ようこそ実力至上主義の奉仕部へ   作:モーブラゼロ

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今回、初堀北視点があります。雪ノ下は自分が見下している節がある事は認識していますが、綾小路についてはまだ聞いていないため、負けず嫌いなところもあり、他に敵うものは居ないと未だに少し驕っています。


彼女は彼等に興味を持ち、過去の記憶を思い出す

「比企谷。お前も中々面白い生徒だな。成績こそ平凡だが、今朝のホームルームの際の平田への鋭い指摘など、頭の回りが良い事が分かる。ただ、それだけなら他にも似た生徒は居る。」

 

茶柱先生が話を振ってくる。もうやめて!俺は今アイデンティティクライシスなの!今すぐ帰りたい。シリアス?退場しましたけど何か?

 

「先生、確かに彼は洞察力には多少優れているとは思いますが、それだけです。優秀な生徒だとは到底思えません。」

 

あーなんかめちゃくちゃ既視感がある。

 

「フッ、そうか……比企谷。現在の保有ポイントを見せろ。見せなかったら退学だ。」

 

退学って教師だったらなんでも出来るのか?いつかバレるとは思っていたが、ここまで早いとは思わなかった。いや、教室でバラされないだけまだマシかもしれない。

 

現在の保有ポイントは

 

20万9054ポイント

 

減っているのは雪ノ下が部活設立用のポイントを単独で全て払ったために、20万ポイントを譲渡したからだ。

 

堀北が口に手を当てて驚いている。綾小路も気持ち目を見開いているようだ。

 

「…貴方…どうしてこんなにもポイントが…?」

 

「一時期は40万ポイント以上も蓄えていたなぁ?さらには雪ノ下や由比ヶ浜と共にではあるが、比企谷は50万ポイントを納めて部活を設立している。」

 

いや、設立したの雪ノ下なんだけどね?何ニヤニヤしながらさらっと偽ってるの!?

 

「…一体どんな手を使ったの?」

 

ここは素直に答えた方が良いだろう。それに堀北と綾小路は交友関係が少ない。たとえ話したとしても広がる可能性は低い。

 

「…賭け試合だ。俺達は部活を設立したいと思い、茶柱先生に尋ねた。そうしたら50万ポイントを納める必要があると言われ、毎月の給付以外でポイントを稼ぐ方法を調べたんだ。そうしたら、ひょんな事から色々な部活で賭け試合が行われている事を知った。そして、チェス部にお邪魔して賭け試合で稼いだという訳だ。」

 

「…先生、賭博は違法ではないんですか?」

 

今まで黙っていた綾小路が口を開いた。今までとは違って、彼の発言の一つ一つに裏があるように感じてしまう。

 

「ポイントを使った賭け試合に関しては学校側は黙認している。その代わり、人身売買の様な行為が行われた場合は極めて重い処分が下される。」

 

「ありがとうございます。」

 

綾小路はそれで納得したのか押し黙る。

 

「それで先生。そんな事をバラさせたのはなんでですか?」

 

「いや、比企谷がどういう人物かを教えたかっただけだ。他意はない。」

 

いや、絶対あるでしょこの先生!

独特のニヤつきちゃんと分かるんだよ!

 

「比企谷については本当にそれだけだ。……さて、話は終わりだ。お前らさっさと出ろ。」

 

俺達三人を部屋から追い出す茶柱先生。

 

 

 

 

 

その目には隠し切れない野望が

見え隠れしていた。

 

 

 

 

 

職員室を出て、さっさと雪ノ下や由比ヶ浜の待つ寮へ戻ろうとすると、

 

「待って!」

 

堀北が綾小路を呼び止める。綾小路は止まらなかったのか、堀北が追いかけて来るような音がしている。……嫌な予感がするのでさっさと寮に帰る。あれ、アヤノコウジクン?その手はナニ?

 

「さっきの点数、本当に偶然なの?」

 

堀北が聞きたいのは綾小路の入試成績のことのようだ。ちなみに俺は綾小路に肩を掴まれたため、逃げられなかった。その責めるような目はやめてくれ。

 

「当事者がそう言ってるだろ。それとも、何か証拠でもあるのか?」

 

「根拠はないけれど、それでも違和感があることに変わりは無いわ。それに貴方はAクラスにも興味がなさそうだし。」

 

「それは比企谷だって同じじゃないか?」

 

「俺?俺は確かにそうだな。」

 

「ほら見ろ。ここにも居るじゃないか。そういえば堀北こそAクラスに随分と拘るんだな。」

 

「いけないかしら? 進路を有利にするために頑張ることが。」

 

