怪獣ハーレムは作りたいけど美少女擬人化ハーレムが欲しいとは一言も言ってない   作:バリ茶

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とてもムラムラする

 めっちゃムラムラする。

 

「……はぁ」

 

 ベッドの上でゴロゴロしながらそんなことを思い耽る。

 いやいきなり何なんだよって話なのだが俺は現在とても困った状況に陥っているのだ。

 変な宇宙人がスマホに住み着き、さらに擬人化したゴモラがウチに来てからはや三日が経過しているのだが──

 

『見ろジロウ! この動画の主は何故自ら始めた”ほらーげぇむ”とやらで発狂したり文句を言ったりしているんだ? 気になる!』

「あー、うん。そういうネタなんだよ」

『ネタ? それはスシという食べ物の上に乗っている魚類の肉のことでは?』

「……」

 

 こんな感じで宇宙人はスマホの中でネットサーフィンしながらほぼ毎日やかましく騒ぎ立てている。

 うるさいことこの上ないのだがコイツがいなければ俺も死んでいたのであまり強くは出れないのがもどかしい。

 この宇宙人こと”(クロ)”だが──名前が地球語に翻訳できなかったのでとりあえずそう呼んでいる──こいつかなり不思議な生命体で、電子機器にも憑依できるためかスマホだけでなくパソコンや電子レンジにも入ることが出来る。

 そのせいで危うくパソコンの恥ずかしい検索履歴を見られそうになったりもした……とか、まぁ行動を共にするようになってからはいろいろあったのだけども。

 

(ムラムラする……!)

 

 いま最も困っている部分はコイツがほぼ四六時中俺と一緒に居るせいでシコれない──自慰行為(オナニー)をすることが出来てない、ということである。

 

(もう一週間以上抜いてない! スマホの中に他人がいるんだからオナニーなんて出来るワケねえし地獄! つらいッ!!)

 

 ハッキリ言ってクソつらい。

 別にめちゃめちゃ性欲が旺盛だとかそういうワケではないけど俺はこれでも一介の男子高校生だ。

 ぶっちゃけ性欲は持て余している。

 他の男子たちと違ってオカズの供給が少ないことも相まって日々シコるのに苦労してたのに、そこへ更に強制的にシコれない環境を作られて拷問されるとは思わなかった。

 

(……ふっふっふ)

 

 しかし俺もバカではない。

 このクロを一時的に家から追い出せばシコれるとそう考えた俺は既にそのための作戦を用意してあるのだ。

 これでコイツを数時間くらい外に放置してまったり癒しの時間を堪能することにするぜ……ッ!

 

「なぁクロ」

『むっ? どうしたジロウ』

「あそこにドローンがあるだろ。二年前に親父が誕生日プレゼントでくれたものなんだけど」

『うん』

 

 そう、俺の秘策とはクロをドローンで外に飛ばして窓を閉めることで強制的に自宅への出入りを制限するという方法なのである。

 これは勝った。俺って天才。

 

「俺たちって巨大化して戦うだろう? だからあらかじめこの街の地形を知っておけば、戦う際の被害を最小限に食い止められると思うんだ。この前なんて危うく小屋を踏みそうになってたしさ」

『すごい早口。……まぁ、確かに一理あるな』

 

 おっ、いけそう。

 

『まだ元の姿には戻れないしドローンで街の調査をするのは良いかもしれない』

「だろ? ドローンもちゃんと充電しておいたからさ、六時間くらいは余裕だぜ」

『ありがとう。では早速行ってくるよ』

 

 あっという間にドローンへ憑依したクロは窓から旅立っていった。

 そして彼が見えなくなるまで家から離れたのを確認して窓をピシャリと閉める。

 何かあったら窓を叩いてくれるだろうしコレでしばらくは大丈夫だろう。

 

「……よしっ! よしよし! やった!」

 

 思わずガッツポーズしてしまう程に嬉しかった。

 俺はついにオナニーが出来るんだ……!

 あの巨人になって自分と同サイズのゴモラを前にしたあの時からずっとムラムラして昂っていた性欲をいま解消できる!

 

「事前に買ってダウンロードしておいたエロ同人をいま開くとき……」

 

 クロがパソコンに憑依している間にスマホでダウンロード販売の同人誌を買って即座に履歴を消したのが数日前のこと。

 常に未開封の同人誌を傍らに置いている感覚はもどかしいの一言であった。

 ちなみに怪獣なら三次元でも二次元でもイケる。

 両方に違った良さがあるけど自慰に耽るならば抜きに特化した二次元の方に軍配が上がるだろうか。

 現物と違って穴が存在する場合もあるがそれはそれで良い。

 顔や体つきがちょっとだけ人型キャラクターに寄っているのも許容範囲だ。

 

「よし、では……」

 

 カーテンを閉めて部屋を真っ暗にする。

 俺の憩いの時間に陽の光は必要ないのだ。闇バンザイ。

 スマホをポチポチっと操作して机の上からティッシュ箱を取ってベッドに座る。

 いざ、いざ──!

