【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
いつも通りの一日。
学校に行って、授業を受けて友達と話したり。学校が終わったら大切な幼なじみで――恋人のヒロトと一緒に帰るの。
でもね……今日は。
「来てくれて嬉しいよヒナタ。今日は家で、ゆっくりしてくれ」
「うん。私も、家に誘ってくれてありがとうね」
私たちの暮らすアパート、自分が暮らす部屋のお隣……ヒロト達一家が暮らしている部屋に遊びに来たんだ。こうして家に遊びに来るの、前にも何度もあったけれど。
「それじゃ、お邪魔するね」
「ああ。父さんも母さんも出かけているから、だからその間は……二人だけで過ごそう」
――――
私とヒロトしかいない、このリビング。ソファーに座って周りを見回すと……見慣れた部屋の景色。カーテンの隙間からは夕暮れの、オレンジ色に彩られた景色が見えるんだ。
「静かだね。でも、良いな。何もしないでこうしてただ部屋で二人きりなだけでも、好きだよ」
今は私たち二人だけ。そんな事は今までもあったけれど、でも――改めて良いって。
「ああ。ヒナタと二人で、こうして」
「……あっ」
ヒロトはソファーに座っている私の後ろから、両手を肩に乗せて軽く抱きよせる。振り向くと、後ろの彼は嬉し気な、照れてもいるみたいな顔で微笑んで。
「ちょっとだけこう言うの、どうだろうか」
座っている私に、後ろからの抱擁。多分……幼馴染みだった頃にはこんな事、なかったよね。ヒロトからのスキンシップについ顔がほころんで。
「とても素敵だよ。何だろ、ヒロトと家で過ごすのは当たり前だけど、ドキドキしちゃうな。ねぇ……」
「うん?」
「あのね。一緒になってすぐだけど、こうされると私、我慢できなくなっちゃって。…………しよう」
私からの告白、するとこれを聞いたヒロトは顔を急に赤くする。
「しよう……って、えっ?」
どうしてか急にしどろもどろなヒロト、私はそんな彼にこう続けるの。
「しよう……キス。せっかくだからって」
「あはは。……そう…………だよな」
変なの。ヒロトってばあんな風に慌てて。でも……。
「キス、か。もちろんいいよ。いつだって、大歓迎だ」
そう言うと彼はゆっくり、私に顔を近づけてくれる。……嬉しいな、私もヒロトに近づいてキスしようって。だけど。
……グー
「あれ?」
そんな時にお腹の鳴る音がしたんだ。見るとヒロトは恥ずかしそうに俯いて、苦笑いを。
「ごめん。ついお腹が減って、お腹が鳴ってしまった。……かなり恥ずかしいな」
「あはは、やっぱりヒロトだったんだ。少しびっくりしちゃった」
いきなりの事に私もついおかしくてくすりとしてしまう。
「せっかく良い所だったのに、何だかごめんな。改めて続きを――」
「――大丈夫。それよりお腹が減っているんだったら、先にご飯にしない? 実は私もお腹がペコペコで……キスは後でも出来るから、そうしよう?」
私からの提案。ヒロトはちょっと考えこんで、そして。
「そうだな。なら、それにしようか。今日は親もバタバタしていて、冷凍食品くらいなら今から用意するよ」
「待って! せっかく私が来たんだから、私がヒロトの分もご飯を作るよ。……作りたいんだ」
やっぱりご飯は手作りがいいよね。これまでだって何度もヒロトの家で作ったりもしているし、全然慣れてるもん。
それにカフェのアルバイトもしているから、料理、自信があるんだから。
――――
家のキッチンで、私は二人分の料理を作るんだ。
二人って言うのはもちろん私と、ヒロトと。作る料理はオムライス! ケチャップで味付けしたチキンライスの上からとろふわのオムレツを乗せたおいしいの。
「~♪」
鼻歌まじりで私は料理を作っている。料理は楽しいし、向こうで待ってくれてるヒロトのために、とびきり美味しいのを作らないとって。
「調子はどう、ヒナタ?」
そう思っていると、ヒロトが私の所にやって来たんだ。
「あっ、待っていても良かったのに」
「様子が気になってさ。それに、とても良い匂いもするから、待ちきれなくて」
「そう言ってくれると、ふふっ、嬉しいよ」
今はフライパン片手にご飯を炒めている所。ヒロトはそんな私の脇から料理している様子を眺めて来る。
「ヒナタが作っているのは、チキンライスかい?」
「うーん、惜しい! 正解は……オムライスなの。そこに卵がいくらか置いているでしょ、チキンライスの後はそのまま卵でふわふわのオムレツを作って乗っけるの。
