【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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 決戦 ―ヒロト対クロヒナタ―(Side ヒロト)

 ――――

 

 燃え上がる黒炎の中、二機のアースリィガンダムは戦う。

 

〈ふふふふ……っ〉

 

 黒いアースリィガンダムが放つ、赤いビームサーベルの軌跡が闇を裂く。

 幾筋もの剣筋、俺のアースリィガンダムは相手の斬撃を受け止める。

 

 ――くっ、一向にダメージを与えられない。それに――

 

 今度は俺が反撃する番だ。同じくビームサーベルによる斬撃を繰り出すけれど、攻撃は全て防がれる。

 まるで、俺の動きを知っているかのように。

 

「やはり俺のコピー、手ごわい」

 

〈確かにクガ・ヒロト、貴方はガンプラバトルの腕は良いわ。

 だからこそ同じコピーを相手を簡単に倒せるわけがないわよねぇ〉

 

 確かに、少なくとも近接戦闘に関しては俺の戦い方とそっくりだ。

 

〈GTubeで得た戦いのデータ、それはガンプラの自動操縦ではなく――ワタシ自身が取り込んでいる。

 データをトレースして、お人形を操縦して戦う。貴方との決着はワタシの手でつけてあげるって事よ〉

 

 黒いアースリィガンダムの繰り出す、数撃もの斬撃。俺はこの攻勢に数歩ずつ探しながら回避し、同じくビームサーベルで防ぐ。

 

 ――あのアースリィはヒナタが……いや、クロヒナタが操縦しているのか――

 

 俺とヒナタ、こんな形でガンプラバトルをする事になるなんて思わなかった。

 それもGBNの命運を賭けた戦いだ。俺は複雑な思いで一杯だった。

 

 

 

 ――なら、射撃はどうだ――

 

 どこまでコピーが出来るか試したい。

 俺のアースリィガンダムは飛び退いて距離を離し、ビームライフルを構えて放つ。

 けれど黒いアースリィも同じタイミングで撃ち返す。

 放たれた二筋のビーム、それは俺たちの丁度真ん中で衝突し……打ち合って相殺される。

 

〈残念だわね、これくらいで勝てると思ったの?〉

 

「この攻撃までも同時にか」

 

 この一撃を契機に、今度は射撃戦を繰り広げる俺とクロヒナタ。

 同じビームライフルで撃ち合う俺たち。けれど、これでさえどちらも決定打を与えられない。

 

 ――やっぱり手の内は分かっているのか。俺の行動とほぼ同じように動いて、予測までされて防がれる。

 自分のコピーだ、俺も動きが分かって対処はしているけれど、この勝負は時間がかかりそうだ。

 

 ――コピーに負ける気はしない。けれど少しでも早く決着をつけたい。

 例えコピーでも俺の戦い方に……どこまでついて行ける――

 

 

 

 俺のガンプラの『プラネッツシステム』

 コアガンダム、コアガンダムⅡをベースに太陽系の惑星の名を冠したアーマーを身に着け、様々な戦局に対応する……俺とイヴが生み出したシステム。

 

 ――その全てを完璧に真似るなんて。いくらコピーしたと言っても、どうだ?――

 

 アースアーマーだけでは長引くだけだ。ここは……。

 

「コアチェンジ! アース――」

 

〈――アース、トゥ……マーズ。ふふっ〉

 

 俺のコアガンダムⅡはアースアーマーを外し、代わりにマーズアーマーを装着してマーズフォーガンダムに変わる。

 けれど、クロヒナタのコアガンダムも同時にコアチェンジを行い、俺と同じマーズフォーガンダムへと姿を変えた。そう……黒いマーズフォーガンダムへと。

 それに今度は、先に攻撃したのは彼女の方だった。

 マーズフォーガンダムの専用武器であり、大型の実体剣であるスラッシュブレイドを、ブンと大きく振りかぶる。

 俺は同じ武器で攻撃を弾き、そして二本目のスラッシュブレイドを抜いて突撃を繰り出す。

 真っすぐ突き出される剣先。けど、黒いマーズフォーガンダムは攻撃を避ける。

 

〈プラネッツシステム、使うと思ったわ〉

 

 クロヒナタの言葉に俺は当たり前だと答える。

 

「これを使わなければ勝てる相手ではないだろ。 俺のプラネッツシステム、その全てを真似出来るものなら、やってみればいい」

 

