【完結】Re:Connect ―揺れ動く、彼女の想い―   作:双子烏丸

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番外編その九 看病なら一人でも大丈夫だよ

 

 午前中、私はメイさん達と一緒にGBNで過ごしていたんだ。

 本当はヒロトと来るつもりだったけれど、今日は風邪をひいたみたいで。今はヒロトのお母さんが看病をしているの。

 

 ――私も看病したかったけれど、大丈夫って言われたから。でもせめてお見舞いくらいは……やっぱり――

 

 さっきGBNをログアウトして、近くのお菓子屋さんにも寄ったの。右手にぶら下げているビニール袋に入っているのは、そのお菓子屋さんで買って来た大きなプリン。風邪をひいたヒロトにはケーキとかよりも柔らかくて食べやすいプリンの方が良いって思ったから。

 実はプリンは四人分買ったんだ。ヒロトと彼の両親の分と……それに私の分。もし大丈夫そうなら一緒に食べれたらって、だからつい、ね。

 

 ――プリン、ヒロトは喜んでくれたらいいな――

 

 こう思いながら私は家路についていた、そんな時だった。

 ポケットに入れていた着信音が聞こえた。手に取って確認してみると、それはヒロトのお母さんからだったの。

 

「はい、もしもし」

 

 どうしてかなって思いながら、私は電話に出ることにした。

 

〈良かった、電話に出てくれて。いきなりでごめんなさいね〉

 

「いえ、私は大丈夫ですよ。でもどうして私に電話を?」

 

〈ちょっとヒナタちゃんにお願いがしたい事があってね。その、ヒロトが風邪で寝込んでいると話したでしょ? あの時は大丈夫って言ってたけど、やっぱり看病……お願いしてもいいかしら?〉

 

 いきなりのお願い、それにヒロトの看病をして欲しいって事を。

 

「――もちろん大丈夫、丁度ヒロトのお見舞いに行こうとしていた所だったから」

 

 ヒロトと一緒にいられるのが嬉しいから、私の答えはもちろんオーケーなんだ。

 

〈ありがとう、それにごめんなさいね。急に大事な仕事が入っちゃって、それで任せる相手が欲しかったから。

 ……あの人も小説のネタ探しで遠くに旅行に行っているから、今日帰って来れそうになくて〉

 

「いえいえ、私は全然。じゃあ今から家に向かいますね」

 

 通話を終えて、私はちょっとだけ喜びでドキドキしていたんだ。

 

 ――本当は喜ぶのはあまり良くないかもしれないけど、ヒロトの看病が出来るから。傍で世話をする事だって……私――

 

 そう考えただけで何だか頬が温かくなってしまう。

 でも、まずは家に行かないと。だってヒロトが待っているんだもん。

 

 

 

 ――――

 

 真っすぐヒロトの家に行った私。

 

「失礼します」

 

 そう言って玄関のドアを開けて、家にお邪魔した。

 

「ようこそヒナタちゃん。改めて、来てくれてありがとうね」

 

 玄関先には先に仕事着に着替えていたヒロトのお母さんがいて、私に声をかける。

 

「ヒロトの事は私に任せてください。ちゃんと彼の傍にいますから。

 あっ、後それと……お土産にプリンも買って来たんです。お母さんとお父さんの分と、ヒロトの分も。冷蔵庫に入れておきますので、良かったら後で食べて下さいね」

 

「あら! お土産も……嬉しいわ。

 じゃあヒナタちゃんも来てくれた事だし、私はそろそろ出かけるわね。夕方くらいには帰って来れると思うから、それに私も、せっかくだから帰りに何か買って来ようかしら? ふふっ、看病してくれるお礼も含めて。

 どうか……宜しくお願い」

 

 

 

 ヒロトのお母さんは仕事へと。

 私はその代わりに彼の看病、多分自分の部屋で寝ているのかな。――私がそう考えていると。

 

「……来てくれたんだ、俺のために」

 

 声が聞こえた。振り返るとそこにはヒロトが、私の事を出迎えに来てくれていたの。

 目の前に立っている寝間着姿の彼は、少し赤くなっている顔に微笑みを浮かべて。それに額には熱を冷ますためのシートを張っている。

 

「こんにちはヒロト。でも、起きて来て大丈夫なの?」

 

「平気さ。ヒナタに会えたから、俺も元気に……」

 

 そう言ってヒロトは歩み寄ろうとしたけれど、途中でぐらっと身体がふらついたかと思うと、そのままふらついて壁にもたれかかった。

 私は彼の傍に歩み寄って抱き留める。その体温はいつもより熱くて、強い息遣いも肩越しに感じる。

 

 

「熱だってこんなに……やっぱり無理してたんだね。ダメだよ、もう」

 

