ようこそ実力至上主義の奉仕部へ 作:モーブラゼロ
P.S.八幡達のよう実制服イラストって案外無いの悲しみ。
===side《saika》===
八幡と出会ったのはある昼休み。ほとんどの部員が居ないテニスコートで自主練をしていた時、由比ヶ浜さんに声をかけられて知り合いになっのがきっかけだ。八幡は前から壁打ちでのフォームが上手くて、テニス部に是非とも入ってもらいたいと考えていた。結果として入ってもらう事は出来なかったが、雪ノ下さん達奉仕部の協力を貰って僕の強化を手伝ってもらう事に成功。葉山くん達のグループが来た時は怖かったけど、八幡や雪ノ下さんがコートをなんとか死守する事が出来た。それから僕はたまに奉仕部にお邪魔するようになる。
八幡との中学生活はとても楽しかった。今までは出来なかった男らしい遊びを材木座君らと一緒にゲームセンターなどで一杯したし、葉山君達も合わせてみんなでサウナに行った時も何かに認められた気がして嬉しかった。
二年生のあの時、八幡がベストプレイスと呼んでいる場所に居なかったら。テニス部の強化の依頼を奉仕部にお願いしていなかったら。そして、八幡に出会わなかったら。今頃はどんな生活を送っていたんだろうと思いつつ、僕は変わらない日常を満喫していた。
「高校でもまた一緒に遊びたいな!」
卒業式が迫った日、僕は心の底から
そう願い八幡に伝えた。
八幡は困った様な笑みを
ただ浮かべるだけだった。
… 僕は人生の中で一番大きい喪失感と絶望感を味わった。それは八幡が、総武高校に進学していない事を知ったからだ。人生初めての親友、いやもしかすると同性ながら…恋愛感情もあったのかもしれない。
八幡が卒業式の時に雪ノ下さんと由比ヶ浜さん、一色さんの告白を断ったと聞いた時には何故か若干安堵した。その理由は総武高校での生活がまだあるから改めて告白について考える、という事だと思っていたからだ。彼女達が涙を流しながらも、まるで希望があるかのように笑顔であった事も大きい。
しかし、八幡は僕に何も言わずに
目の前から消えてしまうのだった。
八幡が居ないと知ったのは入学式の日。張り出されているクラス分けの掲示板を見ると、僕はCクラスになっている。八幡と同じクラスがいいなと思いつつ、名前を探すもCクラスには見つからなかった。とても残念に思ったが、他のクラスにいるかもしれないと思い必死に探した。
だが、「比企谷八幡」という名前は遂に見つからなかった。
「ねぇ、あんた戸塚?」
何かの間違いかもしれない、そう考えながら意気消沈してCクラスに向かっていると、後ろから声をかけられて振り返る。
「川崎さん…?」
八幡に好意を抱いていた筈の川崎さんがそこには居た。
「久しぶり。…そんな辛気臭い顔してどうしたん?」
余程僕が酷い顔をしていたのか、そう気遣ってくれる。…八幡が好きな川崎さんは八幡がこの学校に居ない事を知っているのかな?
「…川崎さんはさ…。」
「なに?」
怖い、威圧感怖いよ八幡!助けて!
