【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
お店に入って、私たち三人はコスプレの恰好を選んでいたんだ。
ヒロトも、メイさんもそれぞれ別に選んでいるの。互いにどんな格好を選ぶのか、楽しみにだってなるから。
――二人とも何のコスプレをするんだろうな、ワクワクしちゃうよ。
私はどうしようかな……えっと――
ヒロト達が選ぶコスプレも気になるけど、私もどんなコスプレをするのか決めないとだもんね。
私はハンガーにかけられて並んでいる衣装やアクセサリーを見て手に取りながら考えるんだ。
「これは……うーん、顔が隠れちゃうのは、ちょっと」
黄色いクマっぽいガンプラ、ベアッガイの大きな着ぐるみ。それを見てみて可愛いって思ったけど着ぐるみ系は、いいかな。だって顔は隠れて見えなくなるから、ヒロトと一緒の時はやっぱり……顔を直接合わせたくて。
そう考えて私はもう一度、衣装を選ぶんだ。
「クジャクの衣装は派手かもかな。 カンガルー……かな、このコスプレは。こっちは少し地味かも。
えっと、この間に挟まっているのは…………きゃっ!!」
私は挟まっていた一つの衣装を取ってみたけど、それを見た途端に思わず赤面して、顔を伏せてしまった。
だって……。
――胸と下半身しか隠れてないんだもん。お魚のコスプレみたいだけど……ううっ、こんなの恥ずかしすぎて着れないよ。
水着みたいだけど、それよりも露出だって多いもん――
真っ赤な顔で、頬も熱くなってドキドキしてしまう。こんな衣装、もう色仕掛けみたいで、私には。
……だけど、ほんの少しだけ、いいなって思ったりも
――こうしたのって、私が着たらどんな反応をするのかな。
ヒロト、喜んでくれたりする……かな――
ついそんな風に考えもしてしまう。けど、頭に浮かんだ考えをすぐ振り払うように、一人首を横に振って衣装を元の場所に戻すんだ。
――ううっ、やっぱり駄目だよ。
本当に恥ずかしい恰好だし、人前では無理だもん。ヒロトともまだ……早いって思うから――
彼の事を考えると、また余計に頬が熱くなる感じがする。
――関係は幼馴染だけじゃなくなっても、それでもこんな事はもう少し大人になってからだよね。
今はまだ――
これ以上考えると、本当に頭がクラクラしちゃいそうで。それよりもちゃんど何の恰好にするか、決めないとだから。
どうしようかな。衣装を探しても、なかなか似合いそうなのが見つからないんだ。
――うーん。本当に何を着ようかな。決まらなすぎて困るよ。どうしよう――
そう考えながら私がコスプレ衣装を探していた時だったんだ。
「……あっ」
私は、ふと手に取った別の衣装に視線が行った。
――この服は可愛いし、私にも良さそうって思うんだ。……いいかも――
これを着てみたいって、私は思ったんだ。ヒロトもメイさんは多分待たせているかもしれないから、早くしないとって気持ちもあるしそれに、この衣装が一番合いそうって思うから。
だから――。
―――
更衣室で動物のコスプレ衣装に着替えた私は、鏡に映る自分の姿を見てみた。
――ううっ、やっぱり似合うかどうか心配だな。変じゃない……よね――
可愛くて似合うかもって思ったコスプレだけど、実際に着てみると、凄くドキドキしてしまう。
GBN、仮想世界だって分かっているけど、それでも自分のこんな恰好を見ると……ちょっとなって思ってしまう。だってワタシ、今までこうしたコスプレなんてした事なかったから。
――服は可愛いんだけど、変じゃない……よね。ヒロト達が見たらどう思うかな――
衣装が決まったら、ヒロトとメイさんと店の外で見せ合おうって話したんだ。二人はもう着替え終わって待っているかもしれない。心配だけど、これで私のコスプレは決まったもん。
――自分でも良いと思って選んだんだから。きっと、大丈夫だよ――
勇気をちょっと出して、私は店の外に出たんだ。
外の通りには相も変わらずの沢山の人たちが歩いている。けれど、私のこの恰好を特に気にしている様子はないみたい。見ると本当にみんな、色々な動物のコスプレをしている。……だからかな、むしろこのイベントの場に溶け込んでいるみたいで全然普通なんだって。
――ちょっとだけ緊張し過ぎたのかな。あはは――
私はほっと一安心して胸をなでおろす。ただの考え過ぎだって分かったから、全然普通なんだって、そんな風に思えて。
――良かった。変だって見られたらどうしようって思ってたから――
ヒロトとメイさんの姿は見当たらない。店から出て来たのは私が一番早かったのかな。けど、もしかすると先に来ているかも。
ここは誰かに聞いた方がいいかな。私は周りを見て確認してみると、ちょうど近くにコスプレをした誰かがいたの。
柴犬のコスプレかな。尻尾の生えたぶかぶかめの全身芝色の上下一体の衣装を着ていて、犬の耳もついているフードを頭にかぶった誰かさん。
これって丁度良いかも、あの人に聞いてみようかな。
「あの、すみません」
「うん?」
「私と同じくらいの男の子、店から出て来たのを……見たりしませんでしたか?
