【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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番外編その六 私達のドキドキ、ワクワクな宿泊旅行 その1

 

 今日は休みで時間があるから、街に買い物に出ていたんだ。

 

 ――えっと、後は何を買おうかな。野菜は買ったし、そうだ……洗剤が切れそうだからまた店に行って――

 

 手にぶらさげている買い物かごには色々と入っていて、それに……今私が手に持っている一枚の券。これは買い物をした時について来たもので、店の人の話では街でくじ引き大会をやっていてそれに使うみたいなの。

 左腕に買い物かごをぶらさげて、右手に持っているくじ引き券をひらひらさせて眺めながら、ちょっと考え事。

 

 ――くじ引きか、何だかワクワクだよね。せっかくだからやってみたいけど、えっと、どこでやっているのかな――

 

 こんな風に思っていると、通りの横でちょっとした人だかりと行列が出来ているのが見えた。

 

「あれって」

 

 人が集まっているのは小さなテント。集まっている人の隙間から見えるのはぐるぐる回すくじと並んでいる商品、くじ引きの係員の人が見えたんだ。

 

 ――やっぱりあそこでくじ引きをしてるんだ。……うん!――

 

 私は一人うんと頷いて、手にしているくじ引き券をたなびかせて……行列へと向かうんだ。

 

 

 

 ――――

 

 列に並んで私は順番を待つの。前の人が次々とくじを引いて一喜一憂しているのを眺めながら、ドキドキ緊張しながら自分の番を待つの。そして……ようやく。

 

「やぁ、嬢ちゃん。君もくじ引きだね?」

 

 ようやく来た私の番。目の前にはくじ引きのガラガラ……あの回して玉が出るのが置いてあったんだ。

 

 ――くじ引きは一回だけ回せるのかな。景品はどんな感じのがあるんだろう――

 

 そんな風に思っていると、くじ引きの係のお兄さんが気さくに声をかけて来た。

 

「ほう、景品が気になるかい」

 

「うん。何だか色々、あるみたいですね」

 

「……外れの景品はあそこに積まれたティッシュと飴、当たりは商品券だったり電化製品、そこの掃除機やテレビとかだな。そして一等賞は――」

 

 お兄さんはテント奥にかけてある大きな写真を指し示したんだ。それは綺麗な森の中にたたずむ和風の雰囲気がある旅館の写真。

 

「一等賞はあの高級旅館への旅行、宿泊券だ。自然の中で静かな一時、料理も美味しいし旅館の少し下に降りれば有名な温泉街がある。

 きっと、最高の思い出になるだろうな」

 

 ――旅行……か。とっても素敵かも――

 

 私はそんな憧れを感じてしまう。

 

「さて、と。じゃあ早速引いてみるかい? 良い景品が当たればいいな」

 

 あっと、そうだった。ここまで来たんだもん、くじ引きを引かないとだよね。

 

 ――でもたった一枚だけ、良いのが当たる可能性は低いかのだけど、夢を見るくらいいいよね――

 

 そんな風に思いながら私はガラガラの取ってを掴んだ。こう言うのって本当にワクワクするよね。胸を高鳴らせながら私は、思いっきりガラガラを回したんだ。

 音を立てながらガラガラは回って、そして……一個の小さな玉が転がり出て来た。

 

「――これは!」

 

「……えっ?」

 

 転がって出て来た玉は、綺麗な金色をした玉だった。これって……もしかして。

 

「おめでとう嬢ちゃん! 大当たり、特賞の旅行、宿泊券二人分は君のものだ!」

 

 これを聞いて周りの人たちも大きく騒めく感じ。私も、いきなりこんな事になって驚いて茫然としちゃっている。

 

「宿泊券、たしかに欲しいって思ってたけど、本当に当たっちゃうなんて。信じられないよ」

 

 だけど思いがけず素敵な景品が当たって、やっぱりとても嬉しい。……けど、ちょっと待って。

 

「あの……」

 

