エロいことしようとしてたら最強の魔導師になっていた 作:100000
日間ランキング7位に一瞬載ってましたね。短い間でしたけどめっちゃ嬉しかったです(感想)
激闘を終えた夜、塾から帰ってきたなのはちゃんにサプライズとばかりに取ってきたジュエルシードを見せびらかす。
煙魔導師と戦い得た戦利品である4個目のジュエルシード。きっとこれを見たなのはちゃんは目がハートになること間違いなし!のはずだったが突然取り乱し、泣きそうになりながらも
──どうしてそんな無茶したの!
と、まさかの激おこ。情緒不安定ですか?
あとから聞いたがその時の俺の状態はかなり危なかったらしい。
──『普通にボロボロでしたし、加えて魔力欠乏症ギリギリでしたからね』
と、その後スコル医師から診察結果をいただいた。いやお前なのはちゃんの前では全然大丈夫ですよって言ってたやん。普通に俺も信じてたわ。
そんなことがあり、昨日のジュエルシード探索はなのはちゃんに任せっきりとなってしまった。少しでも助けようものならダメ!と言われる。なんかそれがかわいくて何回もしてたら涙目になり始めたのでさすがにやめた。
そして今週の日曜日、なのはちゃん達御一行はサッカーの試合を見に行くらしい。しかもそのサッカーチームのコーチはなのはパパだという。なんでも出来るよなあの一家。そのうちクローンとか作り出しそう。
俺も誘いは受けたのだが、用事があると言って断った。なのはちゃんが心配そうに見ていたが、何もしないよと諭すと素直に頷いてくれた。かわいいかよ。
そして自宅で迎えた日曜日、何気に朝から一人で行動するというのは久しぶりな気がする。
『で、今日は何するんですか?』
「今日は新しい攻撃手段を考えようかなって」
煙魔導師との戦いで分かったことは俺が遠距離攻撃に対して対抗手段が時間停止くらいだということだ。
現状、時間停止が一番魔力を消費する。それではこの先あれ以上の強敵が複数体現れたりして長期戦になったらヤバいのでこの日曜日を使って遠距離攻撃手段を開発、あるいは対策する。
ということで
「教えてください!スコル先生!」
『何も考えず真っ先に私ですか…』
まぁ実際戦闘経験全くない俺がそんなすぐに効果的なモノを思いつくはずもないので。ここはスコルさんの知恵を借りようかな…と。
『道理なのが癪です』
頼む!
『はぁ…了解しましたマスター』
さっすがースコルさーん。話がわかっていらっしゃる!
『遠距離攻撃といっても魔法の場合、大きく二つに分かれます。魔法で攻撃するか、デバイスで攻撃するかです』
「えーと、どういうこと?」
『前者はなのはさんのようなタイプですね。杖型のデバイスから魔法を発射するパターンです。後者は銃型で魔力の弾丸を発射するパターンです』
うん?その違いでメリットとデメリットがあるのか?
『デメリットは場合によりけりで立ち回り次第では修正可能なのでこの際省きます。杖型のメリットは魔法を主体としていますのでバリエーション豊かです。加えて後衛向きなのもあって基本杖型を扱う魔導師は高火力な魔法を使うことが多いので杖型はそれに合わせて魔力の出力の幅がとても広いです』
はいはい、まさしくRPGの魔法使いって感じだな。
『銃型デバイスのメリットはなんと言ってもその扱いやすさです。引き金を引けば弾が飛びますし、無理に照準を合わせなくともエイムアシストで多少は当たります。さらに使ってるのは自分の魔力なので通常攻撃ならチャージ、術式の展開を必要としないので先手を取れます。これはデバイスの型に左右されるものですが、そのスピードを求めて使う魔導師も少なくないです。ただ、杖型程魔法に富んでる訳ではなく一般的にはストレージデバイスが多いですね。まぁそこら辺は当人の問題ですが』
ふむふむ、つまり魔法云々をあまり考えなくていいという事だな。
『まぁ玄人は魔法とこれで複合戦闘するのが普通ですがね』
むむ、杖もいいけど銃もいいな…いっそ両方使っちゃう?
『一応、ガンフォームとロッドフォームを持つ変形型デバイスもありますよ?』
いや、変形もいいけど一つ一つ武器チェンジしながら戦ってみたいじゃん?
『なんですかその子どもみたいな理由』
ロマンだから!ロマン!
