ようこそ実力至上主義の奉仕部へ   作:モーブラゼロ

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4月の日常回です。比企谷は綾小路と違って男子達と交流が無きに等しいので、駆け足です。


驕慢を謳歌せし者達の声は響き渡る

……あれから俺達は一日も早く奉仕部を設立するために、一週間程学校内を探し回った。目的はプライベートポイントを稼ぐ事。学校内で若い人が働いている店を訪れ、バイトを募集しているかどうかを聞いたものの生徒が行うバイトは原則ない様だ。ちなみにその際MAXコーヒーを販売している自販機をいくつか発見した。今後の供給に役立つだろう。

 

次に念のため正攻法でも聞いてみるべきだと雪ノ下が主張したため、職員室へ向かい茶柱先生に質問したところ、

 

「この学校では原則生徒がアルバイトをする事は無い。」

 

と、若干落胆した顔で言われてしまい三人ともしょげくれた。しょげている雪ノ下と由比ヶ浜が、猫と犬みたいに見えて可愛かったのはここだけの話だ。

 

戦果なく教室に戻って雪ノ下の作った弁当を受け取る。自分の席に戻って幾分かテンションが落ちた状態で食べていると、

 

「なぁ、比企谷。一緒に向かい合って食べないか。」

 

綾小路が声を掛けてきた。普段なら絶対に受けない誘いだったが、若干アイデンティティクライシス(?)になっていた俺は寂しかったのか椅子を反対向きに引っくり返した。

 

「あら、綾小路君にも一緒にお昼を食べるような友達が居たのね。」

 

「あぁ、比企谷は俺の友達だぞ。なぁ、比企谷。」

 

「ん?あー、そうだな。知らんけど。」

 

「どうやら比企谷君は友達だと認めることを嫌がっているように見えるのだけど。」

 

「いや、それはだな……」

 

……なんかこの会話凄い既視感ある。出会いたての雪ノ下との会話みたいだ。綾小路、もしかして堀北や雪ノ下みたいなのがタイプなのか?絶対面倒くさいぞ、その分超可愛いけど。

 

「そういえば比企谷達は最近昼の間何処に行っているんだ?誘おうと思ってもなかなか居ないから困っていたぞ。」

 

…なんだか探りを入れてくるな。念には念を押して適当に誤魔化すか。

 

「いや、色々見て回っていたんだ。この学校にはどんなものがあるのかとかな。MAXコーヒーの自販機を見つけた時は飛び上がりたくなるくらい嬉しかったぞ。」

 

この返しなら大丈夫だろう。

 

「……そうか。ところでそのMAXコーヒーというのは何だ?」

 

「MAXコーヒーを知らないのか!千葉県民の風上にも置けないな。」

 

「いや、此処は千葉では無いし俺は千葉県民では無いのだが…。もし良かったら一本貰ってもいいか。」

 

「おう、いいぞ!お代わりなら一杯あるからな!」

 

「なんだか急にハイテンションだな。……甘いが美味いな。頭を使った時に良さそうだ。」

 

「お、良さが分かったか!実は他にも飲み方があってな……」

 

「……この馬鹿二人は一体何をしているのかしら。」

 

 

 

雪ノ下達によると、その後イヤホンをしながら必死に耐えている少女と、コーヒー缶を片手に持ちながら目がギラギラ光っている少年、コーヒー缶を大量に机に置かれ死んだ目になっている少年が窓際に確認されたという。

 

 

 

その日の放課後、綾小路に軽く挨拶すると、堀北も小さな声で「さよなら」と挨拶してきた。……どういう風の吹き回しか知らないが可愛いな。……ちょっと待って雪ノ下。どうして、いや悪かったから…ガハマさん!?怖い怖いその目やめて!ゴメンナサイ

 

 

雪ノ下達の席まで行くとそれはまた良い笑顔で、

 

「比企谷君?凄く楽しそうだったわね。堀北さんのような私に似た女性を見て、ハッスルしてしまったのかしら?それなら私にすればいいのに。準備は出来ているし、いつでもいいのよ?」

 

「ヒッキー?最近あたしの事忘れてない?最近あたし台詞無いし、ただのアホ要員としか思ってないんじゃない?あたしなら胸を使ってゆきのんには出来ないあんなことやこんなことが出来るよ?ねぇ、ヒッキー。」

 

雪ノ下。別に俺は堀北に性的興奮を覚えたりはしてないぞ?むしろ、いつもそんな事考えている雪ノ下の方がスケベなのでは…。そして由比ヶ浜。メタい。超メタい。あと、由比ヶ浜も誘惑しないで。ヒッキーのヒッキーがビッチーになっちゃうから!

