【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
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イヴ……あの子の名前、きっとそれがそうなんだね。
「ヒロト!」
――ちゃんと聞かないと。
私は勇気を振り絞る。
ただあまりにもいきなり過ぎたのかな。ヒロトは少し驚いた顔で、私を見た。
「えっ、一体どうしたんだ?」
「ヒロトが話したイヴさん……それって、部屋の写真の女の子だよね。
……ヒロトにとって大切な人なの?」
そんな私の問い。これに頷いて、答えるヒロト。
「ああ。俺にとってとっても大切な、そんな人なんだ」
――やっぱり。
薄々、分かってはいたんだ。
二年前、ヒロトにはとても大切に思っている、そんな人がいるって。
ヒロトの部屋にはその写真が。コアガンダムを背景にヒロトと一人の女の子が一緒にとても……そうとても、幸せそうにしている写真があった。
白いドレスに綺麗な金髪をした、とても可愛い女の子。
きっと凄く仲が良かったんだ。
だけど同じ二年前にヒロトは元気がなくなって、それからずっと笑うことがなくなっていたんだ。
ある雨が降っていた夜、私がアパートの外に迎えに行った時に自分のガンプラを握って、雨に濡れたまま外に立ち尽くしていたヒロト。
とても傷ついたような、痛々しいあの姿。今でも忘れられない。
あれから、ずっとヒロトは元気をなくしていた。
きっとその女の子と関係があるんだと、私は思った。だけど……聞けなかった。
もし私がその事を聞いたら、ヒロトをさらに傷つけてしまうと思ったから。
……ううん。それもあるけど、何だか怖かったんだ。
ヒロトと、あの女の子とは一体どんな関係だったのか。それを知ってしまうのが。
変だな、何でなのか上手く言えないけど、私もずっと怖かった。
だからエルドラの事でヒロトが元気になってからも、ずっと聞けないでいた。
けど――
「大切な人なんだね。
ねぇ良かったら私にも、イヴさんの事を教えて欲しいんだ。
私もヒロトと同じくらい……知りたいから」
私は彼に言った。
ヒロトの想い人である、イヴさん。彼女のことを今はちゃんと、知らなきゃって。
――そう思ったから。
「……」
ヒロトは少し、どうしたら良いのか戸惑っているように見えた。
だけど何か決意したような、そんな顔を見せて彼は、口を開いた。
「イヴは二年前、GBNで出会った俺の友達だ。いや……それよりももっと大切な人なんだ。
彼女は俺にGBNの楽しさを教えてくれて、二人でその広い世界の、たくさんの場所を巡った。
このコアガンダムの、プラネッツシステムだってイヴと一緒に作ったものなんだ」
そう言ってヒロトは、コアガンダムを思い出深そうに眺めた。
コアガンダム。普通のガンプラよりも小柄なこのガンダムは、状況に応じて色々なアーマーを身体に取り付けて戦うんだ。
アーマーはそれぞれ太陽系の惑星をモデルにしていて、基本形態のアースアーマーを装着したアースリィガンダムに、近接戦闘形態のマーズアーマーを装着したマーズフォーガンダムなどなど、たくさんのアーマーを用意しているの。
この換装システムがプラネッツシステム。ヒロトが考えたものだって思っていたけど、それもイヴさんと一緒に作った思い出……なんだね。
――――
それからヒロトは、イヴさんとの思い出を教えてくれた。
一緒にお花の採取ミッションを受けたことや、町を歩いて回って耳飾りををプレゼントしたこと、それからGBNで共に見た景色だとか。とても沢山の思い出を話してくれた。
どれも素敵で美しくて、楽しそうで…………
そして私の知らない思い出だった。
こうして、イヴさんとの思い出を一通り話したヒロト。
そして彼は――こんな話を切り出した。
「……俺たちは一緒に、GBNの世界を旅した。けどその間イヴの身体は段々と、弱って行っていた
どうしてなのか、原因を知った時俺は、彼女が人間ではない事も知ったんだ」
「えっ?」
旅の間、彼女は弱っていたと言う話。だけど……あの子は、人間ではないの?