 

 

「うわああん次郎くーん! またお皿割っちゃったぁぁっ!!」

 

 

 ノックも無しに部屋へ飛び込んできたのは、三日前から同居することになったゴモラの擬人化少女こと黒田ミカヅキちゃんだった。

 ……クソぁッ!!

 

 

 

 

 超生体変化光線は俺の記憶の()()から一般常識や人格を形成して怪獣に付与する光線だ。

 なので擬人化したとは言っても中身まで完全にヒトになったわけではなく、お約束のような感じで怪獣娘はいろいろと常識に疎いところがある。

 黒田ミカヅキの場合は電子機器の扱いだったり手元が不器用だったりなどだ。

 既に我が家のお皿は三枚粉々になっている。

 もしかしたら怪獣娘は力をセーブしているだけで実は怪力だとかそういう設定でもあるのかもしれない。

 これは検査入院してる妹が帰ってきたらこっぴどく叱られそうだ。主に俺が。

 

「じゃあ皿片づけてくるから」

「うぅ、ごめんなさい……」

 

 リビングで割れていた皿を新聞紙に包んで庭へ出る。

 物置小屋のそばにでも置いとけばいいか。

 

「……クロのことばっかり考えててミカヅキのこと完全に忘れてた」

 

 とてもつらい。

 寸止めオナニー地獄である。

 一難去ってまた一難とはこの事を言うのだろうか。

 基本的にはリビングや先日与えた空き部屋で過ごしてもらっているのだが、間違いや質問などで俺の部屋に突撃してくることが割と頻繁にある。

 あまり要領がよくないのか未だにノックは忘れてしまうし洗い物も力が入りすぎて割っちゃうし……大変だなぁ。

 

「どうしたもんか──な……?」

 

 ベランダからリビングに戻ったその瞬間、俺の目には信じられない光景が映った。

 

「はっ、はわわ……」

「……」

 

 ミカヅキが俺のスマホを見ている。 

 インターネットを開けば即座にゴモラのエロ同人が表示される状態になっていたスマホを起動している。

 若干うろたえながら顔を赤くして画面をスライドしているその様子から察するに──ゴモラのエロ同人を読んでいる。

 

 

 ──んああぁァ゛ァ゛ッ!!

 

 

「……ご、ごめんなさい! 人のスマホって勝手に見ちゃダメなんだね……!」

「いやもういいよ教えなかった俺が悪いから」

 

 こればかりは俺が悪い。

 常識を先に教えておかなかったこともそうだがスマホを無防備な状態でテーブルに置いておいたのがいけなかったのだ。

 これは飼っている猫が空いてる段ボール箱に突っ込むくらいしょうがない事なんだ、忘れよう。

 

 いや、でもそれにしたって恥ずかしい。

 同い年くらいの女子にスマホの中身を見られたとか穴があったら入って爆発して死にたいくらい恥ずかしすぎる。もうむり……。

 

「元気だして、ね? 男の子ならあぁいうの読むのだって普通だよっ」

 

 きみに見られたから凹んでるんですよ!

 気を遣われると余計みじめな気分になるわ!

 

「……そ、その、次郎くんってゴモラで……あの、えっちな気分になっちゃうの?」

「いわないで……」

 

 マイノリティなんですぅ! 少数派なんですぅ! 

 だから改めて言葉にして晒し上げるのは勘弁してください。

 

「そうじゃなくてね! ……えっと、もしかしてアタシでもそういう気分になったり……する、のかな……なんて」

「えっ?」

 

 ソファに腰かけて項垂れている俺の横に座ってなんだかモジモジしているミカヅキ。

 質問の意図がよく理解できないが──

 

「いやキミでは興奮しないかな」

「えぇっ!?」

 

 割ときっぱり言ったら驚かれた。

 いやしませんが……。

 

「ごめん、本当にめちゃめちゃキモいこと言うけど、俺って怪獣の不思議な姿に興奮してるからさ」

「キモいね……」

「ごめんね!? でも改めて言われると傷つくからやめて!?」

 

 何なんだよこの女ァ!

 俺は正直に自分の性癖を言っただけなのに!

 ……いや女子に自分の性癖を告白するのってよく考えなくてもおかしいな。

 逆に俺が冷静じゃなかったわ。ごめんなさい。

 

「じゃ、じゃあこの姿ならどうなの! 変身!」

「うぉっ」

 

 ソファから立ち上がったミカヅキが変なポーズを取ると、彼女の体が一瞬光った後に”怪獣娘”の姿に変化した。

 あのゴモラのコスプレみたいな姿だ。

 頭のてっぺんからはゴモラの鼻頭にあったツノが生えていて、独特な三日月型の頭部の一部も頭の左右から生えている。

 二の腕から先と太ももから下はゴモラ特有の無骨で肉厚な硬い皮膚に覆われておりお尻からは尻尾が。

 そして何より──というか。

 

「なんでスク水……?」

「知らないよ!」

 

 人間の状態を保っている上半身から股関節にかけてまでが黒いスク水でおおわれている。

 ゴモラにスク水要素あったっけ。

 ていうかアイツ水中での活動できない筈なんだけど。

 

「そういう面倒くさいのはいいから! ほら、ちゃんとゴモラになってる部分を見てみてよ」

「いやセクハラになりますし」

「興奮しないんでしょ!?」

「それとこれとは話が別だろ!?」

 

 俺が興奮しないからと言って女子に触っていい理由にはならない。

 ……とかなんとか言い訳をしていたのだがほんの数分で口論に負け、俺は何故か怪獣のゴモラに対抗心を燃やしているミカヅキの身体を見ることになった。

 あと多少の触診もOKらしい。

 

「ちゃんと見たり触ったりして、本当に興奮しないのかを証明してください」

「どうして」

「あ、アタシだってゴモラだし。……なんかくやしいっていうか」

 

 なんだこの展開エロ同人か?

