【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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例え偽物と……呼ばれても(Side メイ)

 ――――

 

 暗い洞窟の中、私はウォドムポッドに乗り飛行する。

 

 ――ミラーミッションのエリア……妙だな――

 

 コピーがイングレッサを襲撃した事、それにヒナタが自分のコピーを見たと言う話。

 私はずっとGBNの異常を探していたが、やはり……発生源はここのようだ。

 ミラーミッションには妙な噂があるとは聞いてはいた。けれどあまりに馬鹿馬鹿しくて相手にはしていなかった。――だが。

 

 ――妙に肌にピリピリと感じる違和感。ELダイバーだからこそ、こうシステムの異常な気配を覚えるものなのか。

 それに感じる違和感だけではない、エリアそのものも――

 

 洞窟の空間は通常の時と比べて大型化している。現に私のウォドムポッドさえ、楽に飛行して進める程だ。

 

 ――エリアのテクスチャが書き換えられているのか。いや、加えて拡大化もされているのだろうな。

 大体……この道はどこに通じているんだ?――

 

 

 

 本来はイベントの期間中でもないのにミラーミッションには入れない。

 だが私は異常の調査と言う名目で、一時的に運営からある程度エリアに自由に出入りを可能とする権限を得ていた。

 それを使って閉鎖中とされたミラーミッションに潜入した……わけだが。

 

 

 私は潜入してからずっと、この広い洞窟を飛行していた。

 基本一本道の穴で直線や曲り道、そして何度か分かれ道もあった。ほら、今だって正面に左右の分かれ道が。

 

 ――今度はそうだな、左か? 気配は向こうが強い――

 

 私が選んだのは左の道。私は感じる気配で、こうして道を進んでいた。

 

 

 

 そして、それは当たりのようだ。

 

 左の道を進んですぐに、洞窟の岩壁のあちこちにノイズが……今度は空間内の異常まで目に見える形で現れる。

 

 ――段々、異常に迫って来たようだな――

 

 実際に気配も一層濃くなる。もうすぐその原因に辿り着くはずだ。

 何故こんな事が起こっているかは知らないが、もしシステムに異常、バグが生じているのなら……。

 

 ――修復用のプログラムも手元にある。異常の元に辿り着き、直接修正プログラムを打ち込みさえすればシステムも元通りになる――

 

 ミラーミッションさえ元に戻れば、GBNで暴れ回っているコピーも消えるはず。

 

 

 

 ――しかし妙だ――

 

 ずいぶん奥まで来たが、あまりにも静かすぎる。

 イングレッサの時のようにガンプラのコピーが襲いかかる訳でもない。もし誰かがミラーミッションを利用して異常を引き起こしたのなら、侵入者を排除するなど……何らかのアクションがあると考えていた。

 なのに全くの無反応。

 

 

 考えられる事は、二つ。

 一つ目は、この異常事態そのものが偶発的にバグが深刻化した事によるシステムの暴走、つまり事故である考えだ。ならアクションがない事も頷ける。

 しかし、だとしてもあまりに反応がなさすぎる。これは……二つ目、やはり誰かがわざと、そう仕向けた状況としか思えない。

 一体何のために。――まさか。

 

 ――わざと私を、ここまで誘い出したのか――

 

 

 

 こう考えた瞬間。

 洞窟の正面に、ぽっかりと黒い穴が出現した。

 あまりにも突然で、私のウォドムポットはそのまま穴を通過して向こう側へと。

 

 

 

 そこは光の軌跡が無数に飛び交う、電子空間。私はいつの間にかそんな場所に。

 

 ――どこだ、ここは?――

 

 さっきまでの洞窟とは全く異なる様相の空間。戻ろうと振り返ってももう私が通った道は消えてしまい、それすら叶わない。

 

 ――閉じ込められてしまったのか。それに……いつの間にか私は、機体から降りてしまっているみたいだ――

 

 乗っていたはずのウォドムポッドのコックピットは視界から消え、生身で私はこの空間に立っていた。

 GBNでもエリアや場所によっては、ガンプラの使用が禁じられている所もある。だがいきなりエリアに移動させられた途端、強制的に機体を解除されりなんて。

 あまりにも目茶苦茶だ。余程ミラーミッションのシステムに対して、強く介入しているのだろう。…………この異常を引き起こした黒幕は。

 