「おや、どうかしたかい?」

 

「当たった旅行券と宿泊券、たしか二人分だって……そう、言いました?」

 

 私の問いに、お兄さんは笑顔で答えてくれる。

 

「その通り! それぞれ二人分だ。

 君の他にももう一人、誰かと一緒に行けるってわけだ。家族の誰かなり、それとも他に特別な相手がいるのなら、な」

 

「特別な、相手と」

 

 一緒に旅行、か。そんな風にしたい人は――もちろん。

 

 

 

 ――――

 

「……もしもし」

 

 くじ引きで当たった二人分の旅行券、宿泊券を持って、私は電話をかけるんだ。出てくれるといいけど。

 

〈どうかしたかい、ヒナタ〉

 

「あっ、ヒロト、出てくれたんだ!」

 

 電話を掛けたのは私の彼……ヒロト。

 

〈いきなりの電話で少しびっくりだけど、何かあった? 電話越しでよければ聞くよ〉

 

「ありがとう。……実はね、さっき街でくじ引きがあったから私、引いて来た所なんだ」

 

〈うん、それは良かったな。もしかして良い景品でも当たったのか?〉

 

 ヒロトからの言葉に、私は明るくこたえた。

 

「そうなんだ! 実はくじ引きで当たったのは素敵な旅館への宿泊券と、旅行券を貰ったの。

 しかも……二人分、当たったんだよ。だから――」

 

 でも改めて言おうとするとドキドキだよ。

 二人で……一緒に旅行に出掛けようって。ただ後はそう言うだけなのに、なかなか上手く言えないな。だってこんなの、初めてな感じだから。だけど誘うからにはちゃんと言わないと。

 

「だから――もし良かったら、一緒にどうかなって。二人で旅行に出かけるの、今度連休もあるから良いかもしれないから」

 

〈旅行、か〉

 

「あっ、でも旅行先はここみたいに沢山物があるわけじゃなくて、多分GBNをプレイする環境もない感じだから、数日間出来ないかも。それに他に用事があるかもだし……もし本当に、良ければ」

 

 ヒロトと旅行だなんて夢みたいだけど、彼の方はどうかなって。私の言葉に対する答えは。

 

〈連休には他に用事もないから、もちろん構わない。……旅行か。こうしたのは初めてな気がするから、もし行けるの俺も楽しみだって思う〉

 

「――!」

 

 良かった、彼がOKしてくれて。これで一安心だね。

 

「ありがとう。なら次の休み、一緒に出掛けよう。ふふっ、楽しみだよ」

 

 ちゃんと約束も取り付ける事も出来た。後は、その日まで待つだけだね。

 

 ――本当に楽しみ。ヒロトと遠い所まで旅行だなんて。……良い思い出、作りたいな――

 

 

 

 ――――

 ――

 

 

 約束通り、数日後……。

 

「うんしょ……っと」

 

 部屋でトランクケースの中に持って行く物を積み込んで、出かける準備を済ませている所。

 

 ――これで全部かな。歯ブラシやカメラ、服の着替えもばっちり。これで大丈夫――

 

 中にちゃんと物が揃っているのを確認して私は、トランクケースを閉じる。そのままトランクを手にして早速、部屋から出てお母さんに声をかけるんだ。

 

「じゃあ、行ってくるね!」

 

 ここに帰って来られるのは数日後。ちょっと名残惜しくて寂しく思ってしまうけれど、でもこれからとっても楽しい時間が待っているから。

 挨拶をして、私は家を出た。そしてそのままヒロトの家に。

 

 ――あっちはどうかな。準備が済んでいるといいけど――

 

 そう思いながらインターホンを鳴らして待つんだ。するとすぐに向こうからやってくる音が聞こえて。

 

「おはよう。今ちょうど、俺も準備が終わった所だったんだ」

 

 インターホンを鳴らして出て来たのは、私と同じように外出着姿でトランクケースを手に持ったヒロト。何だか彼もワクワクしているような、楽しみみたいな感じの様子をしている。でも、ちょっと寝ぼけてもいるみたいで。

 

「ははっ、俺も今日が楽しみでさ、昨日はあまり寝れなかったんだ。

 遠くまでヒナタと二人で旅行、とても面白そうだって思うから」

 

 私も、これに笑顔でこたえる。

 

「だね、ヒロト。それじゃあ早速――行こう!」

 

 どっちも出かける準備は満タンだね。さーてと、せっかくのお出かけ、楽しんでいこう!