彼は――ヒロトは、私の……」
「――その声はまさか、ヒナタなのか?」
「えっ!?」
驚いた私に柴犬コスプレの人は、顔をゆっくりと私に向けた。
犬耳がついたフードを被っていた顔、それは私が一番よく知っている、相手の顔だった。
「ヒロトっ! そんな恰好していたなんて、驚いちゃったよ」
少しぶかぶかな衣装とフードを被っていたヒロト。彼も自分の恰好に慣れていない感じで、どぎまぎとするみたいな態度で、それに視線も左右にそわそわ動かしているんだ。
「俺の……恰好、なかなか選ぶのが難しくて。
だから勢いで選んでこうなった。……変じゃないか?」
慣れてないと、やっぱりそうなるよね。
「分かるよ、その気持ち。
――でも変なんかじゃないよ。ヒロトのその衣装も良いって思うから、そのコスプレ、何だか可愛いもん」
私の言葉にヒロトは照れたり嬉しかったりのはにかみ笑いを浮かべてくれた。
「ありがとう、ヒナタ。
ヒナタのその恰好も良く似合ってる。ひらひらとした衣装に、猫耳と手袋、尻尾も――三毛猫のコスプレ、凄く……可愛い」
「あっ」
ヒロトに言われて私ははっとして、自分の恰好に意識を向けた。
そう、私がコスプレに選んだのは、三毛猫衣装のコスプレだったんだ。
――アイドルみたいな感じの可愛い服で、せっかくだから着てみれたらなって。だけど――
ひらひらとした上着とスカート、それに猫らしく猫耳と尻尾、後肉球がついた大きな手袋と頬には猫のひげまで……何だかつい張り切り過ぎた感じの恰好と言うか。
それに、ね。この三毛猫のコスプレ、それなりに露出が多かったりもするんだ。
――さっきのよりはまだ大丈夫なんだけど、ミニスカートからは太ももが見えちゃうし、上着も短いもん。
……お腹だって丸見えだよ――
「……ううっ、えっと……その」
かあっと、さっきよりも顔が熱くなって、私は丸見えのお腹を手で隠してしまう。
「ヒナタ?」
「あは……は、やっぱりこの恰好は恥ずかしくて。だってひらひらして、あちこち出ちゃっているから。
私の衣装、本当に可愛い……かな」
「それは――」
私の姿を改めて見つめてかえすヒロト。その顔はみるみる赤くなって……。
「もちろん可愛いさ。けれど、ヒナタがそうした恰好をしているのが、見慣れないと言うか。
何だか、普通に可愛いだけじゃなくて…………どう言えばいいかな、その」
私は慣れない衣装姿を見られて、ヒロトはそんな私の姿を見つめて、互いにどぎまぎしている。彼が何か言おうとしているのを、どきどきして私は待っているの。
「ヒナタ、君の姿はとても――」
そして、頬を赤くしたままのヒロトが私に言葉を伝えようとした時だったんだ。
「二人とも、待たせてしまったかな」
声の方を見ると、コスプレ衣装に着替えたメイさんの姿があったんだ。その恰好は……。
「メイさんも私と同じ、猫のコスプレなんだね」
「ああ。ちょっと良いかもと、思ったからな」
メイさんのコスプレも猫のコスプレ衣装だったの。ただ私が三毛猫衣装なのに対してメイさんは黒猫のコスプレ。
猫の尻尾に耳、肉球付きの手袋に猫ひげだとかも私のと同じ。……だけど服は私のようにひらひらした露出の多い感じじゃなくて、落ち着いた感じの緑のドレスで、長めのスカートに黒いスパッツ。いつものメイさんの姿と違うけど、でも、何だか私よりも似合っていて……可愛い気がした。
ヒロトもメイさんの姿を見ると、笑顔を向けてこう言ったんだ。
「メイは黒猫の恰好なんだな、よく似合うよ」
「そっか、そう言ってくれると……嬉しいものだな。