『…そうですね。こちら、カタログです』
目の前にホログラムが映し出される。商品カタログのようにデバイスの写真がスクロールされていく。
色とりどりの銃や杖が並ぶなかで一際目を引くものがあった。
「お、スナイパーか!ええやん!」
それはまさしくザ・スナイパーといった感じのライフル型のデバイスだった。長い銃身に八の字になった二脚、長いスコープに加えて胸に当てるには長すぎるストック、そして色は大好き黒である。
『ご存知伏せスナイパー…ではありません。伏せるのは同じなのですが放つのは魔力砲でどちらかというと固定砲台みたいな感じです』
どうやら魔法のスナイパーと俺が思ってるスナイパーは違うらしい。
「これをカスタムしたら砲台じゃないスナイパー運用できたりする?」
『いやまぁ可能ではありますけどでしたら普通に射撃した方が効率いいですよ?』
はぁ〜、やっぱり機械には男のロマンというものは分からないか〜。
『そんなもので命を落とされてはたまったものではないのですが』
へぇー!ボルトアクション式もあるんだ!やっぱ分かってるねぇ!
『聞け』
スコルがなんか言ってるが無視して色々とカスタムを弄っていく。色はもちろん黒で銃身は今よりやや短めにしてストックも抱えられる程度に抑え、スコープは変わらず高倍率にする。
「よし!スコル、これ出して!」
『え、いや、これ、えぇ…』
ん、何か問題が?
『問題というか戦闘を前提にしてる感じしないんですが…ボルトアクション方式を採用するくらいなら普通にチャージショットの方が100倍マシなんですが、しかもスコープ付いてるのに突っ込む前提のフォルムになってるのが最高に意味がわかりません』
え?凸砂でもしようかなって。
『………マスター、スナイパーの最大の利点は気づかれず遠距離から強力な一撃を放つことです。凸砂というものは分かりますが、アレはゲームの話で現実でやるのは明らかにアホですよ。理想とリアルの区別ぐらいつけてください。てかそれならなおさらボルトアクションはダメでしょ』
うるさい!俺は凸砂がしたいんだよ!いいじゃん、どうせ才能豊かな肉体なんだし!極められそうなことは極めたいじゃん!
『…もう勝手にしてください』
やったぜ。
スコルが赤く輝き、目の前に魔法陣が形成される。幾何学的な紋様が鼓動するように輝く度に、徐々に俺がイメージした通りの銃がその姿をあらわにしていく。
「おぉ!」
そして現れた銃は俺がオーダーメイドした通りのカスタムになっていた。
手に取ってみる。…うーん、重い!
『銃なので当たり前です。…高倍率スコープ、なんかミスマッチじゃないですか?』
確かにこうして全体像を見ると無駄にスコープがデカい気がしなくもない。
『スコープはデジタル型にしますね』
……お願いします。やっぱり自分の理想を詰め込みすぎるのは良くないね。
『あとボルトアクション方式ではなくてコッキングしたら次弾がチャージショットになる仕組みにしておきますね』
「え!?そんなのボルトアクションじゃないよ!」
『あ?』
「…なんでもないです。試し撃ちいきましょ」
こうして出来上がったスナイパーライフルをこの街の山奥で試し撃ちすることにした。
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「だいぶ当たるようになってきたな!」
『……ほんと上達だけは早いのなんなんですかね』
これが神様スペック!と自身の才能を誇らしく思う。
あれから一番近くにある山に移動し、結界を張り、スコルが展開した的を撃ち抜く練習をしていた。
最初はコッキングもままならなかったが、僅か三十分で大抵の動く的には当たるようになってきた。一発一発撃つ度になんとなく次はこうすると当たるとまるで初めから答えが分かっているかのように照準がどんどん改善されていく。
「よし!次は動きながらやってみようか!」
『了解しました…どんどんスナイパーから遠ざかっていく』
スコルがなんか言っているが、無視して撃ち始める。
走りながら撃つと常に照準がブレるから全然当たらないな。
……そうか、走ってる時の重心が一番沈みこんだ瞬間か一番浮かび上がった瞬間のどちらかを捉えて撃てばいいのか。
右足が深く沈みこんだ瞬間に合わせて撃つ。ど真ん中ではなかったが今度はしっかり命中する。
『なんでこれで当たるんですか?』
うーん、言うてデジスコなんてアイアンサイトと変わらんし、クイックショットでも当たって当然でしょ(COD脳)
「飛行魔法!」
次は空を飛びながら、的を射ていく。むむ、今度は360°意識しないといけないからかなりキツいぞ。
……なるほど、周囲の魔力を感知しながら狙ってみると当たりそうだな。
射的に使ってる魔力は俺の魔力だという。ならそれを感知してみるか。
目だけでなく周りにソナーを飛ばす感覚で魔力を感じてみる。
『…探知魔法、いやそれに似た何かですか。いずれにせよそれを容易くやれるのは世界探してもマスターだけですよ』
なんかスコルが化け物を見るような雰囲気を醸しているが実際できてしまっているのだから文句を言わないで欲しい。
くっ…自分も的も動いてる状態で探知しながら当てるにはまだ練習が必要か!
