【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い― 作:双子烏丸
「――んっ」
ヒロトと一緒に旅館に泊まりに来て、次の日の朝。私は布団から身体を起こして目を覚ましたんだ。ぐっと背伸びをしてリラックス。それからうっすらと目蓋を開ける。
――よく眠れた感じだよ。おかげでスッキリと朝を迎えられたかな――
外からはスズメの鳴き声が聞こえて、明るい日差しが外から差し込む感じ。絵にかいたようないい朝。
――とってもいい気持ち。ヒロトはまだ眠っているのかしら――
私はヒロトが眠っているはずの横の布団を見て見るけど、そこに彼の姿はなかった。
もしかして先に目覚めてどこかに行ったのかな? そう思って私も起きようとすると……すぐ横で何か当たる感覚に気づいた。
「あれ?」
「……ZZZ」
ヒロトも私の布団で寝ていた。
掛け布団には入ってなくてその上からだけど同じ布団でそれに、私の身体とくっつくくらいに傍で……ぴったり。
「あっ、えっ……ちょっ――!」
どうしてヒロトが、自分の布団じゃなくて……私の所で一緒に寝てるんだろう。それに……えっと、いつからこうして――。
びっくりして、ドキドキして……緊張だとか色々、感情がごっちゃになっちゃって。頭の中が混乱してしまう。
「これって、ただ寝相が悪いとか、だよね。何かあったりとか、全然そんな事ない……よね」
私のすぐ隣で、すぅすぅと気持ちよさそうな寝息を立てているヒロト。寝顔が何だか可愛いって言うか……いやいや! 私ってばこんな時に何を考えてしまっているんだろう。
――どうしよう。眠ったままだから放っておいた方が親切かもだけど、でも、このままだと私――
そんな風にどぎまぎしていると、寝ていたヒロトの目蓋が少し動いたのが見えた。
「う……っ」
そのままゆっくり目を開けて、彼は私を見上げて微笑んだ。
「おはようヒナタ。昨日は……よく眠れたか?」
私は彼の仕草にまたドキッとする。だから少し固まってしまったけど、ちゃんと応える。
「うん。よく眠れて、良い気持ちだよ」
「……それは良かった。安心した」
ホッとしたみたいなヒロト。何か心配事でもあったのかな? ……でも彼が目覚めたのなら。
「ねぇ、ヒロト?」
「どうかしたか?」
「あのね、その、どうして私の布団の所に来てたのかな……って。多分大した事じゃないとは思うけど、気に……なったから」
自分でもすこしもじもじしながら。顔も熱くなって、赤くなっているんだろうな。そんな風になりながら私は尋ねたの。
だけどヒロトも、私に言われてどうしようか困惑しているみたいにどぎまぎして。
「――それは、えっと……ヒナタは覚えて、ないのか」
「……何の事? 昨日は普通に眠ってそのままで、私、何かしたかな?」
「いや、それなら大丈夫、なんだけれど」
「??」
ヒロトの言葉、ちょっと意味が分からなくて首をかしげた。でもすぐに気を取り直すようにして、軽く笑ってこう言うの。
「あはは、自分で言うのも恥ずかしいかもだけど、夜中に少し眠れずに起きてしまってそれからちょっと…………ヒナタの傍にいたいな、って。
しばらくいた後に自分の布団に戻るつもりだった。けれどそのまま、寝てしまったみたいで」
「そう、だったんだ」
私の傍にいたいって、彼は思ってくれていたんだ。少し照れてしまうけど、やっぱりとっても……幸せだって、私は感じた。
「さてと、こうして起きたんだ。確か食堂では朝食が出るらしいから今から行くかい?
