【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

54 / 85
 いよいよ最終章。
 今回もAi Kisaragiさんから頂いた表紙。ヒナタとクロヒナタのツーショットでのイラストですね。
 決着は……果たして。


【挿絵表示】



最終章 ――想い、その向かう先は――
【最終章 表紙付き】それでも俺は諦めない!(Side ヒロト)


 ――――

 

 人間になると、そうクロヒナタは言った。

 その言葉の真意は俺に分からなかった。

 

「俺になる、だって? 一体どう言う意味だ」

 

〈どう言う意味って、そのままの意味よ。

 ワタシがクガ・ヒロトと言う人間になる……まさに、そのままね〉

 

 そんな事なんて出来るわけがない――。俺になるだなんて、訳が分からない。

 すると……クロヒナタは淡々と続ける。

 

〈プログラムさえあれば、ヒトの感覚をGBN内にフィードバック出来るように……その逆の事、ヒトの感覚、精神に介入する事が出来るの。

 ――私はそのプログラムを作ったのよ。ミラーミッションを掌握、一エリアの膨大な演算処理能力を動員して……そこまでしてようやく、ね〉

 

 クロヒナタが乗る黒いコアガンダムⅡは、ゆっくりと俺のもとに歩みを進める。

 

〈ワタシが、こうしてムカイ・ヒナタのダイバー体に憑りついているのも、プログラムの権能によるもの。

 ……けれど、本当の能力はただ憑りつくだけだなんて、中途半端なものではない〉

 

 黒いコアガンダムⅡは、もう俺のすぐ目の前にいた。

 俺と、クロヒナタが乗る二機のコアガンダムⅡは、まるで鏡合わせのように向かい合う。

 

〈そう、プログラムの真の力は、ダイバーとして存在するヒトの精神体に別の意識をダウンロードする事。

 つまり……ね、ヒトの人格、魂を完全に上書きすることが出来るのよ〉

 

 段々と、俺も分かって来た気がする。

 

「クロヒナタ、君はそれを俺に使うつもりか」

 

 俺の言葉、クロヒナタはまた、にたりと笑みを浮かべた。

 

〈ええ。ワタシの人格でクガ・ヒロトを上書きするの。

 貴方の記憶や経験はそのまま引き継がれ、ワタシはまさに、完璧な貴方になれるのよ。

 そして……〉

 

 クロヒナタの黒いコアガンダムⅡはビームサーベルを抜き、俺のコアガンダムⅡの首筋に刃先を当てる。

 

〈本物の貴方は――消える。

 だってクガ・ヒロト、貴方の心は上書きされるのよ。パソコンでのデータだって上書きすれば元のデータなんて跡形も残らない。

 人間の言葉で言うなら……いいえ、止めておくわ。言わぬが花、って事よ〉

 

 彼女の雰囲気には慈悲なんてない。それどころか、残酷な笑みで喜々としていた。

 

〈でも、当然の末路じゃない。

 貴方はかつて世界の何もかも、どうでもいいって、価値なんてないとも思ってたのでしょう。

 もちろん……ムカイ・ヒナタの事も。

 だからワタシも、貴方がどうなろうと『どうでもいい』。そしてどうでもいいと思っていた世界からも、弾かれて消えると言うわけ。

 ……本当に、お似合いの最後よ〉

 

 そして黒いコアガンダムⅡはいきなりビームサーベルを俺に振り下ろす。

 とっさに攻撃を受け止める。それしかない。

 

〈どう、自分が消えてしまうと分かって怖いでしょう?

 だからあと少しだけ……抵抗する事を許してあげるわ。何しろ自分の命が懸かっているのですもの、必死に足掻いてみなさいな!〉

 

 ――俺の、命が――

 

 クロヒナタは俺を抹消して成り代ろうとしている。どの道止めなければならない、彼女はまともじゃない!

 無理かもしれない。けれど最後まで抵抗するしかない。

 絶望的だけど、そうするしか……ないから。

 

 

 

 ――――

 

 何もない広場で、剣と剣で戦う、互いのコアガンダムⅡ。

 

〈さぁ! 手加減はしてあげているのよ。だから頑張ってみなさい!