 

 

 電子空間に浮かぶ、半透明な正六角形のパネルが無数に合わさり形成された、円形の広場に私はいる。

 そして同じくその場に立ち、目の前にいる存在を睨む。

 

「此処まで来るなんて、ご苦労さまね……メイ」

 

 私の前に立ち不敵な笑みを向けるのは。

 

「ヒナタなのか?」 

 

 そこにいたのは巫女服姿のダイバールックをした、ヒナタ。

 ……だがその姿は黒など暗い色へと変わり、それに彼女の表情と雰囲気は全くの別物だ。

 顔は笑っていても全身から漂う隠しきれない程に強く鋭い、負の感情。

 いつもの優しい雰囲気のヒナタとは真逆。あれがあのヒナタであるわけがない――何より。

 

「いや……本物のヒナタは」

 

 あの黒いヒナタ……単純だが、通称クロヒナタと言うべきか。そのすぐ横にはもう一人意識を失って倒れているのが見えた。

 同じ姿、けれど倒れている方が本物のヒナタだ。

 

 

「どうして彼女がここにいる?」 

 

「ふふ、だって同じ『ワタシ』同士ですもの、一緒にいるのは当たり前でしょ。ねぇ?」

 

 にたりと不気味に笑って、答えるクロヒナタ。

 ……くっ、下手に同じ姿をしている分、余計に気味が悪い。

 

「ふざけた事を言うな! 一体、お前は何者なんだ」

 

「話を聞いていなかったのかしら? ワタシは『私』、ムカイ・ヒナタなのよ」

 

 さも当然みたいに彼女は言った。だがそんな事など、戯言にすぎない。

 

「ヒナタはそこに倒れている彼女だ。お前のような得体の知れない存在では、決してない」

 

「……しつこいわね」

 

 不機嫌そうに目を細める、クロヒナタ。

 依然としてあれの正体は不明だが、それでもこのミラーミッションの奥に存在しあの態度。

 恐らくは……。

 

「――今、GBNの各地でガンプラのコピーが暴れている。あれは全てミラーミッションで生成されたものなのだろう?

 ミラーミッションを操り、引き起こした破壊行為は、お前の仕業なのか」

 

「だとしたら、どうするの?」

 

「私はGBNの異常を止めに来た。その元凶がお前であるなら、例え何が目的だろうと……ここで止める」

 

 私がそう言おうとも、クロヒナタの態度は相変わらず。それどころか漂わせる雰囲気と視線は、更に鋭くなった気がする。

 

「悪いけれどそれは許さない。

 ワタシとワタシのお人形達は、GBNの全てを破壊するまで止まらない。GBNと言う世界も、そこにいるヒトの想いも……。

 『ワタシ』が、『ムカイ・ヒナタ』が許せない全てに報いを受けさせるまでは」

 

「そんな事が――!」

 

 拳を強く握り、今度は私がクロヒナタを睨む。

 

「そんな事、ヒナタが望んでいるわけがない! 何故彼女がGBNに復讐しようだなんて……っ!」 

 

「誰がGBNだけと言ったかしら。

 許せない全てに報いを受けさせると、ワタシは言ったわ。――GBNは、ただその一つに過ぎない」

 

 

 

 ……分からない。とにかく分からないことだらけだ。

 だが彼女の言っている事など、私は認めるわけにはいかない。

 

「何だろうと、あのヒナタが何かを憎むなんて、ある訳がない。

 その姿はミラーミッションのコピーによるものだろ。ダイバーのデータをどうコピーしたのかは分からないが、お前はムカイ・ヒナタではない。

 いくらヒナタになったつもりでも、ただの…………偽物だ!」

 

 

 

「成程ね。ワタシが、偽物ですって」

 

 すると急に、クロヒナタから纏っていた雰囲気が消えた。

 淡々とそう話し、一見表情も何ら変わりは無い。が次の瞬間。

 

「……言ってくれるじゃない」

 

 この呟きが聞こえたと同時に、彼女の姿は私の目の前から掻き消えていた。

 