ただこんな姿はどうも慣れていなくてな。ヒナタも、同じ感じだろうか」
やっぱりメイさんもコスプレに慣れない様子だった、私もメイさんに照れ笑いを浮かべると。
「私も……ちょっとね。でもメイさんの衣装、素敵だと思うよ」
「ありがとう。ヒナタの三毛猫衣装も、とても可愛らしい」
女の子同士、互いに笑い合ってそう伝える私たち。そしてヒロトも
「ヒナタもメイも、とても綺麗で可愛い。いつもと違うこの感じ、良いものだな。
……さてと、こうして三人で衣装に着替えたわけだし、もっとフェスティバルを楽しもうか。行こう――二人とも」
ヒロトに促されて、私たちはまたアニマルフェスティバルを楽しみに行くために歩き出すんだ。
でもちょっとだけ、もやっと。
――メイさんもヒロトにとって大切な仲間だって、分かっているんだ。でも……それでも――
――――
私とヒロト、メイさんは三人でフェスティバル会場を巡ったんだ。
「よう、可愛い子ちゃん達、このプチッガイのキーホルダーとかどうだい?」
「……あっ、この黄色いプチッガイ、欲しいな。勝って来ていいかなヒロト!」
店で買い物したり、それに。
「ほう? 確かクレープと言うのか。それのチョコクレープでも食べてみるか」
「毎度有りだ、お嬢ちゃん。もう一人のお嬢ちゃんと坊ちゃんはどうするかい?」
「なら俺はカスタードで」
「私はイチゴホイップがいいな」
屋台でクレープだとか他に食べ物を買って食べたり。後々、行ったのはお店だけじゃないんだ。
「――楽しいね! ちょっと恥ずかしいけど、子供に戻った感じだね」
「遊園地にあるよな、こうした動物の乗り物。ガンダム繋がりでSEEDのバクゥもそうだし、Gガンダムの馬型モビルスーツの風雲再起とかもディフォルメされて……面白いな。
気になって乗ってみたけど、ホワイトベースまであるのか。まぁ、確かに『木馬』だしな」
「私が乗るこの乗り物も興味深い、たしか……パンダ、だったか」
「はい、メイさん。やっぱりパンダカーは定番、外せないから」
遊園地にあるような一人乗りの動物の乗り物、四足で歩いて音楽が鳴るの……フェスティバルのアトラクションの一つであったりもしたんだ。
私たち三人でそれに乗って楽しんだりも。とても――楽しくて充実した時間だったんだ。
――衣装にも慣れたし、それにフェスティバルも色々過ぎるくらいに楽しめているから――
私はコスプレと同じ三毛猫の乗り物に乗って、二人の傍にいたの。楽しいフェスティバル、それに勿論……ヒロトといれる事だって。
「来て良かったね、ヒロト! だってこんなに――」
私はそうヒロトの方を向いて声をかけようとした。
けれど、その時私の目に入ったのは……ヒロトの傍に乗り者を並べて笑い合う、メイさんとヒロトの姿。
「なかなかに面白い乗り物だな。私も気に入ったぞ」
「そうか。メイも気に入ってくれて何よりだ。……こうしてみるのも、面白いだろ?」
何だか仲が良さそうな二人。ビルドダイバーズの仲間で友達だから、別に普通の光景だって分かっているけれど。
「……」
――変だな。私はどうして……胸が苦しいんだろう――
――――
それから私たちはまた、フェスティバルの会場を散策したんだ。
「もう随分と回ったね」
「ああ。思ったよりも広い会場だったけれど、大体は俺達で巡った気がする。
ヒナタも、今日は楽しめたか?」
ヒロトの言葉に、私は笑って頷いた。
「もちろんだよ! こうして楽しい事ばかりで、私は満足なんだ!」
「俺もだ。こんな風に楽しく過ごせたのは、とても良かったから」
「二人の気持ち、私も分かるとも。……祭りはやはり楽しいものだ」
