【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
マーズフォーガンダムが剣を引き抜くと、力なくラブファントムは煙を上げて墜落して……そして爆発したのが見えた。
これで上級ダイバーのコピーガンプラは一機撃墜した。
――いや。
瞬間、近くで大出力のエネルギーが地上に放たれた。
それはセラヴィーガンダムシェヘラザードの必殺技、合体したプトレマイオスアームズを両手で構え、艦首のトレミーキャノンから放たれる最大出力の砲撃――『アルフ・ライラ・ワ・ライラ』の一撃だ。
その一撃は地上の樹林をなぎ倒し、消滅させてゆく。
半球に広がるエネルギーの渦、そこに一つの影が巻き込まれて行くのが見えた。それはパルと戦っていたはずのジーエンアルトロン。機体の姿はエネルギーに掻き消え、消滅した。
――まさか戦っていたパルもろとも消し飛ばしたのか――
もしかすると一緒にあの攻撃に巻き込まれて……。そう思っていた時、エネルギーに巻き込まれつつある樹海から超高速機動で飛び立ち、シェヘラザードに迫るエクスヴァルキランダ―が見えた。
これに再びプトレマイオスアームズを分離、今度は四肢の先に取り付け『イフリートモード』になるシェヘラザード。トランザムを起動させて高速で迎え迫り、その両腕のGNクロ―で斬撃を繰り出す。けれど同じくGN粒子を纏い残像を残しながら高速機動するエクスヴァルキランダ―には一つも命中しない。
まるでシェヘラザード同様トランザムのような動き、それはパルの……
〈僕のガントランザムシステム、付いて来れますか〉
パルのガンプラ、エクスヴァルキランダ―に搭載された独自のトランザム、ガントランザムシステムだ。
その瞳はガンダムOOのイノベイターのように虹色に輝き、表情も強気に引き締まっている。
〈本物の兄さんなら、シェヘラザードならまだしも、コピーに負けたなんて……笑われてしまいますから!〉
エクスヴァルキランダ―はGNガンブレードを両手に握り、トランザムの最速スピードで次々と斬撃を繰り出す。
同じトランザム同士ではあるが、まだエクスヴァルキランダ―の方が幾らか速い。
〈このまま一気に終わらせます!〉
切り裂かれボロボロになるシェヘラザード。けれど次の瞬間、ついに動きを捉えた相手は手に構えるトレミーキャノンの砲門を向ける。
――けれどそれより先に、エクスヴァルキランダ―はGNランチャーデバイスを構えていた。
〈……さよなら〉
ランチャーデバイスから放たれた拡散ビームはシェヘラザードのコピーに幾つもの穴を開ける。穴から火を噴き、コピーはその炎に包まれて消えた。
「よくやったな、パル」
〈はい! これで少しは楽になりましたね〉
けれどパルがそう言った矢先、今度はガンダムGP‐羅刹天、そのコピーが二本の大剣を連結させた――GNオーガツインソードを振り回して迫る。
〈……すみません、まだ手は離せないみたいです!〉
倒したのは良かったけれど、まだコピーガンプラは残っている。
そして……俺にも。
今度は俺のマーズフォーガンダムに二筋のビームが襲う。
それを回避し方向を確認すると、ツインドライブによるGN粒子と、光の翼を輝かせて迫る影が見えた。
コピーされた、黒いダブルオースカイメビウス。それがついに……俺の前に立ち塞がった。
――リクのガンプラ。俺にとっては因縁の対決か――
イヴを失ったことで、リクにはかつて複雑な思いを抱いていた。
――けれど、今はもう関係ない。あれはただのコピー。GBNとメイを……そしてヒナタを救うために俺は、立ち向かうだけだ――
ダブルオースカイメビウスはウィングのメビウスビームキャノンから次々とビームを放ち迫って、そして瞬時にビームサーベルを抜き斬撃を繰り出す。
――重い攻撃だ――
突進の勢いを乗せた斬撃、マーズフォーじゃスラッシュブレイドで受け止める。けれど一撃を放った瞬間にコピーは離脱し、今度はビームライフルに持ち替えて射撃を放つ。