それからは昨日話していた通り温泉街を巡ろう。ヒナタ、どうかな?」
あっと、そうだったね。今日は旅館から近い温泉街を観光しようって言ってたもんね。
「うん! 私も出かけるのを楽しみにしていたから。でもまずは朝ごはんだよね、先に食べに行こう」
ちょっとだけドキドキした朝だったな。……さてと、今日は一日いっぱい、ヒロトと観光しよう。
――――
「――それでは、行ってらっしゃいませ」
朝ごはんも済ませて、準備を済ました私たち二人は旅館を後にした。見送ってくれる仲居さんに私とヒロトは手を振って返すの。
「こうして外まで来て見送りに来てくれるの、嬉しいよね」
「少し照れ臭いけど、俺も悪くないと思う。こう言うのも素敵だって思うし」
表情をふっと緩めるヒロト。それから、こうも続けるの。
「さてと、バスの時間もそろそろだ。ヒナタは忘れ物とか大丈夫か?」
「大丈夫だよ。携帯も、財布もばっちり。後……シャンプーや石鹸、タオルとかの温泉道具も用意したよ。だって温泉街だから、全部は無理かもだけど、温泉もあちこち入ってみたくて」
「温泉か、悪くない。俺も道具は一式用意はしている。やっぱり温泉街に行くんだ、入りたいと思うしさ」
彼も楽しそうな感じで、そう話している。もちろん私だって――楽しみだよ。
――――
バスに乗って、旅館から山を下りて……その先にある温泉街に。
駅前のバス停に停車したバスから降りると、そこには温泉街の町並みが広がっていたんだ。
「ようやく着いたね。やっぱり……雰囲気があって良い所だよね」
あちこちの煙突から湯気が立ちのぼっていて、和風の建物がいくつもたくさん並んでもいる。
「聞いた話だとこの温泉街もそれなりに広いみたいだし、どう観光して行くか」
そう言ってヒロトは駅前に置いてあったのを貰った、温泉街の観光マップを広げて確認していた。私も、その横から一緒に眺めるんだ。
「川岸には遊歩道があるみたいだ。色々花が植えてあって綺麗みたいだしそれに、有名な神社やお寺だったりとか、昔の屋敷や庭園とかも観光出来るみたいだ」
「そう言う所も行ってみたいよね。後はお土産屋さんだとかのお店にも行きたいよね。みんなの分のお土産も買ったり、それにどんな物があるのか見るだけでも楽しいから」
「ヒナタの言う通りだな。後はそうだな、昨日話していた水路や池も見に行こう。金魚にそれに、鯉だとかも泳いでいる感じらしいし」
私たちは今日どうするか、改めて考える。こうしているだけでも楽しいけど、そろそろ出発しようかな。
「まだまだ時間はたっぷりあるから、まずは歩いて行こう、ヒロト。
さっき話した場所もそうだし、他に気になる場所もあるかもだから。……そうそう! 後は温泉も、色々あるみたいだから入ってみたいよね」
まだ一日は始まったばかり。だから、今日はたくさん色んな所に行って、ヒロトと思い出を作るんだ。
――――
「うーん、やっぱり風情があって、良い気持ちだね。……あの黄色い花は菜の花かな、感じ的に好きなんだ」
今はヒロトと一緒に、川沿いの遊歩道を歩いていた。右手にはさっき売店で買ったばかりのアイスクリーム。歩きながらペロッと一舐め、バニラの甘い味を感じるんだ。
「アイスクリーム、やっぱり甘くて美味しいよ。私はバニラアイスを頼んだけどヒロトはどう? 抹茶アイスだよね、気になるんだ」
そして隣にはもちろんヒロトも。左手で手を繋いで、一緒に歩いている。繋いだ手から彼の温もりを感じて、それも心地よくて安心して……良いんだ。
「こっちも美味しいさ。抹茶だから苦みなイメージだったけれど、意外にこれはこれで甘くて美味しい。……良かったらヒナタも、食べてみるか?」
「えっ、いいの?」
