怪獣ハーレムは作りたいけど美少女擬人化ハーレムが欲しいとは一言も言ってない   作:バリ茶

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擬人化要素は2話からです



怪獣好き(ケモナー)とクソザコ宇宙人

 

 

 どこにでもある一軒家の居間で、とある映像が流れていた。

 家族が共有する一般的な32インチ程度の液晶テレビからは、けたたましい鳴き声が響き渡っている。

 父、母、幼い妹に小学校低学年ほどの兄。

 家族団らんとはこのことを言うのか、律義に四人並んでソファに座りながら、食い入るように画面を見つめていた。

 

『キシャアァァアッ!!』

 

 大音量で放たれる()()の咆哮が鼓膜を揺らす。

 そのビルよりも大きな化け物が暴れる様を観て息を呑む。

 

『こちらが三日前に討伐された怪獣の映像になります。いやはや、まったく恐ろしい存在ですね』

 

 画面左上には『世界を脅かす災害! 巨大怪獣の秘密にせまる!?』と大仰で派手な配色のタイトル。

 特番、怪獣特集。

 先ほどのセリフは専門家やらコメンテーターやら、ともかく偉そうに踏ん反りが得ってるオッサンのもので。

 そんなものはどうでもいい俺たち家族は、彼の声を無視したまま怪獣の映像を眺めて──

 

 

 ──興奮していた。

 

 

 

 

 

 

 俺は怪獣が好きだ。

 

 好き、という言葉の意味は様々だが、俺の場合は性的趣向の中心を占める部分が怪獣で構成されている、という意味になる。

 端的に言えば俺は怪獣で性的に興奮する人間ということだ。

 世界には人間以外の動物に興奮したり無機物に対して発情するヒトもいるのだから、俺みたいなやつがいても不思議ではないだろう。

 いまどきケモナーとかいっぱいいるでしょうし。

 アレの怪獣バージョンってだけの話だし、珍しいもんでもないと思う。

 まぁ、さすがに少数派(マイノリティ)であるという自覚はあるけども。

 

 名乗ろう。

 俺の名は田中次郎(ジロウ)

 どこにでもいそうでなかなか居ない名前だと学友からよくからかわれる、ごく普通の高校一年生だ。

 性の目覚めは小学三年生の頃。

 両親と一緒に初めて怪獣の映像をテレビで見ていた時、同年代の女子のパンチラを目撃したり友達が内緒で学校に持ってきたグラビア写真集を眺めたりしても反応しなかった俺の分身がそのとき遂に覚醒した。

 ちなみに精通はその一週間後、隠れて使っていたパソコンから見つけた怪獣の画像を眺めていたときである。

 

 自分でも何で怪獣に興奮してしまうのかは分からないけど、しちゃうものはしょうがない。

 生まれ持ったサガってやつだ。

 俺の()()()は『ゴモラ』という怪獣で、彼女を見つめていたらいつの間にかパンツの中が凄いことになっていた。

 あの時の衝撃と快感は今でも鮮明に思い出せる。

 ちなみにゴモラという怪獣は、簡単に言うと一般人に『怪獣のイメージを思い浮かべてください』と言った際に必ず例に挙げられるような、恐竜をそのままデカくしたような感じの怪獣だ。

 怪獣と言ったらとりあえずこれだろ、ってイメージ。

 いわゆるスタンダードタイプで、怪獣ナーの諸兄たちも初体験はだいたいコイツだそうだ。

 お世話になっております。

 

 ……いやそもそも怪獣とはなんぞや、という話になると『数十年前から突如として地球上に現れるようになった未知の巨大生物』としか説明できない。

 どこから来たのか、元々この地球にいたのか、何もかも不明だ。

 最初のうちは空から降って来たり地中から出て来たり海から上陸したりとかしてたけど、最近は突然市街地に出現したりと何でもありになっている。

 

 例えば、こんな風に。

 

『キシャアァァアッ!!』

 

 俺が通っている高校の体育館がドでかい二足歩行の恐竜に踏み潰されてしまった。

 あぁ、球技大会明日から始まるはずだったのにな。

 容赦なく我が学び舎を蹂躙している巨大な怪物の名は『ゴモラ』。

 高層ビルよりも大きく二足歩行の恐竜のような姿のその怪獣は、授業がひと段落して生徒も教員も食事休憩を挟む憩いの昼休みに突然学校付近で出現した。

 

「落ち着いて誘導にしたがってください!」

「こちらです! 先頭の方から避難バスに乗車を!」

 

 そのおかげで大事なランチタイムはこの通りの大惨事に。

 中高一貫のわが校は逃げ惑う生徒たちで溢れかえっている。

 かく言う俺もその一人だ。

 流石に命の危険を伴う場所で怪獣に見とれたりはしない。

 校庭から道路に出て交差点付近のバスに駆け込む人波に揉まれる中、俺はなんとかそこから抜け出して校舎の方へ逆走している。

 

 その理由については数分前まで遡る。

 