 

 

 

「またあの二人、あのアホ毛の奴に絡んでるぜ。」

 

「雪ノ下さん達ってめちゃくちゃ美人なのに、どうしてあいつなんだか。」

 

「てかアイツの名前何だったっけ?ひきがや?ひきたに?」

 

「ヒキタニだろ。畜生あの胸とか脚好き放題してぇー!」

 

 

 

あ?

 

 

 

ふざけるなよ?山内

 

 

 

「ヒッキーストォォップ!私達は大丈夫だからね?ね?落ち着いて?」

 

「ひ、比企谷君?落ち着きましょう?比企谷君!その、トイレットペーパーで何をする気なの!?」

 

 

 

どうやら、俺はいつの間にか二人に独占欲を持っていたようだ。

 

 

 

「…ヒッキーが良ければ二人同時とかでもいいからね?」

 

「そうね、一色さんには悪いけど先に既成事実を作るのも良いわね。」

 

 

 

ごめんなさい。私が悪かったです。

許して下さい。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう山内!」

 

「おはよう池!」

 

珍しく雪ノ下達と一緒に登校してきたところと、池と山内がそれはもう見事な笑顔で挨拶を交わしていた。慌てて時計を確認すると、俺の感覚は正常だと認識したところで、珍しいこともあるものだと感じていた。彼らは学校が始まって一週間、遅刻こそしていなかったが、それでもギリギリの時間に毎日来ていた。正直不気味だ。

 

「いやあー、授業が楽しみすぎて目が冴さえちゃってさー。眠れなかったんだよな!」

 

「なはは、分かるぜ。何せ俺もだからな。この学校は最高だぜ、四月から水泳の授業が行われるんだから!」

 

池や山内の言う通り、今日から水泳の授業が開始される。恐らく彼らは合法的に女子の水着姿を見ることが出来るので興奮しているのだろう。ただそういった発言を大声でしたせいで、クラスの大半の女子が冷めたケダモノを見るような目で見ている。あ、山内に関しては俺も許さないからな。

 

「どうして男子はああいう馬鹿みたいな事で盛り上がれるのかしら。」

 

「女子にの例えるなら、葉山が汗を垂らしながらサッカーで活躍しているのを見るのと一緒だろう。雪ノ下は分からんだろうが…。」

 

「ヒッキーは私達のしか見ちゃダメだよ?いい?」

 

……由比ヶ浜や雪ノ下の下ネタはいい加減控えて欲しいのだが。こっちも理性を保つので精一杯なんだよ!

毎日自室に出入りされても襲わない俺は神になってもいいかもしれない。

 

「綾小路ー。」

 

綾小路が彼らに呼ばれていった。なにやら紙を見ながら頷いたり苦い表情をしたりしている。綾小路も周りの女子に白い目で見られながら席に戻ると、

 

「ひ、ヒキタニー?」

 

山内がなんだかこっちを向いて呼んできた。正直行きたくないが、何をしているのか興味があったので足を向ける。

 

「実は今俺たち、クラスの女子の胸の大きさを賭けようってことになってるんだけどさ。」

 

「オッズ表もあるんや「悪い、戻るわ。」ちょ!?」

 

「まあまあ、そう言うなよ! お前も気になるだろ?」

 

踵を返そうとすると、山内が真顔で言いながら引き止めてきた。

 

 

 

あ?こんな教室のど真ん中でクソみたいな事してんじゃねえよ。

 

 

 

一言言おうと足を踏み出すと、以前入学式で自己紹介を拒否した不良少年、須藤と目が合った。どうやら俺と同じくこれに嫌悪感を抱いているのか、渋々付き合っている風に見えた。嘆息してからタブレットを貸して貰うと、画面にはクラス全員の女子生徒の名前が載っていた。しかもオッズ付きというかなりガチなヤツだ。雪ノ下や由比ヶ浜の名前もそこにはあった。

 

 

 

「……なぁ。これやってて楽しいか?」

 

