【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
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あれから色々考えていた。
――俺が無理をしている……。そうヒナタは――
「……せっかくヒロト君が来てくれたのに、ごめんなさい。ヒナタは今、会う元気がないみたいなの」
ヒナタの家に来ると、玄関先で彼女の母親がそんな事を俺に話した。
「そう、ですか」
「何回も来てくれているのに、本当に悪いわね。 留守だって伝えて欲しいって言っていたんだけど。
でもヒナタ、何だか部屋に閉じこもって落ち込んだままで、私も心配しているの」
「……」
向こうまた心配している感じだった。
「ねぇ、ヒロト君なら、何か心当たりがあったりしないかしら?
だってヒナタと一番仲の良いのはヒロト君ですから。だから……ね」
俺には話すべき言葉が見つからなかった。
ただ、一言。
「俺も……分からないんだ」
本当に、俺だってもう、どうすれば良いか分からない。
「そう。……ごめんなさいね、ヒロト君も分からないのに。
でもきっと時間を置いたらまた元気になると思うから。その時にまたヒナタに会いに来て欲しいわ」
――――
今日もヒナタに会えないままだ。
あの事があった後、昨日からずっと……あんな感じ。
あの後、俺は自宅に帰って一人プラモをいじっていた。
――……――
でも、いまいち気分が乗らない。
俺はプラモの手を少し止め、ふとベランダへと出る。ちょっとした気晴らしだ。
ベランダから見える外の景色――俺とヒナタが暮らす、この大都会。どれだけの時間ここで俺たちは過ごしたんだろうか。幼馴染みとして長い間……。もちろん俺にとって彼女は大切な存在だって、自分で思っていた。
『私、分かっているから。ヒロトが本当に大切に想っているのは、イヴさんだって。
一番大切な人なんだよね』
けど、ヒナタは俺にそう言った。
自分はイヴと比べたら大事ではないと。
『だから、もういいの。ヒロトは無理をしていたんだよね。
ヒロトが優しいからその優しさに、私は甘えてずっと。私こそ無理をさせちゃった。ずっと迷惑をかけて、ごめんね』
――ヒナタはやっぱり――
あの時の彼女は、いつも俺の傍で気にかけてくれる優しい表情で。だけど――きっと、とても辛かったはずだ。
だから俺とも会いたくなくて、部屋に閉じこもったままでいる。
あんなになったヒナタなんて初めてだった。
――やっぱり俺の事を、本当はずっと好きでいたのに――
俺ももう分かっていた。ヒナタは俺の事を好きでいるって。ずっと……前から。
幼なじみとして、いや、それ以上にもっと。なのに俺は。
――迷惑だって、ごめんって……。俺はヒナタにあんな事を言わせてしまったのか。
きっと辛かったはずなのに――
あの時、いつもの笑顔の後にほんの一瞬見た彼女の涙。その光景が頭をよぎる。
俺はまた深く彼女を傷つけたんだ。
それはきっと、俺がこれまでヒナタの気持ちに気付かなかったから。いやむしろ……。
――俺は今まで知らないふりをして、逃げていたんだ。今の幼馴染くらいの関係が楽で、都合がいいと甘えていたのか――
思い返せば、ずっと前からヒナタにはその気持ちがあったのかもしれなかった。
いくら幼馴染でもあんなに俺の事を想ってくれて、気にかけてくれるなんて。……よく考えていれば、何かもっと分かっていたはずだ。
もっと……俺がヒナタに意識を向けていれば。
――なのに、対して俺が見ていたのはほとんどがイヴの事ばかり――
確かに彼女とGBNで過ごしたのはかけがえのない思い出で、それにイヴの存在ももちろん俺にとってとても大切だ。だけど――ヒナタだって本当に俺は大切に想っているんだ。
――俺は迷惑だなんて。無理してヒナタと付き合ってた訳じゃないんだ。
俺は本気でヒナタの想いに応えたかった――
……でも彼女にとってはきっと迷惑だろうと、そう見えていた。
俺がイヴの事をずっと想っていると知っているからだ。それにメイに対しても、エルドラの出来事から意識を向けていた部分もいくらかあった。