それはダウトだ。こいつは雪ノ下にそっくりで誰かを目指しているんだ。誰かのコピーは劣化版にしかならないというのに。

 

「別に、自然なことだろ。」

 

「私はこの学校に入学して、ただ卒業すればゴールだと思っていたわ。でも実際はまだスタートラインにすら立てていなかった。」

 

そう語る堀北は何かを眺めるように、そして屈辱であるという様に顔を歪めていた。

 

「……なぁ堀北、Aクラスに上がりたいかい?」

 

櫛田という仮面少女を強化外骨格を纏った陽乃さんに重ねた雪ノ下。そして、その雪ノ下を俺は今堀北に重ねて見ている。

 

「当然じゃない。必ず上がってみせるわ。」

 

「言うまでもないが、クラスの大半は学生生活すらロクに出来なかった連中だ。たった一ヶ月でクラスポイント全部を吐き出す不良品の塊だ。」

 

まぁ、雪ノ下と由比ヶ浜や、ここにいる得体の知れない綾小路。一部の真面目な生徒は除くがな。

 

「前から思っていたが、比企谷は中々毒舌だな。」

 

その顔を少しばかり歪める綾小路。

 

「分かってるわ。それでもやるしかないじゃない。」

 

「それが例え茨の道だったとしてもか?」

 

「ええ。」

 

堀北の即答。それは今までの顔とは違う、堀北鈴音としての凛とした顔で発せられた物だった。その表情と声は雪ノ下と重ねられない唯一無二の物だ。

 

彼女は真実しか述べない少女である。

 

過去の雪ノ下に押し付けた『虚言を吐かない少女』という幻想の言葉と対比でそのような言葉が浮かんでくる。

 

 

 

 

 

 

 

ふと俺はこの少女を理解したいと思った。全てを理解したい、そう思えた。それはかつて雪ノ下や由比ヶ浜、そして一色に求めたもので焼き直しになっているのは否定出来ない。だが、俺は知りたい。解りたい。

 

 

 

 

 

 

 

だから、俺は

 

 

 

 

 

 

 

「二人に話があるの。聞いてくれないかしら。」

 

 

 

 

 

 

 

彼女の望みに

 

 

 

 

 

 

 

「DクラスがAクラスに上がるための手伝いをしてもらいたいの。」

 

「オレは断「分かった。協力しよう。」!?」

 

 

 

 

 

 

 

答えるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「………。」

「………。」

「………。」

 

何この雰囲気。猛烈に帰りたい。いや、自分の部屋だったわ。

 

あの後、綾小路も上手く丸め込まれた。綾小路が恨めしい目線を送って来ていたが、知ったことか。実力を隠しているくせに。

 

さて、堀北は突然寮にお邪魔させて欲しいと言ってきた。どうせ貴方みたいなのは自分で料理をしないだろうから夕食を作ってあげると。俺は元専業主夫志望だと主張したが、鼻で笑われた。八幡悲しい。その後寮に着いて自室を開けると、中々帰ってこない俺に痺れを切らした雪ノ下達が、合鍵で俺の部屋に入って夕食を作っている光景が飛び込んできた。

 

これが修羅場か。

 

「比企谷君。どうして堀北さんと一緒に帰ってきたのかしら。」

 

「ヒッキー。説明。」

 

二人とも怖い超怖い。堀北も珍しくびくびくしてるし。今日無事で居られるのかとても不安で心配だ。

 

 

だが、二人に事情を話すとその表情は一変する。始めは般若の顔をしていたものの、段々とその顔はほぐれていき最後には堀北に優しい目を向け始めた。堀北はその表情の変化についてよく分かっていない様だが、俺には分かる。特に雪ノ下は顕著だろう。千葉村の時の鶴見留美に向けた様な表情をしている。

 

 

「……なるほど内容はよく分かったわ。まだ正式ではないけれど、私達奉仕部は全面的に貴女のサポートをする事にします。宜しいかしら。」

 

「…え、ええ。それは有難いけれど……奉仕部というのは何かしら?」

 

「それは俺から説明しよう。奉仕部は俺達三人の出身中学、総武中にあった部活でーーー」

 

 

 

こうして、奉仕部の今までの活動を振り返る。千葉村や文化祭、修学旅行など奉仕部の大きな転機となった依頼や、遊戯部、柔道部などの小さな依頼まで。一つ一つを振り返っていく。その時の雪ノ下や由比ヶ浜の行動を話す度に彼女達は恥ずかしそうにしたり、申し訳なさそうな顔をしていた。本物についての発言では自分が死にたくなった。間違いなくあれは人生の黒歴史だ。