探知はできるが、そこから振り向いて照準、発射までのタイムラグなのか座標のズレかは分からないが魔法の感性と人としての感性が一致してないのか思った場所に飛ばない。
それでも一射ごとに徐々に照準があっていき、同じように探知魔法の感覚が自分にあてはまっていく感触を感じる。
「お、結構当たってきたんじゃないか?」
飛行魔法なので色々と体勢を変えながら撃ってみるがどの体勢でもそれなりに当たるようになってきた。
『回転しながら撃つとかもはやスナイパーの面影すらないんですが』
いいじゃん、当たれば。
そうやって試行錯誤しているとあっという間に昼時になっていた。
『マスター、そろそろお昼時です。一旦切り上げましょうか』
「マジか、じゃあ適当にコンビニで何か買うか」
この数時間でかなり射撃の腕が上達したのを感じる。明らかに2、3時間そこそこで身につくレベルものではないのだが、この体が才能豊かなのが悪い。つまり俺が天才すぎるのが悪いのだ。ごめんね。
『本当にその通りなのが最高にムカつきますね』
スコル、君はもう少し自重することを覚えようか。
『その言葉、そっくりそのままマスターへお返しします』
普段、ご飯はなのはちゃん家でいただくことが多いせいかコンビニ弁当では物足りなくなってしまう。あそこ、ご飯ホント美味しい。もはや一流レストランだからね。
「でもコンビニの弁当も普通に美味いよな」
『どこの店も試行錯誤の末、出品してますからね』
料理に軽く感想を添え、後は無言でパクパクと食べていく。
「ん。あ、そうだ、午後の予定なんだけど」
『はい、引き続き練習するのであれば付き合いますよ』
むしろ付き合わない選択肢もあるのかデバイスのくせにと思いつつも言葉を続ける。
「治癒魔法教えてくんない?」
『……………マジですか』
マジです。
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今日はお父さんがコーチを務めるサッカーチームの試合を観戦しに行きます。アリサちゃんやすずかちゃんに加えてあきと君も誘ってみたんだけど、どうやらあきと君は一緒に行ってはくれないようです。
──大丈夫、なのはちゃんを悲しませるようなことはしないから。安心して。
「はぁ……」
あきと君がまた無茶しないか心配です。あきと君がボロボロの姿で帰ってきたあの日、私の心はきっと今までにないくらいぐしゃぐしゃになったと思います。あの時はあきと君が死んじゃうんじゃないかと本当に思いました。でも、あきと君はケロッとしてるし、スコルさんも大丈夫ですと言ってくれたので安心しましたが、わたしは決心しました。もうあんな思いはしたくない…
あきと君に無理をさせないように私自身が強くならないといけないと!
次の日のジュエルシード集めも私だけでやろうとしましたが、あきと君は私の動きが危なっかしいと思ったのか何度も手伝おうとしていました。やっぱりそれも私がまだまだだからです。
─なのは、大丈夫?─
─うん!大丈夫だよ!─
どうやらユーノ君にもいらぬ心配をかけてしまったようです。ダメダメ!落ち込んでいてもしょうがない!そんな暇があったら今よりもっと強くならないと!
─ユーノ君、今度また魔法の練習お願いできる?─
─うん。でも無茶しちゃダメだよ、最近のなのはは少し頑張りすぎてるんだから─
─大丈夫だよ、これくらい!それでね……
ユーノ君と念話でこれからの練習について話し合います。最近は
サッカーの試合は見事、お父さんのチームが勝ちました。勝利に皆が湧き上がる中、キーパーの男の子とマネージャーの女の子が仲良さそうにしています。傍から見ても分かるほどに二人の仲はとても良さそうで恋人同士にも見えます。
いいなぁ……私もあきと君と………
「わわっ!」
頭を振って思考を振り払う。何を考えてるの自分!今はそのことよりもジュエルシードを優先しないと!
