【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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 番外編二作目、今回はようやくエルドラ回、かな。本編ではほとんど関わる機会がなかったので


番外編その二 遠い星の、空の下で。

「ふふふ――ん!」

 

 自分の部屋で一人、私は上機嫌でいたんだ。

 鼻歌まじりで鏡に映る自分の姿を見て、つい幸せで。

 

 ――ヒロトからの髪留め、新しくプレゼントとして貰っちゃった――

 

 前髪に留めたきらりと光る髪留め。もう何度も鏡に映る自分を見てしまうんだ。

 少し前にヒロトがプレゼントしてくれた贈り物。あまりに嬉しくって、その日は殆ど眠れなかったり……ね。

 しばらくたった今でも、こうして……つい。

 

 ――やっぱり嬉しくて堪らないんだ。このプレゼントだって、それに……この間GBNでの、デートも――

 

 つい昨日の事なんだけど、私はヒロトと一緒にGBNでデートに行ったばかりでもあったんだ。彼が私のために色んな所に連れて行ってくれて、打ち上げ花火のサプライズも用意してくれたの。それに――

 

『一緒に新しくGBNでも沢山の思い出を作って行きたい。俺とヒナタ、二人にとって一番大切になる思い出をこれから』

 

 言ってくれた言葉も、それにキスだってしてくれたから。私は感激していて……だから。

 

 ――これからヒロトと沢山、二人で特別な思い出、作っていきたいな――

 

 そんな事を夢見心地で考えていた私。だけど丁度その時、近くの時計を見てはっとなった。

 

 ――あっと、今日はカフェのアルバイトなんだよね。こうしていられないんだ――

 

 ふとこの事を思い出して、私は急いでアルバイトに出掛ける準備をするんだ。

 恋だって素敵だけど、いつもの日常だって励みたいから。それに……。

 

 ――何だか前よりもずっと、気持ちだって軽くて良い気分なんだ、私――

 

 

 

 ――――

 

「いらっしゃいませ! ご注文は何になさいますか?」

 

「……なら、このアッガイカレーを頼もうかな」

 

「アッガイカレーですね! かしこまりました!」

 

 私は学校と部活以外に、こうしてガンダムカフェの従業員としてアルバイトもしているんだ。

 それなりに長くやっているからもうずいぶん慣れたって言うか。後やっぱり、アルバイトもまた楽しいもん。

 こうしてお客さんと触れ合ったり、楽しい雰囲気……どれも全部。

 

 

「やぁヒナタちゃん! 良い調子じゃないか」

 

 お客さんの注文も一通り聞き終わって、ちょっと手が空いたとき、店長さんが私に声をかけたの。私は元気よくこたえたんだ。

 

「はい! 何だか……ずっと嬉しくて、幸せな感じがして、絶好調なんです」

 

「うんうん、それは何より!」

 

 店長さんは良い笑い声をあげて、私に笑顔も見せてくれる。

 

「あの時、ヒナタちゃんが意識を失って病院に運ばれた時は心配だったけれど……今は前よりも元気になったと言うか。

 見ているこっちも、明るい気分になれるよ」

 

「ふふっ、ちょっと……ううん、とても嬉しい事があったから!

 店長さんにも前に話したよね。私はヒロトと――」

 

 

 

「ああ、そうだったな。……ははっ」

 

 店長さんもそう言って、ようやく安堵したみたいに微笑んでくれた。

 

「にしても、本当に驚いた。もしかして、いつかとは思ってはいたけれど、こんなに早くヒロトと付き合う事になるだなんて。

 実に、いやとても、めでたい事じゃないか」

 

 そう言われると……私だって。

 

「うん。凄く――良かったんだ。私はヒロトと、一緒になれて」

 

 

 

 ――――

 

 店長さんとこんな風に話をしていた時だったの。

 カフェにまた、新しくお客さんがやって来るのが見えたんだ。人数は三人くらいで、友達同士とかなのかな。

 扉が開いてやって来た店へのお客さんは――。

 

