【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

56 / 85
─幾らだって実力を超えてみせる!─(Side ヒロト)

 ――――

 

〈四対一、と言うわけ。これはまた〉

 

 俺たちビルドダイバーズは、クロヒナタのコアガンダムⅡを取り囲んで包囲する。

 彼女はこの状況に、淡々と呟く。

 

〈正直卑怯かもしれないですけれど、僕達も手加減できませんから。

 ……倒させていただきます〉 

 

 パルはクロヒナタにそう言うと、GNランチャーの銃口を向ける。

 

〈あらあら、優しいパルウィーズ君にしては、随分と怖い顔をするじゃない〉

 

〈当然です。僕達は貴方の目的も、聞いたのですから〉

 

 彼女の言う通り、パルの表情は険しい。それにカザミも顔に怒りの感情が浮かんでいた。

 

〈ヒロトを消してやるだと? そして、自分が成り代わるだって!? ――いい加減にしろよ!〉

 

 カザミのイージスナイトはショットランサーをぐっと、力を込めて握り構える。

 

〈そんな事、やっぱりどうかしている! ……悪でしかないぜ!〉

 

 また、メイは複雑な表情で戦闘態勢を維持している。勿論……俺も。

 

「クロヒナタ、本当の狙いは――そう言うことか。

 ヒナタを思っての行動なのは分かる。けど、それは絶対に間違っているんだ。

 人間だろうと、電子生命体だろうと、心を持った存在として……お前は超えていけない一線を超えようとしている。

 だから私たちが、ここで阻止する」

 

「何度も言うかもしれないけれど、俺もヒナタを想う気持ちは変わらない。――君と同じだ。

 けれどクロヒナタ、君自身のためにも俺は、憎しみだけではないその暴走する想いと感情……止めてみせる」

 

 

 

 これで形成は逆転した。

 俺たちビルドダイバーズのみんなでなら、あのクロヒナタを止められるはず。

 

〈……どいつも……こいつも〉

 

 モニターに映るクロヒナタは低い声で呟く。

 

〈くくく……く、くくく〉

 

 気味の悪い嗤い声を一人響かせる。そして、恨ましげな瞳を俺たちに向けた。

 

「クロ……ヒナタ」

 

〈さすが、エルドラを救った救世主サマ達……ご高説、恐れ入ったわ。

 だって命懸けで一つの世界を、無数に暮らす善良な人々を救ったのでしょう。みんなにとっては正に英雄、実に――――どうでもいいわ!〉

 

〈……何だと?〉

 

〈そのままの意味よ、カザミ。ワタシにとってはあんな遠くの知らない世界がどうなろうと、全くもってどうでもいいのよ。

 ただ、見て見ぬフリでもしておけば済むじゃない〉

 

〈お前には、人の心って奴はないのか!〉

 

〈かも――しれないわねぇ。でもどうでもいいんだから仕方ないじゃない。

 例え救世主として世界とやらを救っても、それにヒナタにとってもヒーローだって思われても私はねぇ、クガ・ヒロト〉

 

「――」

 

 クロヒナタは俺の名前を出した途端、強い決意を込めて言った。

 

〈世界とやらを救おうが…………知ったことではないわ。

 例え救世主でも知りはしない。ワタシにとってクガ・ヒロトは『私』を長年弄んで踏みにじった――悪。

 そしてそれを味方するビルドダイバーズも、ただの敵でしかない!〉

 

 

 

 その瞬間、イージスナイト、エクスヴァルキランダ―、ウォドムポッドのすぐ傍に、それぞれ三つの影が出現する。

 

〈何だとっ!〉

 

〈これは……僕達の〉

 

〈コピーを、用意したのか〉

 

 三機の傍に現れたのは、それぞれ全く同じ姿をした黒い機体、コピーだった。

 クロヒナタが対抗策として用意したコピー、彼女は得意げに微笑む。

 