 俺の、俺とイヴのプラネッツシステム。一緒に頑張って作った思い入れのあるものだ。

 だから自信はあった、コピーなんかには負けないと言う自信が。

 

 

 今度は黒いマーズフォーもスラッシュブレイドを二振り構えて俺を襲う。

 実体剣と実体剣が衝突する、鈍い感覚と重さのある剣戟。

 互いに双剣で戦い、さっきのアースリィ同士の近接戦よりも激しい剣戟が巻き起こる。

 

 ――けれどマーズフォーの戦いも、こうして同じ戦い方だ。これだとさっきと何も変わらない――

 

 これもまた互角。

 けれど俺の考えを見透かすように、クロヒナタはニヤリと嗤った。

 

〈……生憎だけど、クガ・ヒロトの戦い方は特にGTubeで調べてデータを取っているのよ。

 プラネッツシステムによる全アーマーの戦闘スタイル、その全てを〉

 

 ――くっ――

 

 一瞬動揺した。

 クロヒナタはそれを逃さず、俺に向かってスラッシュブレイドを振り下ろす。

 間一髪、俺のマーズフォーは避けた。代わりに斬撃は燃え広がっている黒い炎を裂き、鳥居を粉砕して瓦礫と化した。    

 

〈あら、動揺したのかしら? 貴方ご自慢のプラネッツシステムまで、こうして真似されて……ね〉

 

 続けて黒いマーズフォーはステップを踏み、即座に横薙ぎを繰り出す。

 俺のマーズフォーは跳躍してその攻撃も避けて、今度は俺が宙の上からスラッシュブレイドを振り下ろした。高所からの一撃、クロヒナタはそれを剣の刃先で防ぐ。

 スラッシュブレイド同士つばぜり合いに持ち込まれる。下手に距離を離したり、攻撃に切り替えるような別の行動は出来ない。……同じ実力だ、つばぜり合ったまま拮抗するしかない。

 そのままの状態で、クロヒナタは憎悪を燃やした瞳で俺を見る。

 

〈ここだけの話、こうしてコピーしているけれど……クガ・ヒロトのガンプラも『プラネッツシステム』にも、憎しみしかないのよ。

 姿を見るのも嫌な程に、ねぇ〉

 

「俺のガンプラまでもか」

 

 俺の問いに黒いアースリィのスラッシュブレイドに込める力は、数段強くなる。

 

〈当たり前じゃないの! 『私』を置いて平気な顔であのELダイバー……木偶人形とお楽しみだったのでしょう。貴方のガンダムもプラネッツシステムはその産物――何もかも虫唾が走るわ!

 魂もない木偶と仲良しこよし、それが何よりも大切な思い出ですって? アハハハハハッ! あまりに下らな過ぎて、滑稽なのよっ!!〉

 

 

「……っ!」

 

 イヴを、彼女の思い出までも直接侮辱されて俺は無意識に拳を握る。

 俺に沸き怒るクロヒナタへの怒りと憎しみの感情。けれど、彼女は同じ感情をずっと俺に、それももっと強い怒りと憎悪を抱いているのは分かるんだ。

 侮辱しながら、クロヒナタが放つ負の感情と、俺を激しく責め立てるかのような瞳。

 

 ――そんな彼女に俺は怒っていいのか――

 

 出来なかった。

 それどころか、俺はどんな感情を持てばいいのかさえ分からないでいた。

 

 ――けれど――

 

 力を込めたのが幸いした。マーズフォーはスラッシュブレイドの刃先をほんの少し角度を変えて、勢いを別方向に逃がしていなした。

 攻撃の威力が逸れた隙に、俺は右横に跳躍して離れた。

 態勢を整え、黒いマーズフォーを視線の先に見据える。

 

 ――後回しにするしかない。今は彼女を止める、全てはそれからだ――

 

 そう自分に言い聞かせるけれど、俺の胸には行き所のない感情の塊が渦巻いて、苦しいんだ。

 でも俺は耐えるしかない。

 

 

 

 俺が攻撃を避け、クロヒナタのマーズフォーは剣を振った姿勢で固まっている。

 かと思うと、首だけをぐるりと回し、気味悪く傾けた頭部で俺を見つめ返す。

 鈍い輝きを放つ、黒いマーズフォーの赤いツインアイ。

 

〈よくもやったわねぇ。でもそう来なくては、楽しみ甲斐はないわ〉

 

 不敵な、凶悪な笑みを浮かべてクロヒナタは続ける。

 

〈予告してあげるわ。貴方とイヴが丹精込めて作った、下らないシステムとガンプラ……下らない思い出!  