こうして遊び回って私は楽しかったから。大満足、なんだ。だけどちょっと心残りがあることも。
「でも、カザミさん達は、どうしたのかな? あれからはぐれたままで……出会えなかったから」
実は、カザミさんとパルくんが金魚すくいをすると言うことで、二人とは別行動をしていた私たち。
後で合流するつもりだったけれど、結局見つからないままで今に至るんだ。
「大丈夫。心配しなくても二人なら勝手に楽しんでいるはずさ。
だから俺たちは俺たちで、このイベントを楽しめばいい」
「ヒロトの言う通りだ。私たちでも、十分に面白く過ごせたからな」
そう言ってヒロトとメイさん、二人で笑顔を向け合っている。
私は……また何だかもやっと感じた。
――ヒロト、やっぱり……私は――
私が自分の思いをどうすればいいか分からないでいると。メイさんは今度はある場所を指差す。
「今度は――あれに乗ってみようか。ずっと気にはなっていたが、そろそろ乗ってみてもいいんじゃないか?」
メイさんがそう言って示す先は……。
「あれだね。実は私も気になっていていたんだ、後でと思ってたけど、もうそろそろ行ってもいいかも」
私だって気になっていたもの。それは目の前にある……観覧車だった。
「観覧車……か。ゴンドラの一つ一つも、動物をモデルにしているんだな」
「みたいだなヒロト。もう会場の場所も殆ど見て回った事だし、クライマックスはあれにでも乗ってみるか」
ヒロトとメイさんはそう言っている。私は。
「……そうだね。三人で、行こうか」
私もそれには賛成だった。……けど、何だろうな。
――こんな時、どうしたらいいんだろう。私は――
――――
そう言うことで、観覧車にやって来た私たち。
「やっぱり、近くで見ると凄いよね。ゴンドラの一つ一つが動物の顔をしていて、可愛いな」
私はゴンドラに見とれていると、ヒロトは。
「ああ。こんな風な観覧車、GBNならではかもしれないな」
「うん。何だか素敵だよ、ヒロト」
「俺もそう思う。――メイはどうだ?」
「観覧車と言うのも、面白そうなものだ。……気に入った」
やっぱり、今は複雑だ。
私とヒロト、それにメイさんの三人でいるけれど、だけど。
――ヒロトとメイさんが仲良さそうにしているの、きっと普通の事なのに。
どうしてこう、胸がざわめくんだろう――
今でも私は、どこか複雑な気持ちに囚われていたんだ。こう言う気持ちってどうすればいいか、いまいち分からないでいたの。
「とにかくだ、あの観覧車に乗る事にしようか。見るからに楽しそうだ。
さて、行こうかヒロト」
メイさんはそう言って、傍のヒロトの右手をとろうと、握ろうとするのが見えた。
――私は、やっぱり。メイさんには――
ヒロトは私にとって、大切で特別な……だから。
「待ってヒロト! 私だって――」
メイさんがヒロトの手を握るより前に、私は反対側から、彼の左腕に自分の右腕を絡めて、ぐっと引き寄せたんだ。
「うん? ……これは」
メイさんは私の行動にはっと、少し驚くみたいな顔をしているのが見えた。そしてヒロトはと言うと。
「――ヒナタ」
「あの……ね、ヒロト。私は、私……だって」
だけど、言葉が詰まって上手く言えなくなった。
――告白の時は言えたのに、やっぱり時々こうなってしまうんだ。ドキドキして、私――
「なぁ、メイ」
「どうしたんだ?」
ヒロトはメイさんに視線を向けると、こんな事を。
「観覧車だけどさ、ゴンドラには俺とヒナタの二人で乗りたい。
悪いけどメイは、少しだけ待っていてくれないか」
