【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
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機体のシステムも復旧した。
俺のコアガンダムⅡは左手でビームサーベルを抜き、一直線に振り下ろす。
〈っ!〉
飛び退いて斬撃を避ける、黒いコアガンダムⅡ。
「これが答えだ。俺は必ずヒナタを取り戻してみせる。
例え君に……想いを信じて貰えなくても 」
俺の言葉と、決意。
〈……〉
クロヒナタはそれに沈黙していた。けれど――
〈くっ、アハハハハハハハ!〉
彼女はまた声を上げて嗤った。
「君は……」
〈言ってくれるじゃない……っ! ワタシは言ったでしょ!? 貴方の言葉など信じるに値しないと!〉
画面越しに強烈な憎悪の眼差しを向ける、クロヒナタ。
やはり彼女の心は変わらない。俺が許される事は……ないかもしれない、それでも俺は。
「言葉だけで通じないなら、この戦いで証明する。俺にだってクロヒナタ、君と同じ……それ以上にヒナタの事を強く想っている事を!」
〈ハハハ! 粋がらないで頂戴な!
あんなに惨めに負けておいて戦いで証明するですって?〉
クロヒナタは高笑いをして、今度は同じくビームサーベルを抜いて構える。
〈貴方の考えはよく分かったわ、クガ・ヒロト。
でもねぇ……結局のところどうでもいいのよ。
どの道貴方はワタシに倒されて、ここで消える。そしてワタシが『クガ・ヒロト』になる……その結末には何一つ変わりはしない〉
「倒す……だって? そんなの、分かりはしない筈だ!」
瞬間、俺のコアガンダムⅡはビームサーベルを振った。
〈――何ですって!〉
黒いコアガンダムⅡは後ろに下がって回避した。けれど……今度はほんの少し、相手の胸部装甲に切り傷をつける事が出来た。
〈そんな……攻撃を受けるだなんて。……まさか!〉
けれどクロヒナタの心理的優勢にヒビを入れるには、十分だった。
「俺はずっと考えてもいたんだ。俺のガンプラのコピーが、どうしてここまで本物を上回れたのか。
そう。まるで……俺の戦いを予測して、先回りしているみたいにな」
〈クガ……ヒロトっ!〉
「あくまで俺の考えに過ぎない。けれど……ここまでの戦いで大体の予想はついた。
ミラーミッションはデータの解析を元にして、戦い方を反映したコピーを作る。
けど、もし君は俺との戦いの最中でさえリアルタイムで解析を続けて、一分一秒ごとに自分の乗るコピーガンプラの戦闘データを常に更新し続けたと……したら」
過去のデータなんかじゃない。今現在戦っている中での解析した生のデータの累積……。それを続ければガンプラバトルにおいて次の相手の行動を予測し、上回る事が――もしかしたら可能だと。
もちろん、こんな事は普通ではあり得ない。
けれどクロヒナタはミラーミッションの全システムを手中に置いている。普通ではない離れ業……俗に言うこの『チート』だって、出来ても不思議とは思わない。
――それを証明するために、さっきの斬撃は目を閉じて、何も考えずランダムに操作した。
俺の動きを予想しても、俺自身さえどう行くか分からない攻撃は予想しようがない筈だから――
そして予想は的中した。
狙いもせず、完全ランダムのデタラメな斬撃。
直撃とは行かなくても、そんな攻撃がかすり傷でも当たったんだ。
さっきまで全力で攻撃しても……少しも当たらなかったのに、だ。
〈おのれ……っ〉
「君の動揺、やはり予想は――当たりなのか」
彼女が見せる動揺こそ、一番の証拠だ。
〈――ええ。さすがクガ・ヒロト、お見事と言うべきね〉
画面に映るクロヒナタは一時的に余裕を失った。けれど、すぐにまた調子を取り戻して、俺に笑みを見せる。
〈確かに貴方の言う通り。ワタシは貴方、クガ・ヒロトと戦い出してから更に、実際のバトルデータを採取、解析していたのよ。
ワタシとの戦いの中で貴方とガンプラが、どんな動きと判断をするかプラネッツシステムを含め、時間をかけてじっくり調べさせて貰ったわけ。
その全てを学習し、更新を繰り返し続けた果てに……もう貴方の動きは手に取るように予測することが可能になった〉
「最初はコピーが本物を上回る訳がないと思った。
――俺が間違っていた。想像よりも……恐ろしい相手だ、君は。
しかし、ようやくタネを知る事が出来たんだ。もうさっきのように行きはしない」
〈アハハハハハッ!
