無のセカイの一匹狼と音を奏でる者たち   作:ユリゼン

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マジカルミライ2020 TOKYOが無事に開催されてよかったです。
作者は昨日と今日行ってきました。

冬衣装のミクさんの破壊力はやばかった。


#6 影響

 「あー、やっぱ炎上してる」

 

 あのとんでもないライブから数日後、天音は自宅でゴロゴロしながらスマホを見てそうつぶやく。

 するとキッチンでまたしてもエプロンを着けて料理を作っていたミクが口を開いた。

 

 『それって、この前のパスパレのライブ?』

 「そ。口パクエア楽器のエアバンドであることがバレた上に事務所はこれといった弁明もせず。それに怒った観客達は『チケット代返せ!』だの何だのと絶賛炎上中ってわけ」

 

 ミクの言葉に天音は興味無さげに画面を見ながらそう返す。

 これは彼女達が所属する事務所の責任であって、彼女達自身に非はない。それを観客達はさも彼女達が元凶であるかのようにこぞって叩く。顔も名も知られることがないことをいいことに。

 

 

 下らない。下らない。下らない。

 所詮は群がらなければ何もできない有象無象のくせに。正義面して彼女達を叩くことが気に入らない。

 事務所も事務所だ。何故結成間もないにもかかわらずエアバンドであることを隠せると思ったのか? そしてそれに対する弁明は何も無いのか? 叩かれている彼女達に対して何も行動を起こさないというのか?

 

 「……はあ」

 

 思わずため息を吐いてしまう。どうも感情が安定しない。自分がどうこうできる問題ではないというのに。

 

 (……あー、やめやめ。これ以上考えるのはやめよう。そもそも関わらないって決めてるし)

 

 天音はそう思うとスマホの画面を閉じてベッドの上に放り出す。それと同時にミクが声をかけてきた。

 

 『天音、ご飯できたよ』

 「わかった。ちなみに今日の夜ご飯は何?」

 『ネギ塩豚丼』

 

 ミクの言葉に黙り込む天音。やはりと言うべきか何と言うべきか。

 そして目の前に運ばれてきたのは、豚肉よりもネギの方の割合が多い丼だった。

 

 

 

 「……ミクしばらく料理するの禁止」

 『何で?』

 

 

………

……

 

 

 翌日、羽丘に登校すればいつもと変わらぬ日常が送られている………ように見えた。

 しかしわずかに、それでいて確実に影響は出ていた。

 

 「ねえねえ、これ見たー?」

 「あー見たー。パスパレがエアバンドだったやつでしょー?」

 

 教室に入ればクラスメイト達がそれぞれグループを作って会話しており、その内容は先日のパスパレ(ようやく覚えた)のライブについてだった。とはいえネット上のように悪く言っているわけではなく、ただ会話のネタにしているだけのようだ。

 しかしいつまでもただ会話のネタのままで済むはずがない。いずれはその悪意が氷川妹やパスパレのメンバーに向かうことだろう。まあそれを防ぐ手立てなど持っていないのだが。

 

 「宵崎さん」

 

 席でボーッとしていたら隣から声をかけられる。そちらを向けばいつの間にか湊の姿が。

 

 「なんだ、湊か」

 「なんだとは失礼ね」

 

 天音の言葉に湊がムッとしたように言ってくるが、生憎と今は話す気分ではない。

 そのことを感じ取ったのか、湊がため息を吐いてから口を開いた。

 

 「………紗夜から聞いたわ。この前のライブ、大変だったそうね」

 「アレが大変だけで済むんだったら苦労はしないだろうよ」

 「………言い方が悪かったわ。彼女達、大丈夫かしら?」

 

 湊が言い方を変える。その言葉にはパスパレのメンバーを心配する『想い』が籠もっていたので、天音は湊の方を向いて真剣に答える。

 

