エロいことしようとしてたら最強の魔導師になっていた   作:100000

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いつも誤字報告ありがとうございます。
関西弁全然分かってないのでどなたか修正してくれるとありがたいです。


本当に魔法少女の物語なのか疑わしくなった日

「さぁ、たくさん食べてってな!」

 

目の前に並ぶ料理はとても同い年の女の子が作ったとは思えないほどに高い完成度を誇っている。家庭料理としては百戦錬磨の主婦のそれを思わせる程だ。

 

『なのはさんと言い、この方と言い、どうして私たちの周りにはこんなにハイスペックな人が多いんでしょうね』

 

そういえばなのはちゃんのお母さんもめっちゃ料理美味いよな。すずかちゃんも結構出来そうだし、メスガキもなんやかんややれそうだよな、英語もペラペラだし。

 

試しに唐揚げを一つ箸でつまんでみる。

 

ここらでは珍しい関西弁っぽい喋り方をする少女はニコニコしながらこっちを見ている。いやこれは感想待ちだな。

 

唐揚げを口の中に入れ、咀嚼してみる。しっかり中まで火が通ってるし、肉汁もあって衣はパリッと中は柔らかく、問答無用に旨味をこちらに叩きつけてくる。

 

「…うん、100点」

 

「よし!」

 

俺の言葉に花が咲いたように笑う少女。その眩しさはなのはちゃんと同じものを感じるが、こっちはさらに活発さを感じさせるものだ。

 

「いや〜わたし、人に料理を食べさせるの初めてでな?味覚合うか結構心配やったんや」

 

「そうかな?そんな心配する必要ないと思うけど。もっと自信持っていいよ、()()()ちゃん」

 

「ほんまか〜?えへへへ…あ、はやてで呼び捨てでええで!」

 

かわいい。

 

頬をポリポリと掻きながら照れ笑いする少女を目にしてホッコリとする。

 

さて、なぜ俺がこの少女『八神はやて』という原作キャラと食事を共にしているのか。それは少し前に遡る。

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…!はぁ……!」

 

走るというよりはとにかく足を前に出すことにひたすら全力を注ぐ。一度足を止めるとそのまま倒れて動けなくなってしまうだろう。

 

持久走は鼻から息を吸う方が酸素交換効率は良く、楽でいいらしく実践しているのだが、肺の方は今にも爆発しそうなくらい膨張と収縮を繰り返してる…つまりめっちゃキツイ。

 

「スコル…!今何キロ!?」

 

『まだ2キロです。ほらほら足の回転速度、1分前より落ちてますよ』

 

「はぁ…!はぁ…!」

 

スコルの煽りにも反応できない!キッつい!やっばい!吐きそう!

 

現在俺はスコル考案の魔法過負荷ランニングの真っ最中なのだが、今にもダウンしそうである。

 

クソデカ大樹をなのはちゃんがなぎ払った翌日、彼女は魔法の朝練を始めていた。なんでも戦い方のレパートリーを増やしたいとのこと。まさか俺の遠近両用な戦い方を参考にしてくれたのだろうか。

 

しかしなのはちゃんが頑張ってるのに俺だけ家に帰って認識を大人にすることで購入したエロ本を読み漁るのは申し訳ないということでスコルと相談し、放課後体力トレーニングとして走り込みをすることにした。

 

その結果がこれである。走れるところまで走ろうとして5キロ軽々走って鼻を高くしてたらスコルによって強制的に身体能力を制限された状態での走り込みを余儀なくされた。

 

クラスで一番走るのが速い子が一番遅くなるくらいには遅く、そして重くなった俺は最初の1キロもゼーハー言いながらようやく走れる程度のスペックになってしまった。

 

さすがにこれはやりすぎでは!?

 

『そんなことはありません。そもそも小学三年生で軽く5キロ走れる化け物はマスターしかいません。化け物に普通の基準は当てはまらないので問題ないです』

 

はい人権無視!名誉毀損!私はこのデバイスに名誉を傷つけられた上に不当な鍛錬を強いられました!

 

『ではそれで訴訟してみては?機械を訴える小学生とか世の笑いものになるのは目に見えてますがね』

 

むっきいいいいいいいいい!!!!

