【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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 今回は本編唯一のオリキャラかつ敵キャラのクロヒナタの短編に。本編以降の、彼女は。


番外編その四 ワタシの想いと、葛藤 その1(Side クロヒナタ)

 

 ワタシはGBNで偶然に生まれた名無しの情報体。

 ミラーミッションにおいてELダイバーを解析して生成されたコピーの、その余剰データが原始的な自我を持った……意識と形もない不完全な存在。けれど、一人の少女に――ムカイ・ヒナタによってワタシは救われた。

 『自分』と言う存在を――明確な自我と感情を、ヒトですらないワタシに、ヒトとしての心を与えてくれた。それに彼女の、ムカイ・ヒナタの心と想いはとても綺麗で、ワタシの宝物になったのだから。

 

 ――だからこそワタシは『私』を、ムカイ・ヒナタを幸せにしたかった。想いを守りたかった。

 そして彼女の想いを踏みにじったGBNとガンプラ、ELダイバーとそして……クガ・ヒロトを許せなかった。

 憎んでいるのよ、ワタシは――

 

 ムカイ・ヒナタの大切な想いは誰よりも大事な人に、クガ・ヒロトへと向けられていた。けれどそれらは……何より本人がそれを踏みつけにした。彼女の想いは報われない。だからこそ……。

 ワタシはムカイ・ヒナタを救うために計画を立てた。GBNを破滅させガンプラの尊厳を踏みつけにし、ELダイバーとそして、クガ・ヒロトに復讐し……最終的には彼と言う存在そのものをワタシが乗っ取り、ワタシ自身がムカイ・ヒナタの想い人――『クガ・ヒロト』と成り彼女を心から愛し、幸せにする計画を。

 何から何まで、ヒトとしては常軌を逸した、狂った計画かもしれない。けれど……ワタシは後悔はしていない――間違っていたとも思わない。 

 

 ――ミラーミッションのシステムを手にしてGBNを、クガ・ヒロトどもビルドダイバーズを追い詰めた。

 あと一歩でワタシは障害を排除し、ムカイ・ヒナタを救う事が出来た。その筈だったのに――

  

 何度も追い詰めはした。けれどワタシの計画はその一歩手前でビルドダイバーズによって阻止された。

 あの時出せる全てを、使えるモノはすべて利用した挙句に敗れた。

 

 

 ワタシが奴らに、クガ・ヒロトに敗れるなど。……けどこのままでは終わらない、終われるものか。

 

 

 

 ――――

 

「……」

 

 ただ一人、荒野の真ん中に放置されたコロニーの残骸、その真上に腰かけてワタシは空を見上げていた。ここはGBNの中でも辺境のエリア。ダイバーも殆ど寄り付きもしない寂れた場所、だからこそこの場所を隠れ拠点に選んだ。

 ワタシはELダイバーとも違う、GBNにおいてもイレギュラーな情報体。それにワタシの存在は消滅した事になっている。GBNに牙を向き、ビルドダイバーズと戦い消滅したと。だから……ワタシの正体を知られるわけにはいかないもの。

 データ上の仮想世界、GBN。その空は今夕暮れで、沈みゆく夕日とそれに、薄闇の空に輝き出す星。ワタシははそんな空を見上げて……。

 

「……大嫌いな、世界だわ」

 

 戦いに敗れたワタシは、消滅を偽り実際はこうしてGBNに潜んでいた。

 ……あれからGBNをいくらか巡りもした。この仮想世界がどれだけ美しいと言えるのか、多くの人間――ダイバーが世界を愛しているのを、楽しんでいるをワタシは見て十分に知った。

 それを知っても、いえ、だからこそワタシはこの世界……GBNが大嫌い。憎んでいるのよ。

 でもいくら嫌いでも情報体であるワタシにとってはここが自分の世界、唯一存在出来る場所なのだから。……でもね。

 

 ――いずれこの世界全てにも思い知らせてあげるわ。GBNだけではない、ワタシは必ず――

 