 

 

 

 ――――

 

 私達はトランクケースを片手に、街の駅へと。そしてそこから新幹線に乗って今は。

 

「景色が……こんなに早く流れて。見て見てヒロト!」

 

 次から次へと、傍の車窓から流れる町や山の景色。私は興奮気味で隣に座っているヒロトに声をかける。彼も車窓に視線を向けて、私に。

 

「本当だな。やっぱり新幹線は普通の電車より、ずっと早い。GBNならともかく、リアルでこんなにスピードが出る乗り物、凄いと思う」

 

「だよね。GBNを始めてからちょっと忘れていたけど、こう言うのも凄いよね。

 ……新幹線、最後に乗ったのはいつだったかな。こう乗っているだけでも新鮮と言うか、楽しいよ」

 

「その気持ち、俺も分かる」

 

 私も、ヒロトも、新幹線に乗る事だって慣れていないから。だから楽しいんだ。

 

「さて、と。じゃあこれから目的地になる旅館に行くわけだけど……」

 

 私はこんな時のために用意した地図を出して、前に広げた。そこには私達が暮らす街と、これから向かう旅館がある町までの範囲の広さの事が記されていて、私とヒロトは一緒にそれを眺めるの。

 

「私達が行く場所って、別の県の……それに山の中にあるんだよね」

 

「地図で見るとその通りだ。にしても、それなりに離れてもいるな。普段だと絶対に行かないような場所だ」

 

「あはは、だよねぇ。でもここは旅行地として有名なんだって。綺麗な自然と、温泉街には色んな店や温泉があったりで、それに旅館だってとても良いって評判なんだよ」

 

「それはなおさら、楽しみだな」

 

 うんうん。楽しみなのはその通りだよね。でも……ちょっと。

 

「でも。地図で見ると行くまでが大変だよね。新幹線で駅まで、そこから地元の電車に乗り換えて町に行って、途中またバスに乗って旅館にだから。

 調べたんだけどこうした乗り継ぎもあるから、到着するのが夕方くらいになるみたいなの」

 

「何度か乗り換えするには、ヒナタの言うとおりちょっと大変かもだ。けど、それも旅行の醍醐味じゃないか?

 そう言うのも普段体験できる事でもないから。それも含めて、楽しみたい」 

 

 これはヒロトの言う通りだよね。大変かもだけど、それも含めて普段じゃ出来ない特別な時間だから。彼と一緒の、思い出だから。

 

「うん、そうだよねっ。移動の途中にもあちこち寄ったり見て回ったりも出来るから。だってこれから行くのはどこも見た事ない、初めての場所だから」

 

 これから先は、本当に知らない場所だから。だからこそ期待で胸が膨らむんだよね。

 

 

 

 ――――

 

 新幹線、景色を眺めたり、駅弁を食べたりして充実した時間だったな。

 そして新幹線を降りた後、地元の大きな駅のショッピングモールで少しだけヒロトと見て回ったよね。……乗り換える電車を待つ一時間足らずの空いた時間だけど、でも見たことないお店もあったりして面白かったんだ。

 時間をそんな風に過ごしてから、地方の電車に乗り換えてまた移動、そうして一つの町に辿り着いたの。

 

「温泉街、か。話では聞いていたけど、実際に見ると凄いよね。大きな川や、風情のある昔ながらの大きな橋……それに川沿いには湯気が立ち上っている建物がいくつも。多分、建物の中に温泉があったりするのかな」