 

『速度落ちてますよ、キープキープ』

 

 

 

 

 

もう無理。走れない。おうち帰る。でも帰れない。助けてなのはちゃん。

 

『念話で呼んだら来てくれますよ?』

 

「こんな無様な姿見せられるわけないだろ」

 

どうにかこうにか5キロ走り終えた俺は公園のベンチで疲れた体を休めるために横になっていた。

 

『とはいえ速度はお粗末でしたがフォームはマラソン選手みたいになってましたよ』

 

「それは俺も感じた」

 

走ってるうちになんか体の動き変わってね?と思ったら走るフォームがいつの間にか完成されていたのは流石にびびった。もはや才能とかのレベルで片付けられない気がする。

 

「てかこれどうやって帰んの?」

 

公園で休んではいるが、ここは俺の家の近くにある公園ではなくさらに離れた場所に位置する公園のためこのボロボロな足で帰るのはかなりきつい。

 

『足が無理なら飛べばいいじゃないですか』

 

「……おま、天才かよ」

 

じゃあ早速飛行魔法を………

 

『あ、リンカーコアにも制限かけますので大分やりづらくなりますが頑張ってください』

 

………やっぱりなのはちゃん呼ぼうかな。

 

「ん?」

 

小学三年生にSOSを送るか迷っていたところ公園の入口を車椅子に乗った少女が横切っていく。膝の上には買い物を終えた帰りか大量の食べ物が入った袋が置かれている。それを落とさないようにしてるのかとても進みづらそうだ。

 

『そろそろ日が落ちる頃にあの子一人だけというのは危ないですね』

 

うーん、確かに。時刻は夕方だが、そろそろ日が落ちるといった頃合いだ。あの子に何かあってはこちらとしても夢見が悪いし

 

「しょうがない、家まで送ってやるか」

 

『お、さすがマスター。紳士ですね』

 

「ついでに惚れさせるか」

 

『お、さすがマスター。クソですね』

 

スコルの最上級の賞賛を聞き流し、車椅子少女の方まで歩いていく。ホントにノロノロ動いてんな。

 

「持つよ。そんなにノロノロ動いてたら日が暮れちゃうよ」

 

「え?」

 

流れるような動作で買い物袋を腕にかけ、車椅子を後ろから押してあげる。ふふ、イケメン。

 

俺が一連の動作をし終えると少女はその顔をポカンとさせてすぐに顔を赤くしてあたふたし始めた。

 

「いやいや、大丈夫や!これくらいわたしでもどうにかなるから!」

 

「いいからいいから。俺が勝手にやってるだけだから」

 

「いや、でも…」

 

「それにそろそろ暗くなるよ。こんなに可憐な子どもを一人置いていくわけにもいかないしね!」

 

「………ふふ、アンタも子どもやん」

 

「おっと、一本取られた」

 

軽く冗談を交えながら話してみると思いのほかウケが良く、家の方まで案内してもらうことになった。ふふ、イケメンパワー。

 

「ありがとな、わざわざ」

 

「放ってはおけなかったからね」

 

買い物袋は少女が持つにはとても重かった。買い溜めするからだろうがこれをこんな時間にこんな少女一人が、しかも車椅子で行っているのを見るにかなり複雑な家庭事情がありそうだ。

 

『どうでしょうか、マスターのようにそもそも親がいないとかじゃないですか?』

 

なおさら重いわ。てか俺の家にはスコルがいるから実質一人じゃないし。

 

『…ありがとうございます』

 

え、どゆこと?

 

「あ、ここや」

 

しばらく歩くとどこにでもありそうな家の前で止まる。表札には()()と書いてある。

 

……………八神?

 

「そういえば名前は?」

 

「わたし?わたしの名前は八神はやてや!」

 

……………………

 

マジ?

 

『どうかしましたか、マスター?』

 

スコル、この子多分原作キャラだ。

 

『マジ?』

 

マジ。

 

八神はやて…たしか高町なのは、フェイト・T・ハラオウンと同じ主人公格の人物……だったはず。同人誌では任務先でヤラれたり、催眠かけられたり、逆に同僚や家族?とヤッたりといろんなシチュエーションで登場している。

 

「キミは?」

 

「剣崎暁斗だよ」

 

「あきとちゅうんやな。ホンマにありがとな!」

 

「い、いや俺が勝手にやっただけだから気にしなくていいよ」

 

「でもキミも親が心配してるんやないの?」

 

「え、俺親いないから大丈…あ」

 

俺の言葉を聞くと途端に顔を暗くするはやてちゃん。ヤバい、話題を変えないと…!