「当然だろ!今から女子の水着姿だぜ!ワクワクドキドキだろ!」

 

池が胸を張って答える。

 

「女子の胸にポイント賭ける事がか?」

 

「そりゃそうよ!非リア男子ならやるしか無いだろ!あ、ちなみに俺佐倉に告白されたけどブスだったから振ってやったぜ!」

 

 

 

こいつ絶対いつか殺す。

 

そう思っていると他にも山内に殺意のある視線が届けられた気がした。

見てみるとそこには、佐倉の友人と思われる女子生徒が山内を睨んでいた。当人が居ないのを良いことに話題に挙げたのだから、それは当然かもしれない。

 

「……お前ら教室のど真ん中でそんな馬鹿な事やるより、身嗜み整えたり女子を気遣ったりした方が良いと思うぞ。本当にモテたいのならな。」

 

一応忠告しておいた。俺の方に女子から称賛の視線が送られる、悪い気分では無いな。あと、須藤を軽く引っ張って山内達が呆然としている中から連れ出した。

 

「あーその、サンキューな、ヒキタニ。流石にあれは駄目だと思ってたんだ。」

 

「それが正常だ。」

 

素行が悪い須藤と言えど、そういったことには忌避感があるようで好感度が上がった気がした。後、俺はヒキタニじゃない。

 

 

 

プール授業はあまり言う事はない。強いて言うなら、池が女子更衣室に飛び込んだらどうなるか、というふざけた妄想をして綾小路がそれを現実味のある話で震え上がらせて諭したり、胸が一番大きいとされていた長谷部が見学をしていて外村や山内が絶望していたり、そいつらは結局櫛田の偽りの天使の笑顔で浄化されて息子を大きくしていたり、堀北と綾小路がイチャついていたりした。そういえば俺も連絡先を交換した入学三日目以来、久々に櫛田に話しかけられたな。やはり気分が悪かったために話を早めに打ち切ったが。後は雪ノ下や由比ヶ浜と一緒に泳いだな。男子達の刺すような視線を思い出す。

 

「ねえねえ、今日カラオケ行かない? 昨日知ったんだけど、最新曲が入ったんだって!」「それマジ? 行く行く〜!」

 

……今はプール授業が終わり、昼食後の五時間目、数学。女子のあるグループが放課後の予定を話し合っている。揃いも揃って授業に必要な道具すら出していない。池や山内達も今日のプールでの女子について語り合っていて、須藤は疲れた果てたのか熟睡している。雪ノ下はかなり不機嫌で、中学ではリア充グループだった由比ヶ浜でさえも困惑していた。

 

そういえば俺は由比ヶ浜のおかげか、女子の中では正しく名前が覚えられているようだ。別に今更ヒキタニでも構わないのだが、プール授業前の賭けの件で見直した女子が多いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

ん?"賭け"?

……もしかしたら、プライベートポイントを稼ぐ手段として使えるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「賭けをする事でプライベートポイントを稼げるってどういう事かしら。」

 

放課後、いつもの様に自室に集まった俺たちは会議を始める。

 

「今朝のふざけた賭けで思ったんだが、あんだけ大々的に教室で不純な賭けをしているのに注意が入らないのはおかしいと思わないか?」

 

「確かにカメラで見られてるはずだもんねセンセー達に……。」

 

「でも、賭博は日本では許可されているもの以外禁止されているわよ?」

 

「恐らく黙認なのだと思う。学校の掲示板にも『賭け試合募集』って書かれたスレッドがあるだろ?これとか。」

 

「これが茶柱先生のあの態度の理由の一つかしら?」

 

「あー多分な。」

 

「……ねぇ、私なんか嫌な予感がするの。なんかこれだけじゃなくてポイントのあたりでもっと重大なコト……。」

 

「……どういう事だ?」

 

「先生がさ。なんか、陽乃さんと昔のさがみんを混ぜた様な顔をしてたの。小馬鹿にした様なさ。何か大きな事を隠してるんじゃないかな。」

 

「……確かに今までの茶柱先生の態度はお世辞にも良いとは言えないわね。」

 

「……色々思うところはあるが、とりあえず奉仕部という居場所を作る事が最優先だ。今はまだ部活が開いている頃だし、何処か調べて行ってみるか。」

 

 

 

 

 

 

チェス部に到着したのはそれから15分後の事だった。

雪ノ下が先頭に立ってノックをする。

 

「失礼します。」

 

「なになに3人とも入部希望者?」

 

「いえ、掲示板で賭け試合の募集を見て書き込んでから来ました。」

 

先輩達もまさかこんな美少女が二人も来るとは思わなかったのだろう。男の先輩が由比ヶ浜に見惚れて、女の先輩に足を踏まれている。

 

「じゃあ一年生か、君達クラスは?」

 

「全員Dクラスです。」

 

誰かが失笑したのは気のせいではないだろう。もしかすると、クラス毎にグレードでもあるのか?