さっきかすり傷を与えたくらいで、随分態度が大きくなったものね。
これは、これは……お可愛いことで〉
クロヒナタは激しく俺を嘲笑する。
〈ワタシの予想できないような攻撃をしたつもりだけど、大方そんなのは自分でもコントロールすら出来ない、偶然頼りじゃないの。
そんな真似じゃ碌な攻撃なんて出来はしない。
くすくす……、タネが分かったからと言って、貴方に何が可能だと言うの。結局辿る結末に影響なんてないわよ〉
彼女の黒いコアガンダムⅡ、今度は俺に対して戦闘態勢に入る。
〈なら、ワタシは力ずくでクガ・ヒロトを乗っ取って、成り代わって見せるまでよ。
『私』……ムカイ・ヒナタのためにも、貴方をここで――〉
強い悪意に支配されているクロヒナタ。けれど、その悪意さえ全て別にしたとしても、彼女が俺を手をかけると言う意思は、何一つ変わりはしないだろう。
ヒナタの為に俺を、本物の『クガ・ヒロト』の存在を許さない。――そんな強い意志を彼女から感じる。
――彼女の考えも、見方によっては間違っていない……かもしれない。少なくとも本人は正しいと強く信じている。
その意思、俺に止められるか。それに――
確かに俺はコピーガンプラの強さの真相を暴き、逆手にとって攻撃を直撃させる事に成功した。
けれどクロヒナタの言う通り、自分でもコントロールが出来ない偶然頼りの攻撃。……せいぜいさっきのように軽い傷をつける程度が関の山、勝てる見込みなんて無いに等しい。
――秘密が分かっても、俺が追い詰められている事に変わりはしない。
また何か考えなければ――
窮地を切り抜ける手を考える事は、俺の得意とする分野だ。
けど、相手は俺の動きをすべてラーニングして、常に先手を打てる。……その精度はさっきの戦いで十分に実感した。射撃も、剣裁きも……プラネッツシステムさえ俺より先回りして、的確な手段で回避、反撃を繰り出す程に。
――そんな相手を……どうすればいい。でもやるしか――
未だ厳しい状況だ。けど俺は、諦めない。
……絶対に。
〈クハハハハハッ。勝ち目なんて無いに等しいのにねぇ。
貴方は本当に――〉
〈避けろ! ヒロト!〉
高笑いをするクロヒナタが言葉を、言い終えない内だった。
広場の端、その向こう側に無数に生える結晶の陰から大型ミサイルが一発、俺たちの方へと飛んで来た。
そして通信からの声。俺はそれが聞こえたと同時に黒いコアガンダムⅡから離れた。
〈何っ! しまっ――〉
ミサイルはクロヒナタが乗る、黒いコアガンダムⅡのすぐ足元に着弾して爆発を起こす。このミサイルを、放ったのは――。
〈援護に来たぞ、ヒロト〉
「良かった。メイのおかげで、助かったよ」
メイのウォドムポッド、俺を助けてくれたのは……彼女だった。モニターにもその姿がちゃんと映っている。
〈途中、他のコピーに阻まれもしたが……どうにかここまで辿り着いた。
ヒロトと、クロヒナタ。やはり既に戦いは始まっていたか〉
ウォドムポッドも俺たちがいる巨大広場に足を踏み入れる。
一方、さっきの爆発に巻き込まれていた黒いコアガンダムⅡは……シールドを構えて衝撃を防いでいた。
〈メイ……っ! 貴方まで来たのね〉
〈当然だ。私はお前の行為を許すわけにはいかない。ここで、止めてみせる〉
メイはクロヒナタにそう言い放ち、俺に対しても。
〈一人でよく頑張った、さすがヒロトだ。
……さっきの会話は私も聞いていた。戦いながらも解析を続け、そのデータを元に相手より上に行く。クロヒナタは恐ろしい相手だ〉
あの話、メイも聞いていたらしい。
「確かに強敵だ。けど……メイ、君が来てくれたおかげで、少しは活路が見えた」
〈そうか。私も同じ考えだ。二人なら、もしかすると――〉
〈く……くくくっ。言ってくれるじゃあないの。
なら貴方達の活路とやら――示してみなさいな!〉
クロヒナタの操る、黒いコアガンダムⅡは跳躍して迫る。
狙いは……コアガンダムⅡ、つまり俺だ。