そのビームを避け、ブレイドの刃先で跳ね返す中、今度はその間にフェイクνガンダムがビームサーベルを構えて迫る。
「邪魔をするな!」
俺は即座に反応して、縦一文字に切り捨てる。
左右に真っ二つにされるフェイクνガンダム。けれどその裂け目から現れる……ダブルオースカイメビウス。
フェイクνガンダムの残骸を弾き、赤く輝くツインアイの頭部を間近で覗かせる。
そして手に握るのは、ビームサーベルのグリップ。
――!!――
さっきみたいに防ぐ暇もなくバーニアを全開で
噴かせて距離を離す。
けれどそれを待っていたかのように、ダブルオースカイメビウスのコピーは再び持ち替えた二丁のライフルを向け、さらにはウィングバインダーに備えたビームキャノンの砲口も俺に……そして。
一斉に放たれたビーム射撃――ハイマットフルバースト。
俺のガンダムはその射撃を受けた。……けれど。
――ここは、アースリィガンダムの出番だ――
その直前、コアガンダムはマーズアーマーからアースアーマーにコアチェンジ、アースリィガンダムに姿を変えた。
その大型のシールドで、ハイマットフルバーストの攻撃を防いだ。続けてビームライフルを構えてエネルギーを充填、一撃を放つ。
あの最大攻撃の直後だ。ビームは隙が生じたダブルオースカイメビウスの左翼を粉砕する。
バインダーのビームキャノンごと、おかげで攻撃能力と機動性の一部を削いだ。
――とどめを一気に刺させてもらう――
今度は俺の番だ。
ビームサーベルを抜き、アースリィガンダムはコピーに肉薄しようと。……けれど、その真横から。
――!!――
すぐ横に迫った、巨大なビームの剣を握る影。
それはダブルオースカイメビウスではない。――ガンダムTRYAGEマグナムのトライスラッシュブレイド、今度はチャンピオンのコピーガンプラが襲い掛かる。
振り下ろされる大剣――防げるか。そう考え行動に移ろうとした瞬間。
〈お前の相手は俺だぜ!〉
TRYAGEマグナムの真横から勢いよく突進して来るガンプラ、カザミのガンダムイージスナイトが現れる。
「ありがとう、カザミ」
〈こっちはこっちで戦っていたんだけどさ、いきなりヒロトの方へと向かって行きやがったんだ。
……全く、俺を無視するなっての!〉
ショットランサーでTRYAGEマグナムを押すイージスナイト。
〈けどさ、俺もどうにかコピーガンプラを一機倒したんだぜ。
キャプテンジオンのνジオンガンダム……そのコピーをさ。自分の憧れをあんな形で倒すなんて、複雑だけれどな〉
トライスラッシュブレイドに込められた力は強く、すぐにイージスナイトが逆に押される。
俺も俺で今度は、現れたアルスコアガンダムを二機、相手にして戦っていた。
〈やっぱそれなりに強いな。……けれど!〉
イージスナイトの足の先端からビームの刃を放出し、回し蹴りを繰り出す。
本来はMA形態で使う武装。この奇襲にTRYAGEマグナムは距離を離す。
〈本物のチャンピオンなら、これぐらいの技なんかじゃビクともしないぜ〉
丁度同じタイミング、俺もアルスコアガンダムを撃破した。
けれどまた同時に、さっきダメージを与えたダブルオースカイメビウスがビームを放ちながら接近する。
幾筋も襲って来る光線、だけど俺が防ぐこともなく。
「なぁカザミ、頼めるか!」
〈おうよ!〉
アースリィとイージスナイト、互いの位置を交替して戦う相手を替えた。
イージスナイトはその大型のシールドでものともせずに防ぎきりそのままダブルオースカイメビウスへと、ショットランサーを構えて突撃を繰り出す。
〈だああぁっ!〉
ショットランサーは相手の右肩に突き刺さり一気に押し飛ばした。ダブルオースカイメビウスは勢いのまま下に落下して、地上に墜落した。
〈これで倒せれば良いけれどな……って!〉
直後、イージスナイトの周囲に大型のフィンファンネルが取り囲みビームを放つ。
カザミはシールドでビームを防ぐけれど、同時に至近距離から大剣――ジオニックソードが襲う。
とっさに右に跳躍して剣筋を避けるけれど。