 

「多分な。他にも、旅館や観光客の為のお土産屋だとか、見所がたくさんそうだ。出来れば全部巡ってみたいな、ヒナタ」

 

 ようやく温泉街にやって来た私達。その景色に、思わず目を奪われてしまっていた。だって、とても素敵だったんだもん。

 

「今度は旅館までのバス待ちか。時間までのバス停があるさっきの駅に戻らないとだから、それに電車待ちしていたより時間も少ないから……少しだけだけどさ」

 

 ヒロトとそう話しながら、少し坂道な温泉街の通りを歩いて散策するんだ。

 あちこちに店があって、それに温泉も。出来れば入ってみたかったけど時間がないから……本当に見て歩くだけだけど。

 

「見るだけなのは惜しいけど、どっちみち温泉街には明日行けばいい。時間もあるわけだし、その時にはゆっくりと」

 

「だね。それに今はこうして、景色を見るだけで良い気持ちだもん」

 

 そんな風にしながら通りを歩いて、私達は……ある場所に。

 

「……付き合わせちゃったね、ヒロト。バスまでの待ち時間のうちに、この景色だけは先に見ておきたかったから」

 

 私達がやって来た所。それは温泉街の真ん中に流れる川にかかっている、さっき見えていた風情がある橋の上。ちょうど真下には川の流れがよく見えるの。

 

「やっぱり来て正解だったな。ここから見渡す温泉街も良い景色だし。それに下に見える川の流れ、きらきらしていて綺麗だから」

 

 川のせせらぎの音がここからでも聞こえて、それに少し夕暮れ時で薄いオレンジ色になっていた夕日の色できらきらとしているの。後、川は綺麗に透き通っていて、泳いでいる数匹の鯉だって見える程なんだ。

 

「こう言う景色も、俺達が暮らす街では見かけない。それに、あっちは海に面した街だけど、この温泉街は山の中だしな。だからとても珍しい。それにこうしていると何だか、気持ち良い気分もする」

 

 ヒロトも私の傍で、ここからの景色を眺めていた。何だか心地よさそうで……でも、ここは空気も美味しいし、肌を撫でる風も気持ちがいいもん。心地いいってヒロトの気持ちも、分かるんだ。

 

「私もだよ、出来ればしばらくここで、ゆっくりしたいよね。――あっ」

 

「ん? どうかしたか」

 

「ねぇヒロト、少しだけ下を見てみて」

 

「下って、一体?」

 

 私は彼に、下に流れている川を見てほしくて促したんだ。それを聞いてヒロトは私が見ている下の川に視線を向けてくれた。そこには……。

 

「へぇ、珍しいな。…………金色をした鯉がいるなんて」

 

 川に泳いでいた鯉。その中に一匹だけ、金色でぴかぴかな鯉が泳いでいるのを見つけたんだ。とても珍しい気がしたからヒロトにも見て欲しくて。

 

「珍しいって言うのも、ふふっ、何だか縁起が良いよね。金色の鯉って、そんな気はしないかな?」

 

「言われてみれば、だな。縁起がいいって俺も思う。こう言うのも、素敵だって」

 

「だよね! 幸先が良い感じというのかな、この先も良い事が待っている予感がするんだよね」

 

 そう楽しく私達は話していた。けれど、ふと時間を思い出して、確認して見ると……。

 

「あっ、と! ヒロト、もう戻らないとバスが来ちゃう。私達が行く旅館への本数は少なかったから、乗り遅れたら大変だよね」

 

 ヒロトもこれには、慌てたような表情になって。

 

「もうそんな時間か。……俺もうっかりしていた、なら早く戻らないと、だな」

 

 うんうん、バス停に向かわないとね。

 バスに乗って、私達が泊まる旅館に。――どんな感じだろうな。 




 今回の番外編はやや長い感じ、多分三話くらいかかるかな。……次回はイラスト付きですので、良ければそちらも。
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