【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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番外編その七 ――たまには映画も悪くないよね

 

 今日は学校、いつものように授業を受けている私。教科は数学で、それに試験が近いから勉強には力を入れないと。

 

 ――授業はちゃんとしないとだもんね。うん、ばっちり覚えたし――

 

 クラスメートの勉強に集中しているって感じで、負けられないよね。

 

 ――あっ……うーん、でもこの辺りとか難しそうだな。後でヒロトに教えて貰おうかな。数学だったら、彼が得意だったと思うから――

 

 高校二年生にもなると科目も難しくなって行くから、ついて行くのも大変になるよね。でも、真面目に授業を聞いていれば、大丈夫だもん。

 勉強の方も今だとちゃんと、集中出来るし。……けど、今ちょっとある事を考えて、一人ふふってなってしまう。

 

 ――ヒロトに告白されて付き合い出してからもうしばらくだよね。最初はドキドキが止まらなくて学校の授業だって上手く受けられなかったけど、今はそこまでならなくなったかな――

 

 と言っても、決して彼と恋人になった熱が冷めたわけでは決してないんだ。私のヒロトが大好きだって気持ちは、ずっと変わらないもん。どう言えばいいかな、自分でも強い想いに振り回されなくなった感じかな。

 ……でもとにかく、今は授業に集中しないとね。ヒロトとはまた昼休みくらいにゆっくり過ごしたいなって。

 

 

 

 ――――

 

「ふふっ、ヒロトと一緒にお弁当! この時間を待っていたんだ」

 

 それから昼休みになって、待ちに待ったヒロトとのお昼ご飯。今日は校庭側のベンチで一緒に座ってね。それぞれ用意したお弁当の包みを広げて、弁当箱の箱を開けるの。

 

「ヒロトのお弁当は、焼きそば」

 

「今日は自分で作ってみたんだ。あまりヒナタに用意してもらうのも悪いから、たまには自分でもと思って」

 

 彼は自分でお弁当を用意したみたいで、作って来たのは焼きそばに、あと卵焼き。慣れてないせいなのか、ちょっと焼き焦げていたりとかもしているけど、頑張って昼ご飯を作ったんだって言うのは分かるんだ。

 

「ヒナタのはチャーハンにエビチリに……餃子か。凄いな」

 

 今度は私のお弁当を見るヒロト。彼の言う通り、今日のお弁当は全部中華に挑戦してみたんだ

 

「えへへ、そうかな。中華料理とか慣れてなかったけど、ヒロトに褒めてもらえて、私」

 

「ああ。俺と違って、やっぱりヒナタは料理が上手いから」

 

 ヒロトはそう言ってはいるけれど、彼の焼きそばと卵焼きも。ちょっと不格好かもだけど……でも。

 

「ヒロトのお弁当だって、私、好きなんだ。良い匂いだってするし、きっと味も美味しいって分かるから。だってガンプラも上手く作れるんだし、割と器用でしょ? ――だから」

 

「そうかな? 俺も一応味見はしたけど、美味しいかな」

 

「うん。私も食べてみたいな。――ねぇ、良ければお弁当、それぞれ半分こにしない? ヒロトが作った焼きそばと卵焼きも、食べてみたいんだ」

 

 そんな私の言葉にヒロトはちょっと考える様子だけれど、彼の答えは……もちろん。

 

 

 

 ――――

 

 お願い通り私とヒロトはお弁当を半分こにして、お昼ご飯にしたの。

 

「私の思った通り……ヒロトの作った焼きそば、美味しいね! 卵焼きも火が中まで通って、それに隠し味にチーズを入れているんだね」

 

 そう言うと彼は照れ顔で、頷いて答えてくれた。

 

「よく分かったな。ちょっとだけこだわってみたんだ」

 

「焼きそばも七味で味付けしていて、ピリッとした味がいいな。さすがヒロト!」

 

「ははは、まさか弁当でそこまで褒めてくれるなんて。ヒナタの中華弁当もすごく美味しい。どれも本場の中華料理みたいでさ、特にこのエビチリの甘辛い感じとかは癖になる。

 もし良ければ今度また時間があるときに、作ってほしいくらいだ」

 

 ヒロトのお願いに、私は目いっぱい頷いてこたえるの。

 

「もちろん! ヒロトのためなら私、頑張って作っちゃうから!」

 

 上機嫌になって私は、笑顔で軽くファイトポーズをとってみせるんだ。

 

 

 そんなこんなで、一緒に楽しく昼ご飯をしている中。ヒロトがある事を聞いてきたんだ。

 

「ヒナタ、良ければ今日学校が終わったら時間があるかな。その……デートとかどうかなって」

 

 デートのお誘い。もちろん私は大歓迎!