……恋人か〜
勝利のお祝いを翠屋ですることになりました。みんな試合のことを振り返りながらワイワイと騒いでいます。ユーノ君もアリサちゃんとすずかちゃんにもみくちゃにされながらとても楽しそうです。
─うわっぷ!?たすけ、助けてなのは!!─
とても楽しそうです。
……?
今、一瞬魔力を感じたような?
気のせいかな?
そのまま解散となり、お父さんも今日は疲れたと先にお風呂に入るようです。私も自分の部屋に戻って布団に倒れ込みます。頑張ろうと思ったけどやっぱり体はすごく疲れているようです。魔法の練習をするためにもおやすみして体力を回復させないと。
─ユーノ君、ちょっと疲れたから寝るね。練習する……時間になったら…起こして…ね─
「?なんか今感じなかった?」
『ジュエルシードですね。しかし反応が一瞬だけだったのを見ると覚醒はしてないようですが、いつ覚醒してもおかしくないですね』
「…スコル、やっぱり治癒魔法の制御任せていい?」
『……私にも堪忍袋の緒がありましてね』
「ふえええええええええ!!!」
『きもっ』
「うるせ」
─────────────────────
─…て…………は!─
─お…て!な…は!─
─起きて!なのは!─
「はっ!?」
ユーノ君の声で意識が覚醒します。いえ、それもありますがなにより私の意識を引き付けたのは…
「この魔力は…ジュエルシード!!」
『
「レイジングハート、セットアップ!」
急いでセットアップをして家から飛び出します。家を出て私の目に飛び込んできたのは大きな木でした。高さだけでも学校やビルよりも全然高い上に、その根は今にも街を飲み込もうとどんどん広がっています。
「なに…あれ…!」
─なんて巨大なんだ…!─
きっとアレはさっきの…!
「…私のせいだ」
─…なのは?─
「私があの時気づいていれば!」
─なのは!─
ジュエルシードがあそこまで広がったのも私が気づけなかったから。ならこれは、
大樹のもとまで飛行魔法で急いで飛ばします。大樹の近くまで来ても私に反応することはなくその根を、幹を、葉をどんどん広げていきます。
「レイジングハート、アレをどうにかできないかな!?」
─ジュエルシードを封印するならまずは元となった核を探さないと!─
ユーノ君から念話が飛んできます。核、つまり願いを込めた生き物だね!
「レイジングハート、探索魔法お願い!」
『Area Search』
探索魔法を発動し、魔力の流れを読み取りながら元を探ります。木という形だから流れの元は辿りやすく、すぐに見つかりました。
「人!?」
探索魔法で探った先にいたのは遠くからで顔は分からないけど人が二人ジュエルシードを囲うようにして動かなくなっているのが見えました。
ジュエルシードが人の願いに反応して…?
「ううん、ここで考えても仕方ないよね。レイジングハート、あれを倒すためにはどうすればいいの?」
『
「ディバインバスター…それなら倒せるんだね?」
『
「分かった!お願い、レイジングハート!」
『
レイジングハートの音声と共に杖の先に真っ白な翼が生えていきます。これが射撃形態…凄い…。
杖を前に突き出す。足元に魔法陣が展開される。それと同時に杖の先に桃色の魔力がどんどん集まっていく。
すごい魔力…これならきっとあの大樹も倒せる!
─なのは、危ない!─
私の魔力に反応したのか、それとも私がやることが危ないと思ったのか、地面から大樹の根がいくつも凄い勢いで飛び出してきました。
「あっ…」
私は魔力を集中させていて、ユーノ君の警告があっても咄嗟に動くことが出来ませんでした。
迫る巨大な根、あんなので叩きつけられたら死んじゃう…のかな?
