反花騎士連合。
1000年前に異世界から現れ、理想郷スプリングガーデンを悠久の戦場へと変えた死にゆく世界の支配者を信奉する者達が集まって出来た集団。
その構成員は死にゆく世界の支配者、魔王アグレッサこそがこの世界の支配者と崇め、害虫をその使徒として奉る異端の者である。
彼らは同じ人間でありながらスプリングガーデン全土から害虫と同等の敵と見なされ、見つけ次第すぐに兵士や花騎士によって逮捕や『説得』されてきた。
無論彼らが一方的に味方と認識している害虫からは他の人間と同じようにしか思われておらず、一部の極めて知能の高い害虫以外からは自ら近づいてくる餌程度としか見なされていない。
これは、そんな世界のあらゆる者達から狙われる彼らの活動の記録である。
「ちくしょうめ!ウィンターローズの団体の連中が騎士団に攻め込まれて壊滅したらしいぞ!」
某国、活気溢れる繁華街から少し離れた住宅街。正体を晒しているわけではないが特に隠れ家に偽装工作を施すこともせず普通に暮らしている反花騎士連合構成員達が今晩の祭りに参加する準備をしていると、鉢巻を巻いた男から信じられない報告が飛び込んできた。
「なにー!?あそこは年中吹雪が吹き荒れるから自国民ですら近づかないような立地だったじゃないか!」
「途中で川もあるから知らなければ普通はまず近づくこともないっていうのに何故!?」
「それが偶然ブロッサムヒルのあの騎士団長がワカサギ釣りの帰りに迷いこんできたから釣果と交換で泊めたら、騎士団長の気配を辿って吹雪を掻き消しながら雪原を突っ切ってきた花騎士達に見つかってそのままやられちまったらしい…」
「あー…ワカサギなら仕方ないな…」
「ウィンターローズの話してたら無性に熊鍋食べたくなってきた…」
「シャチの竜田揚げ…イトウの塩焼き…ラッコ鍋…」
やれ行為の最中に防音と騙って大声で喘がせただのやれウブな貴族の娘を開発し淫乱気質を開花させただのと根も葉もない噂を元にしたブロッサムヒルのあの団長を貶める発言が飛び交うが、法被姿のリーダー格の男によってようやくその場が鎮まった。
「くそぅ外なる御方の理想を理解しない馬鹿どもめ…」
「世界花なんていうあのデカい雑草の尖兵として隷属されているだけの花騎士も、それを持て囃すこの世も全てがクソだ!」
「我々にも偉大なるアグレッサ様の御加護があればあんな小娘なんて…!」
罵詈雑言の対象は次第に花騎士へと移っていき、花騎士達への中傷と彼女らをどうすれば無力化できるかという話題へと移っていった。
「…乱交パ」
喧騒のなかで、誰かが呟いた。
「ふむ乱交パか…奴らとて一皮剥けばただの女。泣き叫び赦しを請う姿が思い浮かぶわ」
「ならそこから一歩進ませ、洗脳なり催眠なりで無力化した花騎士を孕ませて子供を産ませ、幼少期から教育を施し戦士とするのはどうだろうか?もし加護が発現し花騎士になったならそいつを花騎士どもにぶつけ、花騎士同士ですり潰させるんだ」
「それだッッッ!」
「天才か…っ!?」
「花騎士は数を減らし、こちらは信徒を増やせる。長い目で見れば必ずプラスだ!さっそく孕み袋の候補を挙げよう!」
祭りに行くための服に着替えた反花騎士連合構成員達は次々と毒牙にかける花騎士の名を挙げていく。
構成員の中には花騎士達と同じ女もいたが、嬉々としてこの狂気の作戦の被害者を作るべく浴衣姿で会議に参加していた。
「なあ、ホップなんてどうだろうか?以前屋台回りしてる姿を見かけたが、普段からあれだけ酔ってるなら簡単に捕まえられそうだぞ」
男は下卑た笑いをしながら自信満々にホップの名を挙げた。
だが、周囲の構成員達は若干…いや、かなり引いていた。
「お前…本気か?」
「流石にそれは無いと思うぞ…」
「マジでドン引きよあなた…」
「あのさぁ…………」
「な、何だよ!」
本気で引かれていることに困惑している彼に、周囲は諭した。
「お前……………本気であんな酔っぱらった状態で刀振り回すような奴に近付きたいのか?」
「あっ…あー…」
「ようやく気付いたのか。俺は怖いから嫌だぞ」
「そうよそうよ。それにホップが騎士団長と一緒にいる所を見たことある?酔いが回ったとか言って体を寄せてすごく甘えてたけど、その前にわざと凄く強いお酒を選んで飲んでたわ。酔ってなきゃ素直に甘えられないとか情けない女ね!」
「この前花見の席で酔っぱらって寝てたのを見かけたけどさ、あいつ背の割りに結構胸がデカいトランジスタグラマーなんだよね。合法ロリ需要を目指してるのか巨乳お姉さん需要を目指してるのか中途半端すぎるよ」
「皆ありがとう、俺が間違ってた。皆のおかげで目が覚めたよ。……何であんなこと言っちゃったんだろう」
濁っていた瞳に光が戻った彼の姿を見て、皆一様に微笑みを浮かべていた。
やはり持つべき者は誤った道に進もうとした時に正しい道を示してくれる仲間だ。そして一人の構成員の心を迷わせた花騎士はやはりこの世にあってはならない存在だ。
彼らは死にゆく世界の支配者へ感謝の気持ちを抱きさらに絆を深めながら、財布の中身を確認し懐にしまった。
「よしっ、今日はこの話終わり!祭りだァァァ!」
「「「「ウェーイwwwwww!」」」」
「教義も大事だけどやっぱお祭りに参加してなんぼの人生よね!」
「「「「ウェーイwwwwww!」」」」
「おっしゃー!今日は一週間ぶりの祭りの参加なんだ!禁断症状が出始めてたんだから遊びまくるぞー! 」
「「「「ウェーイwwwwww!」」」」
「理由なんて何でもいい!とりあえず誰かが祭りを開くんだからとりあえずこちらも参加するのがバナナ魂ってもんだ!」
「「「「ウェーイwwwwww!」」」」
「まっつりだまっつりだ!」
「「「「ウェイウェウェーイwwwwww!」」」」
その日の晩、彼らは体力と小遣いの続く限り祭りを堪能しきった。
反花騎士連合の考えを広めて誤った世界を正すため、それに気付いている自分たちが頑張らなければいけないのは大事だが今は目の前に祭りがあるのだヒャッハー!
いけ!反花騎士連合バナナオーシャン支部!この祭りの出店を制覇するその時まで!
その日の晩、ブロッサムヒルから観光に来たという一人の男と意気投合し、全員前後不覚になるほど酒を飲みまくり二次会として隠れ家に招待するのだがそれはまた別の話である。