 

「うんっ! ヒロトとのデートなら、いつだってOKだよ!」

 

「良かった、そう言ってくれて。実は映画のチケットを二人分友達からもらったんだ。はは……何なら幼馴染みの彼女と行って来いってさ、変な気を遣うものだよな」

 

 これには私もクスっとしてしまう。

 

「そんな事があったんだ。嬉しいけど、ふふっ、クラスメートにも周知されているんだったね。改めて考えるとちょっと照れるかも」

 

 ヒロトもつられて軽く微笑んだ感じで。

 

「俺も言われた時にはドキッとしたさ。でも、言われて悪い気は全然しないと言うか、応援してくれるのは分かるから」

 

「その気持ち、私も分かるな。女の子の友達も私が付き合い出した事を知って、たくさん祝ってくれたもん。何だか、ヒロトとはいつかそうなるんじゃないかなって……思っていてくれたみたいで。だからね」

 

「ははは、俺も同じ感じだったよ。むしろようやく付き合ったのかって、俺の場合はそんな風に言われたな」

 

 でも、彼ははっとした表情をして、改めて言ったんだ。

 

「……そうだった。ヒナタは映画館に行っても良いって、言ってくれたんだよな。なら学校が終わったらそのまま行こうか、家に帰ってからだと時間がギリギリっぽいしさ」

 

 ヒロトのその言葉に、私はうんと頷いた。

 

「分かったよ。じゃあそうしよう。ふふふっ、今からでも待ち遠しいな」

 

 

 

 ――――

 

 今日は映画館デートに行こうって言うヒロトとの約束。午後の授業を受けながら私は、それを待ち遠しく思っていたの。

 そして――放課後。チャイムと一緒に最後の授業が終わった私たちは、荷物をまとめて一緒に学校を出たんだ。

 

「ようやく学校も、終わりっ! いよいよヒロトと映画館だね!」

 

 気分が弾んで、道をつい少しステップで渡る私。一緒に歩いているヒロトはそんな私を見つめて……

 

「随分と上機嫌だな、ヒナタ。そんなに映画が楽しみだったなんて」

 

「映画だってもちろん楽しみだよ。けれど、やっぱりヒロトとデート出来るのが一番、私にとっては」

 

 ヒロトは私の言葉を聞いて、にこっと笑顔を投げかけてくれたんだ。

 

「そう思ってくれて感激だ。ヒナタとのデート、俺だって最高に幸せな気分だ」

 

 そう言って彼は私に手を差し伸べる。

 

「良かったら映画館まで、手を繋いで行こうか。――君と一緒に」

 

 私だけに向けられた手。手を繋いだことは付き合ってから何度もあるけれど、その胸からこみ上げるドキドキと嬉しさは、いつだってすごく良い気分なのは変わらないの。

 

「うん! 映画館に着くまで、手を離したら……嫌だよ」

 

 ヒロトの手を、私はそっと握った。

 そうして一緒に映画館に行くの……今の一時だけでも、幸せで一杯なんだ。

 

 

 

 ――――

 

 二人で街を歩いて映画館に。

 もちろん手を繋いで。何度か人から気になる感じで見られもしたけれど、でも私は気にならないくらいに――満ち足りている気分で。

 そんな、こんなで。

 

 

 

 映画館があるのは大きなショッピングモールがあるビルの上階、エスカレーターに乗って映画館のフロアに向かっている所なの。

 

「もうすぐ映画館……割とここまで歩いたね」 

 

「だな。上映の時間にも間に合って、良かった」

 

 時間を確認してヒロトは、そんな風に話した。でも、そう言えば。大事な事を一つ聞くのを忘れていたんだ。

 

「そう言えば、これから見に行く映画……何なのかな? もし知ってたら教えて欲しいな、なんて」

 

 これから観る映画の内容、そう言えばどんなのだろうって気になったから。

 

