【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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失墜の黒巫女(Side ヒロト)

 ――――

 

 爆煙が晴れ……現れたユーラヴェンガンダムはシールドを構えて防いでいた。けれど完全には防ぎ切れず、アーマーには幾つもの損傷が出来ている。

 ……それでもクロヒナタはまだ、嗤うのを止めない。

 

〈ハハ、ハハハッ! だから……どうしたの?

 さっき止めを刺せなかったのが残念だわね。いくら実力以上を出したって、既にそれさえも解析済みよ。

 もうあんな真似なんて通用しない。実力を超えるですって? そんな物などエリアの演算処理能力を動員して容易に覚えられるのよ! 

 ミラーミッションを制御下に置くこのワタシがクガ・ヒロトになど、負けるわけが――〉

 

〈悪いが、今は『私たち』も相手だと、忘れては困る〉

 

〈!!〉

 

 クロヒナタの驚きとともに、ユーラヴェンガンダムのコピーは現れた巨大な影に蹴り上げられる。

 

〈ぐう……っ! まさか、メイっ!〉

 

 援護に入ったのはメイが乗る機体、ウォドムポッド。

 

〈今私のウォドムポッドのコピーは、カザミとパルが相手をしてくれている。

 ……その間に私とヒロトで、片を付けるぞ〉

 

 強い蹴りの一撃、それを受けてコピーが装着するアーマーは更にひび割れ、一部砕けていた。

 

〈……これじゃ、このウラヌスアーマーは使えそうにないわね〉

 

 クロヒナタは自機のウラヌスアーマーを外し、代わりにジュピターアーマーを装備、ジュピターヴガンダムへと換装する。

 そして彼女は、メイに対して――こんな事を。

 

〈メイ……くくく、っ。せっかく貴方だけは見逃すチャンスを与えたのに。

 ワタシの前に出た、と言う事は……覚悟しているわよねぇ!〉

 

〈ああ、覚悟はしているとも。

 ――ただし! お前にやられる覚悟ではない!〉

 

 ウォドムポッドは機体右部に装備するビーム砲で一撃を放つ。これにジュピターヴガンダムのコピーは容易く回避する。

 

〈はっ! そんな見え透いた陽動など!〉

 

 同時にジュピターヴは反転して、迫る俺のガンプラに視線を向ける。

 コピーはユーラヴェンガンダムを見据え、ビームガトリングを右腕で構える。

 

 ――いや、ビームガトリングだけじゃない。後ろ左右に二機のマニファーユニットも――

 

 クロヒナタは先にジュピターヴガンダムの遠隔射撃デバイス、マニファーユニットを展開して俺を狙っていた。

 俺は上へと跳び三方向からのビーム攻撃を回避するけれど、マニファーユニットは更に俺を追う。

 これに対してユーラヴェンのビットで反撃を試みる……けれど、攻撃はボックスビットによるビームシールドで防御される。

 

 

 

 ――俺がマニファーユニット、ボックスビットを相手にしている一方、メイのウォドムポッドはクロヒナタが乗る黒いジュピターヴガンダム本体と戦っていた。

 メイは左部のミサイルポッドから、一発の大型ミサイルを放つ。

 

〈私の言う『覚悟』とは、全力を尽くしてまたヒロトとヒナタを再会させる覚悟を言う!

 私も……きっと私の中にいるイヴも、二人で幸せになってくれる事を望むはずだから!〉

 

〈――はぁ!? 何よそれは!〉

 

 黒いジュピターヴはヘッドバルカンで迫るミサイルを撃墜。即座にウォドムポッドの側面部に回り込んでビームガトリングを放つ。

 

〈ふざけた事を言って、全然笑えないわね!

 メイ……それに貴方の中にあるイヴも、クガ・ヒロトの次に憎くて堪らないのよっ!〉

 

 俺に対する憎悪と近い程の、負の感情をメイとイヴに向けるクロヒナタ。

 

 ――やはり、俺が……そうさせたんだな――

 

 つい、俺も戦いながら悔いと罪悪感が生まれる。クロヒナタを――ああもさせてしまったのは。

 その一方でメイのウォドムポッドは跳躍、ビームガトリングの射線を飛び越えそして、上空から強烈なキックを落とす。

 

〈私も、イヴもそこまで憎いか〉

 

 キックは地面を陥没させる程に強く、間一髪で避けた黒いジュピターヴも衝撃で弾き飛ばされる。……けれど相手も瞬間に足で踏ん張り態勢をとる。

 

〈当たり前の事を今更!〉

 

 ジュピターヴガンダムはビームガトリングを構え、ビームの弾をウォドムポッドに連射する。

 

〈あはっ! 良い的だわね!