「来たよ、ヒナタ」

 

 店に来てくれたのはヒロトだったんだ。それに、他のお客さんも

 

「おう! 俺たちもせっかくだからな、ここでオフ会しようかって」

 

「少しいきなりだったかもしれませんね。前もって話しておけば、よかったのですが」

 

 ヒロトと一緒に来てくれたのは、金髪で快活そうな小柄の男の子と、車椅子にのった褐色肌で優しい雰囲気の、気品の良い男の子だった。

 二人は現実世界でのカザミさんとパルくん。こうしてリアルで会うのは、久しぶりかも。

 

「みんなでこうして来たんだぜ。ヒロトと俺、それにパル……もちろん」

 

「私も、ここにいるとも」

 

 パルくんの右肩からもう一人、小さな人影がこっそり顔を覗かせたんだ。

 緑色の可愛いドレスを着ている、小人さんみたいな女の子……それはメイさん。ELダイバーは現実世界では人型のガンプラの身体で活動しているから。でも、GBNではクールで格好いいけど、こうしてみると可愛いかな。

 

 

 

 みんな勢ぞろい。ヒロトは少しばつが悪そうに頬をかく。

 

「いきなり過ぎたか? こうしていきなりみんな連れて来てしまって、悪い。

 ヒナタに迷惑を……かけてしまったかもしれない」

 

 そんな風に言う彼だけど、私は全然大丈夫なんだから。

 

「平気だよ、全然! それにこんなにお客さんも沢山で……嬉しいんだ。

 みんないらっしゃい、どうかゆっくりしていって下さいね」

 

 私は笑顔でヒロト達みんなを席に案内しようと……すると。

 

「ヒナタちゃん」

 

「うん?」

 

「せっかく来てくれたんだ。先に少し休憩をとるのはどうだい? ……大丈夫、少しぐらい手が空いたってカバーは出来る」

 

 店長さんの心遣い。嬉しかったけど、でもやっぱりいけないかも。

 

「そんな、私は――」

 

「いいからいいから! ささ、みんなはこっちの席に。……ヒナタちゃんは」

 

 そう言って店長さんは私を、ヒロトのすぐ隣に座らせてくれたんだ。

 

「やっぱり二人とも――お似合いのカップルだ! だろ? ヒロト!」

 

 隣り合って並んで座る私と、それにヒロト。これにはドキッとしちゃうし……私の方は申し訳なく思ってしまう。

 みんなの前でこんな風にされて、もしかして迷惑かなって。そんな風に思っている中で、ヒロトは私に。

 

「まぁな。俺にとって、本当にかけがえのない彼女……恋人だから」

 

「――!」

 

 私に向かって笑顔で、ヒロトはそう言ってくれた。ちょっと照れているけれど、でも本心から言ってくれてるって分かるから。

 

「おいおい! 二人とも照れている感じじゃないかよ……これは」

 

「カザミさん! また余計な事を」

 

「っとと、そうだった。すまん、前にも似た事」

 

「ふふっ、仕方がないな」

 

 カザミさんとパルくんはそう話していて、メイさんもそれに可笑しそうに笑っていた。そして

 

「でも言う通り、やはり――似合っているとも。それこそ良い、カップルとも言うべきか」

 

「それは、メイさんの言う通りです! こうして並んでいるのを見ると僕でも……ああっ、僕まですみません。

 ヒロトさん、それにヒナタさんも、もし余計な事を言ってしまっていたら……」

 

 パル君は慌てて謝っているみたいだけど、傍でヒロトは私を軽く抱き寄せてこう言ってくれた。

 

「最初は確かに恥ずかしくて堪らない部分もあった。でも、それ以上にヒナタとこうして一緒にいる事に――満足しているから

 やっぱりまだ照れるけど、それでも」

 

「……ヒロト」

 