「……っと、俺とした事が、教えるのを忘れていたな。確か――」

 

 ヒロトもはっとした感じで、バックの中に手を入れてチケットを取り出す。私がチケットの内容を見てみると。

 

「えっと、『虹色ガールカルテット』? アニメ映画みたいだけど……ラブコメ、なのかな?」

 

 チケットには学生服を着た可愛い女の子のイラスト。でも、髪型とか雰囲気の感じが、ちょっと私に似ているかも。

 それに私の言葉に、ヒロトはうんと答えてくれた。

 

「その通りだ。見ての通りこの映画はラブコメ、恋愛もののアニメ映画なんだ。詳しい内容は聞いてないけど、友達いわく俺達におススメ――だってさ」

 

「なるほど、ね。そんな風に言われるとなおさら楽しみになるよね」

 

 話しているとエスカレーターを上がりきって、映画館に。

 ロビーは広くて、大きなモニターには上映中の映画のコマーシャルが流れている感じで。それにホットドックやポップコーンを売っている所に、映画関係のグッズを売っている売店とかも。……本当に、全部含めて映画館に来たんだなって感じだよ。

 すぐ近くにはチケットを売っている券売機もあったりで、お客さんが映画のチケットをそこで買っている所が見えたりも。

 

「俺たちはもうチケットがあるから、そのまま映画館に入れば済む。けれど、どうしようかな」

 

 ちょっと何か考えているみたいな感じのヒロト。

 

「何か考え事?」

 

「いや、さ。映画館にこうして映画を見に来たんだ。あそこで飲み物と食べ物でも買うのもどうかなって、思って」

 

 映画を観ながら飲んだり食べたりか……こうしたのもあるあるだし、せっかくだしね。

 

「いいと思うな! お財布にも余裕があるからワタシに任せて。そのためにもアルバイトとか続けてるもん」

 

「それくらいなら俺でも大丈夫、小遣いにもまだ余裕があるから。……でも、俺もそろそろアルバイトでもした方がいいかな」

 

 最後は少し小声でつぶやいた感じで。でも、すぐに改めた感じで私に笑みを向けると、、こう言ったんだ。

 

「じゃああそこで買って行こうか。飲み物は何がいい? 食べ物は……ホットドックかポップコーンか、俺も悩むな」

 

 そう考えると、やっぱり映画館には欠かせないよね。うーんと……私もどうしようかな。

 

 

 

 ――――

 

「……うん、ヒナタのこのキャラメル味も甘塩っぱくて、くせになる。なかなかな味だよ」

 

 映画館の中、スクリーン前の席に座った私たちは今、買って来たポップコーンをちょっとつまんでいる所だったの。私はキャラメル味で、ヒロトはバター醬油味。それぞれのポップコーンもこうして食べ合いもしたり……彼は私のキャラメル味も気に入ってくれたんだ。

 私もヒロトのバター醬油味のポップコーンを、一口。濃いめのバターと醤油の味が、ぐっと口の中に広がるの。

 

「バター醬油も、とっても美味しい! 甘いのも良いけど、こう言う味もいいよね」

 

 バター醬油のポップコーンを食べて、私は席の横のドリンクホルダーに置いてあるジンジャーエールドリンクを一口、口に含む。

 

 ――こっちも飲み物に合う味だよ。スカッと爽やかって感じで――  

 

 そう思いながらまたジンジャーエールをもう一口。そして映画のスクリーンに目を移すの。

 

「色々と面白い映画もあるよね、こう見ていると」

 

「まぁな。最近でも結構映画が作られているんだな。洋画のアクション物だとかも、また新しく作られるみたいだし。……カーアクションは定番か」

 

「そうした映画も良いと思うな、私も! 何だかまた映画館に行きたくなるような、そんな気分になるよ」

 

 辺りはもう半分暗くなって、スクリーンでは映画のコマーシャルが流れているの。この様子だと本編が始まるまでもうすぐだよね。

 

「ヒナタのその気持ち、俺も分かる。……っと」

 

 同じようにコマーシャルを見ていたヒロト。けれどある場面で、彼は驚いたみたいな反応をする。反応したのは今やっている映画のコマーシャル。ガンダムの映画みたいで、横にアーマーが広がった感じの、まるで戦闘機みたいな大型ガンダムが空を飛んで空中戦をしているシーンが大迫力の。