 「……正直氷川妹達が今どういう状況なのかがわからないから何とも言えない。セカイと関わったなら雰囲気でなんとなくわかるはずなんだけど……」

 「じゃあ今は様子見しかできないってことかしら?」

 「まあそうなるね。少なくとも氷川妹は大丈夫でしょ。そんなに気にしてないみたいだし」

 

 何にせよこれはパスパレのメンバーのみで解決すべき案件だ。部外者である天音は今回徹頭徹尾静観するだけである。よってこれ以上話すことはない。

 そのことは湊もわかっているらしく、話題を変えるように口を開いた。

 

 「………そういえばミクさんがパソコン室にいるのを見かけたわよ」

 「何やってた?」

 「なんか料理サイト見てたわよ。ミクさんって料理もできるの?」

 「できるっちゃできる。……ただ、とんでもなく偏るんだよね」

 「具体的には?」

 「具材の割合がネギの方が多くなる」

 

 天音の言葉に湊はなんとも言えない顔になる。そりゃネギの割合が多い料理なんて見たことないだろう。

 それをほぼ毎日食わされる自分はどうだろうか? もう身体の半分がネギでできているんじゃないだろうか?

 

 「…………」

 

 止めて、そんな哀れむような目で見ないで。

 

 

 そんなことがあったもんだから、その後しばらく天音と湊の間にはなんとも気まずい空気が流れた。

 

 

………

……

 

 

 今日一日の学校が終わり、天音はバイトのためにCiRCLEへと来ていた。いつものように受付で気ままに仕事をしていると、またしても氷川妹がやってきた。

 

 「やっほー」

 「氷川妹か。また遊びに来たの?」

 「まあ、そんなとこかなー」

 

 氷川妹の姿を見て天音はため息混じりにそう言うが、氷川妹は悪びれもせずに受付に歩み寄ってくる。

 

 「それよりも聞いてよー。事務所の人が『楽器を演奏できるように練習しろ』って言ってきたんだよ?」

 「それってパスパレのライブの?」

 「うん。ライブ前は『ただ弾いてるフリだけでいい』って言ってたのに、炎上してからは『楽器を演奏できるように練習しろ』って言ってきたんだよー。ひどくない?」

 

 氷川妹にしては珍しく愚痴を零す。しかしその気持ちもわからなくもない。『やらなくてもいい』と言われたのにいきなり『やれ』と言われたら誰だって気を悪くする。

 というより芸能事務所がそんな調子で大丈夫なのか? 方針がいい加減過ぎやしないだろうか?

 

 「誰か辞めそうな人とかいんの?」

 「うーん、千聖ちゃんが怪しいところかなー。彩ちゃん、麻弥ちゃん、イヴちゃんはやる気満々だったよ」

 「あー、なんとなく想像できるかも」

 

 大半の人物はわからないが、白鷺千聖ならやりかねないことはなんとなく想像できる。本人は猫被っているつもりかもしれないが、天音の前では無意味だ。

 

 「それで、あなたはどうするの?」

 「あたし? あたしは続けるつもりだよ」

 「へー、珍しいじゃん」

 「うん。パスパレの皆ってあたしと違うじゃん? それがるんってするからもうちょっと続けてみようと思うの」

 「るんってするのね」

 

 相変わらず何言ってるのかわからないが、珍しいこともあるものだ。氷川妹が興味を持つということはパスパレのメンバーには彼女の興味を引く何かを持っているのだろう。

 

 「それならあなたは練習しなくていいの?」

 「あたしはもう覚えたからいいかなーって」

 

 相変わらず常識外れな実力だな。呆れを通り越して尊敬してしまう。これが原因でメンバーと衝突しなければいいのだが…………

 

 (……って、私が気にしても仕方ないか)

 

 天音は氷川妹を追い払うと、オーナーに頼まれていたCiRCLEでのライブ募集のポスター作りを思い出し、ノートパソコンを引っ張り出してはポスター作りに励むのだった。

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