何だかな」

 

「何事にもいい面も悪い面もあるってことでしょうか。人の心はどんな事で傷つくか……分かりませんし。

 ……多分ヒナタさんだって」 

 

 

 

 パルはふと、こんな話を続けた。

 

「ヒナタさん、最近ずっと暗い感じでいるような、そんな気がするんです。

 前までは明るかったのに。……いいえ今でも表向きはそうですけれど、どこかで自分が辛いのを隠しているみたいな」

 

「えっ!?」

 

 それは意外だった。何せ俺からだとヒナタちゃんはあまり、そんな感じに気がつかなかったからだ。

 

「ふむ。それは私も心配はしていた所でもあった」

 

 メイまでも、マジかよ! じゃあ気付かなかったのは俺だけって事か!

 

「パルの言う通り、彼女は一人で何か思い悩んでいるみたいだと私でも感じた

 だからか……ヒロトとも少し距離があるようだったな」

 

「やっぱりメイさんもそう思いますか。

 ――本当に大丈夫でしょうか? あくまで僕の考えですけれど、多分イヴさんが生き返るかもしれないって分かった時から、ヒナタさんは」

 

「うーん」

 

 原因はイヴなのか? でも言われてみれば、そうかも。  

 

「イヴはヒロトにとって大切な人だもんな。それが生き返るって知って、か。

 これってもしかすると……」

 

 俺はある考えが頭に浮かぶ。

 

「――何事にもいい面も悪い面も、と言うことか。

 そりゃあヒナタちゃんも相当……苦しいだろうな」

 

 それはパルも、メイも同じ思いだったようだ。

 

「ですね。でもそれは二人の問題で、僕たちにはどうしようもないですし」

 

 特に、メイは深く考えているみたいで。

 

「私たちELダイバーの存在が……そんな事に」

 

 そうぼそりと呟くのを俺は聞いた。

 

 

 

 でも……この空気、かなり辛気臭い。

 俺はこう言うの苦手なんだよ。何か話題を変えないと――そうだ!

 ちょっと良い話題を思い出した。

 

「そう言えばさ、変だって言えばこの前、ミラーミッションに行った時もヒナタちゃんはそうだったんだ。

 あっちはちょっとおかしな話なんだけどさ。なぁパル?」

 

「えっ、と」

 

 パルはいきなり話を振った驚いたみたいだが、すぐに意図を察してくれた。

 

「はい! あれは少しだけ変な話でしたね。

 ヒナタさんの話では、ミラーミッションで自分そっくりのコピーと会ってお話をしたって。

 あはは……いくら何でもダイバーのコピーで、それに意思を持って話すなんてあり得ないですよね」

 

 ――これで少しは、場の空気だって和むんじゃないか?――

 

 俺はそう考えた。……けれど。

 

「――待てよ、ダイバーのコピー、だと?」

 

 話を聞いたメイの反応は意外なものだった。

 まるで何か心当たりがあるように目を見開いて、妙に気にした表情を見せる。

 

「カザミ、それにパルも。今の話は本当なのか!?」

 

「あ、ああ……話していたのは、本当だぜ」 

 

 思った以上に食ってかかるメイの勢いに押されたけれど、俺は答えた。

 

「でもさ、俺たちが見たわけじゃない。話はきっとヒナタの勘違いか見間違いとかだよ……な」

 

 けど、目の前にメイの表情は真剣だ。

 

「私にも分からない。が、彼女まで見たとなると――」

 

 

 

 ――――

 

 けど、メイの言葉を最後まで聞けなかった。

 彼女が言葉を続けようとした次の瞬間、すぐ近くで……激しい爆発音が響いた。

 

「なあっ!」

 

「――あれは」

 

「……」

 

 俺たちがその方向を見ると、そこには大きな建物がいくつも爆発して燃えている光景があった。

 辺りのダイバーも何が起こったのか騒いでいるけど、そのさ中にも次から次へと、あちこちで爆発が巻き起こる。

 

「何だよ。これは一体どう言うことだ?」

 

「カザミ! パル! あそこを見てみろ!」

 

 メイは燃え広がる建物の一つを指さす。

 燃える炎と煙の中、浮かび上がるのはモビルスーツの影。

 それはガンダムWの機体、ガンダムヘビーアームズ。トロワ・バートンの搭乗機で、左前腕のビームガトリングに両肩と両足のミサイルだとか全身に火器を備えたガンダムなんだけど……それが今、街を破壊していたんだ。

 

 ――いや、ヘビーアームズだけじゃねぇ!――

 

 よく見ると他にも逆襲のシャアに登場するネオジオンの量産機ギラ・ドーガ、それに鉄血のオルフェンズの主役機であるガンダムバルバトスだとか、作品関係なく色々なモビルスーツが街で暴れていた。

 本当にどの機体も特徴はバラバラだけど、ただ唯一全部のモビルスーツに当てはまる共通点があった。

 

「全部カラーリングが黒かよ。それにさ、あの空を飛ぶ三機は……」

 

 上空には、『機動戦士ガンダムZZ』に登場する、MS、MA両形態へ変形できる可変機、ガザシリーズのMA三機が飛んでいるわけなんだが。

 三機とも原作と違ってやたらトゲトゲしくて派手な外装をしていたんだ。実は俺には、これに見た覚えがある。

 

「あれはG‐Tubeで見たガザ三兄弟の機体じゃないか」

 