 私も何か言えれば良かったけど、今は彼の言葉で心が一杯になって、返事が出来ないでいたの。

 

 ――私だって、まだ照れているんだよ。ヒロトだって照れているけど、あんな風に言ってくれて……私は――

 

 もっと、私だって彼に想いを伝えたい。だって前よりも関係が親密になれたから、私自身ようやく気づいたヒロトへの『好き』だって想いを、もっと、もっと伝えたくて。

 

 ――だってそれだけ私は、ヒロトの事を想っているから――

 

 まだ伝え足りないから。恋人になれても私はまだ、全然。

 

 

 

 そんな風に思っていると、カザミさんはこんな事を話したの。

 

「……ちなみにさ、ヒナタちゃん。ヒロト達には先に話したけれど、俺達はこれからみんなでエルドラに行こうと思っているんだぜ」

 

「エルドラ……あの、星に?」

 

 エルドラ、ヒロト達みんなが力を合わせて救った、星の名前。ずっと遠い場所だけど、GBNを介してあっと言う間に行けるんだ。

 

「そうです。全員都合が合いましたから、久しぶりにエルドラに行って、フレディさんやマイヤさん達みんなに会えればと。

 ヒナタさんはアルバイトがあるみたいですから……終わるまで待ちますので」

 

「俺達全員で、あの星に。どうかなヒナタ?」

 

 パルくんも、そしてヒロトもそう言ってくれている。みんなと一緒にエルドラに……良いな。

 私の答えは、もちろん。

 

「うん! みんなで一緒に、行ければ」 

 

 メイさんは私の答えに、ふっと微笑みをパルくんの肩から投げかけた。

 

「それでは決まりだな。私たち五人全員でエルドラに向かおう。

 ……けれど」

 

 と、彼女は私たち全員を見まわすと。

 

「せっかくヒナタのカフェに来たんだ。しばらくここで過ごしてからに――しようか」

 

 それに店長さんも、私たちの会話を聞いていたみたいでこんな事を言ってくれる。

 

「ああ! ヒナタちゃんもみんなと一緒に、存分に、今はお客として過ごして欲しい。

 だっていつも頑張ってくれるからな。それに今日は早く上がってもいい。……もし良ければで、構わないが」

 

 店長さんの優しい気づかい。私は――。

 

 

 

 

 ――――

 

 あれからカフェで過ごした後、私たち五人はGBNにログインしてそして……エルドラに行ったんだ。

 

「うーん! この空気、エルドラに来たって分かるぜ」

 

 到着したエルドラの平原を見まわして、カザミさんはぐっと背伸びして深呼吸している。

 

「みんな、元気にしているだろうか」

 

 ヒロトはふと呟くと、メイさんがふふっと表情を緩めてこたえる。

 

「おいおい、確かに久しぶりかもしれないが……そこまで日を置いているわけじゃない。

 きっとみんな元気に――」

 

 

 

「ヒロトさん達、皆さん!」

 

 すると岩陰の向こうから元気な男の子の声が聞こえたの。やって来る小さな人影、茶色いふわふわな毛の長い耳と尻尾が生えた男の子――フレディくんが。

 

「パル、まさかここにいたなんて」

 

 少し驚き気味のヒロトに、フレディくんはにこっと笑顔を見せる。

 

「よくこうして一人、来てしまうんです。皆さんがいつ来るかって思うと……つい」

 

「そんな風に思ってくれているなんて、嬉しいですね」

 

 パルくんもフレディくんに笑いかけてそう答えるの。

 

「とにかく――ビルドダイバーズの皆さん、ようこそお越し下さいました!