彼の言葉を聞いて、メイさんは僅かに意外そうな表情を見せた。だけど、彼女は表情を緩めてこう言ったの。
「……成程、分かった。なら私はそうする事にするよ」
――私と、ヒロトの二人っきりで――
どきっとする心。つい私は彼の方を見た。
目の前のヒロトも私を見て、そして、ふっと優しい笑顔を見せてくれたんだ。
――――
観覧車のゴンドラ。私とヒロトは二人、その中で一緒にいたんだ。
それぞれ犬の着ぐるみとフードを被ったヒロトと、三毛猫のコスプレをした私。
――ううっ、やっぱりお腹が丸見えなのがどうしても気になるよ――
「……」
ちょっと恥ずかしくて言えない中、ヒロトは横目で外の景色を眺めながら私に話しかけるんだ。
「ヒナタ、見てみなよ。ここからの景色は眺めが良い。会場だって、こうして一望出来るくらいに」
「あっ……うん」
ヒロトに声をかけられて、私ははっと反応して返したんだ。
「私たちの回ったアニマルフェスティバルの賑やかな感じ、ここからだと全部眺められる気がするよ。……何だか、懐かしいよね」
この前にもヒロトと一緒に、こうして観覧車の中で二人っきりだった事もあるんだ。ヒロトもその事を、覚えてくれていたみたいで。
「観覧車、か。こうしてヒナタと一緒に乗るのはあの時以来だな」
私の前でヒロトはそう、思い出すように話すんだ。もちろん私だって覚えているよ。
「……うん。私がヒロトと遊園地に遊びに行って、告白しようとしたんだよね。
でも思い出すと、何だかその、恥ずかしいよ」
そう。私は現実でヒロトと一緒に遊園地にデートしに行ったこともあるの。自分の想いをヒロトに伝えたくて……そして告白、好きだって想いを伝えたの。
「あの時、ヒナタは俺の事を好きだって言ってくれたよな。幼馴染みだけじゃなくて、もっと特別に――好きだって」
「私だって勇気を出して頑張ったんだ。自分でも気づいた大切な想いを、伝えたかったから」
「ヒナタの想いを聞いて驚いた。……けれど、俺はそんなヒナタに対して酷い事をしてしまった。
せっかく伝えてくれたのに拒絶して、傷つけてしまった。これまでだって、それに……」
ヒロトは一人しゅんとしたような感じで。そして私に、こんな事を言う。
「さっきもメイと仲良くしているのを見て……多分複雑だったんだよな。
決してヒナタの事をないがしろにしたわけではないけど、それでも君は寂しそうにしていたように見えたから」
「私……は」
ヒロトには私がそんな風に見えていたんだ。気づいて、いたんだって。
「多分、前の俺だったらそうした所まで気づかないでいたままだったかもしれない。
けど今は前とは違うから。だから」
「……」
「でも、まだ上手くヒナタとどう接すればいいか、分からないでいる部分もある。
今まで幼馴染みでいたのがずっと長かったから、ついいつものヒナタとの調子になってしまったりで……他に人が一緒だとなおさらな。
……言い訳みたいだよな。やっぱり、ごめん」
しゅんとしているヒロト。でも、謝る事なんて、全然。
「全然気にしないでいいよ、ヒロト。
確かに、メイさんと仲良さそうにしていたの……少しだけそう思っていたかもだけど、私が勝手に変に思っていただけだから。
ヒロトはちゃんと見ていてくれたのに、それなのに私の方こそ、ごめんなさい」
悪いのは私の方だよ。
メイさんはヒロトの大事な友達で、それにエルドラの戦いでだって一緒だった戦友、だもん。仲だって良いのは当然なのに、私は。
「駄目だよね、私って。むしろヒロトに気を遣わせちゃって。
――でもね」
それでも私は、ヒロトの事が好きだから。