〈まさか、まだ動けたなんてな……νジオンガンダム〉
襲ったのはさっきカザミが倒したと言っていた、νジオンガンダムのコピーだった。
全身が半壊してボロボロであったけれど、まだ戦闘能力は残っていたんだ。
カザミは再び、νジオンガンダムと戦う。
一方で俺はTRYAGEマグナムへと。相手はトライスラッシュブレイドを収めて後方へと、ロングバレル化されたトライドッズライフルを構える。
更に両肩のファンネルも展開して俺に向かいビームを放つ。……けれど。
――ああ。確かにこのコピーも、チャンピオン……クジョウ・キョウヤさんとは違う。
いくらガンプラや、戦い方を真似たって――
アースリィガンダムはドッズライフル、ファンネルのビーム射撃を回避して迫る。
けれどそれを妨害して阻むファンネル。俺はそれを数機ビームライフルで撃ち抜き、そして本体を狙うが今度は――
〈ヒロトさん、危ないです!〉
急に現れたパルのエクスヴァルキランダ―。それと同時に空間を切り裂く太い二本のエネルギーが、俺たちに迫った。
腕のGNガンシールドカスタムでそれを防ぐエクスヴァルキランダ―の姿、続けてオーガソードを握るGP‐羅刹天まで。
先ほどエネルギーを放ったのは羅刹天のビームバズーカ、加えて今度は近接戦を仕掛けて来た。
――羅刹天とそして、TRYAGEマグナムまで――
奇襲に乗じてガンダムTRYAGEマグナムまでもトライスラッシュブレイドを再度構える。
二機同時で迫るけれど、こっちだってパルと一緒だ。
〈先に僕に任せて下さい! ヒロトさんは――〉
パルからのある提案に俺は頷く。
「分かった。ならパルに任せる!」
これにふっと微笑むパル、そして……。
〈まずは二機とも、僕とモルジアーナが!〉
エクスヴァルキランダ―は合体武器、GNメガフレアーデバイスを構えて、灼熱の炎をTRYAGEマグナム、羅刹天にまき散らす。
炎に阻まれて二機のコピーは攻撃を中断して怯む。
――この好機を逃さない――
右手にビームライフルを、左手にはビームサーベルを握る俺のアースリィガンダム。
そして……羅刹天に強力なビームの一撃を胸に叩きつけ、同時にビームサーベルによる斬撃をTRYAGEマグナムへと放つ。
撃墜とまでは行かなかったけれどどちらとも直撃を受け、俺たちから距離を離すコピー二機。
ここにカザミのイージスナイトも俺たちの元に辿り着いた。
〈手間取っちまったが、俺もどうにかコピーを退けた所だ〉
〈良かったです。僕とヒロトさんと、カザミさん、三人揃いましたね〉
パルの言う通り俺たちは三人とも揃った。
「ああ。コピーの数もいくらか減った。みんなのコピーガンプラだって半分は倒した。
今なら行けるかもしれない」
〈あそこを突破出来るかもしれませんね。けれど……〉
俺はこの鋼鉄樹海の出口を見据えた。
空間の奥にある小さな穴、けれど今は何隻ものエルドラ戦艦のコピー艦隊がそこに移動して、防衛線を築いていた。
その周囲には多数のアルスコアガンダムと、アーマーを纏ったそのコピーまで。
「ここも突破するのは大変だろうな。
だけど、俺は」
〈止まるわけにはいかない、だろ? 俺とパルも同じだぜ〉
そう言ってカザミのイージスナイトは武器を構える。同じくエクスヴァルキランダ―も。
〈今こそ、全力で打ち破るしかありません。――行きましょう!〉
俺たち三人のガンプラは強固な防衛線へと突き進む。
〈ヒロト! ここは俺とパルに任せてくれ。
最後に何が待っているか分からない、だからそっちはエネルギーを残して置かないといけない!〉
〈そうです。代わりに……僕達二人の力でっ!〉
迫る防衛線、エクスヴァルキランダ―は自身の装備、GNガンシールドカスタム、GNガンブレード、GNグリップダガーを合体させる。
合体させて形成したのは大型の弩砲――GNエクスバリスター。
エクスヴァルキランダ―、その胸部のエネルギーをグリップダガーに集中して生み出した純粋なエネルギーの矢。その一撃を、防衛線の中央に放った!
