【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
【エピローグ 表紙付き】 『Re:Connect』
あれから、数日後。
クロヒナタさんが引き起こしたコピーガンプラのGBN襲撃騒動は、もう落ち着いていた。
あちこちで暴れ回って、破壊行為を繰り返していたけれど……他のダイバーさん達が頑張ってくれたおかげで被害は小さい範囲で済んだみたい。被害を受けた場所もすぐに復興されて、今ではその被害の跡も綺麗さっぱり元通りになったって。
――誰も犠牲者だって出なかった。……ううん、ただ一人――
この事件を引き起こした張本人、私の姿と記憶を持った情報生命体、クロヒナタさん。
私とは別の、確実に存在していたもう一人の私。最後までビルドダイバーズと戦って……そして消えてしまった。
あんな事を起こした罰。そう言ってしまえばそれまでだけど、でも悲しくて、辛かったんだ。
――あんな事があってから、また日常に戻って来れたんだよね――
私も無事に意識を取り戻して病院からも退院、いつもの日常を送っていた。
今日は土曜日。部活の練習があって、今は家に帰る所なんだ。
――うーんっ、病院で長く眠っていたせいかな。まだ少し身体が固い気がするよ――
退院したばかりで、身体が本調子じゃない感じ。さっきの部活でもちょっと腕が鈍った気もするし。でも……。
――やっぱり外を出歩けるのって、気持ち良いよね。こうしてお日様の下で――
天気は晴れていて、外の帰り道を歩いて……私は改めて実感するんだ。
そんな中で――私は。
――ヒロトの方は、今頃GBNでみんなと一緒なんだろうな。楽しくしているのかな――
ヒロトはビルドダイバーズのみんなとGBNをしているって、私は聞いていたんだ。その間私は部活を……だけど。
――朝、ヒロトからその話を聞いた時、もう一つ気になる事も言っていたんだよね――
互いに家を出る前に、少しヒロトとも話したんだ。他愛のない話や今日どうするかだとか、いつもの話。だけど話の最後……彼は。
『……あのさ』
『うん?』
『今日の夜、7時過ぎくらいに時間とか空いているか? どうしても……ヒナタと話したい事があるんだ』
――そんな話をしてたっけ。場所はいつもの、あの海沿いの通りだって言ってたけど。どうしたのかな――
もちろんヒロトのお願いだもん、私はうんと答えたけど、どんな話なのか気になるんだ。
――多分、前のあの出来事についてかな。GBNでの出来事、大変だったから――
クロヒナタさんが起こした眠っている間に本当に、色々あったみたいだから。何があったのか、その事はヒロトから後で聞いたんだ。
……大変で、そして悲しくもあった出来事。その話の続きなのかな、もしかすると。
――そう考えている間に、到着したね――
考えながら歩いていると、私と……そしてヒロトが住んでいるアパートに到着したんだ。
――――
「……ちょっと、退屈だな」
家に帰って自分の部屋で、私は椅子に座ってぼーっとしていた。
机によりかかって、特に何かするわけでもなくて……ただ考え事をしながら。
――話、か――
ヒロトにも話があるみたいに私も、彼に話したい事があるんだ。
あの出来事は大きな事だけれど、私にはそれより大きな事がもう一つ、思っている事があるの。
――ヒロトとの関係も、私は……決着をつけたいから――
あの遊園地での告白。ヒロトと絆を深めたいって、幼なじみだけじゃない何か特別な関係にありたいって――イヴさんみたいに。
――告白の答えも聞いていないから。
だから彼と話をして、その答えが聞きたいんだ――
ヒロトも悩んでいるみたいだった。
私の告白にどう答えればいいのか。だって、彼にはもう大切な人が……イヴさんがいるから。
例えいなくなっても彼女と過ごした時間は特別で、それに今はGBNでイヴさんのデータを復元して、生き返るみたいだから。
本当に復元出来るのかは分からないけど、ヒロトの元にまたイヴさんが戻って来るかもしれない。
――ヒロトだってきっとそれを望んでいるはず。イヴさんが戻って、また一緒になれるのを。そしたら――
「……」