 ――何だと! いきなり消えるなんて――

 

 何故消えたのか。

 それを考えるよりも先に、強烈な殺気が背筋に突き刺さる。

 

「――!」

 

 僅かに振り返った視線に入ったのは、右腕先から赤いエネルギーの刃先のみを生成し、私の首筋へと振るうクロヒナタの姿。

 斬撃が繰り出される寸前、その後ろへと下がり回避する。……だが途端、私の髪の切れ端がぱらぱらと下へと落ちた。

 

 ――あと少し反応に遅れていれば――

 

 続けて彼女は再度接近し、刃を向けた。

 

 ――本気で戦うつもりか。その気ならば私も――

 

 とっさに私も同じく右腕からビームサーベルを展開して攻撃を防ぐ。

 エネルギーとエネルギーが衝突し合い、眩しいほどに放つ閃光。

 クロヒナタのビームサーベルは赤く輝いているが、形状と構えは私のそれと同等のものだ。……もしや私の装備と動きまでコピーし自分に取り入れたのか。

 

「ワタシが偽物と、そう言ったわねメイ」

 

「だったら何だ!」

 

「貴方が、いえELダイバーに偽物呼ばわりとは、つくづく滑稽だわ」

 

 そう話している間に、クロヒナタは左腕からもビームサーベルを出現させる。

 

 ――っ! 不味い、これは防ぎきれない。

 だがビームサーベルが駄目でも使えるものはある。

 続けて繰り出される攻撃に、ホルスターからハンドガンを取り、撃ち抜く。

 

 

 放たれたビームは彼女の左肘を貫き、吹き飛ばす。

 

「……ふっ」

 

 クロヒナタは後方に跳躍し私と大きく距離を離す。

 目の前の彼女は、先ほどの攻撃で左腕の肘から先を失ってなくなっていた。……やりすぎてしまったとは思うが、先に仕掛けたのは向こうだ。

 

 

 最も、腕を失ったにも関わらずクロヒナタはそれを気にする様子もない。

 

「ねぇ、だったらELダイバーの存在はどうなのかしらね?

 GBNと言う仮想世界に生きる電子生命体……ですって、くくくくっ!」

 

 嗤い声とともに彼女は失った左腕を再構築する。再生される腕と手、そこに握っていたのは私の物と同じビームハンドガンだ。

 

 ――あんな真似まで、本当に何だ!?――

 

 腕とともに形成したハンドガン、クロヒナタは躊躇いもなく銃口を私に向けて連射する。

 

「よくもやる!」

 

 私はビームを駆け抜けて避けながら、右手でもハンドガンを抜き二丁同時で反撃を試みる。だが……

 

 

 クロヒナタの前に、足場を構成する正六面体のパネルが一枚形成され、盾代わりとなり攻撃を防ぐ。

 しかしビーム攻撃を受け、パネルはひび割れ粉々に砕け散った。砕けた破片は彼女の周囲に散り、煌めきを放つ。

 

「確か、クガ・ヒロトが『私』に話していたわねぇ。あの異星エルドラに太古の昔に超文明を築いた古代の民。彼らがこのGBNに訪れ、生まれ変わった存在こそELダイバーかもしれないと」

 

 続けて、彼女は同じパネルを四枚も宙に形成する。

 今度は盾としてではなく、まるでブーメランのように私めがけて飛ばす。

 一枚、二枚と次々に襲来するパネルを私は回避するが、いくら回避してもまるで意思を持っているかのように、すぐに回り込んで再び私に向かって来る。

 反撃する隙もない。追いつめられる私を眺め、クロヒナタは続ける。 

 

 

「でも、生まれ変わっただなんて、どうかしら?