「イヴの正体はGBNで生まれた電子生命体、ELダイバー。その存在は仮想世界であるGBNに負担をかけ、悪影響とバグを引き起こしていた。彼女は旅の間、自分がボロボロになると知りながら、発生したバグを一人で取り込んでいたんだ。……自分を犠牲にしてでもGBNを守るために。
そして最後にはバグを消滅させる為に、バグを取り込んだ自分ごと、消してくれるように俺に頼んだ。
俺はそんな事出来なかった。だからイヴはついに俺が乗るコアガンダムを操り、持っていた銃口を自分に向けた。そして――」
途端、ヒロトの横顔が辛くて悲しいような、そんな表情へと変わった。
――そんな事が、あったんだ――
どうしてずっとヒロトが辛かったのか、ようやく私は分かった。
自分の大事な人を、自分のガンプラで消してしまったから。
「俺はこの手で彼女を消してしまった。
それに一方で、サラと言う別のELダイバーの少女もいた。彼女もGBNを守るために消されるはずだったけれど、俺と年が近い別の少年は彼女を一生懸命救おうとして、そして実際に救った。
俺は失ったのに……あの二人はと、憎みもした。そしてイヴを救えなかった自分にも。
だから俺はずっとGBNで、イヴを救うすべをずっと探し続けていたんだ。情報生命体である彼女なら、もしかすると……って。
――今では、いくらか平気になったけどな」
そんな、ヒロトにとって辛かった過去。
私もその気持ちを考えて、同じ悲しい気持ちになった。
――イヴさんを失って、ずっと一人で辛い思いを抱えていたんだね――
きっととても苦しかったんだと。イブさんを失ってから、そして多分今だって。
――だけど。
その時、私は辛さと悲しさとはまた別の、ある感情が湧いたのを感じた。
――っ!――
そんなの駄目! とっさにその感情を、私は振り払った。
……なんで私はあんな事を思ったんだろう。絶対に思ったら、いけないことなのに。
「どうしたんだ、ヒナタ?」
するとヒロトは私に心配そうに目を向ける。
「……あっ」
「もしかして辛い話、だったからか。そうだったら……ごめん」
そう言われて少し考えたけど、それでも私は。
「ううん、大丈夫。……悲しい話だから、ちょっと戸惑っちゃったの」
「そうか。大丈夫なら良かった」
私の話を聞いてヒロトは安心してくれた。
そして、今度は穏やかな様子でこう続ける。
「だけど俺はエルドラでの出来事や、そこの人たち、そしてカザミやパルや、それにメイ、かけがえのない仲間と出会って変われた。
守るべきものや仲間の大切さ、それにイヴの思い……。それに気づいて俺はまた前を向けるようになったんだ。
――それにメイは、イヴの一部を受け継いだELダイバーでもある。少しでも彼女の存在も引き継がれていた。それだけで俺は良かった。
探しものは……ようやく、見つかったのだから」
これがヒロトとイヴさんの、二人の話だった。
それにメイさんの事も。
――だから、メイさんともあんなに仲が良かったんだね――
「さてと、つい話が長くなったかな。
……じゃあそろそろ二人でさっきの家に戻ろう。みんなで一緒に食事をした、あの家さ。フレディ達もメイもきっと気になっているだろうから」
話はここまで。
そろそろ家に、戻った方がいいから。
「うん。じゃあ戻ろう、ヒロト」
私とヒロトは家への戻り道を一緒に歩く。
だけど、私は……。
――ヒロトと、メイさん。二人の間にはきっと――
エルドラに来て、一緒に親しげに歩いていた、二人。それに食事の時だって。
――エルドラでもずっと一緒で、それにイヴさんの生まれ変わりだから。
だから……だから――
二人の一緒の場面を、何度も、何度も頭の中でフラッシュバックする。
その度に私は胸の奥が何だかちくちく痛むような、そんな思いがするんだ。
――それに。
ヒロトにとって、とても大切な人であるイヴ。
そんな彼女は、もういない。
この事を聞いた時、私も辛くて苦しくて、悲しんだ。けれど。
あの時私が抱いたもう一つの感情。
それは、とっても……いけない事だった。
――だって私は、それを聞いて『 』したなんて――