〈これで四対四、頭数は揃ったわねぇ。

 それにこのお人形も、遠隔ではあるけれど全てワタシが直接制御下に置いているの。ワタシと同じようにこの子たちも戦いながら学習していくのよ。一機分でも処理が大変なのに、ね。かなり無茶だってしているの。

 でもそっちがその気なら、ワタシも全力で……相手してあげるわ!〉

 

 今度は俺たち四人、ビルドダイバーズの全員に牙を向けるクロヒナタ。

 俺への敵意がそのままみんなに。けれどこうなった以上は。

 

 ――時間は限られている。

 クロヒナタが俺たち全員の戦いを覚えきる前に、決着をつけてみせる。けど――

 

 今更ながら思った。例えバトルに勝っても、クロヒナタが大人しくするかどうか。

 ヒナタに憑りつき人質のようになっているのもある。

 けれどもう一つ、彼女はミラーミッション全体をここまでにしてしまう程に支配し、操る事が出来る。

 今は俺たちのバトルに付き合っている分まだいいかもしれない。けれどもし目的を果たす為に、本気で手段を選ばなくなれば……何をするか分からない。

 

 ――このまま戦って、果たして止められるか――

 

 するとその悩みに気づいたのか、メイが励ましてくれる。

 

〈心配するな。私たちで戦えば必ず、活路が見えて来るはずだ。――信じてくれ〉

 

 不思議と、どこか自信があるかのような言葉。おかげいくらか心も軽くなった。

 

「分かった。とにかく、みんなの力を合わせて……彼女を」

 

 メイの言う通りだ。カザミも、パルも力を貸している。

 俺は一人なんかじゃない。――みんながいれば、きっと!

 

 

 

 ――――

 

〈だあああっ!〉

 

 カザミのイージスナイトはショットランサーをコピーに振るった。

 自分のガンプラと同じ姿の、黒いガンダムイージスナイトに。コピーはその攻撃をシールドで防ぎ反撃を繰り出す。

 足先からビームサーベルを展開しての蹴り上げ、カザミは後退して避ける。

 

 

 またパルのエクスヴァルキランダ―と黒いエクスヴァルキランダ―、そしてメイのウォドムポッドと黒いウォドムポッドもそれぞれGNランチャーとガンブレードによる射撃戦と、格闘戦を繰り広げている。

 その中で俺と、クロヒナタは。

 

〈クガ・ヒロトに止められるかしら――ワタシを!〉

 

 クロヒナタが乗る黒いコアガンダムⅡはアースアーマーにコアドッキングして迫る。

 俺のコアガンダムⅡも同じくアースアーマーにドッキング、アースリィガンダムに姿を変えて迎え撃つ。

 互いに跳躍、ビームサーベルを抜き黒いアースリィに迫る。……けれど。

 

〈無駄たって、分かっているでしょうに!〉

 

 俺が放った斬撃を、コピーは軽く切り払う。攻撃を弾き、瞬時に左手に握るビームライフルの銃口を突きつける。

 

「これはっ!」

 

〈他愛ないわねぇ。――このまま!〉

 

 やはり動きを読んでいるだけある。続けて繰り出そうとする零距離射撃、俺でもこれは回避するのは難しい。

 一人だと強い相手かもしれない。だけど、今の俺には。

 

〈やらせはしないぜっ!〉

 

 クロヒナタが突撃を繰り出そうとした瞬間に、左横からビームによる援護射撃が入って阻む。

 とっさに彼女は放たれたビームを避ける。おかげで相手の攻撃は中断される、そのタイミングを突いて続けて二撃目の斬撃を俺は繰り出した。

 

「……今度こそ」

 

〈ちいっ、小賢しいわ!〉

 

 もう少しで攻撃が届きそうだった。けれど、とっさにクロヒナタの黒いアースリィガンダムは右腕のアーマーを、俺に向けて射出する。

 

 ――しまった、せっかくのチャンスを――

 