僕は思わず黙り込んでしまう。
「ホント何なの?さっきから悲しい顔したり笑ったり怖がったり。…ほら、行くよ。クラス一緒なんだから。」
…とりあえず一緒に行こう。そう思って川崎さんと肩を並べて歩く。川崎さんは体調が悪いのか少し顔を赤くしていた。
そんな様子を見ていると、突然胸の奥がポカポカとして何かが湧き上がってくるような気がした。なんだか鼓動が大きくなってこれ以上はいけないと思いながらも、僕は彼女の横顔から目が離せなかった。
これが僕の"二回目"の恋だ。
===side《saki》===
入学から一ヶ月半。テニスコートで戸塚の練習を眺めながら、あたしは総武中の時を振り返っていた。と言っても、出てくるのはあの奉仕部の3人や葉山達のグループのメンバーとの出来事ばかりだ。
初めて、あいつを認識した時の印象は最悪だった。下着を見て色を呟いたり、バイト先に女二人連れでやって来たり。おまけに進路希望は専業主夫。クラスに溶け込めない、だけれどあたしと違って何もない奴。そう思ってた。でもスカラーシップを教えてくれた事によって、バイトをする必要は無くなったし、両親とは謝罪し合って数少ない家族との団欒の時間も増えた。それから意識する事が増えたんだと思う。
文化祭の時、冗談ながらも「愛してるぜ、川崎。」と言われた時には頭が真っ白になってよく分からなかった。恐らく状況が理解できていなかったんだと思う。そして、恋を自覚したのだ。
もしこの時、彼を止めていれば。あるいは告白していれば。そう自問自答を繰り返したが、あの時の彼はまだ心を開き切っていない。恐らく告白をしても断るであろう事が推測された。ただ、あの後の悪評を考えると止めておいた方が良かったと感じる時も多いのだが。
その後はアピールは何度かしたものの、あいつの意識は奉仕部の二人か、生徒会長に行っていて、あたしは友達感覚だったんだと思う。
あたしの予測では中三になるまでに奉仕部のどっちかと付き合うと思っていたから、学年が変わってもフリーだったのには驚いた。時々、暗い顔をしていたから何度か声を掛けてみたが、本人は相変わらず名前を間違えて揶揄っていた。
卒業式の日。式が終わった後に由比ヶ浜から奉仕部に呼び出された。中に入ると、雪ノ下、由比ヶ浜、そして生徒会長の一色が涙目で佇んでいるのが見える。だが、おかしいのは皆笑っているのだ。
話を聞いてみれば、比企谷は家の事情から高度育成高校に行く、というもので彼女らは断られる事を知っていて玉砕し、高度育成高校に進学してびっくりさせる、という物だった。
「…それでどうしてあたしが呼ばれたわけ?」
「沙希もヒッキーの事好きだったじゃん。もし、断られると分かっていても想いは伝えるべきだと思う。」
「比企谷君はとても鈍感、いやわざとそういう想いから目を背ける特徴があるわ。もし貴女が伝えたいと想うのであれば私は、しっかりするべきだと…。」
雪ノ下と由比ヶ浜は真剣な表情でそう言い、生徒会長も頷いている。
だが、
「…あたしは良いの。同じ学校行く訳じゃないし、あんたらとは違う。それに…。」
「それに?」
「…最近……戸塚の事、その、良いなって思ってるから。」
きっかけは馬鹿みたいに単純。一緒にクラスで過ごしていくうちに比企谷と同じくらい目で追う様になっていたのだ。
比企谷が初恋である事は変わらないし、恐らく自分の中の一番は比企谷なんだろう。だけど、それと同じくらい好きになってしまったのが戸塚だったのだ。
雪ノ下達は初めフリーズしていたが、すぐに再起動し応援してくれた。…まさか自分のライバルが減るからじゃないだろうね?