 俺はクラスメイトの山岡と一緒に他のみんなと同じく避難誘導について行っていたのだが、その途中で現在中学二年生である妹の夜空(ヨゾラ)と同じクラスの少女を見かけた。

 彼女に声を掛けてみれば、なんと夜空は昼休みになってから腹を下してトイレに行っていたらしくそれ以降彼女の姿は見ていないと。

 

 もしかしたら避難が遅れている可能性がある。

 

 山岡にそう言われた俺は居てもたってもいられなくなり、いつのまにやら逆走しながら夜空を探し始めていた。

 いない、いない、いない。

 モブっぽい俺と違って妹の髪は亜麻色で、他の子たちにも埋もれず圧倒的に探しやすい特徴をしているにもかかわらず見当たらない。

 ついに人ごみから脱して高い塀の上から見渡しても──瞬間、脳裏に嫌な想像がよぎった。

 

 いやダメだろう。

 もし学校に夜空がとり残されていたとして、妹を見捨ててこのまま逃げるなんてお兄ちゃんにはできません。

 というわけでレスキュー隊員の目を掻い潜って校舎まで戻ることにしたのだが、後ろを見てみると屈強な体格の坊主頭な少年が付いてきていた。

 野球部の新入生期待の新人、高校に入ってからできた初めての友達こと山岡くん。

 

「何でついてきてんだ山岡」

「バカか!? 言っても止まらねえからだろうが!」

「逃げろって。そろそろ避難バスなくなっちゃうぞ」

「うるせーなアホ! オレも夜空ちゃん助けるの手伝うから、見つけたらさっさと逃げんぞ!」

 

 口を開けばバカだのアホだの暴言ばかりだけどやっぱり山岡は良いヤツだ。

 さすが野球部の新星。

 眩しいくらいの主人公オーラが溢れ出てるぜ。

 

「俺オマエのこと好きだわ。怪獣がいなくなったら何か奢るよ」

「んなこと言ってる場合か!」

 

 校舎内は既に人っ子一人存在せず、廊下中で警報が鳴り響いている。

 とりあえず中等部二年の教室がある棟まで移動すると、そこには階段付近で蹲っている少女がいた。

 あの亜麻色の髪をツーサイドアップにしている少女こそ我が妹こと田中夜空だ。

 急いで駆け寄って声を掛けた瞬間に彼女は顔を上げ、めちゃくちゃに泣き崩れた表情で俺の胸に飛び込んできた。

 

「お゛にぃ゛ぃぃ~ッ!」

「よしよし、兄ちゃんが来たからな」

「ぁ、あしくじいちゃって……いたくてぇ……っ」

「もう大丈夫だから、とりあえず一緒に逃げような」

「夜空ちゃんはオレが背負うから、早くいくぞ!」

 

 俺よりはるかに体躯が屈強な山岡に夜空を預け急いで廊下を駆け抜ける。

 もうさっきからずっと地響きで校舎がガタガタ悲鳴を挙げていて不安だ。

 校舎から出ると、目と鼻の先にいる怪獣ゴモラが体育館を破壊し終えたところで()()は次の標的をこの校舎に切り替えた。

 

『キシャアァァアッ!!』

 

 雄たけびをあげながらご自慢の太くて(エロ)い尻尾を振り回し、体育館の瓦礫をこっちに投擲してくるゴモラ。

 まるで隕石のように降り注いでくるそれらを一介の学生でしかない俺たちが華麗に避けられるハズもなく、夜空を背負った山岡は運よく当たらなかったものの俺はサッカーボールサイズの瓦礫が片足に直撃してしまった。

 

 転倒。

 瓦礫ミサイルを受けた左足は──膝から下が潰れている。

 

 もう歩くの無理だわコレ。

 極限状態でアドレナリンがドバドバなのかは知らんが痛みはないが、冷静に考えて自分はもう駄目だという事実を客観的に捉えることができてしまった。

 肩を貸してもらえれば逃げられるだろうけどさすがの山岡でも夜空と俺の両方を連れていくことは不可能だろう。

 

「山岡ァーっ!」

 

 逡巡する時間を与えることすら惜しい。

 このままじゃあの二人も危ないし一刻も早く逃げてもらわないと。

 

「夜空のこと頼んだぞーっ!」

 

 怪獣の咆哮と建物の崩れ去る音で山岡からの返事は聞こえない。

 しかし俺の表情から察してくれたのか彼は心底悔しそうに下唇を噛みしめながら夜空を背負ってそのまま校庭から走り去っていった。

 妹と友人が無事に逃げてくれたようで何よりだ。

 特に山もなければ谷もない平坦な人生だったけど、最後に妹を助けられたんなら多少は格好がつく死に方だよな。

 

 

 まぁ、悔いしかないけど愛しのゴモラに踏みつぶされて死ぬんなら本望だ。

 

「……うっわ。改めてみるとエロいなこの光景……」

 