 ヒロトの風邪は思っていたよりある感じで、私は心配になってしまう。

 

「すまない、逆に迷惑をかけてしまったな。でもヒナタが来てくれるって聞いたから俺は、つい居ても立っても居られなくて」

 

「迷惑なんかじゃないよ。だって、こうしてヒロトと居れるから。

 それだけでも幸せだから……私」

 

 

 

 私はヒロトをそのまま部屋まで運んで、ベッドに寝かせた。

 

「風邪をひいて大変だと思うけど、今日はベッドでゆっくりしよう。出来る事は少なくても一緒にいるから」

 

 ベッドの隣に置いてある椅子に座って、そこに横になっている彼に優しく言うんだ。

 

「有難う、ヒナタ。……でも俺が言うのもあれかもしれないけど、風邪が移らないように気をつけて欲しい。

 俺のせいで君まで風邪を引いてしまったら悪いから」

 

「心配してくれて嬉しいよ。でも心配しなくても私、元気は取り柄なんだから!」

 

 私は得意げにヒロトに軽いガッツポーズをして答えてみせた。

 

「……そうだね、まずは熱を測っておこうか。それと喉とか乾いてない? 冷蔵庫から何か持ってくるよ。アクエリアスとかいいかな?」

 

 確か時間は夕方までだったよね。見舞いだけのつもりだったけれど、今日はこうして看病も出来るから。

 ……ふふっ、こう言うのもドキドキだけど、ちゃんとしないと。

 

 

 

 ――――

 

 それからの時間はゆっくりだった。風邪で寝込んでいるヒロトの様子を見守って、必要だったら飲み物の用意や、額に乗せている氷の入った袋――氷のうを替えたり。

 看病と言ってもただの風邪だから、する必要のある事は少ない感じで。

 

「うう……っ」

 

 今はヒロトは眠っていた。風邪だと何もしなくても体力減っちゃうし、やっぱり眠る方が一番だもん。でもやっぱり息苦しそうで、寝付きにくそう。

 少しだけ額に触れるとまだ熱いままで、熱は相変わらず。時々さっきみたいに苦しそうな声や息遣いも漏れたりするし、大変そうだなって。

 

 ――氷のうの中の氷が、いくらか溶けかけてるね。新しいのに替えないと――

 

 彼の額に乗せてある氷のう、中の氷を入れ直すために一旦部屋からキッチンに。中身を入れ替えるのと、それとグラスにも氷と水を入れて一緒に持って行くんだ。だって起きた時に喉が渇いているだろうし、冷たい水がきっと良いと思うから。

 そして部屋に戻ると、私は新しく氷を入れたグラスを机に置いてから、冷たい氷のうをヒロトの額に乗せる。

 ……見ると今の彼の表情は、さっきよりも穏やかで、寝息もすうすうと静かだった。何だかホッとしたな。

 

 

 

 それからしばらくの間、そんな穏やかに眠り続けているヒロトを見守っていた。前までは熱で苦しそうだったけれど少しは落ち着いて来たのかな。私も一安心。

 改めて見ると、本当に気持ちよさそうなヒロトの寝顔。つい見入ってしまって……私は彼にもっと近づいてしまう。

 

 ――こうして見るとヒロトって、可愛いな。起きている時は恰好良くて頼りになる彼だけど、こんなヒロトも私――

 

 つい段々と近づいて、間近で眺める彼の顔。好きな人の寝顔に夢中になってもいた、そんな時に。

 

「……ヒナタ?」

 

 うっすら目を開けて、私に呟くヒロト。私はいきなりの事でつい固まって、それぞれ間近から互いの顔を見つめ合っていたの。

 

「どうしたんだ、そんなに近くで?起きたらいきなりヒナタがすぐ目の前で……ドキッとしてしまった」

 

「えっと、私は」

 

 ようやくはっとした私は彼から顔を離して、どぎまぎする。どう答えればいいか戸惑って、私は言いよどんでしまうけど。

 

「ヒロトが寝ていた顔が、その、可愛いって思って。だからつい見惚れちゃって」

 

 正直に、つい私は答えてしまった。

 

「だから、ごめんね。

 ……それと良かったら水とか飲む? 喉が渇いているんじゃないかなって、用意したから」

 

 少し胡麻化す感じで、私はさっき持って来た水入りのグラスを差し出す。

 自分の勝手で驚かせてしまって、それに恥ずかしくもなって謝る私。だったけれど、ヒロトは少し可笑しそうに、笑うと。

 

「はははっ、謝る事なんてない。確かにいきなりで驚きはしたけれど、でも近くで見るヒナタの顔も――とても綺麗で、俺も目を奪われてしまったから」

 

「……はぇっ!?」

 