 

「まさかこの映画の再上映があるなんて、驚きだな」

 

「えっと、ガンダムなのは分かるんだけど……何だったけ、ヒロト」

 

 今映っているガンダム、分からなくてヒロトに聞いてみるんだ。すると彼はこう教えてくれた。

 

「あのガンダムはクスィーガンダム、ミノフスキークラフトを備えて高速で空を飛翔して、ファンネルミサイルと言った大火力の装備を備えた、宇宙世紀後期のあの時代において最強のMSとも呼べるガンダムさ」

 

「やっぱり、とっても強いガンダムなんだね。活躍を見ると私でも少しは分かるから。……私の知っているガンダムの姿から、なかなか離れている気もするけど」

 

 だってあんなにトゲトゲして、大きい姿だもん。普通のガンダムとは違う感じがしたから。

 私がそう言うとヒロトは、確かになって一言呟いて軽く笑うんだ。

 

「はははっ、ヒナタの言う通りだな、それは。クスィーガンダムも、それにこの映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』はこれまでのガンダム作品の中でも異質だから。

 ……この映画、再上映されるならぜひ観てみたい」

 

「そう言われると気になっちゃうな。観に行くなら私も一緒に、いいかな?」

 

 そんな私の提案。ヒロトはちょっとドキッとした感じだったけど、すぐに優しい顔を向けて一言。

 

「ああ――もちろんだ」

 

 こう二人で話していると、開幕のブザー音とともに辺りは暗くなった。コマーシャルも終わってスクリーンも真っ暗に……いよいよ、映画が始まる感じだね。

 

「映画、そろそろだね。静かにゆっくり、楽しもう」

 

 そうして映画を、ヒロトと二人で観ることに。ゆっくりして行こうね。

 

 

 

 ――――

 

 ――やっぱり面白い映画だね。ヒロインは可愛いし、それに主人公との場面も観ていてドキってするもん――

 

 私たちが観ている映画、『虹色ガールカルテット』。内容は思った通り、とてもキラキラした青春ラブコメって感じの映画みたいなの。

 内容は普通の男子高校生の主人公、『二条タケル』君と小さい頃からの幼馴染みで同じ学校に通うヒロイン『虹園ひかり』との学園ラブコメと、そして恋愛が中心のストーリー。二人とも仲が良いんだけど、ヒロインには大人気の四人組アイドルグループ『虹色ガールカルテット』のリーダーだって言う秘密があるの。学園生活とアイドル、二つの生活の間で揺らぐヒロインが、大好きな主人公の子に振り向いてもらうために頑張るのが本筋なんだ。

 自分がアイドルであることがバレそうになったり、それに学校のクラスメートで同じ『虹色ガールカルテット』のメンバーでもある残り三人の女の子も主人公に恋心を抱いていたりで……まだ途中だけれどハラハラしているんだ。

 

 ――ひかりちゃんとタケルくんとの恋はどうなるんだろう? タケルくんは、グループのメンバーで学校の後輩の『月崎しずか』ちゃんと水族館のデートにも行って……良い感じだし、ひかりちゃんももっと頑張って欲しいよ――

 

 今はそのメインヒロイン、ひかりちゃんと主人公のタケルくんと昼休み、二人で過ごしているシーン。今までは幼馴染だけれど、この機会に距離が縮んだらいいなって。

 

 ――せっかくのチャンスなんだから、もっと積極的に頑張ればいいと思うのに。ううっ――

 

 仲良くして微笑ましいけれど、今はまだ想いを伝えられてない感じで、ちょっと観ている私もやきもきしてしまう。そんな時に。

 

「……ヒナタ」

 

 映画を観てると、隣にいるヒロトが周りの迷惑にならないくらいに小声で、声をかけて来たんだ。

 

「うん? どうかした?」

 

「こうした映画は俺も経験ないんだけど、面白いな、やっぱり。主人公とヒロインの関係がドキドキすると言うか、微笑ましいと言うか。……でも、やっぱり二人の仲が気になるな」

 

 彼のそんな言葉。私も、そうだねってこたえるんだ。

 

「うん。仲がいいのは良いんだけど、もっと進展しないかなって」

 