「もちろん。少し食べかけだけど、良かったら。こう言うのは何て言うのか……間接キス、と言うやつか」
自分で薦めたのに、ヒロトってば照れながら言うんだもん。それがつい可笑しくて、くすくすと笑ってしまう。
「むぅ、笑うことはないだろ。これでも俺は、勇気が要ったんだから」
ちょっと拗ねたようにするヒロト。私はすぐにごめんって謝る。
「ごめんねヒロト。けど――そう言うの、私も良いって思うし、嬉しいよ。
だからアイスクリームを一口、いいかな? それに……」
私も、ドキドキしながら自分のソフトクリームを、ヒロトに差し出してみるんだ。
「だったら私のアイスクリームも、良かったらどうかな? 間接キス……するなら両方ともが、いいかなって」
私からもそう言ってみた。多分ヒロトと同じように照れる気持ちはあるけど、せっかくだもん。
「両方とも、か。――いいな」
彼も心なしか気に入っているみたいに、笑ってくれる。そしてこう答えてくれたんだ。
「なら俺もヒナタの持っているソフトクリーム、一口貰うよ。互いに交換しよう」
「……うん。じゃあ、はい! ヒロト!」
私とヒロト、私たちは自分のアイスクリームを交換する。そして彼から受け取った抹茶味のアイスクリーム、上がちょっとかじられていて……それにちょっとどきっとしたり。
でも私は、ヒロトのアイスクリームを一口、そのまま口にした。味は……。
「美味しい! ちゃんと抹茶の味はするけどちゃんと甘くて、何て言うのかな、不思議な味って感じだけどでも美味しいの」
不思議な風味だけど美味しい味。私がそう言うとヒロトは良かったと言うような顔を見せて。
「気に入ってくれて何よりだ。ヒナタのアイスクリームも、美味しかった。それに間接キスも、悪くないな」
そんな風に言ってくれる彼。……もう幼馴染みだけじゃなくて、こうして接してくれるのがとても嬉しい。何度でも嬉しいのは、嬉しいもん。
「私もヒロトとこんな風に出来て、幸せだよ……とっても。
それにヒロトの抹茶アイスも気に入っちゃった。このまま食べちゃっても、いいよねっ!」
「あっ、ちょっと!」
私は悪戯めいた表情でヒロトにウィンクして、遊歩道を駆けるんだ。そして私を追いかる彼。
こんな風にするのも、楽しいよね。
川沿いに歩いて、また店に立ち寄ったり……それに通り道には小さい庭園とお寺、あと神社もあったから、そこにもね。
「お寺もだけど神社もやっぱり雰囲気あるよね。前の弓神事だったり、私は弓道をしているから神社の方が馴染みがあるんだ。ヒロト、こっちに来て一緒に撮ろう?」
今は神社を観に来ていた私たち。そこで神社の社も映るように自分の携帯で、ヒロトと一緒に写真を撮るんだ。
パシャっと、一枚。写真を撮るとどんな風に撮れているのか確認してみる。
「どうかな? 写真、よく撮れていればいいけど?」
「うん、ばっちりだ。ちゃんと俺とヒナタ、それに後ろの神社だってよく写っている。良い写真だ」
撮った写真、ヒロトもばっちりお墨付きだよ。
「良かった。だって大切な思い出は、しっかり残さないとだからね」
私はにこやかに言って、後ろの神社へと振り返る。古くて歴史のある神社、数百年も前に建てられているみたいだもん、何だかそれも凄いよね。
「神社……いいよね。雰囲気があるのもそうだし、後お参りも出来たから。やっぱり神社に来たら、それをしないとね」
「確かにな。俺もこうしてお参りするのも、久しぶりだったから」
そうそう、さっきは神社で二人でお参りもしたんだ。賽銭も入れて 手を合わせて……少しお願い事も。
「なぁヒナタ?」
「ん? どうかした?」
神社の敷地を歩きながらヒロトが私に聞いて来た。私がこう言うと、彼は。
「さっきのお参りの時、ヒナタは何か願い事をしたのか? もししたのなら、気になってさ」