 もはや古の民は存在しないのよ。ただデータがGBNに流れ着いて、人の形を再現したにすぎない。

 貴方たちELダイバーも――」

 

 瞬間、パネルは全て私の周囲を囲んだかと思うとそのまま、四方同時から襲い来る。

 高速で回転し、四方向から迫るパネル。今度は更に避けるのは困難だが、私にとってはようやく訪れた反撃の機会だ。

 床を強く蹴り、高く跳躍する。

 真下には一点に集まったパネル。私はハンドガンをそれに向け、撃ち放った。

 

 

 ビームの雨が降り注ぎパネルは四枚とも破壊される。これで、もうしつこく追い回される心配はない。……だが。

 すぐ私の正面には、いつの間にかクロヒナタがビームサーベルを構え迫っていた。

 

 ――これを、狙っていたのか――

 

 宙を飛び、隙の生じた私を狙っての直接攻撃。

 瞬間彼女と顔が合わさり、こう呟くのを聞いた。

 

「所詮、ただの紛い物。真似事でしかないじゃないの」

 

 

 

 

 

 

 ――強烈な斬撃を受け、下に叩きつけられる。

 

 

「かはっ!」

 

 背に受ける激しい痛み。それは起き上がるのすら、厳しい程に。

 

 ――あの一撃そのものを、食らうのは免れたが――

 

 私の右腕には寸前に展開したビームサーベルの刃が伸びている。おかげで、直接斬撃をその身に受けることは免れた。

 最も、身体にはダメージを受け、とっさにビームサーベルを展開したことでハンドガンの片方を落としてしまった。

 落としたハンドガンは少し離れた所にあったが。

 

 

 

 バキッとした音とともに誰かの足で強く踏みつけられ、ハンドガンは破壊された。

 銃を踏みつけたクロヒナタ。彼女は余裕そうにゆっくりと、両腕からビームサーベルを伸ばしながら迫り来る。

 

「滅び去った古代人の影法師、0と1の寄せ集め、生命の物真似をしているだけの……木偶人形の分際で」

 

 一つ一つに、鋭い悪意が込められたクロヒナタの言葉。

 ……何があそこまで彼女を駆り立てる。

 

 

 私がどうにか身体を起こすとほぼ同時に、クロヒナタは両腕のビームサーベルで激しく打ちかかる。

 強烈な連撃を何度も、何度も。私も応戦し激しい剣戟によるスパークと火花が辺りに散る。

 

 ――やはり実力は私と同等か、だが今の私では――

 

 先ほどのダメージで私の方が状況が不利だ。現に今、彼女の勢いに押され防戦気味だ。何度か反撃を試みるも、それさえ払い除けられ再び猛攻を浴びせられる。

 それにクロヒナタそのものの、強い激情までも攻撃に上乗せされていた。華奢なダイバー姿とは違い、その強力な斬撃は確実に、私の体力を削る。

 

「アハハハハ! だけどワタシも所詮は似た存在だわ。

 人形同士踊りましょうよ。――そう、力尽きて壊れるまで!」

 

 剣戟はなおも続く。もはや攻撃を防ぐことで精一杯だ。

 ……それでも私の動きをコピーして実力が同じだとしても、彼女の感情により攻撃の威力が強くなっている分、僅かにだが隙もある。

 

「でも、しぶといわね。いい加減に」

 

 クロヒナタは数度目の斬撃を振り下ろそうとしていた。私はその時、確かに……。

 

「――もらった!」

 

 攻撃を繰り出そうとした彼女の足元、反撃する隙はそこにあった。……それを逃さない。

 私はクロヒナタに足払いをかけ、態勢を崩させる。

 

「何……」

 

 続けて生じた彼女の隙。一気に畳みかける!

 私は両腕のビームサーベルを、クロヒナタの両肩に振るった。

 

「!!」

 

 両腕を切断し、その戦闘能力を奪う。

 残酷ではあるがどの道すぐに再生する。手加減なんて出来ない相手だ、全てはGBNを救うため、私は……。

 

 

  

 それでも彼女の戦意は消えない。

 

「っ! まだよ!」

 

 瞬間、私の足元とその周りにある足場のパネルがばらばらに崩壊する。

 私は下に落下しないようその一枚に飛び乗るも、状況は更に深刻さを増す。

 

「随分やってくれたわね、メイ」

 

 向こう側の離れたパネルには、クロヒナタの姿も。既に両腕とも再生し、ハンドガンが手元に握られている。

 

「まだ続けるつもりか。いい加減……諦めてくれ」

 

 このまま続ければ、本当に取り返しのつかない事になる。……それでも彼女は。

 

 

 

 

「黙りなさい! ワタシが――終われるわけがないじゃない!」

 