「そうだな。たしかに主人公は他の子とも仲が良かったりするし、誰と結ばれるかまだ分からないから。

 ヒロインの子、主人公の事をとても強く想っているのは分かるけれど……伝わるかな」

 

 映画は今真ん中くらい。他の女の子ともだけど、やっぱり主人公とヒロインとの関係が中心で、二人の仲良い感じを見ているとやっぱり応援したくなるもん。

 

「うん、伝わればいいね。――最後まで一緒に、見守ろう」

 

 この恋の結果もどうなるのか、気になるから。だから残りの映画も見逃せないよね。

 

 

 

 ――――

 

 映画『虹色ガールカルテット』も、いよいよ終盤。

 想いの通じ合った主人公とヒロイン――ひかりちゃんとタケルくん。……だけどアイドルだって秘密がついに気づかれてしまって、そのまま恋人になっていいのか二人は悩むんだ。

 アイドルは夢だったけれど、主人公との恋も諦められなくて。――そして。

 

 

 夜の、イルミネーションの灯った広場で。待ち合わせをしていた二人。

 

 ――いよいよクライマックスだね。ようやく、告白かな――

 

 広場で出会って向かい合う主人公、そしてヒロイン。この様子を見ていると私も、あの時の事を思い出してしまう。だってよく似ているから。それは……。

 

「ねぇヒロト、ここのシーン……覚えがないかな?」

 

「もちろんだ。この感じ、俺たちが告白した時と同じだな」

 

 小さな声でヒロトが私にそう言ったんだ。それに、こくりと頷いて応える。

 

「そうだね。あの時……思い出すだけでも、幸せになれるんだ」

 

 さっきから繋いでいた彼の手。つい私はちょっとだけ、さっきよりも強く握ったんだ。あの時……ヒロトに大好きだって、幼なじみだけじゃない、『恋している』って私の気持ちを伝えた時。わがままかもしれないって、分かっていたけれどそんな私の想い。――それにヒロトは応えてくれたの。

 

「今でも思い出すだけで幸せ一杯な一番の思い出。そんな思い出に、何だか似ているから」

 

「ふふっ、その通りだな。あの時は俺も勇気が要った。でも、ちゃんとヒナタに想いを伝えられて心から良かった。――っと」

 

 するとヒロトは映画の方を観るように、軽く指先で指して促す。

 

「そろそろ、良い場面みたいだ。クライマックスだからここからはしっかり見よう」

 

 ……っとと、そうだったね。今はちょうどいい所だから。映画に集中しないと。私は改めてスクリーンを観るの。

 

 

 想いを伝え合う二人。ヒロインはアイドルも大切にしているけど、やっぱり主人公への気持ちは諦められなくて、自分の想いを正直に告白したんだ。そして主人公もヒロインの事を好きでいて、ようやく……。

 

『僕もひかりの事が好きだ。これからは恋人として、付き合って欲しい』

 

『嬉しいな。タケルくん……ずっと一緒だよ』

 

 告白した二人。そして互いに傍に寄って……ようやく。

 

「ヒナタ」

 

 けどその瞬間にヒロトが一言、声をかけて来たんだ。

 

「あれ?」

 

 このタイミングで呼ばれて私は彼に顔を向けた、その時に。

 

「――――んっ」

 

 向けた瞬間に、ヒロトは私のすぐ近くに寄っていて……唇にキスをしたんだ。

 ちらと見える、スクリーンでも映画の二人がキスをしている様子。それに合わせて私とヒロトも、こうして。

 何だか甘くてロマンチックな、ちょっとだけ私には似合わないかもって思いもしたけどでも、とっても素敵なそんな――キス。

 ふわっとした良い気分で、多分しばらくの間続けたと思う。……それから。

 

「驚いちゃった。……ヒロトがそんな事をするなんて」

 

「もしかしてガラじゃないのかもしれないけどさ。映画を観てたらこうしてみたいと、つい思ったから」

 

 自分でも照れるようにしている彼。それから、こんな事も。

 

「それにヒナタ、こうして映画を観て思った事がある。やっぱり好きな人にはもっと自分から想いを伝えて行くのがいいって。だからさっきのキスも、その……だから」

 

 そして私に、こう言ってくれたんだ。

 