しかし、その根が私に当たることはありませんでした。なぜならそれは私に当たる前に突然どこからか飛んできた魔力弾によって破壊されたからです。
─いまのは!?─
ユーノ君は突然の事で慌てていましたが、私にはそれを誰がやったのかすぐに分かりました。
─なのは!─
念話が飛んできます。その声を聞くだけで私の胸は高鳴り、同時に心が安心するのを感じました。
─あきと君!─
どこにいるのかは分かりません。でもあきと君が私を守ってくれたことは分かります。情けない気持ちになりますが、ちょっとだけ王子様に助けられたお姫様のような気分になりました。
─やれるな!?─
あきと君は私がやろうとしてることを心配してくれてるようです。でも大丈夫……
「あきと君にかっこ悪いところは見せられない!」
『
「いくよ、レイジングハート!」
『「ディバインバスター!」』
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「…ねぇ、スコル」
『はい、なんでしょう』
「主人公って凄いね」
『まぁ確かにアレは小学生がやるレベルじゃないですよね』
俺とスコルが目を向ける先では、なのはちゃんがなんかえっぐい魔力砲をこれまたヤバいデカさの大木に撃ち込んでいた。
スコルと治癒魔法の練習中にジュエルシードの反応が一瞬だけあったのでいつでも行けるように待機してたら、なんかクソでかい大木になってたのでいやこれどうする?とスコルと作戦会議をしていたらなのはちゃんが現れて何かをやろうとしていた。
スコル曰く、砲撃魔法ということで現状火力不足な俺はなのはちゃんの支援に回るという方向性で意見が一致した。
支援といってもなのはちゃんに迫る根っこを時間止めてライフルで撃っただけなのだが。
「もしあれ俺がくらったらどうなってた?」
『塵も残りませんね』
「…ヒェッ」
とりあえずもうなのはちゃんを怒らせないようにしよう。
大木は消し飛ばされ、ジュエルシードはなのはちゃんの手によって封印された。
とりあえずなのはちゃんの方へ行って、無事かどうかを確認する。
無事っぽいがなのはちゃんの顔は暗い。こんだけでかい化け物倒して一体なんでそんなに暗い顔してるのだろうか。
『マスターと違って、彼女は心優しいですからね』
どういう意味やねん。
訳を聞くと今回の騒動はどうやら事前に対処できたはずとのこと。うーん、流石に状況を知らないからなんとも言えないが結局今回も無事に事なきを得たんだから素直に喜べばいいのに。
そして一番気にしているっぽいのは核になった二人のこと。どうやら顔見知りだったらしくさらに男の子の方は怪我しているようだった。女の子が肩を貸しながら歩いているのがなんとも痛々しい。
涙を浮かべながら、ごめんね、ごめんね、と謝るなのはちゃん。いやめっちゃいい子。
『ホントにいい子ですね。私のマスターなんて─あ、怪我してるじゃん─としか思ってませんからね。慰めの言葉も無いとは驚きました』
最近、スコル、俺の深層心理まで読んでない?
『あなたの性格を考えれば一発です』
取り敢えずこのままだとなんかスッキリしないからあの子の怪我治すか。
『そうですね、実験─せっかく治癒魔法覚えたんですから使わない手はないですね』
うん。せっかくだし実験台になってもらおうか。
『…………』
─時間停止─
時を止めて怪我している男の子の方に近づく。
男の子の方に手を当てて魔力を集中させる。治癒魔法の基本は治すことよりも患部をしっかり認識することらしい。何が悪いのか、どうすれば治るのかをしっかり知る事が大事とのこと。
うーん、血管がいくつか破けてる、…打撲箇所もあるな、これを治せばいいのかな?
『そうですね、幸い数箇所の内出血、打撲程度の軽い怪我の範疇に留まっているのでマスターの腕でも治せますね』
「ちなみに手術が必要なレベルだったら?」
『病院まで運びましょう』
そりゃそうか。
『治癒魔法、開始』
スコルの声とともに集中力を高める。俺がやることは簡単、患部が治っていくのをイメージするだけ。口では簡単だが、魔力の出力や大まかな操作は俺がするので、本当に集中する。細かい部分や難しい部分はスコルがやってくれるのでそこは安心して任せられる。なんでも元の形状を細胞から読み取って…とか言ってたので考えるのをやめた(究極生命体並感)
『……終了です』
え、もう?
『はい。正直、マスターの治癒魔法の上達が気持ち悪いレベルにまで達しています。そのうち外傷程度ならもう私の手もいらなくなるでしょう』
え、そんなに?