 今日もぜひ、ゆっくりして下さいね」

 

 

 

 ――――

 

 それから私たちはフレディさん達の村に行って、歓迎されたんだ。

 こうしてエルドラに来るの、いつもみんな歓迎してくれるの。……何回されても嬉しいものだよね。

 今日は――。

 

 

「……と、言う事だから俺はこれで!」

 

「カザミと一緒に、二人でね! じゃないと今度いつ会えるかどうか分からないから」

 

「ははっ、ちょっと二週間くらい来れなかったくらいで大袈裟だぜ」

 

「むぅ! それはどう言う意味!」

 

 村から少しだけ外れた場所で。

 カザミさんとマイヤさん。二人はカザミさんのイージスナイトの前でそんな風に話していたの。

 

「今日は二人でエルドラを旅して……と言う事なんだな、カザミ」

 

 ヒロトの言葉に、カザミさんはああと答えた。

 

「みんなとは別行動になるが、次来たら――マイヤと一緒に過ごすって決めていたからな」

 

「そうですか。なら僕は……マイヤさん」

 

「ん? どうかした?」

 

 パルに対してマイヤさんは首をかしげる。

 

「お二人が出かけている間、僕が子供達を見ていても……いいですか?

 せっかくですから時間一杯、遊んでいるのもいいかなって」

 

 そんな彼の提案。マイヤさんは良い提案って言う感じの表情と、両手を合わせると。

 

「なら――お願いしちゃおうかな! パルくんの事、子供達はみんな大好きで気に入っているから

 それじゃあ、宜しくかな」

 

 

 カザミさんはマイヤさんと、二人の乗ったガンダムイージスナイトはエルドラの空を飛んで行くんだ。そして――。

 

「それでは、僕も失礼しますね。あまりみんなを待たせたくありませんから」

 

 パルくんも私たちに一礼すると、そのまま村の方へと戻って行く。

 そんな中で、ここに残っているのは私とヒロト……それにメイさん。

 

「――ふむ。二人とも行ってしまったか」

 

「あの、そう言えばメイさんは今日どうするかとか、あるのですか?」

 

 ちょっと気になって、私はメイさんに声をかけた。

 

「もしかして、私とヒロトさんと……一緒に、かな」

 

「それでも良いとは思いもする。けれど、生憎私も先約があってな」

 

「先約って?」

 

 そう私が聞いた時だった。少し離れた所からジープが走って来るような、音が聞こえた。メイさんはこの音を聞くとふっとおかしそうな顔を浮かべる。

 

「噂をすれば何とやらか。迎えが来たようだ」

 

「よぉ、メイ! 約束通り来たぜ」

 

「あそこに行くんだろ? 案内してやるぜ」

 

 走って来たジープ、乗っていたのは元レジスタンスの人たちだった。

 少しのっぽで、太っちょな男の人が二人。彼らはヒトツメからエルドラのみんなを守るために戦った、レジスタンスのメンバーなんだ。

 もうヒトツメの脅威はなくなって平和になって、レジスタンスも必要なくなってもう普通のエルドラの住民になったけど……でもどうして?

 

「ヒナタにも、ヒロトにも伝え忘れていたな、そう言えば。

 実は彼らが古の民の遺跡に案内をしてくれると言う。だから、私としても気になってな」

 

 古の民。それはフレディさん達の種族よりも前にこのエルドラと言う星に暮らして文明を築いていた古代の種族。ずっと高度な文明で、惑星の軌道エレベーターや、エルドラの月に巨大なステーションと人工知能を作れてしまう程に。

 今はもう古の民はいないけれど、そのデータがGBNに流れ着いてメイさんたちELダイバーに生まれ変わったって……そんな事も考えられるみたいだって。

 

「古の民の事、私はもっと知りたいと思った。

 だから彼らに頼んで遺跡を詳しく案内してもらえたら……と」

 

「そうか。その気持ちは俺も分かる、ならメイも別行動だな」

 

「そう言うことだ。じゃあなヒロト、それに――」

 

 ジープに向かおうとするメイさん。彼女はふと私の傍に近づくと。

 

「ヒナタ、こんな時だからこそ……ヒロトとエルドラでの時を、一緒に」

 