 でないと……貴方は!〉

 

 黒いコアガンダムⅡが振る深紅に輝くビームサーベルの刃、その軌跡が迫る。

 その攻撃を俺は受け止める。――けれど、それでも俺は攻撃を防ぐだけで一杯……防戦一方だった。

 

 ――同じコピーのはずなのに太刀打ち出来ない。動きの何もかも、俺を上回って――

 

「どうしたら、彼女に勝てる。勝たなければ――」

 

〈勝てるかしらねぇ? ……果たして〉

 

 瞬間、黒いコアガンダムⅡにようやく攻撃する隙が見えた。

 クロヒナタはビームサーベルを大きく横に薙いだ。その攻撃の直後、機体の脇が空いていたんだ。

 

 ――攻撃を大きく振りすぎたな。これなら俺でも、いけるか――

 

 ようやく見えたチャンス、逃しはしない。

 俺は空いた右脇に向かってビームサーベルを薙ぐ。

 あの位置なら一撃で動力を止められる。一撃さえ命中すれば。もうそれに賭けるしかないんだ。

 俺のビームサーベルの剣先は黒いコアガンダムⅡに確実に迫る。あと少し……けれど。

 

〈残念〉

 

 もう少しで届くはずだった。けれど、その瞬間にビームサーベルを握る右腕を、コアガンダムⅡのコピーの左足先が蹴り上げた。

 蹴りを腕にくらって、ビームサーベルを手元から離してしまい、吹き飛ばされる。

 

〈その程度、当たると思って?〉

 

「俺は、俺に出来る事をするだけだ!」

 

 まだ諦めはしない!

 さっきの蹴りで吹き飛ばされたビームサーベル、そのグリップ。逆境に追い込まれても、逆にそれをチャンスにしてみせる。

 俺のコアガンダムⅡは、上に飛ばされたグリップに向かって跳躍した。

 そしてグリップを再び手に取り、刃先を展開、黒いコアガンダムⅡへと振り下ろす。

 上からの強烈な一撃、これなら――。

 

 

 けれどその瞬間、待ち構えていたように黒いコアガンダムⅡはビームライフルの銃口を俺に向けていた。

 そして淡々と、謎々をするかのように、クロヒナタは尋ねる。 

 

〈ねぇ? 何でこんな事になったと思う?

 ……クガ・ヒロトがビルドダイバーズの仲間と出会い、エルドラに行ったせい?〉

 

 同時にビームライフルの一撃が俺に放たれた。

 俺はビームサーベルで弾く。けれど今度はそのタイミングを見計らい、黒いコアガンダムⅡが跳躍、近接戦に切り替えてビームサーベルを構えていた。

 

〈それとも、GBNでイヴと出会ったせい?〉

 

 態勢を変えた途端の斬撃、とっさにビームサーベルを展開して防ぐけれど。

 

「くはっ!」

 

 不意の一撃、その衝撃は本体にも伝わりコックピットは揺れる。続けてその勢いで機体が墜落した衝撃も襲う。

 墜落した俺のガンプラ、それに向かって黒いコアガンダムⅡは再びビームサーベルを展開して近づく。 

 

〈GBNを始めた事? もっと遡ってガンプラに興味を持った事が、いけないのかしら?

 いいえ、否……ノー。どれも違うわ〉

 

 起き上がろうとする俺のコアガンダムⅡに、クロヒナタは刃を振り下ろす。

 けれど攻撃の瞬間、辛うじてビームサーベルで受け止めた。

 

〈本当にムカイ・ヒナタにとって不幸なのは……クガ・ヒロト、貴方が彼女の幼馴染みとして存在している事そのものなのよ!〉

 

 途端、クロヒナタの黒いコアガンダムⅡが込める力が増した。

 

〈きっと最初から貴方は……ムカイ・ヒナタを大して想ってなんていなかった!

 だからガンプラやGBN、ELダイバー、エルドラ、ビルドダイバーズ……他ばかり大切にするのよ。ムカイ・ヒナタはクガ・ヒロトにとって大切なんかじゃないからっ!〉

 

「そんな事は……ない!」

 

〈ははっ! そればかり!〉

 

 クロヒナタは可笑しそうに高笑いを響かせる。

 

〈例え大切とは思っていても、どれくらいかしらねぇ?

 ……一番? くくっ! そんな訳ないわよねぇ? 貴方には彼女よりも大切にしていたものは幾つもあった。

 ねぇ……そうじゃないの!〉

 

 クロヒナタは今……明確な殺意を露わにして放っていた。

 さっきまでは怒りや憎悪によって覆い隠していた、俺への殺意。

 

〈なのに『私』、ムカイ・ヒナタは馬鹿正直に貴方を一番に想っているのよ。

 昔から一緒にいた幼馴染だから、彼女にとって身近で、一番大切な存在だって思っているから。

 『私』がそう一番に想って、尽くしているのですもの、その分……貴方に想われてもいいじゃない!