 思わず俺は不意をつかれた。放たれたアーマーの直撃を受け、吹き飛ばされて態勢を崩す。

 一方、黒いアースリィガンダムの視線はさっきのビームを放ったガンダムイージスナイトへと向けられる。

  

〈よくもやったわね、カザミ〉

 

〈ヒロトをやるつもりなら、先ずは俺から倒してからにしやがれ!〉

 

〈――お望みなら!〉

 

 俺に飛ばしたアースアーマーに右腕の代わりに、コピーはサターンアーマーの右腕アーマーを装着する。そして腕に備えられたブレーカドリルを大回転させて襲う。

 強力なドリルの一撃、カザミのイージスナイトは持ち前の大盾で防ぎ切る。

 

〈カザミ、貴方はワタシを悪と言ったわねぇ。……ならクガ・ヒロトはどうなの!

 彼は貴方達ビルドダイバーズよりも、ずっと傍にいた筈のムカイ・ヒナタを見放していたのよ! そんな相手など!〉

 

〈んな事決めつけるな! ヒロトはそんな奴じゃないなんて、仮にもヒナタを名乗るなら分かるはずだろ!〉

 

 カザミは叫び、シールドでブレーカドリルを押し返す。そして先ほどコピーが行ったのと同じく、足先からビームの刃を放ち、今度は横蹴りを放つ。

 

〈見放してなんているわけがない。アイツは確かに不器用な所はある、けれどヒナタの事もとても大事に想っているはずなんだ!

 ヒロトとはずっと戦って来た仲間だ、だからこそ分かる!〉 

 

 そのカザミからの言葉、横から聞いていた俺も……つい。

 

 ――俺はヒナタの事を大切に想っていた。けれど自分でもどう伝えればいいのか分からなかった。……その内どこか当たり前で、自分自身のその想いにも気づけないで――

 

 

〈黙りなさい! 勝手な事を!   

 ――それにクガ・ヒロト。貴方にも余裕なんてあると思うの!〉

 

 瞬間に、後ろに何か異形の影が現れる。

 イージスナイトのコピー、それがMAに変形して俺の機体を掴んだ。

 背後からの急襲。俺とした事が……気を取られてしまっていた。

 

 クロヒナタの黒いアースリィガンダムはカザミとの戦いを離脱するとともに、マーズフォーガンダムにコアチェンジ。実体剣スラッシュブレイドの刃を構えて、再び俺に肉薄する。

 

〈お人形には押さえていてもらうわ。

 ワタシの手で、貴方のガンプラ――切り刻んであげる!〉

 

〈今度は僕が、止めてみせます!〉

 

 

 

 背後で数度、衝撃が走って揺れる。

 アースリィガンダムを掴んで動きを封じていたコピー……黒いガンダムイージスナイト。その機体に数発のエネルギーが直撃した。

 攻撃を受け、イージスナイトのコピーによる拘束が緩んだ。俺はその瞬間に一気に拘束から逃れると同時に――

 

〈今度はパルウィーズ、貴方と言うわけ〉

 

 パルのエクスヴァルキランダ―が代わりに前に出て、スラッシュブレイドの一撃を防ぐ。

 エクスヴァルキランダ―はGNグリップダガーで弾き、続けてランチャーデバイス、フレアーデバイスを合体させたGNメガフレアーデバイスの大火力を横一文字に薙ぐ。

 

〈邪魔……してくれるわね〉

 

 炎の勢いに圧され、クロヒナタは大きく距離を取る。

 

〈やっぱり、クロヒナタさんはヒナタさんのためにここまで。

 でもヒロトさんだって貴方以上に、きっと! だからエルドラでだって戦って来れたんです。……必ずヒナタさんの元に戻りたいって思いがあったから!〉

 

 ――そうだ、俺は―― 

 