…………ふふふ、才能。
『調子に乗るな』
…才能。
自分の才能の怖さをひとしきり堪能したら、なのはちゃんの隣まで戻る。そういえば魔力の消耗が前より少ない気がするんだけど。
『おそらくマスター自身がこの時間停止能力に順応し始めてることが原因かと。そのうち一時間ぐらいは止められるようになるんじゃないんですか?』
「D〇Oか」
──時間停止、解除──
苦しそうにしていた少年は自分の不調が嘘のように回復したことに目を丸くし、少女の方も驚いてはいるが嬉しそうに笑っている。
何が起こったのか分からないとこちらを見るなのはちゃんにウインクを送りながら優しい言葉を投げかける。さぁ惚れ直すがいい!
俺の言葉になのはちゃんは笑顔で頷き返してくれた。
あ、惚れそう。
『いやお前が惚れてどうする』
────────────────────
「おーい、なのはちゃーん」
「あ、あきと君」
あきと君がこっちに飛んできます。
ジュエルシードは無事に封印出来ました。でも本当ならこうなる前に早く解決できたはずだし、あきと君に無理をさせないと誓ったはずなのに結局彼の助けを受けてしまいました。
「なのはちゃん、今の砲撃魔法?っていうの凄いね!」
「ううん、結局あきと君の助けがないと撃てなかったからまだまだだよ」
「え、俺?いやいや俺は後ろからこれ撃ってただけだから」
とあきと君は黒くて大きな銃を見せてきます。あれ?そういえばあきと君、この前使ってたのは剣だったはずなのに銃なんていつの間に……
「あきと君、銃のデバイス持ってたの?」
「これはスコルに用意してもらったんだよ」
「スコルさんが?」
『僭越ながらマスターの要望に合わせた物を用意させていただきました』
す、凄い…。スコルさんもレイジングハートと同じように高性能なんだ…。そしてそれを扱うあきと君も。私なんて魔法一つ放つだけでもいっぱいいっぱいなのに。
─おいこらスコル、今俺がなのはちゃんと喋ってるだろうが、横から入ってくんな─
─『私のバトルフェイズはまだ終了してませんので』─
本当にすごいよ、あきと君は。……私なんかよりもずっと
「やっぱり私じゃなくてあきと君に任せればよかったのかな……」
「え、いやいや。俺にアレはできないよ、なのはちゃんだからこそ倒せた敵だよ」
「違うよ、本当ならこうなる前にもっと早く解決できたんだよ。私が……もっとしっかりしてたなら………」
こうなったのは自分のせいだと口にすると同時に涙が溢れてきました。何やってるの私…これじゃあまたあきと君を困らせちゃう。
頑張ろうとした事がぜんぶ空回りしています。おかしいな、本当ならもっと上手くやれたはずなのに。
あの二人だって、私がもっと早く気づいて対応してればこんなことにならなかったのに…
レイジングハートを使ったのが私じゃなくてあきと君だったら全部うまくいってたのかな?
自分は何も出来ないと思えば思うほど涙が止まりません。
「ごめんね…ごめんね…」
口から出る言葉は怪我をした二人への謝罪…。
「なのはちゃん……」
あきと君から心配そうな声をかけられます。うぅ、こんな姿見られたくなかったのに。
「あの二人を見てて」
「え?」
あきと君が指さす先にはジュエルシードの核となってた二人、
「………え?」
だけど、私の目に映ったのは怪我をし、痛々しそうにする男の子の姿はなく、自分の怪我が治ったことに対して驚きながらもピンピンとしている姿でした。
何が起こったのか理解できない私にあきと君は言いました。
「ほら、これで大丈夫だよ。だからもう泣かないで」
きっとあの子をあきと君が何らかの魔法で治したんだと思います。
「なのはちゃん。少なくとも俺はアレを倒すことはできなかった。なのはちゃんがいてくれたからこの町は救われたんだ。つまり、
……私じゃないとダメ?
そっか…私でもやれたことがあったんだね。
まだまだ私は未熟者です。正直今でも自分の弱さに挫けてしまいそうです。それでもこれからも頑張っていけそうです。私には私にしか出来ないことがある…だからそれを私は精一杯頑張りたいと思います。
「うん!」
どんなに辛いことでも、どんなに難しいことでも
あきと君となら頑張れる気がしたから…
~帰宅後~
「………♪」←暁斗の腕に抱きついている
「えーと…戻りました」
「「ナイスゥ!」」←女性陣
「「貴様ァァ!」」←男性陣
次回番外編登場キャラ
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いつもの3人
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大天使ヴィータちゃん
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戦闘狂シグナム
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スバルとかティアナとか(その他)
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(できる限り)突っ込めって言ってんだよ!