魔法科高校の転生者   作:南津

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1.6 紹介

「はじめまして、小鳥遊さん。司波深雪です。柏木さんとは同じクラスになりましたので、お会いする機会はあると思います。よろしくお願いします」

「ああ、小鳥遊伊月です。よろしく、司波さん」

 こんなところで原作組と食事を共にするとは思っていなかったが、伊月にとってはただの彩花のクラスメイトだ。先程から痛いぐらいの視線(殺気)を向けてくる男子生徒のように、彼女に対して何か思うところはない。

 彼女の本来の身元について知っていれば、伊月も若干の対応は変わっていたかもしれないが、伊月の知っている情報は主人公の妹で、魔法に関しては天才的。転生時の会話から、兄達也は再成と分解の魔法が使え、膨大なサイオンを保有している二科生であるということだけだ。

「そういえば、皆さんは互いに紹介されたんですか?」

「そういえば……」

 彩花の言葉に、四人の女子生徒が反応した。

 彩花は四人全員と面識があるようだが、クラスで伊月クラスメイトのように挨拶も済ませていなかったようだ。それに、隣のテーブルには知らないだろう男子生徒も居る。

「そうですね、改めて……司波深雪です。皆さんとはクラスメイトですので、これからよろしくお願いしますね」

「光井ほのかです。これからよろしくお願いします」

「北山雫です。宜しくお願いします」

「私は八千古島早苗です。苗字は長いので早苗でいいです。司波さん、光井さん、北山さん、これからよろしくお願いします。彩花ちゃんも改めてよろしく! それから小鳥遊くんも、ついでに、よろしく!」

「あぁ」

「はい! えっと、私は柏木彩花です。改めてよろしくお願いします」

 そのまま、隣のテーブルから男子生徒の自己紹介が始まった。司波深雪――兄がいるため深雪とするが――は表面上にこやかにその紹介を聞いている。

 伊月の隣に座っている八千古島に至っては、男子の紹介など聞かず既に食事を始めていた。

「お前は聞かなくていいのか?」

「どうでもいいです。みんな深雪さんに聞いてもらえるだけで幸せなんですから。それから早苗です。お前じゃないです」

「あぁ、そうみたいだな」

 彼女の言うとおり、男子生徒のほとんどが深雪に視線を向けていた。やはり美人は色々と大変らしい。中には一緒に彩花に目を向けている男子もいたが、彩花も普通に食事を再開しており、既にデザートに差し掛かっていた。

 時折見せる幸せそうな顔に、何人かの男子の気がそれていた。

「……彩花ちゃんも人気があるんですよね。一年A組の二大巨頭ですね」

「お前は……あぁ」

「その態度がムカつきます! 私だってまだ育ってるんです!」

「……そうか」

 伊月はこういう弄りがいがある人間は嫌いではない。気楽に接することが出来る分、交友の少ない伊月には貴重な存在だ。

「……がんばれよ」

 そう言って、伊月は早苗の頭を撫でる。いつも妹の紗月にやっているように。

「くぅ~、これでも四捨五入したら一五〇はあるんですよ!」

「はいはい」

 

 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 昼食が終わり、再びクラスのオリエンテーションとなる。

 午後からも基本的には自由に上級生の授業見学を行うようになっており、D組の大半の生徒は引率の先生とともに各授業の見学に出た。

 伊月たちは午後も三人で行動していた。

 見学時間が終わり、一度教室に集められた生徒たちには、明日からの授業日程について告げられ、解散の意図が告げられる。明日の授業、といっても、明日も基本的に授業見学に当てられているので今日行われていなかった授業の概要についてなどの説明だった。

「小鳥遊くん、いますか?」

 オリエンテーションを担当していたカウンセラー教諭から声が上がった。

「はい」

「あぁ、小鳥遊くん。このあと時間あるかな?」

「ありますけど……何か?」

「この学校には風紀委員というものがあるのは既に知っていますね?」

「はい」

 風紀委員。それは知っているが、呼び出されるような行動を伊月はとっていない。

「風紀委員は教職員、生徒会、部活連の三つの組織からそれぞれ推薦された三人、合計九名で組織されています。現在、部活連側から三名、生徒会から二名、教職員側から二名の七名で活動しています」

「はぁ……」

 伊月はこの時、大凡の話の方向を悟っていた。原作開始そうそう、かませっぽい一科生徒が教職員枠で推薦されて風紀委員になっていたはずだ。

「明後日からは部活勧誘も始まり、風紀委員最初の仕事である部活勧誘の監視と取締を行います。風紀委員の仕事はじめですね。これに合わせて教職員の推薦枠から風紀委員を出さないといけないのですが……」

「そこで、自分だと?」

「はい。主席入学の司波深雪さんは恒例により生徒会に入ることになると思いますが、次いで入試成績優秀者であった小鳥遊くんへ、教職員から風紀委員へとの声が上がりました。実技成績も申し分ありませんし、中学での部活動とは言え主将を勤めていたということで、人格的にも適切だと判断されました」

 伊月の入試成績は司波深雪に次ぐ成績だったようだ。伊月は、前世と中学の試験の感覚で平均的な成績を狙ったつもりだったが、結果的に八〇点代後半の魔法科目筆記成績に、実技に至っては、演算速度の評価において深雪も上回る成績をおさめていた。