「……メイさん」

 

 そう伝えると彼女はジープに乗って、行ってしまった。

 

 

 

 メイさんも行ってしまって、今は――ヒロトと。

 

「私はどうしようかな、ヒロト。みんな行っちゃって、どうしたらいいか分からなくて」

 

 そう彼に聞いてみる。けれどヒロトも頬を掻いて、考える素振りを見せると言うんだ。

 

「実は、俺も何も考えていないままだ。

 けれど、せっかくだから……何かヒナタと一緒に過ごせたら」

 

「……うん。そうだね」

 

 ヒロトと一緒に居られたら、私は。けど、これからどう過ごそうか、私たちは何も考えていなかった。

 

「どうしようか、とりあえず村に戻ろうか。

 思いつかなければ今日はそこでゆっくりしておけばいいから」

 

 そんな風な提案を、彼がした時だった。

 

「皆さーん!」

 

 村の方からフレディくんが手を大きく振って、私たちの所に走ってくるのが見えたんだ。

 走って、近くに辿り着くと、とても急いで来たのか軽く息切れをしているみたいだった。

 

「フレディくん、大丈夫?」

 

「あはは、つい急ぎすぎてしまいまして。でも――」

 

 私と、ヒロト。フレディくんは私たち二人の顔を交互に見ると。

 

「カザミさんに、パルさん……それにメイさんもいないのですね

 ……お二人だけですか」

 

「何だか悪いな、三人ともそれぞれ用事があるみたいなんだ。

 今暇なのは俺達二人なんだ」

 

「そうですか。けど、用事があるなら仕方ないですね」

 

 ちょっと寂しそうなフレディくん。でも、彼は続けて……こんな事を話すんだ。

 

「でも、ヒロトさんにヒナタさんがいるのでしたら!

 ――少し離れた場所になりますけど、あの山の向こうで珍しいものが見れるんですよ。ですから僕が案内しようかな……と。

 本当はみんなに見て欲しかったのですが、せめてヒロトさんたち二人に、ぜひ!」

 

 私とヒロトは、互いに顔を見合わせた。

 

「……みたいだな。何も予定がなかったんだ、俺は丁度良かったと思うけど、ヒナタはどうかな」

 

「私も――良いよ。フレディくんと三人で、見に行こう」

 

 フレディくんのおかげで、私たちもする事が見つかったんだ。何だか。とても安心したな。

 

 

 

 ――――

 

 私とヒロト、フレディくんの三人はコアガンダムⅡに乗って、さっき示した場所へと

 

「――あともう少しです。目の前の山を越えたら、もうすぐですから!」

 

 コックピットの中で、少し興奮気味にフレディくんは目の前に映る山を指差す。

 

「分かっているから、あまり身を乗り出さないでくれ。揺れたりしたら危ないから」

 

「あっ、ごめんなさい、つい気になってしまって」

 

 フレディくんにそう話していたヒロト。それに私にも、顔を向けると。

 

「ヒナタ、三人だと狭いかもしれない。窮屈とかじゃ……ないか」

 

「ううん。私は全然平気だよ。気を遣ってくれて、ありがとう」

 

 確かに二人より三人の方が窮屈かもしれないけど、私は大丈夫。……ヒロトの気を遣ってくれる優しい言葉、それだけでも私は幸せだから。

 

「なら良かった。それにフレディの言うように、もうすぐ着くみたいだから……楽しみだ」

 

「そうだね。またヒロトと一緒の、素敵な思い出が出来たらいいな」

 

 

 

「ヒロトさん……ヒナタさん」

 

 フレディくんは私たちの事を、何だか意外そうに見ているみたいだった。

 

「ん? どうかしたか?」

 

「いえ……その、お二人の様子が前と違う感じがしまして。何だか距離感と言うか、関係が以前より……近いと言うのかな」 

 

「――えっと」

 

「それは……」

 