 

 

 

 

 

そして、そんな俺達三人を堀北はずっと見つめていた。

 

 

 

 

 

堀北の明らかに態度が変わったのは、雪ノ下と陽乃さんの確執の話に入った時だ。俺は雪ノ下に語り手をパスすると堀北を観察する。

雪ノ下の生まれた頃の話、姉と仲の良かった頃の話、そして忘れられないだろう小学生の時の話。姉と比較され、姉を目標にしていた頃の話。それらに堀北は分かりやすい反応をしている。恐らく共感しているのだろう。先程まで無かった頷きがひっきりなしに実施されている。

 

だが、雪ノ下が俺や由比ヶ浜と出会い変わっていった話を聞いて、顔を歪める。恐らくそれは誰かをずっと目標にしてきた今の彼女には、到底受け入れがたい事。さらには、その体験談を彼女自身に似た少女がしている事でとても動揺している。

 

「私も昔は姉さんのようになりたい、追い越したい。そう思っていたわ。でも、彼に言われたの。『お前は雪ノ下雪乃だろう。お前はお前だ。』とね。そして、それは過去の自分を否定する訳じゃないとも言われたわ。…あの時、私の在り方は間違いなく変わったわ。今でも自分より程度の低いと思う人間を見下している事があるかもしれないけれど、彼や由比ヶ浜さんと関わってるうちにそれが薄れている、そう感じているわ。」

 

堀北はそれを聞いた後、暫く瞑目したのち口を開いた。

 

「…由比ヶ浜さんはどう思うの?」

 

「…ゆきのんはゆきのんだし、…ヒッキーはヒッキーだから。…あたしはさっきも話したようにバカだから、ずっとずっと二人に迷惑をかけてきたんだ。だから、いつも何処かであたしって邪魔なのかなって思った事も多かった。文化祭の時、ゆきのんが頼ってくれて嬉しかった。それにあの時のヒッキーの言葉もあたし達が信頼?されてるようですごくポカポカした。ゆきのんもヒッキーも、勿論あたしも間違える事はある。だけど、ゆきのんはゆきのんだし、ヒッキーはヒッキーだから。あたしはどんな二人でも大好きだし、ありのままの二人を見るよ。」

 

由比ヶ浜は答えた。かつて自分の意見を満足に言えなかった少女が、辿々しいながらも自分の意見を持ち、雪ノ下の意見を肯定する。目頭が熱くなった。そして、大好きだという言葉で赤面してしまう。

 

「……。」

 

堀北は戸惑っている、いや迷っているのだろう。自分に似た虚言を吐かない少女は姉をひたすら追いかけていた事を止め、かけがえのない存在を得た。私が今までしてきた事はなんだったのかと。やはりそう思っているに違いない。

 

気付けば7時になっている。夕食はとっくに冷めて日も落ちていた。

そろそろ、帰宅を促そうとしたその時、

 

 

 

 

 

「私の話、聞いてもらえるかしら。」

 

 

 

 

 

それは微笑を携え、覚悟を決めた、

まさしく「堀北鈴音」だった。

 

 

 

 

 

===side《suzune》===

 

私はずっと兄さんを目標に、そして兄さんに認めてもらうために今まで全てを費やしてきた。それは紛れもない事実だ。兄さんが水泳で優れた成績を取れば、私もスイミングスクールに通って兄さんのタイムを追い抜かすために頑張った。兄さんが空手を始めれば、兄さんに勝つために空手を習い始め兄さんに何度も挑んだ。そうすれば、いつか兄さんは私を認めてくれる。つっけんどんな態度ではなく、父や母に向けるような表情をしてくれる。そう、思っていた。

 

 

中学一年生の時、私は兄さんを追いかけて入った。私は評判の良かった兄さんに泥を塗らないよう一生懸命勉学に勤しんだ。最初の頃は、珍しく兄さんも明るく接してくれていた。やっと努力が報われたと。こう考えた私は実に愚かだったのだろう、二学期の期末テストで私は全教科満点を取った。全教科満点は過去には一名しかいない。兄さんと並べた事がとても嬉しかった。家に帰り、生徒会長である兄さんを待つ。

兄さんが帰ってきた。思わず浮かぶ笑みを隠せず、兄さんにテスト結果を渡す。兄さんは顔を綻ばせかけていた。だから、私は油断したのだろう。

 

 

 

「兄さん。私は兄さんに"追いつきました"。とても満足しています。」

 

 

 

「……鈴音。恥を知れ。」

 

 

 