放たれた矢は立ち塞がるアルスコアガンダムのコピーをなぎ倒し、中央のエルドラ戦艦を貫く。
戦艦からは爆発が起こり、あちこちから火を噴く。……けれど完全に撃沈は出来なかった。
〈トドメは俺の番だぜ! この俺、ジャスティス・カザミの力を見ろ!〉
イージスナイトはイージスシールドにサイドスカートのパーツを繋ぐ。そしてメインの武装であるショットランサーの基部に合体させ、構えた。
その時、頭部と胸部の装甲が展開しキングモードに移行する。キングモードになったイージスナイトは合体武器――ケラウノス ハイパービームソードを横に構えて、巨大なビームソードの刃先を形成する。
もうすぐそこにまで間近に来た防衛線、エルドラ艦隊に向けて……横一文字に切り払う!
左右の広範囲のコピーガンプラを消し飛ばし、エルドラ戦艦にも大損害を与える。そして直接中央で出口を塞いでいた、GNエクスバリスターで大ダメージを受けていたエルドラ戦艦には止めになる。
さっきよりも遥かに大きな爆発が中枢で起こり、そこから真っ二つに折れて炎に包まれながら墜落して行くエルドラ戦艦。
戦艦で覆われて見えなくなっていた出口も、おかげでまた見ることが出来た。
「今ならあそこから出れるはずだ」
〈おうよ! さすが俺たち、見事に決まったぜ!〉
〈後はここを抜けさえすれば〉
空間の出口はもう目の前。俺たちのガンプラ三機は出口に入ろうとした、その時。
〈〈!!〉〉
直前になって俺たちの後方両側から現れた四機のコピー。νジオンガンダムとGP‐羅刹天、ガンダムTRYAGEマグナムにそして、ダブルオースカイメビウス。
同時に襲撃をかける四機のコピーに俺が反応する、それよりも前に。
〈させるものかよ!〉
カザミのイージスナイトとパルのエクスヴァルキランダ―はコピーガンプラ四機に向かって行って、その相手をした。
〈こんな事になってすみません。けどここは僕達に任せて、ヒロトさんは先に行ってください〉
「……っ!」
シドーさんに続いて、今度はカザミとパルまで置いて行くのか。
俺が躊躇っていると次はカザミが声を荒立てて。
〈とっとと行けって言うのが聞こえないのか!
こっちは今手が離せなくなったんだから、ここは一足先にヒロトが行くしかないだろ。
アルスコアガンダムのコピーまで迫って来てるんだ、モタモタしている暇はないぜ〉
カザミの言う通り、それぞれ二機のコピーを相手にして戦うカザミとパル、あの状態では背を向けてこっちに来る余裕もない。
行けるのは、俺一人だけ。
「分かった。俺は先に、みんなの分まで……」
俺の言葉にカザミは笑みをこぼす。
〈ああ! 宜しく頼んだぜ〉
〈お願いします、ヒロトさん。僕達も後に追いつくように……しますから〉
カザミも、パルもそう言ってくれる。
この思いに応えるためにも、俺は先へと進むしかない。
――――
狭い洞窟の中を、アースリィガンダムはたった一機で飛ぶ。
あれから敵のコピーは追って来ない。それどころか、一機たりとも姿だってない。
敵は存在しないけれど、もう俺の味方だっていないんだ。シドーさんにパル、カザミも。今はもう俺一人だ。
――みんな、追って来てくれるかな――
分からない。けれど、こうなったら例え俺一人でも、やるしかない。
みんなの分までGBNを救う、メイも助け出す。
――そしてヒナタだって。今はどうしているか分からない本物のヒナタと、あの黒いヒナタも――
こんな事を起こしたクロヒナタ。
その正体もはっきりと分かっていない。けれど彼女だって、きっと思い苦しんでいるんだと。
俺はそう思ってならなかったんだ。
――全て救いたい。
もし俺に、出来ることなら――
いや、どうしてもやらないといけない。
残して行ったみんなの想いと、それに俺自身の想いと……責任のためにも。