 そう言えばまだ、フレディくんにははっきりと教えていなかったな。

 私も、それにヒロトもどう答えればいいか迷ってしまう。だってフレディくんはそうした事を知らない感じだから、上手く説明できる自信だってないし……そう良い説明が出来るくらい、私たちの関係も慣れてもいないから。

 ヒロトは複雑そうな、困った顔をしている。私だって同じような顔をしているって、自分で分かるの。私はちょっとだけヒロトと顔を示し合わせる、どうしようかって……互いに考えて、私はフレディくんに答えるの。

 

「えっとね。フレディくんには後で説明してあげるから。今すぐは……ちょっと」

 

「えー! そんな風に言われると、余計気になってしまいますよ」

 

「まぁまぁ。少しフレディには早いと言うか、難しい事だから、な」

 

 ヒロトもフォローしてくれる。やっぱり、フレディくんには多分早いよね。

 

「もう、ヒロトさんまで! 僕だってもう成長したんですから。早くなんて……」

 

「けふん……それよりも今は、ほら――もうすぐ山を越える。フレディの言っていた場所も、そろそろ」

 

 軽く咳払いをして、ちょっとごまかす感じでヒロトは前を見るようにフレディくんに、そして私にも促す。

 そこに広がっていたのは。

 

「成程な、フレディが勧めた理由も分かる。

 だって――あんなに綺麗な場所だから」

 

 フレディくん、私も前に見える景色を見た。

 

「……わぁ」

 

 ヒロトの言う通り……綺麗で素敵な場所だったんだから。

 

 

 

 ――――

 

 着陸したコアガンダムⅡから降りた私たち。

 そこは――色とりどりの一面の花畑だったんだ。

 

「これは全部、地球じゃ見た事がないお花ばかり。……どれも綺麗だよ」

 

「ヒナタさんに気に入って貰えてよかったです! ここのお花、丁度この前が開花時期だったんです。だから今が一番綺麗な場所なんです」

 

 フレディくんは自慢げに私にそう伝えたんだ。でも、彼がそんなに得意げなの、分かる気がするな。

 だってそれだけ、ここは――。

 

「エルドラに咲く花……か。確かに、俺もこんなに沢山の花が咲いているのはここでは初めて見る気がする。

 フレディが自慢したい気分なのも、分かる」

 

「ありがとうございますヒロトさん! 皆さんにはぜひ、見て貰いたかったんですから!」

 

 本当に……良い場所だったんだ。

 

「ねぇ、一緒に歩こう――ヒロト」

 

 私はヒロトのすぐ隣に来て手を繋いだんだ。

 こうするの、今でもちょっと勇気がいるんだ。いつかこうした事も全然自然に出来れば、それだけヒロトと関係が当たり前になれたら、いいよね。

 見るとヒロトも少し赤面しているけれど、それを普通に受け入れてくれた。

 

「そうだな、ヒナタ。

 もちろんフレディも一緒に、この景色を見てまわろうか」 

 

「うーん、やっぱり二人とも……??」

 

 フレディくんはそんな私たちに不思議そうな眼差しを向けているけど。

 

「まぁ、気にしなくても大丈夫――ですね!」

 

 

 

 ――――

 

 フレディくんが教えてくれたエルドラの花畑。

 見た事のないくらいに綺麗な花畑の中を、私はヒロトと手を繋いで歩くんだ。

 

「エルドラには何度か来たけど、こんな景色は初めてだよね。

 こんなに色とりどりの花畑、ヒロトはどう思うかな?」

 

「俺もこんな風に花が咲いた場所なんて、見た事がない。GBNでも花畑はあるけど……ここはまた違うから」

 

「そうなんだね。GBNの世界も美しいものばかりだけど、エルドラの世界もいいな。

 みんなが守った世界だもんね。本当に、良い所だよ」

 

「だと思う――俺も。それに……」

 

 ヒロトも景色に見とれているみたいだった。そんな中で彼は、こんな事を話したの。

 