 確かにヒナタを置いて、エルドラを救うために命を懸けていた。

 世界を救うためと言え……彼女に長い間黙って。エルドラの事を知って止めた時さえも俺は、それを聞かずに行ってしまった。

 気持ちは十分に分かっていたけれど、あの世界を放っておけなかったから。

 ……けれど、俺は必ず無事で戻って来ると約束した。ヒナタはそれを受け入れて、いつもの笑顔で応援してくれていたんだ。

 

 ――本当はきっと、不安で心細かったのに。……世界よりも彼女の傍にいるべきだったかもしれなかった。

 けれどヒナタは俺を信じて、現実世界で待っていてくれた。無事に戻ると――強く信じてくれたから――

 

〈ふっ、笑わせてくれるわねパルウィーズ〉

 

〈僕は笑えません。だからこそ僕達はエルドラを救えたから。ヒナタさんがヒロトさんの言葉を信じて応援してくれたらこそ!

 そこまで信じられたのは――相手がヒロトさんだからなんです! 二人の間には、ちゃんと互いに強い絆があったから〉

 

〈クククっ! だから哀れと言っているのよ!

 クガ・ヒロトに信じるような価値、ある訳ないのに!

 絆ですって? ――そんな物など!〉

 

 俺とパルウィーズを前に猛火に阻まれるクロヒナタ。……けれど、炎の壁を高出力のビームが薙ぎ、切り払う。

 クロヒナタのマーズフォーガンダムはアーマーをウラヌスアーマーへと換え、ユーラヴェンガンダムへと姿を変えていた。あのビームは腕に構える大型ビームライフル、そのエネルギーだったんだ

 

〈そんな、メガフレアーデバイスの炎まで〉

 

〈貴方にも用はないわ。つまり……邪魔よ、パルウィーズ!〉

 

 同時に、パルの反対側からエクスヴァルキランダ―のコピーが襲い来る。

 

〈せいぜいお人形と踊っていなさいな。――そして!〉

 

 クロヒナタが乗る黒いユーラヴェンは俺に狙いを定める。

 

「言われなくても……相手ならするさ。――コアチェンジ! アース トゥ ウラヌス!」

 

 俺も同様にコアチェンジを繰り出し、アースリィからユーラヴェンガンダムに。そしてコアチェンジとともにライフルをコピー目掛けて放った。

 

〈これは……っ!〉

 

 クロヒナタも同じタイミングでライフルを構えて引き金を引いた。

 そして、放たれた互いのエネルギーは正面から対衝突して――大きな塊となって爆散する。

 

〈貴方との戦いならば、全て学習済みのはずよ。

 ……まさか! ラーニングしたデータを上回ったとでも言うの!〉

 

 ほんの少しだけれど、戦いをラーニングしてオリジナルよりも上回ったクロヒナタ、それに実力が追いつく事は出来た。

 

「当たり前だ。クロヒナタには許せないかもしれない。……けれど俺もヒナタへの想いは、譲れはしないから!」

 

〈そんな言葉なんかっ!!〉

 

「だから今――実力で示す!」

 

 続けて俺はビットによるオールレンジ射撃を繰り出す。今度は一瞬クロヒナタよりも早く、そして的確に。 

 彼女もビットを射出しようとした、俺は射出したほぼ同時に全三機とも撃ち落とす事が出来た。

 

〈馬鹿な、今度はワタシよりも先に!? ……くはっ!〉

 

 オールレンジ射撃だけではない。俺のユーラヴェンガンダムはリミテッドチェンジにより両腕をヴィーナスアーマーへと換えた。その両腕のミサイルハッチ、続けて展開して小型のミサイルを撃ち放った。

 ミサイルは幾つも黒いユーラヴェンガンダムに直撃――爆発が機体を襲う。

 

〈何よ、この実力は! さっきよりも――〉

 

「ここまでの戦いを全て解析したのならその上を行けばいい。

 ヒナタを取り返す為なら俺は、幾らだって実力を超えてみせる!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。