 それに貴方が来てくれて、ワタシは嬉しいのよ。メイ、それにイヴ……今度こそワタシの手で消し去る事が出来るのだから。

 どちらもムカイ・ヒナタからヒロトの心と想いを完全に奪い取った――憎むべき簒奪者! 本当なら彼女が受けるべきなのに!〉

 

 憎悪を言葉を吐くクロヒナタ。そしてビームガトリングの攻撃が放たれた時、俺はその間に立ちシールドを構えて守る。

 

「……そんなに憎んでも、何にもならないだろ」

 

 瞬間、クロヒナタの瞳の中に映る憎悪は更に、一気に燃え上がった。

 

〈クガ・ヒロトが言うなっ! 貴方がイヴを大切にしていたからっ!〉

 

 叫びと同時に彼女のジュピターヴは一気に迫る。そしてその勢いのままでビームサーベルのグリップを抜いて居合切りを放つ。

 強い一撃も続けてシールドで防ぐ。俺はそのままビームライフルを構えて反撃を試みる。

 

〈させはしないわ!〉

 

 けれど引き金を引く前に、続けて横に――回し蹴りまで。

 

「……くっ!」

 

 正面からに続いて、横から更に襲う衝撃。俺の乗るユーラヴェンガンダムは吹き飛ばされる。

 ビームライフルの銃口も逸れ、撃たれたビームは相手とは全く別の方向へと飛んで行く。

 

〈ねぇ――そうでしょ? どう繕おうとも、貴方にとって一番大切なのは、運命の相手なのはイヴ……あの木偶人形でしょう! ムカイ・ヒナタではなくて!〉

 

 イヴ――それは二年前に出会った、俺にGBNの素晴らしさとガンプラの楽しさを改めて教えてくれた相手。

 一緒にあの世界巡って、コアガンダムのプラネッツシステムも完成させた。……そんな思い出を作った、クロヒナタの言う通り大切な――

 

「確かに大切に想っている。けれどイヴは――」

 

〈うるさいっ!!〉

 

 明確な拒絶。起き上がった俺に向けて、クロヒナタはビームガトリングを構える。

 

〈貴方みたいなっ! ……クガ・ヒロトの存在なんて、『私』にとっては害悪にしかならない!

 だから消す! 貴方も! そして貴方をムカイ・ヒナタから完全に奪った木偶人形共も――〉

 

 

 

 

「それは――駄目だ」

 

〈!!〉

 

 その時、彼女のビームガトリングの銃身をビームが貫く。

 銃身は爆発、けれどとっさにクロヒナタが乗る黒いジュピターヴはガトリング砲の銃身のみパージ、コアガンダムⅡ時のビームライフルに戻した。

 

 ――牽制のつもりで仕掛けたけれど、運が……良かった――

 

 あのビームが放たれた先、遠くにあるのは……広場端に生えている、あのビームを反射する結晶だ。

 俺は先ほど、ビームライフルで撃とうとした瞬間、ジュピターヴに蹴られて失敗した。

 けれどとっさに俺は狙いを変えて、広場から離れ、ずっと奥にある結晶にビームを撃った。

 結晶に反射して、またこの近くに戻って来るようにと。それが今――彼女の武器を貫いた。

 

 ――この好機を逃さない!――

 

 爆発で僅かに怯んだクロヒナタ。俺のユーラヴェンガンダムは足で地を蹴って、ビームサーベルで反撃する。

 

〈……小賢しいわ〉

 

 寸前でクロヒナタのコピーガンプラは後ろにステップを踏んで一撃を避ける。けれど、まだ!  俺は続けて迫り、二撃目を振り上げる。

 ビームの刃は左腕の付け根に目掛けて伸び――左腕を切り落とす。

 