「それに……改めて思う。世界はこんなに鮮やかで、色あせてなんていたわけじゃないって。

 ずっとこんなに綺麗で、ただ、それを見ようとしていなかっただけだ」

 

 ふいに話した彼の想い。

 

「ああ――本当に、いいな。こんな風に俺も、思えるなんて」

 

「ヒロトさんも、ヒナタさんも、喜んでくれて嬉しいです。

 この場所はエルドラでも指折りで素敵な場所だって、僕も思いますから」

 

 フレディくんもニコニコしながら話していて、それに……本当に気持ちよさそうにしているヒロト。 あんな風にしているのを見ると私も胸の中が温かくなる感じがするの。

 でも、同時に私の心には、ほんの少し葛藤もあった。

 

 ――こんな時こそ、私もヒロトに伝えたいんだ。自分の気持ちを少しでも――

 

 どんな形でもヒロトに。髪飾りのプレゼントや、GBNのデート……ヒロトにそんな風にされてばかりだから。

 私も彼に、何か出来たらと考えて……私は。

 

「あのね――ヒロト」

 

 私はヒロトに、そう声をかけたんだ。

 

「一体どうしたんだ、こんな時に?」

 

「私……本当に幸せなんだよ。あれからもっとヒロトから色んな事をしてもらって、前よりもずっと。

 聞き飽きたかも、しれないけど」

 

 幸せだって、もう何度も伝えたかもしれないけど。でも、言わずにはいられなかった。それに――。

 

「言っただろ、これからはちゃんとヒナタの事を見ていたいって。

 世界の色と――同じなんだ。ずっと知らないままでいたから、ヒナタの事を。君の想いと、それに俺にとってどれだけの存在だったのか……何も。

 だからこそ、これからは」

 

「うん。ヒロトの想い、分かっているよ。でもね……」

 

 私は改めて自分の想いを、伝え直すの。

 

「私だってヒロトが一番に大切な人だから。今までだって、もちろん、これから先だって」

 

 私のヒロトに向ける想いは変らないから。……ううん。

 

「だけどね、これからは私だってもっと、ヒロトの支えになりたいの。

 向けてくれる想いに負けないくらい私も……誰より傍で、ヒロトを幸せに出来たらって」

 

 そんな私からの伝える想いと、出来ることなんだ。

 勇気を出して伝えた事、そして――これからも私だって、ヒロトに沢山伝えていけばいいだけだから。

 誰よりも近くで助けになれたらって、私だって彼を幸せにしたいって。

 

 

 私の伝えられた言葉。それを聞いたヒロトは目を丸くしていた。

 だけど、彼は大きく屈託のない笑顔を見せると。

 

「とても嬉しいよ、ヒナタ。

 もちろん、俺だって…………」

 

「もう! さっきから僕を置いて、二人だけで話してばかりでつまらないです!」

 

 ヒロトは何かまだ言おうとしていたけど、そんな時にフレディくんがむすっとした顔で間に入ったんだ。

 

「せっかく三人でいるんですから、僕もヒロトさんとヒナタさんと話したいんです。

 もっと、僕ともお喋りしてください!」

 

「……おっと、悪い悪い。もちろんフレディの事も忘れてなんてない。

 せっかくこんな良い所に連れて来てくれたんだ。ここで一緒に楽しく過ごそう、フレディも、もちろんヒナタも」

 

 あはは……良い所で、フレディくんが入って来ちゃったかな。一体何て言おうとしたのか、気になるけれど。

 

 

 ヒロトはフレディくんと話している中で、私に……照れたようにウィンクしてくれたのが見えた。私は――

 

 ――ヒロトが言おうとしたこと、多分……分かった気がするな。

 これからも二人で想いを伝え合えればいいな。どっちかだけじゃなくて、お互いに――

 

 

 そんな風に願って私の心はまた、とても暖かくなるんだ。

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