 こうして生きている怪獣を目の前で見たのは初めてだが、それにしても下から彼女を見上げるローアングルは刺激的すぎた。

 なんかいまさら下半身が元気になっておられる。

 今まで見てきたのは生物図鑑みたいな全身図とか各部位のちょっとした拡大程度だったけど、いきなりこんなグラビアの写真撮影会でもやらなそうなスケベアングルでその姿を見せられたら息子がおはようするのも仕方がないと思う。

 やべぇ前言撤回。

 これ見ながら死ねるんなら悔いねぇわ。

 コスプレイベントとかでレイヤーに張り付くカメラマンの気持ちが初めて理解できた。

 こりゃ周囲の目とか気にしてる場合じゃないわな。

 

「どこから見ても生殖器が見えないの美しすぎるだろ……バカかよ……」

 

 マジで意味わからん。

 最初は単一個体の生命体かと思ってたけど一部の怪獣はタマゴも見つかってるしこいつらどうやってセックスしてんだよ意味わかんねぇ。

 生殖器や異性をアピールするための部位すらないその圧倒的に潔いフォルムはビューティフルの一言に尽きる。

 逆にキモイ。

 もうちょっと醜くてもいいんだよ?

 生態系の進化を冒涜しすぎているだろ……エロ獣がよ……。

 

「うわこっちきた。俺のこと好きすぎか?」

 

 瓦礫に潰されるなんて残念な最期じゃなくてよかった。

 精神的に幸福なまま死なせてもらえるなら後悔はない。

 

「うん」

 

 ゴモラに全身を包み込まれて消えて無くなるのなら全然いい。

 

「……うん」

 

 後悔はない。

 よかったんだこれで。

 

 これで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……やっぱ死にたくねぇェェッ!!?

 

「うぎゃああーっ!! 誰かたしゅげでェーッ!!」

 

 いやだー! こわいしにたくない! しにたくなーいッ!!

 いろいろ言ってたけどやっぱり命は惜しいんじゃあああッ!!

 

 

 ──と、そんな感じでぴーぴー情けなく生き汚く喚いたところ。

 

 

『■■ッ!!』

 

 

「うぇっ、な、なに……?」

 

 空からなんか降ってきた。

 まったく聞き取れない言語を発しながら。

 人型の怪獣なのかよくわからないけど、とにかく『全身真っ黒な巨人』が現れて俺の前に立ちふさがってくれた。

 デュアっ?とかシュワッ?とかおおよそ地球の生物じゃ絶対に言わなそうな鳴き声を挙げて巨人はゴモラと戦い始める。

 

「助けてくれたのか……?」

 

 ──なの、だが。

 

「よっわ……」

 

 颯爽と現れた黒色の巨人──めちゃめちゃ弱い。

 貧弱というか、戦い方がへなちょこだ。

 全体的には細マッチョな感じなんだけど腰が引けてるし、ゴモラに浴びせているキックとかチョップは全く効いてるようには見えない。

 さっきから怪獣に転がされまくってて完全にマウントを取られてる。

 見た目は強そうなんだけど中身が追い付いてない、といった印象を受けてしまった。

 てか土煙すごいな。

 

「けほっ! けほっ、うぅ……が、がんばれ巨人~……!」

 

 校庭の砂場に寝そべりながらやる気のないエールを送る。

 他にできることもないし。

 ていうかさっきから潰れた足の痛みが地味にジワジワきてる。

 

『っ! ~~ッ! ■■っ!!』

 

 そしたら巨人の視界に偶然俺が入っていたのか、エールを送る姿を見た彼(彼女?)は深く頷いたあと、少しだけ態勢を持ち直してゴモラを蹴っ飛ばした。

 なんだ、アレか。

 応援で強くなるヒーローショータイプのやつか。

 いやそもそもあの黒い巨人が味方って保証はないんだけどもさ。

 なんつーか……そう、見た目がヒロイックなんだよな。

 眼は白くて宇宙人っぽいけどなんとなくテレビに出てくるようなヒーローっぽい雰囲気を感じる。黒いけど。

 いまここで応援すべきは間違いなくあの巨人の方なんだろう。

 

「……? なんだアレ……」

 

 一転して攻勢に出たように見えた巨人だったが、胸部の中心にある丸っこい宝石みたいな物体が赤く点滅し始めた。

 途端に膝から崩れ落ちる巨人。

 もしかしなくてもエネルギー切れとか極度の疲弊とかそんな感じか。

 見るからにヤバそうだし胸部の宝石から警告音みたいなのも聞こえてくる。

 

「さすがにヤバくね……?」

 

 今回のゴモラは妙に強くて、いままで怪獣を殺処分できていた防衛軍の火器などもほとんど通用していないため、いまここであの巨人が負けたら少なくともこの地域一帯は終わってしまう。

 ヤベーヤベーと思いつつも立ちあがれない巨人。

 太くて長くて美しい尻尾を振り回す初めての女性(ゴモラ)

 攻撃が直撃した巨人は為す術もなく吹っ飛ばされてしまう。

 

「こ、こっ、こっちに落ちてくる──ッ!?」

 

 ちょうど俺が寝そべっている校庭の真上に落下してきて──

 

 

 ──プチッ。

 

 




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