 ワタシがこうして、そんなGBNに今も存在しているのは再び自らの役割を果たすため。ムカイ・ヒナタ、彼女を傷つけた物全てに復讐し何より、ワタシがクガ・ヒロトの身体を奪いそして――『彼』としてムカイ・ヒナタを本当に幸せにしてみせると。

 諦めはしない。いつか再び逆襲してみせると――そう決意しているはずなのに。

 

『分かるだろう、ヒロトとヒナタの想いが通じ合っているのが。

 これまでは知らないけれど今は……これからはきっと、互いが一番の相手として――恋人として共に幸せになれるはずだ。

 だから、クロヒナタが今更何かする必要は、どこにもない』

 

「――くっ!」

 

 ある事を思い出して、ワタシは忌々しい感情を覚える。

 

 ――メイ、あのELダイバーめ。ワタシに向かってよくも言ったものだわ――

 

 戦いの後、たった一度だけビルドダイバーズのメイと、ワタシは再会して言葉を交わした。

 ELダイバーも嫌いよ。でもね、彼女はその中でも特に大嫌いなELダイバー。そして……メイの中にいまだに、それ以上の大嫌いで堪らないもう一人のELダイバーも。

 

 ――思い出すだけで忌々しいわ。

 でもとにかく、あの時メイは言ったわね。……もうワタシに行動を起こすつもりなんて、ないですって――

 

 この言葉だって本当に忌々しい。――神経に障る。

 

 

 

 

 ――――

 

 ――全く。一体ワタシはどうしたと言うの――

 

 今、ワタシがいるのはGBNのとあるエリア。拠点を離れて、少し用事があったから……移動したの。

 ちなみにこのエリアは――。

 

 ――アニマルフェスティバル、妙なイベントをよく思いつくものだわ――

 

 周りには色々な動物の恰好、コスプレをしたダイバーと、沢山の出し物や店に屋台……まるでお祭り会場そのものね。

 でも、こうしてみんな動物のコスプレをしているのなら都合がいい。ワタシはゾウの着ぐるみを全身に着こんで、この場所に潜んでいた。元々はフェスティバルの係員をしている別のダイバーがここで風船を配っていたけれど、頼んで少しの間だけ仕事を交替して貰っているのよ。これなら自然に溶け込めるから。

 

「あのさ。そのプードルの風船、青とピンクのやつを一つずつくれないかな?」

 

「……」

 

 ワタシはゾウの着ぐるみ姿で風船配りに扮してアニマルフェスティバルに紛れている。ゾウと言い……動物なんて生で見た事はない。ワタシの中にある『ムカイ・ヒナタ』の記憶で、それぞれどんな生き物なのかが分かる。

 見ると猫耳と尻尾を生やした青い髪の男の子、一応は風船売りとしてここにいるから、風船を貰いに来たみたいね。

 

「……」

 

 無言で右手に握っていた沢山の風船のうち、青とピンクのプードル風船を取り出して男の子に渡す。男の子はワタシに、ニコッと笑みを向けると。

 

「ありがとね! 

 ――ミユ、ほら見てみて、風船を貰ったんだ」

 

 男の子はワタシに礼を言うと、後ろで待っていた同じく猫耳と尻尾がある白い髪の女の子の元へと去った。

 

 ――ふふっ。悪くないかもね、こう言う気分も――

 

 つい穏やかな気分を覚える、ワタシ。悲しみと怒り、憎しみばかりだった自分にも……まだ少しはこう感じる心くらいは。

 

 ――だけど今はそれよりも――

 

 ワタシは周囲の様子に目を凝らして、人探しをしてみる。確かこのアニマルフェスティバルには人が多いけれど、確かここに……来るはずだから。そう思って見回してみると。

 

「観覧車良かったね! 二人で乗ってくれて、ありがとヒロト」

 

「礼には及ばない。だって、当たり前じゃないか。……俺とヒナタとなら」

 

 覚えのある声を聞いた。そこには犬の被り物と衣装を着た少年と、三毛猫のコスプレをした少女が観覧車から出て来る所だった。

 

 ――ムカイ・ヒナタ……貴方は――

 