 それに呼応するように、周囲のパネルが次々と私を襲う。

 先ほどの四枚とは比べ物にならない程の攻撃。それにクロヒナタもハンドガンで私を狙いビームを放つ。

 

 ――これは――

 

 私はパネルを飛び移りながら避けるが、とても全部は不可能だ。

 飛来するパネルやビームは身体のあちこちをかすり、傷が増える。

 

 ――やるしかないのか――

 

 覚悟は決め、私はクロヒナタを睨む。

 

 ――この一撃で仕留める。何としてでも彼女はここで止めなければ――

 

 

 

 私はパネルを次々と飛び移り、彼女の元へと迫る。

 その間も攻撃は襲い、近づくにつれて苛烈さは増す。

 

「メイ! 貴方は!」

 

 多少の無理など覚悟している。――残る力を全てこの一瞬に賭ける。

 迫るパネルはビームサーベルで切り裂き、ビームも弾く。そしてクロヒナタはすぐ目の前まで。

 

「よくもっ!!」

 

 最後の抵抗か、彼女は再びパネルを盾代わりとする。

 しかも今度は何重にも私との間に阻む。

 

 ――ここで止まれはしない! 一気に決める!――

 

 

 

 私は足元に全力を込め、蹴った。

 向かうは直線上のクロヒナタ。例え幾つも障害物が阻もうとも……。

 

「はあっ!」

 

 前転し、そして両手で身体を押し出して私は、左足に回転のエネルギーを発生させ高威力のキックを繰り出す。

 一枚、二枚、三枚、次々とパネルを粉砕し――最後の一枚!

 

 

 一枚のパネルを隔て、目と鼻の先にいる彼女。

 だが、そのパネルさえ亀裂が入りパリンと砕けて散った。

 

「――!」

 

「……終わりだ」

 

 態勢を変えた私は右腕からビームサーベルを出しそして、クロヒナタの胸を深々と貫く。

 

 

 ――――

 

 ビームサーベルに貫かれたクロヒナタ。

 彼女の身体は力を失い、そのまま全身が光の粒子へと変換されて消滅した。

 あまりにも呆気のない最後。結局あれは何なのかは分からないままだ。

 

 ――これで良かったのか。本当は、救うべきだったんじゃないのか――

 

 私は彼女を、この手で消してしまった。世界を守るためとは言ってもそれに変わりはない。

 感じるのはその罪悪感と、加えて微妙な違和感。

 

 ――ただ、倒した時の手ごたえが、まるで無かった。上手く言えないが、とにかく奇妙な感じだ――

 

 だが先ほどバラバラになった周囲のパネルも、クロヒナタの消失とともに元の状態へと戻り、再び円形の広場の一部を構成する。

 やはりあれで終わりなのか。

 

 

 

 いや、黒幕は倒しても、まだミラーミッションの異常は収まっていない。

 早く修正プログラムで元の状態に戻す必要がある。それに……。

 

 ――本物のヒナタは無事か――

 

 広場の離れた場所には、依然気を失ったヒナタが倒れたままだ。私は彼女の元へと急ぐ。

 先ほどの戦いのせいで身体は満身創痍。それでもヒナタのもとに駆け付けると、倒れた身体を抱き起す。

 

 ――だが、何故彼女は気を失って、ここにいる。

 一般のダイバーでは入れはしないはずだ。あのクロヒナタが、連れて来たのか―――

 

 気にはなるが、けど今はまずどうにかヒナタを起こせるか試さなければ。私は彼女に呼び掛けてみる。

 

「大丈夫か、ヒナタ。返事を――」

 

 

 

 瞬間の出来事、私は言葉を言い終えないうちに急激に身体の力を失った。

 加えて、腹部から焼けるような激痛が全身に走る。

 

「……ヒナ……タ」

 

 目を落とすと、意識を失っていたはずのヒナタの手にもビームハンドガンが握られていた。

 まさか、そんな。

 

 

 今度は私が床に倒れる。

 朧げになる意識で上を仰ぐ中、ヒナタはゆらりと立ち上がり、私を見下ろして嗤った。

 彼女の表情と……雰囲気。

 

 

 それは決して、ヒナタなどではなく――

 

 

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