「――どうだ!」

 

「!!」

 

 驚愕の表情を浮かべたクロヒナタ。片腕を失った黒いジュピターヴはよろめく。

 俺はその彼女の機体に、ビームサーベルの刃先を突きつける。

 

「今度こそ終わりだ」

 

〈クガ……ヒロトッ!〉

 

〈もう抵抗しようなどと、思うなよ〉

 

 ジュピターヴの背後には、ウォドムポッドもビーム砲を向けていた。

 もちろん撃つつもりなんてない。けれど、これでクロヒナタには自分が負けた事を理解してもらう。

 

〈……〉

 

 クロヒナタも俯き、口を閉ざす。

 

「ここまでだ、クロヒナタ!」

 

 俺は彼女に言った。

 ――このまま止めを刺す。俺はビームサーベルをコピーの動力機関に突き刺して停止させようと。

 

 

 

〈それは貴方達の方よ――ビルドダイバーズ〉

 

 同時に、俺の横から別の影が襲う。

 影の攻撃。ビームサーベルで受け止めたそれは、ガンブレードの刃。

 

 ――これはパルの――

 

 更にもう一振りのガンブレードが俺のガンプラを襲う。

 俺はとっさに下がり深手は防いだ。けれど攻撃を受けたショックで、クロヒナタとの距離が離される。

 

〈ヒロト! ……くっ!〉

 

 続けてメイのウォドムポッドにも別の影が襲った。

 大盾で体当たりして吹き飛ばしたそれは、黒いガンダムイージスナイトだった。

 そして俺を襲ったのは黒いエクスヴァルキランダ―、それぞれカザミとパルが相手にしていた……はずだったけれど。

 

 ――!!――

 

 今度は離れた位置から地面を削り、巨大なエネルギーが迫る。

 それを俺のユーラヴェンガンダムは左に避ける。……攻撃を放ったのはウォドムポッド、黒色のコピーだった。

 

〈うっ……すまねぇ、ヒロト〉

 

〈もう僕達では、抑えられなくて〉

 

 見るとカザミ、パルが乗る本物のイージスナイト、エクスヴァルキランダ―は傷だらけで倒れていた。

 

 ――さっきまでは対等に戦っていた筈なのに、いつの間に!――

 

 それでも俺は戦うしかない。

 クロヒナタと……けれど、俺と彼女の間には、さっきの黒いエクスヴァルキランダ―が宙に浮き立ち塞がる。

 

「邪魔を……しないでくれ!」

 

 俺はエクスヴァルキランダ―のコピーに、ビームサーベルを手に立ち向かう。

 対してエクスヴァルキランダ―、今度は右手にグリップダガーを構え……余裕で受け止める。

 

 ――そんな――

 

 続けて俺は連撃を繰り出す、けれどコピーはそれを全て、容易く防ぐ。

 

〈援護するぞ、ヒロト!〉

 

 メイは援護射撃としてミサイルを放つ。けれど、それさえ予想していたかのように、放たれた途端にガンブレードを銃のように構えて、ビームで撃ち落とした。

 貫かれ大爆発するミサイル。その隙に……俺は再度ビームサーベルで、本体を直接刺し貫こうとした。

 ――けれどコピーはそれさえも。

 黒いエクスヴァルキランダ―は軽く右に避けて、ふっと俺に迫る。

 すぐ近くで顔が合う。エクスヴァルキランダ―は瞳をにいっと細めて、俺を嘲笑うかのような視線を向けた。

 同時に左手に構えるフレアーデバイス、それを俺に向けて猛火を放つ。

 

「ぐっ、あああぁっ!」

 

 炎に包まれる俺のガンプラ、至近距離からの猛火に機体はよろめき……膝をつく。

 

〈くっ! ――そんな〉

 

 見るとメイのウォドムポッドもイージスナイトに組み伏されて、動けなくなっていた。

 

 

 

〈さて、と。肝心のお仲間もこれじゃあね〉

 

 モニターに映るクロヒナタは、勝ち誇った表情を向ける。

 