 誰よりも、そう……一番に!〉

 

 ――瞬間、鍔迫り合っている中、黒いコアガンダムⅡは右膝を突き上げ、強く膝蹴りを胴体に食らわせた

 

〈なのにそうじゃないのよ。クガ・ヒロト!〉

 

「あぐうっ!!」

 

 激しく伝わる衝撃で、俺も内部で身体を強く打ちつける。

 

〈ねぇ? どうして貴方みたいな人間が彼女の傍に、何で貴方なんかがムカイ・ヒナタの幼馴染みなのよ!〉

 

 不意の膝蹴りで態勢が崩れそうになるけれど、どうにか踏ん張る。……けれど今度は、俺の頭部にコアガンダムⅡの拳が迫っていた。

 

〈こうなるならいっそ、貴方なんて存在なんてしなければ良かった! ――間違いなのよ、全て!〉

 

 一撃――。拳の一撃がコアガンダムⅡの頭部に命中した。

 画面がショックでスパークして乱れる。辛うじて見える黒いシルエットは、続けて俺のコアガンダムⅡに拳を握って迫り……。

 

〈クガ・ヒロト! 貴方が初めからいなければ、ムカイ・ヒナタはもっと色んな人と触れ合う事が出来た、もっと色んな事や体験が、世界を広げる事が出来たはずなの!

 だって……とっても良い子だから。そしていつか……大切な人だって。本当の意味でムカイ・ヒナタの事を一番に想ってくれる人と出会えたはずなのに!〉

 

 何度も、何度も、クロヒナタは黒いコアガンダムⅡで、俺のコアガンダムⅡを殴りつける。

 殆どダメージなんて与えられはしない。けれど彼女はまるで行き場のない感情を叩きつけるために、あえてビームサーベルやライフルを使わず素手でじわじわ嬲るつもりだと。……そんな気がした。

 負の感情だけじゃない、様々な鬱屈した感情が込められた拳による絶え間ない連撃。

 俺は殆ど両腕でガードするのが一杯で、ビームサーベルやシールドを構える余裕さえ与えられはしなかった。

 

〈貴方はそんな彼女から、その可能性を奪っただけ! ただ中途半端な優しさで傍に置いて、都合の良い相手として踏みつけにしたの!

 人生を……犠牲にしたのよ〉

 

 クロヒナタは憎悪と殺意も放っているけれど、そう叫ぶ今はそれよりもやるせなさと絶望、強い悲しみが表に出ていた。

 

〈これ以上クガ・ヒロトから奪わせなんて、しない。

 ムカイ・ヒナタ、『私』から……これ以上!〉

 

 コピーガンプラで殴り続けながら彼女は憎しみで責め立てる口調に、悲しみで今にも泣き出しそうな……表情で。

 

 

 そして、今度は腹部に強烈なアッパーをくらった。

 

「ぐう……っ」

 

 俺のコアガンダムⅡはよろめき、数歩後ろに下がる。けれどすぐに黒いコアガンダムⅡは距離を詰め、続けて胴に連撃を叩き込む。

 さっきのように腕で防御も、よろめいて態勢を崩したせいで間に合わない。

 コアガンダムⅡはコピーのラッシュをもろに直撃した。

 

「っ! くはぁ!」

 

 絶え間なくコックピットに届く衝撃、それは乗っている俺にも響く。

 

〈これで決める!〉

 

 瞬間、クロヒナタの黒いコアガンダムⅡは、右足で強いステップを踏んで、勢いをつけて僅かに跳躍する。

 全身を360度コマみたいに回して、勢いに加え回転で更に威力を倍増させた蹴り。それを――俺に目掛けて放った。

 

 

 

「――だはあああっ!」

 

 全身ごと回しての回転蹴り、さっきの膝蹴りよりも桁違いに高い威力。

 強烈な蹴りの一撃を受けたコアガンダムⅡは遠くに、広場の端にまで吹き飛んだ。そしてそのまま、端に生えていた結晶に叩きつけられた。

 そのショックも凄まじく、俺も強くコックピットに全身を打ちつける。

 

「あ……っ、……くう……っ」

 

 後頭部も強く打ち、朦朧とする意識。

 身体全体だって打ちつけて痛いはず、けれど朦朧としているせいで痛みも鈍く感じる。

 