私からの想いはヒロトにとって負担になるかもって。そう思ったから私は一度諦めようともしたんだ。だけど、それでも諦めきれなくて。
――やっぱり、せめてヒロトが本当はどう思っているか知りたいんだよ。
私は諦めたくない。自分の気持ちに嘘はつきたくないから――
だから私の告白にうんと答えて欲しい。断られるのだって怖くて、嫌だって……思ってしまう。
自分勝手かもしれないけど、これが私の今の気持ちだから。
――会って話をするなら、私もその時に伝えたいんだ。改めて自分の気持ちを、ヒロトともっと絆を強くしたいって……せめてイヴさんと同じくらい――
私はそう思った――けれど。
――同じくらい、イヴさんみたいに……だけどやっぱり――
何だか違う気がした。彼女と同じ、それで良いと思おうとしたけれど、本当は私……。
――でも、そんな想いは、それこそ本当にヒロトにとって迷惑になるって思うから。
だから――
『これからは、もっと……他の人だけでナく、自分の幸セも考えて欲しいノ。
たまにはワガママ言っテも良いジゃない。……本当は自分がどうしたイのか、正直ニなっても、ねェ』
途端もう一人の私が、クロヒナタさんが消えてしまう前に言った言葉が、私の脳裏によぎったんだ。
正直に、自分にとって何が幸せなのか、望んでいるのか何なのか。
――私は――
多分それはずっと自分の心の何処かで望んでいた事だったのかもしれない。でも上手く形に出来なくて、それにヒロトに伝える事が迷惑になると思ったから。
だから想いを秘めて、自分でさえ分からなくなりかけていた。だけどね……私。
――後少しだけ、ワガママを言ってもいいかな。ヒロトに伝えたい事は最後まで伝えておきたいから。
自分でこれ以上胡麻化したくない、後悔もしたくないから。…………それに、もしかすると――
また拒絶されるかもしれない。でも、希望があるのなら私は、伝えられる限りの想いは伝えたいんだ
私のヒロトへの想いも、今ならもっと伝えられる気がする。
そう、だから――
――――
夕方の終わりに差し掛かった時間。
空もほとんど夜空みたいに暗くて、もういくつも欲しが瞬いて月も見えるくらいに。
そんな空の下、私は私服姿で家を出て、また街中を……少し駆け足で歩いていた。いつもの私服、今は変に着飾る気になれなかったから、何より恰好以上に自分の想いが大切だから。
この時間だと、ほとんど夜だもんね。通りの街灯も明かりが灯って、見える建物だって窓明りできらきらしているんだ。
――時間には少し早いかもだけど、いいよねー―
ヒロトよりも先に着いて待っていたいから。あの遊歩道、私たちがよく通るあの場所で。
いつも通い慣れた街中。私は通りぬけて、あっと言う間に――。
夜の空に、通りの樹々が揺れて、海の水面と向こうに映る二つの街並みが輝いて見えるんだ。
ようやく到着した。私は通りを歩いて辺りを見てみる。
――土曜日なのに、今日は人が少ないね――
いる人はまばらで、あんまりいない感じがする。ヒロトもここに来るんだよね。
――えっと、どこで待てばいいかな。たしかに少ないけど、恥ずかしいからあまり周りに人がいない場所で――
そう思いながら、歩いて彼を待つ場所を探していると。
――えっ――
すると目の前、他の人から少し離れた場所……遊歩道に生えている木の一本。他より少し大きめなその木の下に、よく見覚えがある人の姿があった。
誰かを待っているみたいな様子。……そこにいたのは。
――ヒロト! 私よりも早く来ていたなんて――
先に私を待っていたヒロト。彼も私と同じで、いつもの私服姿でそこにいたんだ。
ヒロトだって、そう分かった私は彼の元に駆け寄った。すると――彼も私に気づいて、驚いた顔を見せる。
「早かったじゃないか。ヒナタが来るのは、もう少し後だと思ったから」
「ちょっと、ね。早く待ち合わせ場所に来て、ヒロトを待ってみようかなって……そう思ったけど先を越されちゃった」
私はちょびっと照れ笑い。でも、少し悪くも感じちゃって。
「それにヒロトを待たせちゃったかな。ごめんね、私ももう少し早く来れば良かったかも」
けどヒロトは微笑んで首を横に振る。
「気にしなくても、俺もついさっき来たところさ。それに今だって約束した時間よりも10分早いんだ、全然気にしなくてもいい」