 

「いや!えっ「なぁ!」…ん?」

 

「ご飯…食べてかん?」

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

とまあ長くなったがこういった経緯で八神家でご馳走になることになった。

 

「…♪」

 

そしてはやてちゃんは俺が無言でパクパクと食べてるのをニコニコとしながら見ている。そんな微笑ましい感じ出すなよ、母性感じるだろ。

 

『…え、小学生を母親にするんですか?』

 

……………………はぁ〜、分かってないなスコルは。

 

確かに母親というのは血縁関係によるものだと世間では認知されている。

 

『いやそれが真理で常識──

 

ただし!

 

それは()()()()()()()()()()()!!!!

 

『……………………………は?』

 

母性を感じるキャラであるならばすなわちそれがその人のママなんだ。だからたとえロリエルフでもガチぺドでも小学生でも母性を感じればそれはママなんだ!

 

『マスター』

 

なに?

 

『お前は何を言ってるんだ』

 

どうやらスコルには母親とママの違いが伝わらなかったらしい。悲しきかな、これが人と機械の差なのか。

 

『マスターのようになるなら私は機械のままでいいです』

 

「ごちそうさまでした」

 

「お粗末さまでした」

 

あっという間に平らげてしまった。なんでこんなに美味い料理を小学三年生が作れるんだろう。

 

「アキトはたくさん食べるんやね」

 

「まぁ育ち盛りだしね」

 

たしかに言われてみるとなのはちゃん家の時といい、ここでもたくさん食べたが、育ち盛りの三年生でもこんなに食べるのだろうか?

 

「洗い物は俺がやるよ、貰ってばっかりじゃ悪いし」

 

「へぇ、アキトは小学生なのにしっかりしとるなぁ」

 

「それはお互い様だな」

 

食器を一つに重ねて運んでいく。台所には大きめの椅子があり、はやてちゃんがそれに座って洗い物をしてるであろうことが見て取れた。台所は俺の場合は背伸びすれば問題ないが、車椅子に座った状態でやるには少し高すぎるようにも思える。

 

チラッと食器棚を見る。食器棚は皿やコップなど一般的なものは入っているが明らかに数が少ない。やっぱりこの家にははやてちゃん以外は住んでいないのだろうか。

 

「……アキトはさ」

 

「ん?」

 

「自分の親がいないのって寂しくないんか?」

 

…うーん、反応に困るな〜。確かに親はいないけどそもそもそれがいたのかも分からないんだよな〜。

 

『一応、海外に単身赴任という設定ですよ』

 

あ、そうだった。忘れてたわ。

 

「海外に行っててね。いずれは戻ってくると思うよ」

 

「あ、そうなんや。…家族、いるんだ」

 

あ、これ多分会話の選択肢ミスったわ。スコルどうしよう何か修正案ない?

 

洗い物をしながらのため背中越しでの会話になるが明らかに向こうが雰囲気が暗くなるのを感じる。

 

『足のことを聞いてみるのはどうですか?』

 

「はやてちゃんは何で車椅子なの?」

 

「……実はな、わたしの親はわたしが物心つく前に亡くなってな。この足はそれが原因で歩けなくなったらしくてな」

 

「……ごめん」

 

「うんうん!わたしの方こそ辛気臭い話してごめんな!」

 

おいいいいいいいい!スコル、おま、てめ、バカ!考えうる限りで最悪の選択肢踏んでるじゃねえか!

 

『ふむふむ、となると誰が彼女をいままで育ててたんでしょうね』

 

冷静に考察するなあああああ!!!

 

くそ!こうなったら俺のテクで話の内容を胸が熱くなるような感動モノへ変えてやる!魔法少女がこんな激重鬱展開で溜まるかァ!