 三毛猫のコスプレをして、犬のコスプレをした少年、クガ・ヒロトと笑い合っている少女。もう一人の『私』……ムカイ・ヒナタ。かつてワタシが何をしてでも救いたかった、大切な人。

 

 ――本当に嬉しそうで、幸せそうね。だってムカイ・ヒナタの想いは彼に、クガ・ヒロトに通じてようやく恋人同士になれたのだから――

 

 長い間一緒に過ごして彼女にとって大切なヒトと、クガ・ヒロトと通じ合えている。

 これがムカイ・ヒナタの望んでいた事。けれどクガ・ヒロトは別の相手を――あの木偶人形、イヴを想っていた。二年前に出会ってGBNで過ごした頃から……失った後も、きっと今だって。

 例えああしてムカイ・ヒナタの事を見ていたとしても。……それでなくても、二年間あのクガ・ヒロトが彼女を蔑ろにしていた事に変わりはない。一度は戦いで決着をつけたつもりだったけれど、やはりワタシは。

 

 ――クガ・ヒロト、貴方の事は認めない。……許すものか。あの時は失敗したけれど、機会を見て必ずワタシは貴方を消し去って、ワタシこそが『クガ・ヒロト』として――

 

「…………」

 

 最初からそう決断していたつもりだった。けれどワタシは自分でも今、決断が揺らいでいるのを感じていた。

 

 ――だって、本当に幸せそうに笑っているんですもの。ムカイ・ヒナタはあんなに嬉しそうに――

 

 

 

 ワタシは幾らか離れた場所から遠目から見ていたけれど。

 

「――っ」

 

 その時、ムカイ・ヒナタがワタシの方へと視線を向けた。

 僅かに合う互いの視線。全身着ぐるみ姿のワタシの姿は分かりなんてしないはずなのに。きっと別の事に気をとられてこっちを見たんだろう。けれど、ワタシは自分に向けられたものだと……つい思ってしまった。

 

「どうしたんだ、ヒナタ?」

 

「ううん。ちょっとだけ、気になった感じがしたから。それに……あっ! メイさんと一緒にパルくんとカザミさんもいるよ! 二人とも合流したんだ」

 

「それは良かった。別行動していた二人の事も、少し気にしていたから。でもようやく再会出来て安心したよ。じゃあ、俺たちもみんなと合流しようか」

 

 ムカイ・ヒナタとそれにクガ・ヒロトは、向こうに見えるビルドダイバーズの三人の元へと。ワタシはそれを見届けると、一人この場を離れて去った。

 

 

 

 ――――

 

 フェスティバル会場の人気ない裏通りで、一人でワタシはいた。

 今まで被っていたゾウの着ぐるみ頭、被り物を外して一息つく。……だってずっと被りっぱなしだったから、息苦しく感じていたのですもの。それから、あの時ワタシが見た二人、ムカイ・ヒナタとクガ・ヒロトの様子を思い起こす。ずっと距離が縮まって親密そうにしていた姿を。

 

 

 大切な人と――クガ・ヒロトと一緒にいられて。そして、あの戦いの後で……二人が恋人同士になれた事。二人がそんな事になったと、後からGBNで話しているのを聞いて知った。ワタシもあれから身を潜めて、ムカイ・ヒナタの事を秘かに見てもいたから。

 前よりももっと……そして心から幸せそうにしている彼女。大切な人とようやく結ばれて、本当ならワタシが叶えようとしていた願いは既に叶えられていたの。――もう一人のこの『ワタシ』が認めない、許しもしない本物のクガ・ヒロトによって。

 

 ――ワタシは認めない。今になってああした所で裏切り続けた事には変わりはない。やはり……許せはしないじゃない――

 

 その感情は変わることはない。はずなのに、ワタシは行動を再び起こすのを躊躇っていた。今のムカイ・ヒナタから彼を、本物のクガ・ヒロトを奪うなんて。せっかく手にしたあれだけの幸せを、ワタシにそんな事をする権利があるのかと。

 

 ――メイがワタシがいまだ存在し続ける事を見抜いた上で見逃したのは、ワタシがこうなると分かっていたからと言うわけ。忌々しいわ――

 