一瞬何をされたか分からなかった。ただ、数秒後。猛烈な痛みが胃に押し寄せ、中身が逆流しそうになる。そこで私は理解した。

 

 

 

兄さんに殴られたのだと。

 

 

 

……それから、兄さんとの会話は無くなった。業務的な会話はするが、それだけで家族との団欒の場でも話す事はない。両親はそれに気付かなかった。

 

高校生になると、兄さんは国内屈指の名門である高度育成高等学校に入学した。そこは外部との連絡が一切出来ない場所。

 

私は何故兄さんに殴られたのか、そして何故認められなかったのかが分かっていなかった。私は今まで以上に無口になり、数少ない読書を共にしていた友人も居なくなった。私は孤独だ。

 

中学三年生になってもそれは変わらない。同じ学年のあるクラスが崩壊した事など、あまり覚えていなかった。そして何を拗らせたのか、いつしか私は優秀な人材こそが正義であり、それ以外は不要だと考えるようになった。

 

兄さんと和解したい。だけれど、兄さんは学校の中。後一年待てば卒業と共に出て来るはずなのに、私は今すぐにでも会いたかった。自分は不器用だ。だからこそ私は……。

 

 

 

中学時代に兄さんを失望させてしまった私は、並々ならぬ覚悟を持って高度育成高校の門をくぐった。まずはあの時よりも更に優秀な成績を残して、兄さんに認めて貰おうと目標を設定した私だけれど、躓いてしまった。この学校はAクラスから順に優秀な生徒が割り当てられるようになっている。そして私は最底辺のDクラスに配属してしまったのだ。

 

Dクラスに配属されたことに納得がいかなかった。まだ、BクラスやCクラスに配属されたのであればまだ矛を収めただろう。ただ、最底辺というレッテルは私の今までの努力を否定するものだ。私は担任の茶柱先生に抗議した。

 

先生の策略で綾小路君と比企谷君に話を聞かれてしまった。ただ、同時に二人の知られざる一面について知る事が出来た。

 

 

まずは綾小路君。入学式の時からの妙な縁で話す事になった生徒だ。私は今日まで彼の事を取るに足らない、少し容姿の優れている根暗だとしか思っていなかった。

 

だが、今日入学試験と小テストで不可解な間違え方をしながら、全教科50点を取った事を知った。こうして彼の隠していると思われる実力の片鱗に触れる事が出来た。

 

 

次は比企谷君だ。比企谷君は私の斜め前の席で、綾小路君が話しかけた事から話すような仲になった生徒だ。容姿はそれなりに整っているが特徴的なのはその目だ。濁りきっていて見る者を飲み込みそうな目。その時初めて私は恐怖を感じたのだと思う。ただ、驚いたのはそれだけではない。彼は基本的に一人で行動するタイプで明るい性格ではないのに、同じ中学から来たという二人の女生徒がびったりとくっついていた事だ。

そしてそのうちの一人、雪ノ下雪乃さんは私に似ていた。容姿も、成績も、身体能力も。その時から私は無意識に彼女に親近感を持っていたのだと思う。だが、彼女の境遇は全てが共感できるものでは無かった。

 

彼女は私と似た境遇から来る問題を既に解決していた。それも、そもそも目指す事を止めるという解決ではなく、解消という形でだ。間違いなく彼女は私が受けたように僻みや嫉妬や憎悪、そして身内からの攻撃を受けたはずだ。なのにどうして変われたのかを問いたくなり、口を開こうとすると雪ノ下さんは「彼のおかげ」であると答えた。

 

それが比企谷君だった。

 

雪ノ下さんの友人である由比ヶ浜さんも、自分の意見を言えるようになったのは比企谷君のおかげだと言う。彼自身は必死に否定しているが。

 

 

 

 

 

比企谷八幡。由比ヶ浜結衣。そして、雪ノ下雪乃。ふとこの三人とその関係性に興味が湧いた。他人に関心を持つのは初めての事だ。

 

 

 

 

 

だから、私は話し始める。

自らの過去の全てを打ち明ける。

三人が優しい目で私を

見守ってくれている。

話していくうちに自分が

何かの鎖から解き放たれた感覚が

確かにあった。

 

 

 

 

 

 

 

こうして私は、『堀北鈴音』になる。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、堀北回です。堀北視点が堀北っぽいと正直言えないので、口調等は順次直していきます。堀北の過去はわりと捏造ですが、これに近い事があったんじゃないかなーと思ったり。思わなかったり。堀北の成長が原作より早い代わりに別の問題が起きたりしますが、それはまた、今度。あと、私というのが堀北サイドで多すぎる気がするので誰か解決策教えて下さい()
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