 それを今から滅茶苦茶に踏みにじってあげるわよ! たかがコピーで本物に敗北を味わせると言う、最も尊厳を傷つける手段で!〉

 

 彼女の憎しみは留まる所を知らない。

 GBN運営の指令室で初めてクロヒナタに会った時も、彼女は俺の一番のトラウマを再現して見せつけた。心底それも愉しむように。

 道中での悪趣味な趣向に仲間と孤立させた事、そして今も。

 クロヒナタは余程俺を苦しめたくて堪らないんだ。それ程までに、激しく憎んでいる。

 

 

 

 けど、だからと言って負けられない。……負けるわけにはいかないんだ。

 

「まだ負けていない! ただ真似するだけで、お前は俺に勝てないはずだ」

 

 俺は再びのコアチェンジ、今度はマーズアーマーからヴィーナスアーマーへと装着し直し、ヴィートル―ガンダムへと変わる。

 

 

 同時に、俺はハンドミサイルを即座に放つ。

 しかしクロヒナタも同じようにヴィートルーガンダムへとコアチェンジさせミサイルを撃ち落とす。

 ここまで来たらもう驚かない。それに……。

 

 ――そうだ。例えどれだけコピーしても、コピーはコピーでしかない。

 真似て、俺と俺のガンプラの実力に等しい物を持っていても、決して本物を上回れない――

 

 コピーと言うのは相手の性能に近づき、最終的には全く同じ性能、力を持つものだ。

 究極的にはオリジナルと全く同じ性能を持つ。確かに手ごわい、けれど、だからこそ『そこまで』だ。いくら多くのデータを使ってオリジナルと全く同じ能力を手にしても、その先はない。本物以上にはなれはしない。

 言うなれば、パラドックス……だろうか。コピーだからこそ本物には勝てるわけがないんだ。

 

 

「だから負けない。必ず俺が……倒す!」

 

〈なら、やってみなさいよぉ!!〉

 

 得意げにクロヒナタが叫んだ瞬間、黒いヴィートルーガンダムは全てのミサイルハッチを展開して構える。

 

 ――まさかここで全弾発射をかます気なのか!?――

 

 確かにこの空間は二機戦うには十分な広さだ。けれどヴィートルーガンダムの全弾発射、その火力を受け止めるほどの規模であるか、自信がない。

 俺も同じ火力で返せば、周囲はただでは済まない。ここは洞窟の内部だ。下手をすれば爆発の威力で崩落するかもしれない。

 

 ――けど回避なんて出来ない。同じ火力で返さなければ確実に俺がやられる――

 

 危険はある。それでもやるしかない。

 俺のヴィートルーガンダムガンダムも全身のミサイルハッチを開き、全弾発射で応える。

 空間を飛び交う無数のミサイル。俺は衝撃に備えて身構える、その次の瞬間。

 

 

 空間の中央で轟音とともに炎の華を煌めかせる、数え切れないくらいの閃光。

 そして……激しい衝撃。

 空間全体が揺れてひび割れ、上から瓦礫が崩れる。爆発は鳥居も炎も、そして神社までも、この空間にある全てを吹き飛ばす。

 その勢いは俺の方にまで届いて、影響を受けないように踏ん張る。

 

 ――多数のミサイル同士がぶつかり合って爆発する衝撃、やはりかなりのものだ。

 空間は耐えられるか――

 

 今にも洞窟が崩れそうだと心配になる。それに巻き起こる爆煙と閃光で相手の姿は見えない。

 

 ――やったか――

 

 俺はそう思った。けれどすぐに考え直す。

 

 ――いや駄目だ。もし何かあったら一緒にいる本物のヒナタが――

 

 今クロヒナタは、ヒナタのダイバー体に憑りついている。

 頼むから無事でいてくれ――。俺は強く願った。

 瞬間、爆煙を切り裂きビームが飛来する。

 俺のヴィートルーガンダムに向かって来た攻撃、すぐさまに避ける。

 