だからもう少し待ってて。オムレツも、ただ卵を焼くだけじゃなくて隠し味を入れようとも思ってるから」
「オムライスか! ヒナタのオムライス、どんな風に美味しいのか楽しみだ」
「ありがと、ヒロト。楽しみにしててね。あともう少しで出来ると思うから」
ヒロトも待っているし早く作らないとね。私は改めて料理に……だけど、こうしていると。ついある事を思ってしまう。
「ねぇ……。家の中で二人で、こうして。まるで……」
「まるで?」
つい思った事。ヒロトがそう聞くのを、私は自分でもどぎまぎしつつ答えたの。
「うん。まるで私が、ヒロトの奥さんになったような、そんな感じみたいだって、ね」
こうして彼の所で料理を作るの、初めてって訳じゃないけど。でも私はついそんな風に思ったんだ。
「ヒナタが俺の……か」
ヒロトは少しだけ驚いたみたいに、だけど嬉しく思ってくれているような表情で、軽く微笑みかけてこう話したんだ。
「それはとても、いいな。ヒナタはきっと……良い奥さんになれるって思うから」
そんな彼からの言葉。思わず、私も。
「うん! まだ早い話かもだけど、とても――良いよね。
そのうち、いつか。だって恋人にもなれたんだもん、だから順番に行ったら…………」
――あれっ?――
そこまで言って私ははっと我にかえったの。いつの間にか、自分でもとんでもない事を言ってしまってたって。
「あ……あはは。私ってばつい、変な事を話しちゃったね。
その、えっと、いきなりだし……ヒロトも私もまだ高校生で本当に気が早いのに。でもやっぱりいつかはって…………ああっ、何話しているんだろ」
途端に凄く恥ずかしくなって、私はつい胡麻化そうとするけれど、でもこんがらがって上手くいかない感じで。
「大丈夫だから落ち着いた方がいい。料理中にそうしていると、怪我するかもだから」
「っと……そうだね、ごめんね」
おかげでいくらか落ち着けた。私はまた料理に意識を戻す。
――ちゃんとしないとね、美味しい料理を作るんだから――
「じゃあ、私はオムライスの続きをするから、後は任せて」
「了解だ、ヒナタ。……あっ、でもそうだ」
そう言うとヒロトはキッチンの流しの所へと。
「どうかした?」
「あのさ、良ければヒナタが料理で使ったまな板や包丁、容器だとか先に洗っていてもいいかな?」
「……いいの? 嬉しい! ならお願いしようかな」
ヒロトの心配り、私は笑顔で答えたんだ。
「任せて欲しい。――俺も、将来ヒナタの良い旦那さんになるなら、これくらい出来た方がいいから」
「うんうん。私の旦那さんに……って、えっ!?」
私はそんなヒロトに、またドキッとしたんだ。
――――
私が腕によりをかけて、愛情込めて作ったオムライス。
あれからオムライスを一緒に食べて、ちょっと早い夕食に。私の作った料理、ヒロトも美味しいって凄く喜んでくれて、とても幸せに感じたな。テーブルで二人、向かい合わせで食事するのも……素敵だって。
食べ終わったら一緒に片づけをして、今は――
「どう? 最近俺が作ったガンプラ……せっかくだから見て欲しいなって」
今、私はヒロトの部屋で彼からガンプラを見せてもらっている
所なんだ。
「やっぱりガンプラを作るの、上手だね」
「そう言ってくれるとうれしい。……昔からずっと好きだったから、ガンプラ。好きだからこそ、こうしてやって来れたんだ」
「えっと、このガンプラは『ガンダムОО』のガンダムクアンタ、って言うんだっけ。肩についている剣も、ガンプラのスタイルもすらっとして恰好良くて、青と白の色の感じも綺麗だよね」
ヒロトが作ったガンダム、名前はそれで合っていたよね。
「正解だ。ヒナタももう随分とガンダムに詳しくなったな。宇宙世紀の作品だけじゃなくて、アナザーのガンダム作品までよく知っている感じで」
「ふふん、おかげさまでね。ヒロトと一緒に、こうしているから」
ガンダムが好きな私のヒロト。一緒にいると私だって色々、もっと分かるようになってくるんだ。
でも、このガンプラ……ヒロトの作ったガンダムクアンタは。
「だけど、私が見たのよりもずっと青の色が深くて、ディティールも細かいよね。……あとデカールだったかな、それもガンプラに綺麗に貼っているから」
彼のガンダムクアンタは、色々手を加えていて……まるで精巧なフィギュアと言うか、普通のプラモデルとは思えないくらい。
「ありがとう。今回作ったクアンタ、完成度を高める感じで作った。……学校とかもあるから、数週間かかったけど俺も満足した出来なんだ」