 

「まあいいや。じゃあこの部活の好きな人と戦ってくれて構わないよ。」

 

部長がクラスを聞いてから半ば投げやりになる。その途端様々な先輩が誘ってくる。……俺の目を見て悲鳴上げないでくれません?

 

「じゃあ、初めに1万ポイントから賭けないかい?まだ入って間もなくてポイントも少ないだろうし。」

 

何処か爽やかとした先輩が雪ノ下に声を掛ける。雪ノ下は冷ややかな目をしてそれに応じ、試合を始めた。

 

由比ヶ浜は意外にも女子の先輩に声を掛けられていた。チェスがほとんど分からないせいか、1000ポイントの賭けみたいだ。手取り足取り教わっている。

 

俺は悲しいことに誰にも声を掛けられなかったので部長に声を掛ける。昔から一人で何でも遊んできた為、チェスの腕にもそれなりに自信があった。

 

「君、チェスを舐めていないかい?いきなり僕と勝負するなんて。」

 

「大丈夫です。もし負けても恨みませんよ。俺の座右の銘は『押して駄目なら諦めろ。』なんで。」

 

「フッ、そうかい。」

 

こうして三人とも賭け試合を開始するのであった。

 

 

 

 

 

「雪ノ下さん、強過ぎない?」「根こそぎポイント持って行かれた…。」「由比ヶ浜ちゃんはもっと頑張って!5000ポイントは来てくれたお礼だよ!」「比企谷って奴、案外強いぞ。」「見た事もない戦術だ。」

 

試合結果とポイントの推移を並べておこう。

 

雪ノ下は8勝無敗。

6万3891ポイント→51万3891ポイント

 

由比ヶ浜は4勝3敗。

4万0129ポイント→9万5129ポイント

 

そして俺は6勝2敗だ。

5万7323ポイント→41万7323ポイント

 

想像以上の戦果だ。雪ノ下は体力が切れる寸前まで戦い、無双して45万ポイントを得た。由比ヶ浜は初心者ではあったが、先輩女子達のお情けで5万5000ポイントを獲得。ほぼ入学式の際のポイントとなった。最後に俺は強い相手が続いたせいか、36万ポイントと雪ノ下には及ばなかったが本来の目的からすれば充分過ぎる結果だ。

 

「僕が悪かった。予想より遥かに楽しめたよ。また、来月になったらおいで。」

 

部長や部員からも好感触で、三人でお礼を言って退出した。

 

 

 

 

 

「楽しかったねー。」

 

「ええ、そうね。久々に血が躍ったわ!」

 

「雪ノ下テンション高いなオイ。」

 

「これで、目的は達成ね。明日にでも茶柱先生のところに行きましょうか。」

 

「ああ、あの顔がへの字に曲がるところが見てみたいぜ。」

 

「ヒッキー趣味わるーい!」

 

 

 

 

 

後から振り返ると、この時の選択は正しかった。

賭け試合に行くのが後数日遅れていたら、

俺達もあの絶望の渦の中に

巻き込まれていたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

こうしてDクラスは5月1日を迎えるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

その日までDクラスの授業態度が

改善されることは

 

 

 

 

 

 

 

なかった。

 

 

 

 

 

 

 




プール回は正直そこまでクロスで描く場所が無いのでカット。奉仕部の二人が含まれていたために外村たちの賭けに八幡がきれています。

賭け試合は5月前に彼らが行うか迷いましたが、チートになり過ぎず、かと言って空気になり過ぎず、のバランスを取ったところ、こうなりました。ちなみにポイントが変動する事に関しては気付いていません。また、稼いだポイント数も何百万規模は正直道場破りすぎるので合わせて100万足らずとしました。次回はいよいよ地獄回です。
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