〈腕の一本なんてどうでもいいわ。

 それより、時間をくれてありがとうねぇ。おかげで……四人分の戦いもラーニング出来た。

 それにクガ・ヒロト。あの短時間でワタシが得たデータを上回る戦いを見せたのは、正直驚いたわ。――けれどそれもとっくにワタシは覚えた。もう勝ち目なんてないのよ〉

 

 ――今度こそ、終わりか――

 

 俺は膝をついたまま、未だ立ち上がれずにいた。

 仲間も俺もやられた。もう……駄目なのかと。

 

〈随分と手間をかけさせてくれたけど、結局最後に勝ったのはこのワタシ。

 クガ・ヒロトと言う悪をワタシがね……正義は勝つものよ。ふふふふっ〉

 

〈お前みたいな奴が、正義を名乗るんじゃねぇ!!〉 

 

 怒りを露わにするカザミ。そしてボロボロな機体をどうにか起こそうとする、けれど――。

 

〈ははっ〉

 

〈――ぐはっ!〉

 

 途端、イージスナイトのコピーが強く、カザミが乗る本物のガンダムイージスナイトを踏みつけにする。

 再び地面に潰されるカザミのガンプラ。クロヒナタは愉悦の笑みを浮かべる。

 

〈こう言うのはね、勝った方が正義なのよ。

 敗者は敗者らしくそうして惨めに転がっていればいいの〉

 

 敗者……だって。

 

「いや、まだだ」

 

 残る力を振り絞って、俺も再び立ち上がり武器を構える。

 

〈あら。もう勝ち目なんてないのに、クガ・ヒロトもまだ戦う気なの。

 本当にしぶといわ〉

 

「当たり前だ。俺は……諦めないと、言った」

 

 俺はヒナタの事を諦めない、諦めたくなんてない……最後まで。

 けれどクロヒナタはそんな俺に、まるで汚物でも見るかのような、嫌悪感を露わにした視線を向ける。

 

〈不快だわね。いい加減に……しなさいよ。

 何なのよ、ムカイ・ヒナタなんて貴方にとって一番じゃないのに……なのに〉

 

「違う、俺は」

 

〈でも関係なんて、ないわよねぇ。

 実際は決着がついたのだから。勝ったのはこのワタシ、負けたのは――〉 

 

 

 

 

 

 

〈――負けたのはお前だ、クロヒナタ〉

 

 その時、メイが突然そんな事を口にした。

 

〈……はぁ? 何を言っているの、メイ〉

 

 クロヒナタの注意は彼女に向く。そして呆れた様子で続ける。

 

〈この状況を理解していないのかしら。

 全員ボロボロで、仮に戦えたとしてもその動きは全て学習済みなのよ。……勝てるわけがない。

 ふっ、貴方達がグズグズと時間をかけたせいよ〉

 

 余裕たっぷりに言うクロヒナタ。けれど、それでもメイは続ける。

 

〈状況はお前以上に分かっているとも。

 だからこそ言える、この戦い――私たちの勝ちだ〉

 

〈だから一体、どう言う――――っ!〉

 

 

 

 

 瞬間にクロヒナタの顔から余裕が消えた。

 驚いたような表情に豹変して固まる。そしてその口から、こんな言葉が。

 

〈そん、な。ミラーミッションのシステムと……ワタシとの繋がりが……っ〉

 

 同時だった。黒いイージスナイト、エクスヴァルキランダ―、ウォドムポッド、コピーガンプラの三機が急に糸が切れた人形のように力を失い、膝をついて頭を垂らして動かなくなる。

 そしてクロヒナタが乗る黒いジュピターヴも、急にがくりと力を失いかける。

 ……けれどどうにか踏ん張ると、機体の視線はメイのウォドムポッドを睨む。

 

〈何をしたの…………メイ!〉

 

〈悪いが、本物の私は――ここだ〉

 

 

  

 別方向からの声、そこにいたのは生身のメイの姿だった。

 確かウォドムポッドに乗っていた筈なのに、いつの間に外に……。

 

〈今まで私の機体を動かしていたのは、データをコピーして形作った分身だ。

 クロヒナタ、お前がやったのと同じものだ〉

 

〈データをコピーですって、貴方はミラーミッションのシステムを使ったの?〉

 

 メイはそうだと答えた。

 