 いきなりな言葉に私はさっきよりもっとドキッとしたショックを受けてしまう。そしてそのショックで、手元からグラスまで……落として。

 

「ああああっ! ごめんね、こぼした水はすぐに拭くから」

 

 幸いヒロトのベッドにはかからなかったけど、床を盛大に水浸しにしてしまった。私はすぐにタオルを持って来て拭くことに。

 

「それくらいなら俺でも拭くことくらい、だから」

 

「気持ちは嬉しいけど、ヒロトは寝ていて大丈夫だから。驚いてグラスを落とした私が悪いし」

 

 拭くことくらいならすぐだから。私はこぼしてしまった水を拭きながら、少し嬉し笑いで続けたの。

 

「でも私を綺麗だって、言ってくれたからつい。……ねぇ、もう一度さっきの言葉、言って欲しいな」

 

 私のお願いごと。ヒロトは仕方ないなと軽く言った後で、私に――。

 

「もちろん。ヒナタ、俺のとって君は何よりも……綺麗だ」

 

「――えへへっ! ヒロトからのその言葉、最高に幸せに感じちゃうな」

 

 凄く幸せで、私はつい思いっきりの笑顔になってしまう。やっぱり好きな人に言われるその言葉って、とても幸福な気分にさせてくれるから。

 

「ありがとう、ヒロト。熱の方はもう大丈夫?」

 

「寝る前に比べれば大分楽になった感じだ。ヒナタが一緒にいてくれたから、そのおかげだな」

 

 微笑みかけてそう言ってくれるヒロトに私ははにかむ。

 

「そうかなっ? そう言ってくれると嬉しいよ。

 熱ももう一回測ってみようかな。さっきは38度7分くらいだったけど、下がっていればいいな」

 

 傍に置いていた体温計を持って来て彼の体温を測ってみる。少しの間待って、それから。

 

 ――ピピピピッ、って。

 

 音が鳴って、測り終わった事を確認して体温計を見たんだ。

 

「37度2分。うん、微熱だね」

 

「そっか。だからそこまで苦しいわけじゃないのか」

 

 私もヒロトも一安心。熱はちゃんと下がっている感じだもん、良かったよ。

 

「この調子だとすぐに良くなるよ。……あっ、そうだ」

 

 ここで少し思い出した事があったんだ。私は彼にこう話してみる。

 

「ヒロトのお土産に買って来たプリン、冷蔵庫で冷やしたままだったね。もし大丈夫そうなら、そのプリンを一緒に食べない?」 

 

 この言葉にヒロトもとても嬉しそうな、そんな顔を見せてくれたんだ。

 

「――プリンか! 俺も甘い物が食べたいと思っていた所だから、結構嬉しい」

 

「良かった。ヒロトのために買って来たから、そう喜んでくれるとお土産を用意した甲斐があったよ」

 

 私もまた嬉しく思いながら、ヒロトとそれに私の分のプリンを持って来ることに。

 やっぱり二人で食べた方が、美味しいもん。

 

 

 

 ――――

 

 熱も大分下がっているからか、大分余裕があるヒロト。だって、持って来たプリンだって――あんなに美味しそうに食べれるくらいだし。

 

「とろけるくらいに甘くて、滑らかな舌触り。このプリン、凄く気に入った。……美味しい味だ」

 

 ベッドから上半身を起こしてヒロトはプリンを片手に、スプーンでまた一口食べた。そんな彼を微笑ましく見ながら私も、プリンを一口。

 

「このプリン、ガンダムベースの少し近くにあったスイーツ店で買って来たの。行ったことのない店だったから気になって。でも確かに凄く美味しいよね、これを買って正解だったよ」

 

「まさにそうだな。次のデートの時には、そのスイーツ店に寄ってみたい。ヒナタと、今度は二人で」

 

「……うん。これでまた、ヒロトと行ける場所が増えたね」

 

 こう言うのも幸せで私は、そんな表情をしてしまう。

 

「ねぇヒロト、ちょっといい?」

 

「構わないけど、どうかしたか」 

 

「せっかくだから今日の事、ヒロトに話したいなって思ったんだ。看病に来る前に少しだけ、GBNで遊んで来たから。その思い出を知ってもらいたいなって」

 

 ヒロトはちょっと面白そうと言ったみたいな表情を、私に見せてくれた。

 

「GBNに行って来たのか。ヒナタがどう過ごしたのか、確かに気になる。

 ならその話を聞かせて欲しい」

 

 これにうんと、頷いてこたえた私。

 それから色々話しだしたんだ。今日はGBNでどう過ごしたのか。他愛のないかもしれないけど、そんな思い出話を。

 

 

 

 ――――

 