自分でも、満足そうにクアンタを眺めているヒロト。それから何気なく手に取ると、部屋の空いている棚に、剣を構えるようなポーズにして飾った。
「――これでよし、と。どう? 恰好良く決まっているか?」
そんな風に聞くヒロト、私はうんって頷いた。
「うんうん、とても良いよ、ヒロト。あと、ガンプラとは違うんだけど、それ……」
さっき置いたガンダムクアンタ、その横に置いてあるものを指さして彼にたずねた。ヒロトもそれを見て、にこやかな顔で応えてくれる。
「ああ。……そう言えばこれも新しくこれも撮って、飾ったんだ。良い感じに二人で撮れていると思うけど、どう?」
置いてあったのは写真立てに入れて飾ってある、写真。
私とヒロト、この前エルドラに行った時、フレディさんと綺麗な花畑に行った時の写真。花畑を背景に私達二人で手をつないで笑い合っている写真があったんだ。
「あの時の写真、撮って飾ってくれているんだ」
「俺は結構気に入っているんだ。もちろん他の写真だって、素敵だって思っている」
部屋には他にも……ヒロトに貰ったばかりの髪留めをつけて街にデートに行った時、照れ笑いを浮かべている私と、それに彼とのツーショット。後、GBNで彼が宇宙ステーションの新エリアで花火のサプライズを見せてくれた時に二人でいた写真だとか、私とヒロトとの写真がいくつも、新しく部屋に置いてあるんだ。
イヴさんとの写真もそのままだけど、それでも私との写真もこうして飾ってあるの、ちゃんと私の事も特別に想ってくれてるって分かるから。
……だから
「――素敵だって私も思うよ。今更だけど、私との写真も飾ってくれて、ありがとうね」
「礼には及ばない。だって、俺がこうしたかっただけだから。でも……ありがとうって言ってくれると、嬉しい」
こう言って嬉しそうにはにかむヒロト。そんな彼の事も、私は……好きなんだ。
――――
「――それじゃあ、今日はとても楽しかったよ」
「俺の方こそ。でも、もう帰るのか? あと少しいても大丈夫なのに」
「ううん、本当はそうしたいけど、明日部活があるから、早めに眠りたいんだ」
ヒロトと一緒の時間を、家でしばらく過ごした私。でもそろそろここまでかな。
玄関先で見送ってくれる彼、私はちょっと寂しいけど、それでも笑ってこたえるの。
「そう言うことなら仕方ないな。……じゃあ、ヒナタ。明日また」
別れの言葉。私も、こう返事を返した。
「うん! 明日もまたね、ヒロト!」
別れは寂しいけど、また一緒になれるから。今日はさよならだけど、明日――またヒロトと。
そうして家を出て、私は自分の家に帰ったんだ。まぁ……帰ったって言ってもお隣だから、すぐそこだけどね。
夕食はヒロトと食べたから、後はシャワーを浴びて着替えて歯を磨いて、後はもうベッドに入るだけで。
「……うーん!」
寝間着に着替えて、私は軽く背伸び。身体がリラックスしたって感じると少し欠伸が出て眠たくなるんだ。
――やっぱり、眠いな。もうそろそろ――
もう眠ろうかなって、私はベッドに軽く腰を下ろす。だけどそのまま横になろうとした時、ふと今日の事に思いをはせる。
――ヒロトの家で二人だけで過ごしたの、良かったな――
二人っきりでいられて楽しかった。彼とも親密に過ごせて、互いに想いが通じ合えもしたから。ヒロトと過ごした時間、本当に楽しかったな。見せてくれたガンプラも恰好良かったし。
「私も……今度遊びに行ったらガンプラ、一緒に作りたいな」
一人そんな事も呟いてしまう。それだけ充実した彼との時間。
――こうして一緒に過ごすのは幼馴染の時もよくあって、恋人になってからも過ごし方はあまり大きく変わったわけじゃないけど。でもね――
ただ、彼の私に対する態度や言葉……部屋に写真も飾ってくれた事だって、前よりも距離が近くて私を、もう幼馴染だけじゃない特別に想ってくれると分かるから。それが――幸せで。
だって私がキスしようって言った時も、ヒロトは全然大丈夫そうに受け入れてくれたもん。お腹が鳴って途中でやめちゃったけど。
――あっ――
私はふいに、ある事を思い出した。
「キス……。結局今日は、出来ずに終わっちゃった」
思い出してちょびっとだけ残念に思った。だけど、すぐにそんな思いはどこかに行って、にこっと明るい気持ちに変わるの。
――でも、いいかな。その代わりまたヒロトに会ったら……もっと甘えよう。もちろんキスだって、ね――
だって、いくらだって大丈夫。もう私は自分の気持ちを素直に言えるんだから。
そうと決まったら、もう眠ろう。ぐっすり眠って、またいつものように元気に……ヒロトと会うんだ。