 ――機体を、動かさないと――

 

 何とか身体を起こし、機体を動かそうとするけれど……動かない。

 あの蹴りが内部システムに響いたせいで、一時的にダウンしている。コックピット内の明かりまで消えかかって薄暗い。

 けれど通信とモニターは辛うじて機能している。

 

〈けどワタシなら、ムカイ・ヒナタを愛することが出来る。

 彼女にとって一番大切な人はクガ・ヒロトなのだから。けれど貴方が貴方である限り、想いが報われはしない……ずっとね〉

 

 動けない俺のガンプラにクロヒナタが乗るコピーが迫る。

 そして左手を伸ばし、コアガンダムⅡの頭部を鷲掴みにして無理矢理立たせる。

 

〈――だからこそ、ワタシが代わって『クガ・ヒロト』になるのよ。

 ワタシならムカイ・ヒナタを理解出来る、想いに応えることも、見てあげる事だって。

 ワタシなら…………何よりもムカイ・ヒナタを大切にしてあげられる。貴方などより遥かに――きっと〉

 

 まるで自分が正しいと、クロヒナタは自らの意思を誇示するかのように俺に言う。

 

〈ワタシこそが、ムカイ・ヒナタの大切な人として傍にいるべきよ。

 本当に彼女を大切に想うワタシが、クガ・ヒロトとして! 一番に愛してあげられるの!

 そうすれば……必ず『私』も報われる!〉

 

「それは……っ」

 

 

 

 ふいに、彼女は口元を吊り上げ、いつもの冷酷な笑みを見せる。

 

〈もうこんな事、ワタシは早く終わりにしたいとも思っているのよ。

 だからね、本物のクガ・ヒロトに最後の、償う機会を与えてあげるわ〉

 

 償う、機会――。クロヒナタは続ける。

 

〈ワタシの考えは分かったでしょう?

 貴方に出来る事は、大人しくその身を捧げる事よ。

 そうすれば他のコピーを止めてあげてもいい。GBNだって救われる……ククククッ、自己犠牲なんて何とも『ヒーロー』らしいじゃない?〉

 

「俺が、犠牲になればいいと」

 

 それが俺の償いだと、彼女は言った。

 

〈……クガ・ヒロト、貴方一人の犠牲で全て救われるの。お仲間に、GBNと言う世界、そして――ムカイ・ヒナタも。

 『クガ・ヒロト』はワタシがなってあげる。前よりずっと、完璧で素晴らしい貴方に。

 本物はもう……ただ大人しく消えればいいの〉

 

「……」

 

 

 

 俺に消えろと。それがみんなの、何よりヒナタの為になると。

 そして、俺の代わりにクロヒナタが俺に、『クガ・ヒロト』となり……幸せにしてみせると言った。

 

 ――彼女はそこまでしてまで、ヒナタの事を想っている――

 

 対して……俺は。

 ヒナタに対して、あそこまで責められる程に……許されない事をしたのかもしれない。

 あのクロヒナタをここまでしたのは、俺のせいでもある。俺がもっとしっかりしていたら――きっと。

 

「俺が消えれば。全て解決するのか?

 ヒナタも……」

 

〈さぁ――どうするの?〉

 

「……」

 

 その通りかもしれない。あのクロヒナタなら、俺としてヒナタの事を大切にする……かもしれない。

 きっと誰より一番に。――けど。

 

 

 

「……ダメ、なんだ」

 

〈――は?〉

 

 コアガンダムⅡのシステムは、回復しつつあった。

 俺は機体の右手を伸ばし、頭を鷲掴みにしていたコピーの腕を、掴んだ。

 手と腕に力を込め、頭を掴む腕をゆっくりと押し戻していく。

 

「君がヒナタの為にどれだけ想っているか、十分過ぎるくらいに分かった。

 いっそ君の言う通り、消えてしまえばいいとも思った。けど……ダメだ。ヒナタは俺が、大切にしないといけないから。

 ……いいや。俺は――大切にしたい! ようやく気づいた、本当の意味でかけがえのない相手を!」

 

 そう、決断した。

 迷いはしない。俺はクロヒナタに自分の決意を伝える。

 

 

「俺は君を止めてみせるし、ヒナタを諦めない!

 例えこれまでは違ったかもしれないけれど俺は……今度こそヒナタの想いにちゃんと向き合うと、そう決めたから!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。