私とヒロト、互いに見つめ合って、それぞれ何も言えないでいた。
どっちも気恥ずかしくて……なかなか言葉が出ない感じ。
――私の想い、伝えないと――
そう思って、私は口を開くと――
「……今日は良い夜だね。涼しくて、気持ち良いから」
つい他愛もない事を話してしまった。けれどヒロトも同じ感じで。
「そうだな、良い夜だ」
でもそう言う彼は、どこか踏み切りをつけようとしているみたいで。……そして。
「……あのさヒナタ、今日ここに呼んだのは話があるからなんだ。
良かったら聞いてくれないか」
「あっ」
ついに話し出そうとするヒロト。
――駄目だよ、私から言い出さないと、言えないまま終わりそうだから――
今ここで、言わなくちゃ。
「それでさ、俺の話は――」
「待って! ヒロト!」
ヒロトの言葉を、私は止めた。
「――ヒナタ?」
いきなり呼び止められてはっとするヒロト。私は続けて彼に。
「私もヒロトに話したいことがあるの。どうしても……話したい事が」
「話……ヒナタも、なのか」
ヒロトは驚きと戸惑いが混ざったような表情を浮かべて、そしてどうしようかと考えているみたいで。
「よく分からないけど、ヒナタが真剣なのは俺にも理解出来る。
なら、その話から先に聞くよ。一体どんな話なんだ」
「えっと」
私はまた、言葉に詰まった。
ようやく勇気を出してここまで言ったのに、そこから先で止まってしまったんだ。けれど……。
「私は――あの時の」
けど、この時だけは自分に正直にしようって決めたんだから。自分勝手かもしれないけど、それでも今、この瞬間だけ。
「あの時、遊園地での告白の答えが聞きたいんだ。
私はヒロトの事が大好きなの。他の誰よりも一番大切な相手で、だからもっと強い絆で繋がりたいんだって」
「――ヒナタは」
そう、それがあの時、遊園地でヒロトで伝えた私の気持ちなんだ。
真っすぐ、私は彼に想いを伝えるの。
「ヒロトがイヴさんを強く想っているのも分かっているよ。そして、GBNでは彼女を生き返らせようとしていて、もしかするとまた一緒になれるかもって事も。
なのに、またこんな事を言って、迷惑かもしれないよね。でもヒロトを諦めたくないの、私だって想ってもらいたいから。
イヴさんと同じくらいに…………ううん」
ここまではあの時に伝えた想いのまま。
だけど、本当はもっと――ワガママだって思われたって構わない。
私は願っているのは……。
「本当は一番に私を、好きでいて欲しいんだ。
私がヒロトの事を誰よりも想っているから、きっと誰にも譲れないって気付いたから。
ヒロトが一途に想っている相手がイヴさんでも、その想いは譲れないんだ。彼女との思い出をヒロトが何より大切にしているって分かっているけど、それでも私は、ヒロトといた思い出が一番かけがえがないから」
想いを吐き出すたびに胸の鼓動が強く鳴って、苦しくもなる。けれど一度出した言葉は止まらない。私は本気の想いをヒロトにぶつけるんだ。
「だから、イヴさんに渡したく……ないんだよ。
自分勝手だって分かっているけど、でもヒロトには私の事を誰よりもずっと……ずっと、好きでいてもらいたいの。
ヒロトが好きだから。幼なじみだからってだけじゃなくて、男の子として私は…………『恋』をしているって分かったから」
こんな事を言うなんて初めてだった。恋――とっさに出て来た言葉。だけどその通り、私はヒロトに恋心を抱いていた。
上手く言葉に出来なかった想い。でもきっとそれが……答えなの。
彼には好きな人がもういるから。
だから私の願い、想いなんて届かないかもしれない。……その辛さだって感じる。今だって、泣き出しそうになるのを我慢しているんだ。
それでも、半泣きになりかけて、少し顔がくしゃくしゃになりながら私は――最後に告白する。
「ヒロトには、イヴさんがいるから。
無理を言っているかもしれないけど……でも! これが私の想いなんだ! 大好きなヒロトに一番好きだって思ってもらいたいの。
ヒロトの心を…………私は欲しいから――っ!!」
多分初めてだったんだ、こんなに自分のワガママをヒロトに言ったのは。
「ヒナタ、そんなに」
話を聞いていたヒロトの表情は、ショックを受けたみたいに茫然と、そんな顔をしていた。