「……うーん」
ヒロトの質問にちょっと悩んでしまうな。私の願い事、今話すのが少しだけ照れてしまっちゃって。
でも、ちゃんと言えるよ。昔なら無理だったかもだけど、今は自分でも……もっと正直に、自信を持てる感じだから。
「えっとね、私は――」
私は質問に答えようとする。すると、その前にヒロトがこう話したんだ。
「ちなみに俺も願い事をしたんだ。――これからもヒナタと一緒に、もっと絆を深めていけたら……って」
「――!」
でも、先に答えてくれたヒロトの願い事に、私は不意討ちみたいな感じで驚いてしまった。彼がそんな願い事をしていたなんて。
「ヒロトもそう、願ってくれていたんだ。……てっきり、別の事をお願いしているのかなって思ったけど。例えば――」
例えばそう、イヴさんの事だとか。彼女は今、GBNの人たちの手で復元作業がされているんだ。ずっと前にGBNを守るために消えてしまった、ヒロトにとっても大切な人。
だから……願うならイヴさんが戻って来る事だって思っていた。私がそう言うと、ヒロトは少し頭を掻いた感じで。
「確かに他の事も少しは考えもした。けれど俺にとっての一番は、やっぱり君だから。こんな事を言うのも、変だろうか?」
「……」
そんな風なヒロトの答え。気持ちがこうして向けられて、今は特別、何だかいいなって。
「全然! 変なんかじゃないよ!
それに私たち、同じだから。私もまだまだ、恋人としてもっと絆を深くしたいって――ヒロトの一番としてずっと居れたらって、お願いしたの。……もし嫌じゃなければいいけれど」
私は少しだけ心配な気持ちも混じりながらこう言った。すると、ヒロトはすっと私の肩を寄せて、軽く抱き留める。
「――っ」
彼の身体の重なって、温もりと心音を感じる。そうしてヒロトは優しい微笑みと一緒に、言うんだ。
「嫌なわけが、ない。俺はヒナタの事が大切だから。その事をちゃんと、今は分かっているから」
自分でも身勝手かもしれない。けれどこうして、ヒロトに想われて幸せだって……思ったんだ。
「ありがとうね、ヒロト。そんな風に言ってくれて」
まだまだ、自分でも自信が持てていないけれど。本当に一番に想ってもらえるか、もらえているのか。……だけど、もっと自分でも自信が持てたら――変われたら。きっとずっとヒロトと、それこそ絆を今まで以上に深めて行けるような。そんな気がするんだ。
「ふふっ、やっぱりヒロトとこう過ごせて嬉しいな。……あっ」
そして、ヒロトとこんな話をしながら神社を出てすぐ、ある物が目に入ったんだ。
「ねぇねぇ! あれを見てみて、こんな所にも温泉があるみたいなんだ」
神社を出てすぐの歩道端に、今ちょうど温泉があるのが目に入ったんだ。あれは確か……。
「成程、あれは……足湯だな。温泉街だからか、こう言う所にも普通にあるのか」
そう。神社近く、歩道の脇にあったのは、屋根付きの小さな足湯施設だったんだ。見ると人が普通にその足湯に浸かっているのも見えるから、多分自由に使っていい場所なのかな。
「良かったら試しに入りに行かない? 私たち二人くらいなら余裕がありそうだから、どうかな?」
ヒロトも足湯に興味がある感じだったから。そう聞いてみると彼は、うんと頷いて。
「いいな、俺も賛成だ。足湯なら靴と靴下くらい脱げば済むしそれに……俺たちはまだ温泉にも入ってないから、そろそろ少しくらいは、な」
そうだったね。観光から優先していたり、それにまだ午前中だからかもだけど、私たちは今日ここまで一度も温泉に入ってなかった。……足湯は普通の温泉とはまたちょっと違うかもだけど、せっかくだもん。
「そうだね! ちょっと歩き疲れたのもあるし、一休みにも丁度良さそうだもん」