ちなみに、自分は一途なタイプだと思っていたから、この展開はかなり不思議だ。でも、好きになってしまったのだからしょうがない。そう思うしかない。
だからあたしは今日も
"二人目の想い人"を支え続ける。
===side《nakamachi》===
かおりが高度育成高校を進学先に選んだのは三年の夏頃だった。それを聞いたのはある日の昼休み、まるでただの世間話であるかのようにこう言ったのだ。
「あーわたし、海浜総合高校も総武高校も行かないから。東京の高度育成高校ってとこ、頑張って受けるから。あ、受けるってマジウケる〜!」
「…いや、ちょ、待ってかおり。今、海浜も総武も行かないって言った?」
「うん?そうだけど。」
「いやいやいや。高度育成高なんて無理でしょ。なんでそんなとこ目指してるの?」
「前、葉山君と一緒にダブルデートした時にいた比企谷って奴。比企谷がそこ行くらしいからさ。」
「比企谷?あーあの根暗?なんで、そんな奴の為に?」
「わたし比企谷に悪い事しちゃったなっていうのもあるんだけど、最近イメチェンしたらしくてさ。それに比企谷と卒業会の打ち合わせであった時に今度は自分が好きになってしまった事を自覚しちゃって。多分付き合うのは無理だと思うけど、せめて女の親友ポジションみたいなウケる感じになりたいっていうか。」
駄目だ。話が全く頭に入って来ない。OKまず整理してみよう。
かおり、悪事を自覚。
↓
比企谷、イメチェンする。
↓
かおり、恋を自覚
↓
かおり、女の親友になりたい
うん、分からん。
「どうして?かおりなら堕とせると思うんだけど。」
「だって、比企谷チョーモテモテだよ。まず、ダブルデートの最後に会った二人。もはやヤンデレってくらい比企谷の事大好きだし、生徒会長の子もなんか略奪愛的な感じするし、クリスマスパーティーに居た保育園の妹がいるモデルみたいな美人も好きみたいだし。」
…苦い思い出と共に冬に出会った二人の美少女が思い出される。生徒会長の子も卒業会の挨拶で見たが、小悪魔系の可愛い子だった気がする。もう一人はしらないが、恐らく美人なんだろう。うん。
「何?比企谷って人ハーレム王だったり、主人公だったりするの?」
「かもねー。まぁ、そういう訳だからあたしは親友になりたいのよ。」
「成る程ねぇ…。」
その後、かおりから一緒に高校に行けない事について謝罪されたが、あっさりと受け流した。確かにショックではあったが、かおりがちゃんと色々考えているなら私はそれで良いと思う。
なんかフレッシュでルーキーな男子が倒れているのが見えるけど、私は知らないよ。
私は総武高校を受験して進学した。入学してすぐに友人も出来た。名前を本人達は、遙とゆっこと名乗っている。名乗っているってなんだ?また、葉山君達とも出会う事が出来た。葉山隼人レースを勝ち抜いた三浦さんが随分と幸せそうだったのが印象的だ。
比企谷くんの話題も出た。かおりが高度育成高校に行った事に葉山君は驚いていたが、「比企谷は本当に誰でも変えてしまうんだな。」と微笑んで去って行った。以前の葉山君とは違う笑みに思わずキュンとしてしまった。……三浦サンニラマナイデ。
階段の窓からなんとなくテニス部の練習を眺めていると、五分前のチャイムが鳴ったので教室へと向かう、が、足を踏み外してしまった。
「きゃっ!」
これは痛そうだと自分で実況していると、視界が突然遮られ衝撃が吸収される。
「ご、ごほん!お主大丈夫か?」
なんだか、時代錯誤な声が聞こえて上を見上げると眼鏡をかけた白髪のぽっちゃり君が私を支えてくれていた。どうやらオタクっぽい。
「ありがと。……。」
礼だけ言って離れようとしたが離れられない。まさかコイツが掴んでるのかと思って手元を見ると……
私がギュッとしがみついていた。
「ご、ごめんね?」
離れようとしても何故か離れられない。それどころか段々心地がよくなって来て離れたくなくなってきた。
「けぷこん、あの、そろそろ。話してくれませんかね…。」
なにか聞こえるが気にしない。絶対に離さないように足を絡ませる。
五時間目開始のチャイムが
わたしの恋の始まりだった。
===side《haruno》===
私は総武高校の屋上から全てを眺めている。本当に面白いもの、好きなもの、興味深いものはそこには無く、それらのものたちが残したものがところどころに散らばっている。私は、好きなものたちを陸の孤島へと送り出した。きっかけは一番好きなものだったが、今ではこの残したものを眺めながら三年後、新しく増えたものを見たいと静かに願っている。…だから、
比企谷くん。三年後。つまらなくならないでね。
そうして私はコーヒー缶を開けた。
はい、戸塚、川崎、仲町、陽乃回でした。俺ガイル原作はレンタル?でしか読んでいないので全般的に口調が不安定だと思います。特に一人称に関してはもし指摘がありましたら、是非とも宜しくお願いします。