だからヒナタに対してはあまり、気持ちを向けていなかったのかもしれない。
きっとそれも彼女にとっては――ずっと辛かったんだ。明るい雰囲気で傍にいてくれて、俺を気にかけてくれたのに。俺は……エルドラやビルドダイバーズ、そしてイヴの事ばかりで、比べてヒナタをあまり考える事をしてなかった。
ヒナタは表では気にする素振りなんて見せてなかったけれど…………それも、ずっと知らないうちに俺は傷つけていた。
だから――そのせいでもう、彼女は俺に『もういい』と。
どうせただ気を遣わされているだけだから、本当は好きでもないのにただ優しさだけで付き合わせるくらいなら……と、俺は彼女にそう思われてしまった。
――けどその言い分も、合っているんだろうな――
やはり俺はイヴの事も強く想ってもいた。
だから本当は選びきれなくて。そんな中でヒナタがああしていたから、無理して彼女を選ぼうと。
でも――。
ここから眺める外の景色。
河川敷や公園、街の通りにあちこちの建物。どれも俺にとって馴染みがあった。
俺とそしてヒナタ。一緒に街で過ごして……本当に小さい頃から、小学や中学そして高校に入ってから今になってからも。
今眺めている街にはそんな彼女との思い出で溢れている。――あちこち見ただけでも、俺にそれを思い起こさせる。
――俺は――
まだ少しかもしれないけれど、俺はようやく分かり出した気がする。
――イヴの思い出は俺にとっては真新しくて、きらきらしていた。GBNを始めたばかりの俺に、今まで体験のした事がない楽しくて綺麗な……そんな宝石のような思い出をくれた――
思い出とそれを俺にくれた……イヴ。だからこそどちらとも大切でもあって、失った時には心に大きな穴が開いたようだった。
それだけ輝いていたイヴの存在……だけど。
――それでもヒナタは、昔から変わらない想いでずっと傍にいてくれていたんだ――
ヒナタは昔から、俺と一緒だった。
正直イヴの思い出と比べて煌びやかなものではないかもしれない。……けどヒナタと過ごした思い出だって俺には、かけがえのないのないものだ。
――いつも通りの事で当たり前だから。あまり考える事が出来ていなかった、イヴとの思い出に埋もれてしまって、意識を向けることも殆どなかったけれど――
一緒に遊んで学校に行って、家を行き来して生活を送った日々……。
何気なくて当たり前だったかもしれないけど、きっとそれは俺にとってはなくてはならない大事な思い出。
もちろん――ヒナタも。
イヴと出会って、俺が前よりヒナタを見ることがなくなっても、それでも俺への想いはずっと変わっていなかった。
――俺が変ってしまっても、それでもヒナタは。
きっと彼女にとってそれだけ俺の事を想っていたんだ――
ただ思い出だって俺もちゃんと覚えている。後は俺の気持ち……想い。ただそれだけだ。
――そうした想いも、思い出さえ、俺はよく見えていなかった。けれど、それもようやく――
俺はベランダから部屋に戻り、早速外出する支度を始める。
今度は本気でヒナタに会いたかった。
――もう逃げない。ヒナタともこんな事で終わりになんてしたくない。だから――
ちゃんと会って、彼女と話したい。
――俺の気持ちを。……今度は無理してなんかじゃない。
それを伝えたい、伝えないといけないから――
ヒナタの気持ちと今度こそ向き合うと決めた。
俺は用意を済ませて玄関先へと。……けどその時。
――――
ふと、家のインターホンの鳴る音が聞こえた。
――誰が来たんだ? ……まさか、ヒナタが会いに――
俺はそう思って早足で玄関に向かうと扉を開けた。扉の先にいたのは。
「……ヒロト」
玄関先には恰幅の良い見覚えがある中年男性の姿。確か、ヒナタがアルバイトしているガンダムカフェの店長だ。
……けれど表情は青ざめた様子で、それに急いでここまで来たのか強く息切れをしている。
「あの、どうしました?」
ただ事ではない状況に、俺はただそう言うくらいしか出来なかった。
けれどそれ以上に、店長が次に話した事は――もっと深刻過ぎる事だった。
「落ち着いて聞いてくれ。
……さっきヒナタちゃんがGBNをプレイしている最中倒れて、病院に運ばれた。
ずっと、意識が戻らなくて……目が覚めないんだ」