どうすればいいのか、何て言えばいいのか考えているみたいで。私も彼の答えを待っていたんだ。
けれどヒロトはまるで、元々答えは決まってるかのような感じだった。
何か強く心に決めたみたいに、私を見つめると一言、言ったんだ。
「ごめん」
――やっぱり、そうだよね――
「そっか。……だよね、ヒロト」
ヒロトには無茶なお願いだったんだ。私がこんな事を言っても迷惑だったんだって、でも……。
後悔なんてしていない。迷惑かもしれないけど、今自分が思っている気持ちは全部伝えたから。
だから、もう私は。
そう思っていると……ヒロトは。
「ごめんヒナタ。君の想いに――――ずっと応える事が出来なくて!」
彼はいきなり詰め寄ると、私の手をとって握ったんだ。
私とヒロトの手と手、両手とも繋いで、私の目の前には彼の真っすぐな瞳が私を見据えていたの。
「もっと早く、ヒナタの想いに気づければ良かった。俺の事をそうまでして想ってくれたなんて、今まで。
なのに気づかないままで、でも! それでもやっと分かったんだ。君の想いがどれだけの物か……俺にだって」
ヒロトは私の気持ちを分かってくれた。だからこんな事を言うんだって、だけど。
「そう言ってくれて嬉しいよ。でも、私のために無理して欲しくはないの。
だってヒロトには好きな相手がいるって、分かっているから。だから」
その気持ちはもちろん嬉しくもあるよ。だけどヒロトにはイヴさんがいるんだ、それなのに私に無理して付き合わせるのは……やっぱり嫌だから。
私はそう思ったから。だけど、ヒロトは静かに首を横に振って……こう応えたんだ。
「――無理なんてしていない。
ヒナタの想いだけじゃない。俺が気づいたのは、俺自身の想いにも……だから。
確かに二年前から俺はイヴの事ばかりだった。GBNで彼女と出会ってから今まで、あの世界でイヴと経験した事はどれも新しいものばかり、俺にとっては何もかも輝いて、楽しく見えたから。
そして失ってからはショックで、なおさら彼女とその思い出ばかり意識して……ヒナタの事を置き去りにしていた部分があった。
あの間、俺はイヴ程にヒナタを想えてなかった。――認めるよ」
「……」
イヴさん程じゃないと、直接そう言われて胸が苦しくなった。だけど……ヒロトは
「でも――俺は分かっていなかっただけだった。
ずっとはっきりとしていなかった。小さい頃から傍にいて、ヒナタといる事が俺にとってはあまりに日常で当たり前の事だったから。
俺にとってヒナタの事も、君との思い出も、どれだけ大切なのかはっきりしてなかった。分かっていないまま、俺はイヴとの思い出ばかり大切にし続けていた」
ヒロトもまた、私に想いを伝えていたんだと。
そして――。
「だけど! ヒナタの告白を聞いて俺も分かった。今まで形にならなくて、はっきり気づかないないままだったけれど…………俺にとってヒナタの存在がどれだけ大切だったのか。
ずっと当たり前だった日常の思い出、いつも俺を想ってくれてくれたヒナタは、本当はずっと……何よりもかけがえのない存在なんだ。
当たり前だったから。いや、当たり前だからこそ俺にとってなくてはならない大切な存在だって」
何よりもかけがえのないって――私を。
「本当に、そう思ってくれてるの。ヒロト?」
ヒロトからそんな風に言われるなんて思っていなかった。動揺していた私に彼は、こくりと頷いてくれた。
「……勿論だ。
だからこそ俺は今日ヒナタを呼んだんだ。君に対する想いを、伝えたかったから。
確かにイヴの存在だって大切だ。沢山の思い出をくれた大切な……友達だから」
だけど――。彼はこう言うと、身体ごと私に顔を近づける。
息が振れて感じるくらいに近い距離。ヒロトはそのまま私に伝えてくれる。
「ヒナタはもっと俺にとって特別で、それこそ……一番に大切な人なんだ」
「そう、なの? 私で……いいの?」
「もちろん、それが俺の決めた答えだから。
気づくのに遅くなってしまった。君の事も、たくさん傷つけてしまったかもしれない。……けれど、せめて。
ヒナタからの告白に今出来る――最高の形で応えるから」
「――!」
ヒロトの言葉と同時だった、彼の唇がそっと私に触れたのは。