 

「そうだ!じゃあはやてちゃんに足が治るおまじないをしてあげるよ」

 

「そんなんあるんか?」

 

『そんなのありましたっけ?』

 

馬鹿野郎、治癒魔法使うんだよ。おまじないでまさかの足回復、ハッピーエンド!これでいこう。

 

『それやるの私ですよね?』

 

うん。

 

『…………』

 

洗い物を中断し、手を拭いたらはやてちゃんの手を取り、念じるふりをする。

 

「け、結構本格的やな」

 

『治癒魔法開始』

 

体に魔力を巡らせてはやてちゃんが足が動かなくなった原因を探る。

 

ん?なんか魔力的なの感じない?しかもなんか黒めの

 

『は?は?は?は?は?は?は?』

 

怖い怖い怖い怖いどうした!?スコルお前なんかバグってるぞ!

 

『マスター、この子とんでもない爆弾抱えてますよ』

 

え、爆弾って何!?そんなに危ないものなのこの魔力!?

 

「な、なぁもうええやろ。さすがに恥ずかしくなってきたわ」

 

『一旦終わりましょう、このことについては後で話します』

 

「あ、ごめん」

 

「あ……うん」

 

手を離し、洗い物に戻る。スコルが言ってた爆弾、それが何を意味するかは分からないがこの子はとんでもないことに巻き込まれてる可能性が高いだろう。

 

「おまじない、効くとええな」

 

「俺のおまじない、結構効くんだよね」

 

後ろからはやてちゃんの声が聞こえる。その声はさっきよりは明るくなっていたので取り敢えず目標は達成したからよしとしよう。

 

てか魔法少女リリカルなのはの世界って虐待受けてたり、親無しで孤独に生活してたりで重くね?

 

『しかもそこに変態が混ざってるときましたか』

 

否定はしないが、スコル相手に肯定をするつもりは無いぞ?

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあね!」

 

元気よく手を振りながら走っていくのを見送る。外はもう暗いのに、泊まっていってくれてもいいのに、迷惑はかけられないからと少年は走っていった。

 

「不思議な子やな…」

 

公園の近くでいきなり声をかけられたと思ったら凄いカッコよくて最初はビックリしたが話してみると大人びているが、所々子どもっぽくて自分でもびっくりするぐらい気付いたら気を許していた。

 

お互い親がいないもの同士で親近感もあったが、どうやら向こうは親が一時的にいないだけだったようだ。それでもあの子は明るく、元気で、そしてこっちを励まそうとしてくれた。

 

「あかんな、こりゃ」

 

急に静かになった家を見て、いつもより広く感じるのは気のせいなのだろうか。きっと気のせいではない。

 

だって自分の目からは自然と涙が零れてしまってるのだから。

 

「寂しいなぁ…」

 

誰かと食事をするという温かみがここまでだとは思いもよらなかった。アキトが自分が作ったご飯を美味しそうに食べる姿を見るのはこの上なく幸せだった。アキトが自分の料理を褒めてくれるだけで舞い上がりそうなほど嬉しかった。

 

「おまじないか……」

 

アキトが握ってくれた手を見る。きっと本人は思いつきでやってくれたのだろうが、今の自分には本当に効いてくるのではというどこか確信めいた謎の自信があった。

 

「ホントに不思議な子やな〜」

 

一緒に過ごしたのはたった数時間もない僅かな間。でもそんな短い間でもここまで自分の心が揺さぶられるとは思わなかった。

 

唐突に家のインターホンが鳴る。こんな時間に誰だろうか。

 

一応警戒しながらも玄関を開けてみると

 

「…ごめん、外暗くてどっち帰ればよかったか分からなかったから今日だけ泊めてくんない?」

 

「………ええで!」

 

本当に……不思議な子や。




「え、あの子ロストロギア埋め込まれてんの!?」

『いえ、正確にはロストロギア、あるいはそれに類似した何かと接続した状態にあります。足が動かないのはその後遺症のせいでしょう』

「どうすんの?」

『取り敢えず調査をする必要がありますね…もう一回戻って泊めてもらえるか頼んでみましょう』

「そんな恥ずかしいことしたくないのだが!?」

『やれ』

「…ねぇ君本当に俺のデバイス?」

『当然です』

次回番外編登場キャラ

  • いつもの3人
  • 大天使ヴィータちゃん
  • 戦闘狂シグナム
  • スバルとかティアナとか(その他)
  • (できる限り)突っ込めって言ってんだよ!

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