「だからこれからもヒナタに、もっとこんな風にしても――構わないか? 君の恋人としても慣れて来たから、もっと想いが伝わるようにしてみたい」

 

 本当はただ映画で一緒に過ごせればよかったのに、こんな事をされるなんて思わなかった。でも――。

 

「……ありがとう。何だかすごく、感激しちゃった」

 

 嬉しい事には変わりがないの。だってあんな風に言ってくれて、それにキスだってしてくれたもん。

 

 ――恋人にはなったけど、やっぱり気恥ずかしいのもあってなかなかキスなんて出来ないから。だから特に――

 

 一人、私は表情をゆるめて、ふっと名残惜しく人差し指でヒロトとキスした自分の唇を撫でるの。だってそれだけ嬉しかったもん。

 

 

 それに映画ももうエピローグ。告白して幸せそうな二人。……こっちも、ハッピーエンドで良かったな。

 

 

 

 

 ―――― 

 

 昨日はヒロトと映画館に行って、いい時間が過ごせたな。

 

「……ふぁ」

 

 朝起きた私。でもちょっとまだ眠気が残って、欠伸を一つついてしまう。

 映画館に行った後、二人でショッピングモールを巡ったり、レストランで夜ご飯も一緒にしたんだ。……簡単に言えばデートを続けて、いつの間にか遅くまで経っちゃった。楽しい時間はあっという間だもんね。おかげで帰るのと眠るのが夜遅くになっちゃった。

 

 ――まだ眠いけど、学校があるもんね。だからしゃんとしないと。それにヒロトも待ってるから――

 

 時間を見ると少し遅い時間に起きてしまっていた。遅刻するのはまずいから、だから早く準備しないとね。

 

 

 

 いつもより急いで学校に行く準備を済ませて、私は家を出たんだ。

 

「ヒナタ、おはよう。よく眠れたか?」

 

 家から出た時、先に準備を済ませていたヒロトが外で待っていてくれたんだ。

 

「あっ、おはよう! ちゃんとグッスリ眠れたよ。でもちょっと眠いかもだけど……ふぁーあ」

 

 また眠くて欠伸をしてしまった。これには自分でも苦笑いをしてしまう。

 

「昨日は結構遊んで回ったからな。実は俺も、く――わぁ、幾らか眠くて」

 

 ヒロトまで同じように欠伸を、一つ。私は少し可笑しくなって。

 

「ふふっ、眠いのはお互いさまだね。だけど先に起きて私を待っていてくれたんだよね。ありがとう、嬉しいよ」

 

「何……それほどでも。当然だ」

 

 ちょっと照れている感じの彼。そして、自分の手を私に差し伸べる。

 

「じゃあ一緒に学校に行こうか」

 

「うん、ヒロト」

 

 私は差し伸べられたヒロトの手を繋いで、ニッコリ笑って応えたんだ。彼も同じように微笑んで。

 

「こうしているのも、幸せだ。――それとさ」 

 

 ヒロトは手を繋いだまま、急にぐっと身体ごと近づけると、軽く私に口づけをしたんだ。

 

「――っと」

 

「えっ!?」

 

 本当に急だったから、私は頭の理解が追い付かなくて固まってしまった。そんな私に彼は優しい笑顔のままで言ってくれた。

 

「言っただろ。もっと想いが伝わるようにしてみたいって。

 だから、こうして出かける前のキスとかもしてみたかった」

 

「それは……とっても嬉しいけど。――でもね」

 

 昨日されたばかりなのに、今日もまたキスをされてドキドキしたままの私。でも、ヒロトはまだまだ言葉を続けて。

 

「喜んでくれるなら、これから出かけるときにはこうしてキスでもしよう。ははは、やっぱり自分でも照れるけど……好きな人とキスするのは良いものだから。

 もちろん他にもヒナタと、もっと心を通じ合いたいと思う。だから――」

 

「うう……っ、嬉しいけど。でも嬉しすぎて……ちょっと」

 

「でもまずは学校だな。いつものように二人で、さ」

 

 私はヒロトに促されて学校へと行くことに。でも、やっぱりドキドキ。嬉しすぎて、凄くドキドキがして止まらないんだ。顔だって赤くて人には見せられないくらいだもん。

 ――でも、こう言うのも幸せだよね。

 赤面した顔だったけれど、私は彼に微笑んで頷いたの。 

 

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