唇と唇が触れ合う、柔らかくて暖かい、優しい感覚。私はヒロトと――キスをしているんだって。
私は頭が真っ白いなりそうだった。
多分、ほんの一時。私にキスしたヒロトは静かに唇を離すと、彼の表情は照れているみたいに赤くなっていて。
「キス――して、くれた。私に」
「どうかな……ヒナタは知らないかもしれないけど、君とキスしたのは初めてじゃないんだ。
君が意識を失っていた時にも俺はこうしたんだ。けど、今はヒナタに分かってくれたら。…………もう幼なじみだけじゃないって言う俺の想いが、少しでも」
「私は……私、ヒロトを……っ」
想いがあふれてどうすればいいか、何を言えばいいか分からなくなる。
何か強い感情で心がぐちゃぐちゃになりそうで、私は……。
「ひぐ……っ、うわぁぁぁあっ!」
私はヒロトの胸に顔をうずめて、激しく泣きじゃくった。
想いや言葉の代わりに涙と泣き声ばかりが出てしまう。自分ではもう、どうしようもないくらいに。
「ヒナタ……俺は」
「……本当にいいの? 私が……ひぐっ、そんな想いを受け取って…………っ」
「――もちろん、もちろんだ」
「ぐすっ、ヒロトが……そう言ってくれるなんて、キスだって……ううっ、思わなかったから……っ、だから――」
何とか言葉に出そうとしても、それでも涙声が混じって上手く言えない。
そんな私を、ヒロトは優しく抱いて、撫でてくれる。
「もう君を悲しませたり、傷つけたりなんてしないから。だから……今は好きなだけ泣いてくれ。
今までの辛い事や悲しい事も、俺はこうして受け止めるから」
私は彼の胸の中で泣きながらうんと頷いて、気持ちが落ち着くまで、後はただ……泣き続けたんだ。
あれからしばらくの間泣き続けた私。でも、ヒロトのおかげで、ようやく今落ち着いたの。
「もう、大丈夫かな」
「……うん」
思いっきり泣いたせいで気分は大分良くなった。けど、顔はくしゃくしゃになってひどい顔で、目だって泣きはれて少し痛む。
「ごめんね、ヒロト。こんなになっちゃって……上着だって濡らして」
「俺は全然気にしてないよ。そんな事より、ヒナタの気分が晴れたみたいで良かった。
本当に、何より」
ヒロトの優しい言葉。あんなに泣いた後だけど私はそれが嬉しくて、表情がゆるんでしまう。
そんな私に彼も、微笑みを返してくれる。
「ヒナタの笑顔、やっぱりそれが一番だよ。俺にとっても君の笑った顔が、何より宝物だから」
「……嬉しいよ、そう言ってくれて」
私とヒロト、今度は一緒に笑い合う私たち。
「さっきは泣いちゃったけど……それだって私は嬉しかったからなの。ヒロトが私を一番だって、特別に想ってくれたのが。
……私が願っていた事だけど、どこかで諦めてもいた、そんな願い。ヒロトはそれを叶えてくれるんだよね」
ヒロトは勿論だって、答えてくれる。
「――今までは幼なじみだったけど、これからはもっと特別な関係に。
俺とヒナタ、改めて互いの絆を繋ぎ直すんだ。ずっと強い……絆へと」
――絆を、繋ぎ直して。もう私たちは幼なじみだけじゃなくて――
「ヒロト……」
「うん?」
「それって、私たちは…………恋人、なのかな」
私はヒロトに、ふと聞いたんだ。
すると彼は私に、にこっと一番の笑顔を見せくれる。
「その通り、俺とヒナタはこれで恋人同士だ。恋人として、これからもっと――絆を深めて行こう」
ああ、私の願いはようやく叶った。想いが届いたんだって。
……ようやく。
「それなら……私、お願いがあるんだ。ヒロトと恋人になって初めての、お願い事」
「ふふっ。ヒナタの、素敵な恋人からのお願いなら断れないな。
一体どんなお願いなんだ、叶えられる事なら何だって聞くよ」
「良かった! 私のお願いはね――またヒロトと、キスしたいの。
さっきはヒロトからだったけど、今度は二人で、一緒に」
ヒロトは微笑んで頷いた。
「さっきキスしたばかりだから照れるな。
けどもちろん……喜んで。今度は一緒にしよう、ヒナタ」
「うん――ヒロト」
私たちはもう一度、今度は互いに近づいてキスをしようとするの。
夜空の月と星空、その薄明かりの下。
恋人として私とヒロトは、互いの想いを伝え合うように――――また二度目の口付けを交わしたんだ。