「やっぱりもっと、ヒロトに私の事を好きでいてもらいたいの。
メイさんと仲が良いのは分かっているけど、けどメイさんに負けないくらい私の事も好きだって、伝えてくれたら嬉しいんだ」
私がこんな風に言えるのも、ようやくなんだ。素直に好きだって、それにわがままだって言えるようになったのも。
ちゃんと想いを伝えるのは……とても良いものだから。
「――ヒロト」
私は席を立って。前に座っているヒロトの元にそっと寄るんだ。
「せっかく二人になれたから。
メイさんが一緒にいて出来なかった分まで、ヒロトの想いが欲しいんだ。あの時遊園地では出来なかったから。だから今、もう一回」
また私のわがままかもしれないけれど、やっぱりさっきは、寂しかったから。
遊園地のゴンドラと言う二人きりの空間で、私はヒロトの想いと愛情を、感じたいんだ。
ヒロトだって、前とは違って今度は私をちゃんと見ていてくれて、私の想いを受け止めてくれるみたいに優しい顔を。
「うん。――分かった。
俺も前の事を後悔していたから。だから……喜んで。
今度はちゃんと、受け止める」
また、あの時と同じように私はヒロトに顔を近づける。
私は緊張もしていた。だって前はヒロトから拒絶されて、突き放されてしまったから。
――今度はきっと大丈夫だよね。だって私とヒロトは、今は――
ヒロトは私の事を待っていてくれる。今度こど、きっと大丈夫だから。私はドキドキしながら自分の唇を、彼に。
「――」
温かくて優しい、唇同士が触れ合う感触。私は半分夢見心地な気分で、嬉しくて。
互いに長く、少しだけ強めに続いた……キス。やがてキスを終えて名残惜しく唇を離すと、ヒロトはふっと照れ恥ずかしくはにかんでいた。
「どう、だったかな。ヒナタとのキス……GBNでも現実と同じように、とても良かった。
ヒナタも満足してくれたのなら、俺は嬉しい」
私にそう尋ねて来る彼。答えは……もちろん。
「今度は、受け止めてくれたんだね。
――私も嬉しいよ。もちろん、満足だってしているから」
こうしてキスしてくれたの、とても嬉しくて幸せだったんだ。ヒロトは私の事を想ってくれるのが改めて実感出来るから。
――今ならはっきり分かるんだ。今自分はこんなにも満足してるって――
私はそう思っただけで、つい表情がふわって緩んでしまう。ヒロトも同じように笑ってくれて。
「ヒナタも嬉しそうで、何よりだ。
ところで……さ」
するとヒロトは、少しどぎまぎするような表情でこんな事を話すんだ。
「その三毛猫のコスプレだけど、可愛いと俺は言った。
もちろんいつものヒナタだって可愛い。けれど、今は……大人っぽい可愛いさと言うか、……色気と言うか」
「ふぇっ!?」
自分の恰好の事を言われて、今度は顔が赤くなってしまう。今更ながらに恥ずかしくなってしまって、かあって熱く。
「今のヒナタも、とても良いって思う。
俺が――ドキドキする感じで。特にその、お腹の所が……」
「あああっ! ヒロトってばストップ、ストップ! ……恥ずかしいから!」
私は恥ずかしさで真っ赤になりながら、ヒロトを制止してしまう。
――だって恥ずかしいんだもん。けどね――
そんな中で、今着ている三毛猫のコスプレ……自分でも。
――ヒロトにこうして意識してもらえるの、全然嫌じゃないな。
……また、ヒロトと一緒の時に着ようかな――
みんなで一緒に来た、このアニマルフェスティバル。
色々と楽しくて、それにヒロトともこうする事が出来たんだもん。ちょっと恥ずかしいけど……でも、いいなって。
私はこうしていて、思ったんだ。