そうと決まったら……私たちはその足湯へと行ってみる事に。
足湯には他に三人くらいの人が入っていたけど、さっきも言ったようにスペースには余裕があるし、ちゃんと空いている場所だってあるの。
「ここがいいかな? ヒロト、一緒に座ろう」
私たちは足湯にあるベンチに腰掛ける。足湯……今座っているベンチを縁にして、足先が浸かる深さくらいの温泉があるの。
「こう言うの、ふふっ……いいよね。まずは靴と、それに靴下も脱がないと」
少し姿勢を変えて、右足、そして左足の順で靴下と靴を脱いでいく。ヒロトも同じようにして……だけど。
「……あれっ?」
丁度左足の靴下を脱ごうとした時、ちょっとだけヒロトが私に視線を向けていたのに気づいた。
「どうしたのヒロト? 私が、どうかした?」
そう聞くと彼は、少しだけ頬を赤くして視線をそらして、ぼそっと呟く。
「いや、ちょっとな。ヒナタのそうしていると事も、何だかいいなって」
「いいなって――どこがなのかな?」
「それは、その……足が、そんな風にしてると…………何だか」
「うん?」
ちょっと聞き取れなくて私は聞き直してみた。だけどヒロトはけふんと軽く咳払いして。
「いや、何でもないさ。――それより足湯はなかなか気持ちがいい。ヒナタもほら、入ってみてくれ」
パシャっと、先にヒロトが足湯に浸かる音がした。無理矢理話を胡麻化した感じもしないでもないけど……でも足湯、確かにそろそろ入りたいって思うし。私はヒロトに続いて足を入れてみるんだ。
温かい温泉、その温もりと気持ち良さが足からるたわって来るのを感じる。
「……気持ち良いね。何だかホカホカするって言うのかな、そんな感じがするんだ」
「だろ? 足だけしか浸かってないけれど、それだけでも十分に気持ちが良いと思わないか」
傍で同じように足湯に浸かっているヒロトも、心地良さそうな感じでそう話して来る。私は、それにうんって頷いてこたえるの。
「ヒロトの言う通り、とてもいいね。気持ちが良くて、身体が温まっていくんだ」
そう言うと彼はにこっと、微笑んでくれるの。
ここに来て初めての温泉なのかな。やっぱり、温泉ってとても……いいものだよね。
私達はしばらく足湯に浸かりながら、お喋りも。
「もうお昼近くになったね。これからどうしようか?」
「そうだな。俺はちょっと腹も減って来た感じだ。少し早いかもだけどどこかで昼ご飯とか食べれたらって思う」
「いいね! 私もお腹がペコペコだったから。じゃあ、どこで食べようか。えっと……」
足湯に入ったまま私は周りを見回してみる。すると丁度良い所に、すぐ近くにある店があったんだ。
「――ねぇヒロト、あそこの店なんかどう? 昔ながらの茶屋って感じのお店だけど、うどん蕎麦に、丼ものや天ぷら、定食だとか色々と料理があるみたいなんだ」
私が示した場所に、ヒロトは視線を向けると。
「おっと、こんな所にちゃんと店があったのか。気がづかなかった。
それに見た感じ人気もありそうだし、多分いい店なんだろうな。……よし、ならそこで昼ご飯にしよう。それからは、そうだな……食事が済んだらあっちの温泉に行ってみたい。足湯も良いけれどちゃんとした温泉にも入ってもみたくなった」
そう言って今度は、同じく丁度近くにあった別の場所にヒロトは視線を向けたんだ。その場所にはちょっと大きな、いかにも昔ながらの銭湯みたいな建物があったりしたんだ。
「あそこで温泉だね、いいよ。
なら先にご飯を食べてから、あそこの温泉に行く感じだね。……その後の事はまた後で考えるって事で。それでいいか?」
ヒロトはうんと言って、応えてくれる。そう言ってくれて良かった。それにしても――。
――やっぱり足湯も良い気持ちだよね。……もう少し、浸かっていたいかも。