〈時間が必要だったのは、私もまた同じだ。

 戦いを自分のコピーとヒロト達に任せて、その間に私は悟られないように、ミラーミッションのシステムに介入させてもらった。

 ……隠し持った修正プログラムを用いて、ミラーミッションを正常化した。ここのコピーも、それにGBN中で暴れ回る大量のコピーガンプラもきっと、今頃は。

 クロヒナタのミラーミッションへの支配権限――私が奪わせて貰った〉

 

〈……〉

 

 メイもまたミラーミッションに干渉を加えていた。電子生命体だからこそ、人間の俺たちに出来ないような事が可能なんだ。

 ……と言う事は。

 

 ――もしかしてとは思っていた。けれどクロヒナタの正体もELダイバーと同じ……電子生命体なのか――

 

 一方でメイはクロヒナタに続ける。

 

〈もしかするとお前自身にはコピー能力が少しは残っているかもしれない。

 そのジュピターヴもまだ動かせるだろう。……けれど一番厄介だった、ミラーミッションの処理能力を動員して行った私たちの戦闘予測も、最早不可能だ〉

 

 彼女はクロヒナタが乗る片腕のジュピターヴガンダムを真っすぐに見上げる。

 

〈クロヒナタ、お前はもうここまでだ。敗北を認めるべきだ――――認めてくれ〉

 

〈…………〉

 

 クロヒナタは顔を下げたまま口を閉ざしていた。

 けれど、突然。

 

〈……メイ!! 貴方はっ!!〉

    

 激しく憎悪で歪んだ表情を上げ、彼女は叫んだ。そして片腕に握ったビームライフルの銃口を――下にいるメイに突きつけた!

 

「――っ! 止めろ!!」

 

〈クハハハハハハハハッ! 見てなさいクガ・ヒロト! 貴方の大切な木偶人形共を、今目の前でぶち壊してあげるわよ!

 全部! 全部っ! 貴方のせいなのよっ! 奈落の奥底まで絶望なさい!〉

 

 今すぐにでもメイに放たれようとする攻撃。

 俺には守る余裕さえなかった。

 

 ――このままではメイが――

 

 守る事が出来ない。クロヒナタのジュピターヴが構えるビームライフルにはエネルギーが充填され、後は引き金を引かれてしまえば。

 

〈ムカイ・ヒナタを苦しめて来た貴方達……存分に報いを思い知るといい!〉

 

 怒りと憎悪のままに、クロヒナタはビームライフルの引き金を――引こうと。

 

 

 

 

 

〈――な……にっ〉

 

 けれど引き金を引こうとした直前、機体の動きが止まる。

 黒いジュピターヴガンダムが停止したのか。……いや。

 

〈ワタシの身体、いえ……憑りついた『私』の、ムカイ・ヒナタの身体が……言う事を…………きかないっ!〉

 

 戸惑うようなクロヒナタ。俺は……思った。

 

 ――まさかヒナタが彼女を止めてくれた。……抵抗して、くれたのか――

 

 ついそんな、少し都合の良い事を考えた。……けれど今はそれよりも。

 クロヒナタが動けない今、俺のユーラヴェンガンダムは立ち上がって迫り、ビームサーベルを振った。

 

〈……っつ、がぁっ!〉

 

 ビームライフルを握っていた残りの腕も切り落とす。

 続けて、俺は切っ先を変えてビームサーベルの刃を細くする。

 

 ――パイロットは無事なまま、機体だけを完全に止める!――

 

 俺は――刃の先端を黒いジュピターヴの胴体を、動力部のみ狙って刺し貫く。

 

〈――!〉

 

 途端にジュピターヴは硬直して固まる。機体のアイカメラの光も、次第に薄くなり消えかかる。

 動力が停止しつつあるからだ。それに機体との通信まで、繋がりが途切れそうになる。

 

 

 

 今にも切れそうな通信。途切れ途切れに映るクロヒナタは無念の表情で項垂れて……最後に、こんな言葉が聞こえる。

 

 

 

〈ワタシは……貴方のために……っ。…………ヒナタ〉

 

 そこで通信は完全に途切れた。

 同時に、黒いジュピターヴガンダムはぐらりと傾いて仰向けに倒れ、そして――完全に機能を停止する。

 

 

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