 そう、メイはワタシの存在を知っていた。戦いの後に自らの消滅を偽装していたことも、分かっていたのに……それを一人秘密にしていたの。

 かつてワタシがGBNに、ビルドダイバーズにどれだけの事をしたのか分かっていたのにワタシを見逃した。危険なのは理解した上で、それでもこれ以上は何もする事はないと信じて。何故ならクガ・ヒロトとムカイ・ヒナタはあんなに、上手く行ったのだから。彼女の願いもああして叶った。それは――ワタシも同じ願いであったから。

 ムカイ・ヒナタのあんな様子を見て、ワタシがは……迷っているのかもしれない。どこか本気で行動を起こす気になれないでいた。自分でも――認めたくはないけれど。

 ……いえ、もしかするとあの時、ビルドダイバーズと戦った時でさえ。

 

 

『本当はどこかで、ヒロトに自分を打ち負かさせたかったんじゃないのか?

 彼の想いを喚起して試すために、ああまでしてしたのではないか……と』

 

 

 メイはワタシにこうも言った。

 あの時のミラーミッション、ワタシとビルドダイバーズとの戦いでワタシは負けた。

 もしもワタシが他のダイバーではなく、最初からクガ・ヒロトのみをミラーミッションに誘い込めば、彼との勝負にしても一対一にこだわるよりも他のコピーガンプラを彼一人にぶつけて一気にねじ伏せれば良かった。……なのにワタシはそうしなかった。

 敢えてそうした。ビルドダイバーズに、何よりクガ・ヒロトを苦しめたかったから。自分の手で復讐もしたかったのだから……だからこそと思っていたけれど。

 

 ――ワタシの本来の望み、『ワタシがクガ・ヒロトを乗っ取る』事を最優先にしさえすれば良かった。ミラーミッションの権能全て得たのだからそうすれば、ただその望みを果たす為に手段さえ選ばないほどに本気を出せば良かった。

 それが正しい行動だった。ムカイ・ヒナタを想うワタシが、復讐なんかに余計な手を回すより。いいえ――

 

 ムカイ・ヒナタを想っている事に変わりはしなかったからこそ。だからこそ復讐もだけれどもしかすると……こんなこと、認めたくないけれど。

 

 ――こうもワタシ自身思ってしまったと言うの。……やはりクガ・ヒロトが良いと、叶うのなら本物の彼とムカイ・ヒナタが結ばれればいいと願って。

 自分が彼に倒される事を何処かで望んでいた、だなんて――

 

 

 

「そんなのっ、やはり認められないわ!」

 

 ワタシは激情のままに被り物を地面に叩きつけた。同時に今浮かんだ考えもかき消すように。認めるわけにいかないもの……そんな自分の想いなど。そう思っていた時だった。

 

「おう、坊主ども! こんな所で俺達に会うとは運がなかったな」

 

「そー言う事じゃん! せっかくだからポイントをたっぷり頂くとしようぜ、兄貴。なぁ坊主たち、今後俺達とトラブルなんて起こしたくないじゃんよ。なら……分かるよな」

 

「……ううっ」

 

 見ると向こうの少し離れた場所では、少年二人に対して柄の悪そうな男四人が絡んでいるのが見えた。

 

 ――あの男たちはいわゆる、悪質ダイバーと言うものね。人が多い場所での裏路地だとかは危険だってあるもの。そんな場所に呑気に入り込んだ二人が悪い。それに、どうなろうがワタシには関係ないから――

 

 ワタシはどうでも良いと思って、その場から離れようとする。こっちまで絡まれればますます面倒だもの。

 

「……」

 

 だけど、さっきの考え事のせいでもあるのか、胸の中には何かモヤモヤが残っていた。何だか上手く気分が晴れなくて、ワタシは……。

 

 

 

「おらっ! どうした、ビビッてんのか?」

 

「ここはひとつ大人の怖さってヤツ、教えてやろーぜ。大丈夫だって、GBNの中なんだから多少乱暴になったって――ん?」

 