〈ヴィートルーガンダムの火力は凄いわねぇ。

 その二機分の火力がぶつかり合ったのよ。もしかするとここも崩れてしまうんじゃないかって、そうも思ってしまったわ〉

 

 煙が薄らいで見えるシルエット。

 それは俺と同じヴィートルーガンダムの姿。やはり無事だったんだ。

 

〈最も、この空間を創り出したのはワタシなの。

 ちゃんとその威力でも耐えられることくらい、想定していて当然と思わない?〉

 

「確かにそうかもしれない」

 

 つい、俺は表情を和らいでしまった。

 

「でも、良かった」

 

〈何がかしら?〉

 

「君が……ヒナタが無事でいてくれた事だ。

 俺にとってヒナタは――」

 

 

 

 けど俺が言葉を言い終えるまで待ってはくれなかった。

 まるで言葉そのものを遮るように、クロヒナタのヴィートルーはバーニアの最大出力で急接近すると同時にビームサーベルを振り下ろした。

 

〈――言わせなんてしないわ、それ以上〉

 

 あまりに突然だけど、俺自身の動きだ。すぐに避けてミサイルポッドで反撃する。

 放たれたミサイル、それはいとも容易くクロヒナタはビームサーベルで切り払われる。

 

〈この程度でワタシに意見するなんて、甘いわね〉

 

「俺の言葉を聞いてくれないのか。……仕方ない」

 

 さっきの攻撃なんて防がれると分かっていた。けれど、俺が本当に狙っていたのは。

 今度こそビームサーベルの切っ先を俺のガンプラに向けようとする、黒いヴィートルーガンダム。

 ――その前に、上からいくつもの瓦礫が相手に降り注ぐ。

 

〈……これはっ!〉

 

 クロヒナタは攻撃を中断して下がる。降り注ぐ瓦礫から逃れるために、距離を離したんだ。

 

 ――天井がさっきの衝撃で脆くなっていた。だからミサイルを一発だけ狙って放って崩した、これで少しは――

 

 見ると瓦礫が一部当たり、黒いヴィートルの右肩と左脚部のアーマーにほんの微かなへこみが見えた。

 

 ――やっぱりコピーだ。少しずつだけど戦いにも慣れてきた。ようやくダメージも入りもした、やはり勝つのは俺だ――

 

 

 

 このまま行けばきっと勝てる。あのコピーを戦闘不能にしてクロヒナタに異常を止めさせる、そしてヒナタを開放させるんだ。

 

〈あらら、かすり傷がついてしまったわ〉

 

 互いの間には距離が出来た。そしてクロヒナタはまだ余裕がある態度。

 

〈やっぱり同じ能力を手にしても勝てるわけではない、と言うことかしら〉

 

「当たり前だ。例え能力をコピーしても、本物の俺と俺のガンプラはその先に行ける。

 手強いかもしれない。けれどそんなの、乗り越えればいいだけだ」

 

〈へぇ〉  

 

 クロヒナタの嫌味のあるニヤニヤとした表情。ヒナタと同じ顔をしても、その態度は気に入らなかった。

 

〈成程ね。それはそれは、良かったじゃない。

 ……せいぜい今のうちに優越感に浸っていなさいな〉

 

 

 

 ――あの態度、まだ何か隠しているのか――

 

 クロヒナタには何か手を隠し持っている。それは俺には分からない、正直不安も覚えた。

 

〈……それにしても、ここ、随分ボロボロになってしまったわね。

 せっかくワタシが作った空間なのに、勿体ない事をしちゃった〉

 

 彼女の言葉通り、あの全弾発射の衝撃で鳥居も神社も砕け飛び、あるのは瓦礫だけだ。

 

〈ここでこれ以上戦うのもアレだわねぇ……くくっ〉

 

「何が言いたい」

 

 俺の言葉の答えなのか、黒いヴィートルーガンダムはさらに後退して奥に空いている穴の前に立つ。

 

〈場所を変えましょう、と言うことよ。

 最も貴方には選択肢なんてないけれど。ワタシを止めるつもりなら――追って来るしかないわ〉

 

 そう言い残すとクロヒナタのヴィートルーは穴の内部へと入って消える。

 

 ――場所を変える、か。クロヒナタは何を――

 

 けれど彼女の言う通り選択肢なんてない。

 

 ――追うしかないのか――

 

 俺のヴィートルーガンダムも彼女の後を追うために、先ほど入った穴の中へと突入する。

 

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