 G‐Tube……それはガンダムやGBN関連の動画サイトの事だぜ。

 大体GBNでのガンプラバトルだとかミッション、後ガンプラ制作なんか色々扱った動画を見たり、そして配信することだって出来る。

 世間でもかなり人気なサイトなんだぜ。

 

 

 俺もジャスティス・カザミと言う名前で、G‐Tuberとしてチャンネルを持っているんだぜ。そしてこの俺の憧れの存在であるG‐Tuber、キャプテン・ジオンの動画に登場したのが……あのガザ三兄弟ってわけだ。

 正義の味方キャプテン・ジオンがGBNや一般ダイバーに迷惑行為を行う悪質ダイバーを制裁する、爽快な動画! ……おっと、今はそれどころじゃないか。

 とにかくガザ三兄弟はその動画に出た悪質ダイバーで、ガンプラだって彼らがカスタマイズしたもの。それが……。

 

「原作機体だけじゃなくて、ああしてオリジナルのガンプラまで。

 これはまさか」

 

「カザミさん。……もしかすると、あれは全部ガンプラのコピーじゃないでしょうか」

 

 俺はパルの言葉に頷いて返す。

 あの黒いカラー。それは俺とパルがミラーミッションで見た、自分たちのガンプラのコピーと同じだった。

 

「ああ。あれは多分。けど、だとするならミラーミッションでもない、このエリアにどうして現れたのか。

 それがどうしても分からないぜ」

 

「あれもコピー……なのか。やはり、だとするなら」

 

 メイはまだ何か考えているみたいだ。けどこんな大変な事態になっているなら、俺たちがやる事は一つだ。

 

「――とにかく! 何が起こってるか知らないがこのままにはしておけねぇ。

 二人とも、まずはあいつらを俺たちで撃退するぞ!」

 

 見ると他のダイバーも自分のガンプラに乗って反撃に出ている。

 なら……俺たちも!

 

 

 

 

 ―――

 

 ――はっ、この程度の敵なら――

 

 目の前にはガンダムAGEの敵機体である、黒色のガフランの姿。

 まるでドラゴンのような生物的な機体は尻尾のビーム砲で攻撃して来る。けど……俺にはそんなのへっちゃらさ!

 

 ビーム砲をかいくぐり、俺はショットランサーの突撃で難なく撃破する。

 

 ――強さはそう大したことはないのか。けど、問題は――

 

 敵の数が思ったより多いことだ。

 

 

 今度は続けて二機、ゲルググとギャンが左右から迫る。

 

 ――武器はこれじゃ足りないか。ならこいつで――

 

 俺はライテイ ショットランサー改と、もう一つの剣、大型のイージスシールドの裏側からビームレイピアを引き抜く。この二本の武器を振るい俺は攻撃されるよりも先に、ゲルググ、ギャンを同時に倒す。

 

 ――まぁ倒せない数じゃ……ないか。他でも戦っているわけだし――

 

 俺たち以外のダイバーも頑張って戦っているんだ。だから、負けられないさ!

 

〈すみませんカザミさん! 援護をお願いします。

 この三機……なかなか手ごわくて〉

 

 パルのエクスヴァルキランダ―は上空であのガザ三兄弟のガザ三機、そのコピーと戦っていた。

 さすがに一人で三体一は骨が折れるか。

 

「分かったぜ! パル、すぐにそこから離れろ!」

 

 俺はそう指示を出し、パルは言われた通り距離を離す。

 と同時にイージスナイトをMA形態に変形させ、腹部のエネルギービーム砲『スキュラ』を撃ち放つ。

 強力なエネルギーは、残ったガザ三兄弟の機体とそれにいくつかのまぎれた敵機も巻き込み、消滅させる。

 

「ま、俺にかかればざっとこんなもんよ! ……ん?」

 

 俺はメイの事も気になり、そっちにも視線を向ける。

 

 

 彼女のウォドムポッドもまたコピーと戦っている所だ。

 迫る敵は脚部で蹴り飛ばし、さらにビーム砲で離れた相手もまとめて撃破してもいた。

 ……けど何だ。やっぱり微妙に動きがおかしい。

 

「なぁ、メイ」

 

〈……〉

 

 通信画面に映るメイは、やっぱまだ思い悩んでいるような感じだった。

 

「やっぱ変だぜ、ずっと考え込んでてさ。

 悪いが今は戦う事に集中してもらわなきゃ困るぜ」

 

 それでも彼女は相変わらずな感じだ。

 悩んでいるメイ。けれどそんな中、まるで何か決めたような目で俺を見ると。

 

〈……悪いカザミ。それとパルも〉

 

「えっ?」

 

〈私にはどうしても確かめたい事がある。だから――この場は、頼む〉

 

 と言うやいなや、戦っている最中にも関わらずにいきなりウォドムポッドはこのエリアから離脱する。

 メイを乗せたまま……一体、何処に行くつもりだ?

 

「どう言うことなんだ? メイの奴」

 

〈分かりませんけど……今は、考えても仕方ないですよ。ここはもう僕たちがやるしかありませんし〉

 

 パルの言う通り、これもまた考えたところでどうにかなるもんじゃない。

 

「……だな。せいぜいメイには、また会った時にたっぷり事情を聞かせてもらうさ!」

 

 敵機も大分少なくなった。それと――。

 

 

 ――この事はすぐにヒロトにも連絡しないと。

 何せこんな、異常事態なわけだしさ――

 

 

 

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