 頭の被り物を被りなおしたワタシは少年と悪質ダイバーたち六人につかつかと歩み寄ると、まずは一人、近くにいた相手の肩を掴む。

 相手――まぁいかにもチンピラみたいな男はワタシに振り向いて一瞬驚いて目を丸くした。けれどすぐに感じの悪い表情で睨みつけて来ると。

 

「んだよテメェ! ふざけた着ぐるみをしやがって、お祭り騒ぎなら向こうでやれよ。それともテメェも痛い目に――」

 

「うるさいわ」

 

「――ぐはっ!」

 

 これ以上聞くのも面倒になったワタシは、肩に置いた右手でそのまま相手の横顔を鷲掴みにして、一気に地面に叩きつけた。

 大きな音とともに地面に潰れ、倒れた男は僅かにぴくりと動いたかと思うとそれっきり。動かなくなった男の身体はデータとして崩れ、この場から消失した。

 

「あらあら、力を入れすぎてしまったかしら。これがダイバー死亡時による強制ログアウト、と言うものかしら」

 

「なっ……何のつもりだっ! いきなりあんな事しやがって!」

 

「俺達にたてついて、タダで済むと思ってんじゃんよ! いっそここで――」

 

 残った悪質ダイバー達は今度はワタシに敵意を向けていた。けれど、そんな時に周りからこちらへと向かって来る音が聞こえた。多分ワタシがしたさっきの音が、外にも聞こえていたのだろうかしら。

 

「ここにいるのは、俺たちがまずいぞ」

 

「言われなくても分かっている! ……クソっ!」

 

 悪質ダイバーの男達は苛立った様子をしていたけれど、すぐに諦めたかのようにすると。

 

「――覚えていろ。誰だか知らないが、この借りは必ず返してやる」

 

 そう言い捨てると彼らは足早にここから離れた。同時に、別の方向から騒ぎを聞きつけたダイバーが数人、こっちへと。

 

「大きな音が聞こえたから、ここに来た。……君達大丈夫か? 何が起こったんだ?」

 

 数人の内、代表として一人のダイバーが尋ねた。この問に少年二人は。

 

「ううん、僕達は大丈夫」

 

「この人が助けてくれたから。だからもう平気だよ」

 

「そうか。なら、良かった」

 

 一安心した様子を見せて、他のダイバーにもその事を伝える。そして改めて少年と、ワタシにも視線を向けると。

 

「こうした人気のない所は危ないからな。とにかく、早めにここから離れることだ。……勿論君もだ」

 

「……ええ」

 

 ワタシも一言だけ答えた。そして、本当に心配して来ただけだったダイバーたちはこの場を去った。

 

 

 

 そして、残ったのはワタシと少年、三人だけ。

 

「……」

 

「着ぐるみで誰だか分からないけど、まずは――」

 

「――助けてくれてありがとう!」

 

 結果的にワタシが助けた二人の少年は、息の合う感じでそう言った。二人とも見分けがつかないくらいにそっくりで、前髪にそれぞ左右対称の星のヘアピンをつけた金髪の長いポニーテールの、女の子みたいな容姿の少年。まるで双子みたいだけれど。

 二人の内、右にヘアピンを付けた方の少年がワタシにこう話す。

 

「せっかく助けてくれないと失礼だよね。僕は兄のフィオ!」

 

「そして弟のティオ! 僕達は双子の兄弟なんだ!」

 

 左前髪にヘアピンを付けた……ティオもそう話す。フィオとティオ、兄弟だと言いはしている。そしてティオはワタシに向けて右手を伸ばす。

 

「顔は分からないけどせめて、握手くらいは。それくらいならいいだろ」

 

 向けられた握手の手。けれどそんな、手など。

 

 ――パシッ!

 

 ワタシはティオの手を強く弾いた。そんなもの、握れるわけないじゃない。

 

「別に、ワタシが気分晴らしにしたにすぎないわ。礼になんて及ばない、それよりねぇ?」

 

「……えっ?」

 

「気安く触れないで欲しいわね。

 ワタシはねぇ、大嫌いなのよ。――貴方のようなELダイバーは」

 

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