 友達に自慢したら殺されそうだぜ。

 というかミカヅキはアレか。

 同じゴモラなのに自分は例外的に性の対象として見られないことが癪なのか。

 確かに『キミは恋愛対象としては見れないかな……』って女子に言われたら傷つく男子もいるかもしれないけど……まぁ、どうやら俺の不用意な発言で少なからずミカヅキを怒らせてしまったらしい。

 ここは本心を隠して気を遣ってあげるのが一番だろう。 

 

「わぁ~エロ~い興奮するぅ~」

「流石にそれは嘘だって分かるよ?」

「うぐっ。……い、いや、だって女子の体を触るなんて……」

「いーいーの! アタシが許可出してるんだから合法! いまなら合法でゴモラ触り放題だよ! ほらどうぞ!」

「──っ!!」

 

 合法でゴモラを触り放題──という単語に心のイチモツが勝手に反応した。

 いいのか、俺はゴモラを触って……?

 

「い、いいよ、はい……」

 

 俺の前に立って腕を広げるミカヅキ。

 彼女の許しを得て改めて怪獣に変化している体の部位を注目してみると、気づいたことがあった。

 

「……コスプレ、じゃない。完全に肉体と同化している……?」

 

 分厚く硬い皮膚や鋭い爪先を持つゴモラの腕は決してコスプレ用の手袋などではなく、指の先まで神経が通っている”腕”だ。

 指先を軽く触ると──

 

「んっ……」

 

 ミカヅキが反応する。

 ツルツルな人間部分とゴツゴツな怪獣部分の境目をじっくりと観察してみても、やはり彼女の体は一部分が途中から完全にゴモラのソレへと変貌しているのが分かる。

 

「なんてこった! 大発見だ……ッ!」

 

 コスプレじゃない。

 これはれっきとした肉体変化だ。

 このゴツゴツな手足やツノは正しくゴモラが持つ身体の一部だ。

 

 なら、尻尾は。

 

「尻尾、触ってもいいか?」

「う、うん」

 

 あの太く長く美しい尻尾──俺がゴモラの体の部位で一番性的な魅力を感じるエロの頂点を触ってみたい。

 はたして尻尾までもが本当にあのゴモラのモノなのか。

 仮にそうだったとしたら──俺はどうなってしまうんだ?

 

「……うそ、だろ」

 

 触れたその瞬間、体が固まった。

 視線が尻尾に釘付けにされる。

 俺は彼女のコスプレにしか見えなかったその尻尾を前にして、自らの性を覚醒させたあの偉大なる尻尾を感じ取れてしまったのだ。

 

 

 ……これはゴモラの尻尾だ。

 

 

「じ、次郎くん」

「……?」

「その……ちょっと、くすぐったいかなって。……えへへ……」

 

 

 

「──うぐっ!?」

 

 なんだ! 何が起きた!?

 無機質で無骨故に美しいと感じていた怪獣の尻尾に触れて、そこへ人間の少女の敏感な反応と儚い笑みをプラスされて俺は何を感じたのだ!?

 この破壊力の正体は一体何なんだァッ!?

 

 ま、まずい、俺の息子が勝手に反応してしまう── 

 

 

 

 

『ジロウ~ッ!! 窓を開けてくれ! 黒い鳥怪獣たちに襲われているんだっ! このままだと──ちょ、やめっ、精密機械なんだぞッ!!』

 

 

 

「……ふぇっ?」

「……はぁ」

 

 

 ベランダの窓の外には大量のカラスに襲われているドローンが見えた。

 その瞬間バグっていた俺とゴモラ……ミカヅキの思考がまともに戻ったのか、二人して急速に冷静さと羞恥心が吹きあがってくる。

 

「……わっ、あ、ごごごめんなさいっ!!」

 

 湯気が出るかのように真っ赤になったミカヅキはリビングから飛び出して二階の自室へと戻っていく。

 それと同時に俺の愚息はギリギリ踏みとどまり、勃起を回避した俺は無表情でカラスたちからドローンを助け出し、半泣きになっているクロをスマホに戻してソファに倒れ込んだ。

 

「……クロ、ありがとな」

『えっ、礼を言いたいのは私の方なのだが……』

 

 タイミングよく帰ってきてくれた宇宙人のおかげで命拾いした俺は、罪悪感から「もうしばらくはシコらなくていいかな……」と小声でぼそりと呟きつつソファの上で瞼を閉じるのであった。

 

 

 





R15タグいる……?いらないか…いいか…(慢心)

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