〈先ずは本命から叩かせてもらうわ!〉
そして攻撃を仕掛けようとした。けれどその背後には。
〈させはしないとも!〉
メイのウォドムポッドが続けて迫り、ビーム砲を向けて放った。
放たれたエネルギー、とっさに黒いコアガンダムⅡは態勢を変えて射線上からその身を離す。
〈今だヒロト!〉
そのタイミング、逃しはしない。
俺は態勢を変えようとした黒いコアガンダムⅡへとビームライフルを構えて撃つ。
〈!!〉
ビームは右肩装甲に命中し、その衝撃で制御を崩して墜落しそうに。けれど、寸前で整えると着地し、更に後方に跳んで距離を開く。
〈成程……ね。そう言うこと〉
苦虫を噛み潰したようなクロヒナタ。彼女にもどう言うことか分かったらしい。
〈いくらヒロト単体の戦闘データを集めて予測出来たとしても、タッグでの戦いはまた内容が違う。
多分、上手く予測なんて出来ないはずだ〉
メイの言う通りだ。
彼女が言った言葉に、俺も頷く。
「ああ。それに恐らく、戦いの模倣だけでなく、更に予測して対応するとなると……普通以上のデータと、相当に演算処理能力を動員する必要があるはずだ。
……クロヒナタ、直接戦いながらデータを集めていたと言ったのは、君だ。
もし簡単にそれが可能なら時間をかける必要もない……なのに実際は、俺を上回るだけでもそれなりの時間を要していた。
つまり、ミラーミッションを掌握した君でさえ、簡単な事じゃない!」
これでまた戦えるはずだ。見えにくかった勝機も、見えて来た。
けれどクロヒナタも退く気はないみたいだ。
〈ふっ! けどタッグくらい十分よ。すぐにその戦いもラーニングして、上回って見せるわ!
その時にはクガ・ヒロトも……メイも、叩き伏すだけよ〉
〈二人……だって。悪いがそうではないらしい〉
〈――まさか!〉
瞬間、黒いコアガンダムⅡの背後から俺とメイのガンプラと違う、二機の影が襲いかかる。クロヒナタはビームサーベルを二本両手に展開して、攻撃を受け止めた。
〈ようやく僕たちも来れました!〉
〈ここからは俺にも任せてくれよ、ヒロト!〉
GNグリップダガーと、ライテイショットランサー改によるそれぞれの一撃。
そう、パルのエクスヴァルキランダ―と、カザミのガンダムイージスナイト。二人も来てくれたんだ。
「カザミにパル! 二人とも!」
モニターでカザミは俺に、ウィンクして得意げな笑みを投げかける。
〈おうとも! もしかして今から最終決戦って奴か? どうか混ぜさせてくれよな!〉
〈二人よりも三人、三人よりも……四人がきっと良いはずです。
……ですが〉
パルも俺に微笑んでくれたけれど、途中で顔を曇らせてしまう。
〈……シドーさんは、僕達を先に行かせるために、代わりに一人でコピーの相手を〉
「だから、彼だけいないのか」
シドー・マサキ、彼だけがこの場にいなかった。パルとカザミを俺のもとに送り届けるために……一人残って。
〈けど、シドーさんの想いは俺たちとともにあるんだ!
彼に託されたからな、この異常……必ず止めてみせるぜ〉
鍔迫り合った黒いコアガンダムⅡ、さすがに二機分の力に持ちこたえられはしなかった。
機体は力に押し負けて、後方に跳び離れる。
そしてコアガンダムⅡに乗るクロヒナタに、カザミは言った。
〈クロヒナタ! お前の事も、正体も、俺ははっきりと分かりはしない。
けど――やっている事は悪だってのは分かる! だからこそ正義の名を背負うこのジャスティス・カザミが制裁してやる!〉
イージスナイトはポーズを決めて、ビシッと人差し指を黒いコアガンダムに向けた。
これで四人、ビルドダイバーズの仲間が集まった。
――四人いれば。きっと解析をこなすにも更に時間がかかるはずだ。
クロヒナタが俺たち全員の戦いをラーニングする前に、倒す!――
二人よりも三人、三人より四人……パルの言う通りだ。
クロヒナタとの勝負は時間との勝負でもある。
――俺たち全員で、決着をつけて見せる。