「――へぇ、ヒナタはガンプラバトルまでしたのか。怖くはなかったか?」

 

 プリンを少しずつ食べながら、GBNで過ごした思い出話をしていた私。ヒロトはどの話も楽しそうに聞いてくれるから、話す方の私も気持ちが良いな。

 

「全然! 確かに私はまだガンプラを動かすのは慣れてないかもだけど、でもメイさん達が助けてくれたから。

 ガンプラバトルのミッションも楽しめたし、それからエストニア・エリアの街中を散策したのもだって。三人であちこち行って、見て周れたりでとても楽しかったの」

 

「それは良かった、ヒナタ。けど……クロ、か。不思議なダイバーと知り合ったものだな。GBNなのにダイバールックの顔をヘルメットで隠したままなんて、変な事をするんだな」

 

 クロさん、それは今日知り合ったダイバーの女の子の名前。そのクロさんと言う子とメイさん、それと私の三人でGBNを過ごしたんだけど、ヒロトの言う通り不思議な人なのは確かかも。

 

「あはは、確かに不思議な人かも。でも……良い人なんだよ」

 

 私はくすりと笑って、それから続けたの

 

「それにちょっとだけ気難しい所があって、考えている事も分かりにくいかもだけど、でも素直で優しい人なんだ。だから、今日のGBNはまた良かったの。……新しい知り合い、お友達が出来たから」

 

「そっか。それはヒナタの言う通り、素敵な事だな」

   

「そうなんだ。だからね、ヒロトが元気になった時にはまたGBNに行くのが楽しみなの。今度は二人一緒に、またクロさんとも会えたり、新しい出会いや出来事が待っているかもしれないから。

 だから――」

 

 ヒロトはもちろんだって、言って応えてくれる。

 

「ヒナタとまた一緒に……俺だってそうしたい。だからこそ早く良くならないとな。

 まぁ、心配しなくてももう大分良くなっている。明日にはきっと風邪もおさまっているはずだから」

 

 安心したんだ。私は彼の言葉に。

 こうして看病して一緒にいるのも嫌じゃないけれど。でもやっぱり、ヒロトに元気になってもらいたいって言う気持ちと、そんな彼とまた過ごしたいって。

 ――そう願っているから。

 

 

 

 

 ――――

 

 昨日はヒロトのお母さんが帰るまで看病して、そして――次の日。

 

 

「おはようヒナタ、早起きだね」

 

 ちょっとだけ、いつもより早起きと学校への身支度をしてヒロトの家にお邪魔した私。そこには……制服を着替えて、元気になったヒロトの姿が。

 

「良かった! ちゃんと元気に、風邪ももう治っているみたいで」

 

 私が言うと彼は軽くはにかんで言ったの。

 

「もちろん。ヒナタが俺の傍にいてくれたから元気になれた。だから昨日はありがとう……凄く助かったし、嬉しかった」

 

「私からも有難う。仕事でいない代わりに、ずっとヒロトの看病をしてくれて、ね」

 

 ヒロトのお母さんもそうお礼を伝えてくれる。……ちなみにお父さんの方はまだ旅行中だから、家にはいないんだよね。

 

「どういたしまして。でも、やっぱりヒロトがこうして元気になってくれて、私こそ嬉しいよ。風邪はもう大丈夫、なんだよね」

 

「もういつも通りだ、風邪の方はもう完全に良くなっているとも」

 

「――ふふっ! ならやっと、こうしてもいいよね」

 

 

 

 そう言うと同時にヒロトの胸に飛び込んで、ぎゅっと彼を抱きしめたんだ。

 

「うわっと、と!」

 

「……わぁ。ヒナタちゃん、大胆になったわね」

 

 いきなりの事で驚くヒロトと、彼のお母さん。私はそんなヒロトの顔を見上げて思いを伝えた。

 

「風邪がうつるかもって、あまりヒロトに

触れられなかったから。だからその分少しだけ――こうしてギュってしたいなって」

 

「……ヒナタ」

 

 彼も私を見てくれて、それから軽く笑顔を投げかけた後で同じように、私をそっと抱きしめ返してくれたの。

 

「まだ風邪は治ったばかりだ。さすがにキスとかは心配だけれど、ハグくらいなら構わないと思う。

 こうしているとヒナタの体温と鼓動を感じる、俺もとても良い気持ちになれる」

 

「……私だって。ずっとこうしていたいな、ヒロトと」

 

「うふふっ、二人とも仲睦まじいわね。良い事だとは思うけど、学校もあるから程々にね」

 

 そうしているとヒロトのお母さんから、優しくそう言葉をかけられた。

 私たち二人は改めて顔を見合わせると、それからどっちも照れたようになって。はにかんだ顔を彼女に向けたの

 

 

 

 

 

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