「……分かりました」

「それではこれから生徒会室へ案内しますので、付いて来てください」

「鞄などの荷物はどうすれば?」

「そのまま帰るようでしたら持って行ってもらって構いません」

「分かりました」

 教員に軽く会釈をし、伊月は自分の席に戻る。そこには文哉と沙妃の二人が待っていた。

「なんだったんだ?」

 いきなりの呼び出しに、気になったのだろう。文哉が若干心配そうに声をかけた。

「どうやら風紀委員に推薦されてしまったみたいだ。悪いがこれから挨拶に行くみたいだから先に帰っていてくれないか? 誘ってもらったところ悪いんだが……」

 机に置いていた鞄に、出していた筆記具などを収めながら、断りを入れる。放課後何処かによってお茶でもしようと誘われていたため、先約を不意にしてしまった。

「ああ、問題ねぇよ。それにしても伊月が風紀委員か……沙妃、羨ましいな?」

「ぐ、別にそんなことないけどね」

「悪いな、先生を待たせてるから行ってくる」

「ああ。また明日な」

「さようなら、伊月さん」

「また明日」

 鞄を持って、再び先生のもとへ戻ると、教諭は何やら端末を操作していた。伊月が戻ってきたことに気づき、しばらく操作して端末を仕舞った。

「よろしいですか?」

「はい」

「それでは付いて来てください」

 そう言って歩き出した教諭に続き、教室を後にした。

 途中、彩花に連絡していないことを思い出し、携帯端末を操作して事情を連絡する。返って来たメールは、用件が終わるまで待っているという旨が記されていた。

 四階の突き当りの部屋に到着し、そこが目的地である事を知った。「生徒会室」と刻まれたプレートが、教室の用途を示している。

 インターホンを教諭が操作し、スピーカーから女性の声が返ってくる。続いてロックの外れる音が僅かに鳴ると、引き戸を開いた教諭に続いて室内に入る。

「お手数をおかけします、(たちばな)教諭」

 カウンセラー教諭は橘という名らしい。意識して聞いていなかったので今まで伊月は忘れていた。

「いえ。こちらが風紀委員教職員推薦枠の小鳥遊くんです。それでは、後のことはお願いします」

「はい。承りました」

 奥から進み出てきた二人の女子生徒の返答を聞いた橘教諭は踵を返して生徒会室を立ち去った。

 改めて室内を見渡すと、目の前の二人に加えて、一人の男子生徒と二人の女子生徒がテーブルについて伊月を見ていた。

「はじめまして、小鳥遊伊月くん。私が生徒会長の七草(さえぐさ)真由美(まゆみ)です」

 そう言って受けの良さそうな笑顔を浮かべる。そのまま視線を隣に移して言葉を続ける。

「それからこちらが、小鳥遊くんが所属する事になる風紀委員会の委員長、渡辺摩利」

「風紀委員長の渡辺(わたなべ)摩利(まり)だ」

 七草会長とは違う、短めの髪の麗人が沙妃の言っていた風紀委員長だった。

「小鳥遊伊月です。よろしくお願いします。七草会長、渡辺先輩」

 印象を悪くしない、社交的な笑みを浮かべて軽く会釈をする。元社会人としてはこういう場での対応は慣れたものだ。

「……せっかく生徒会室にいるんだから、生徒会のメンバーを紹介しますね。風紀委員会は明後日顔合わせするみたいですから、今日は摩利からの説明だけでしょう?」

「そうだな」

「取り敢えず座りましょうか」

 そう言って勧められた席に腰を下ろすと、正面には小柄な女生徒が座っていた。

「まず生徒会副会長の服部(はっとり)形部少丞(ぎょうぶしょうじょう)範蔵(はんぞう)くん。通称はんぞーくん」

「服部形部です!」

 唯一の男子役員が会長の言に反論する。会長はその反論を無視して、次の紹介に移った。

「そして、会計の市原(いちはら)鈴音(すずね)、通称リンちゃん」

「……」

「最後が書記の中条(なかじょう)あずさ、通称あーちゃん」

「かいちょ――」

「入学式でも紹介しましたが、以上が今期の生徒会役員です」

「あぅう……」

 あーちゃんと呼ばれた生徒の言葉に被せるように、会長は締めの言葉を重ねた。

 昼間に会った八千古島といい勝負をしそうなほど小柄な体型だ。こちらは八千古島のように賑やかな性格はしていないようだ。

「それでは本題だが、風紀委員の仕事については分かるか?」

「魔法使用に関する校則違反者の摘発と取り締まり、ですか?」

「そうだ。正確には校則違反者の摘発と、争乱の取り締まりだな。魔法使用がなくても我々が対処することになる。違反者の罰則については、私と真由美から懲罰委員会に意見を出すことになる」

「風紀委員には生徒会役員と同様にCADの常時携行が許可されています。正式な許可については摩利の方から追って連絡が行くと思うので、それまでは従来通り事務室にCADを預けるようにしてくださいね」

 委員長の言葉を引き継いで、会長がCAD携行について述べる。

 現在伊月は例に漏れず、登校の際にCADを事務室に預けている。

「風紀委員会本部は生徒会室の真下の教室だ。明後日の放課後、風紀委員会の顔合わせと部活動勧誘週間の取り締まりを始めるので、その時には直接其方に向かうようにしてくれ。IDカードの認証登録は済ませておくので、自分のIDカードを使って中に入ってくれ」

 その後、いくつかの注意事項を教えられ、この日の顔合わせは終了した。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 

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