デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章   作:桁石スミオ

12 / 34
 「マジカルドロップⅢ」「マジカルドロップポケット」「マジカルドロップV」よりデスとハイエロファント主役。本編『しりぞけ、もの悲しき影』以降、及び最終章第二話の弐『怖ろしき終わり、汝らを引き攫う【後編】』以後の、全編の最終章第三話の「前編」として執筆。2020年11月脱稿。ゲーム中に登場しないマジックアイテムが登場し、主軸となっております。
 タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV146「われらは多くの患難を経て Wir müssen durch viel trübsal」より。
 登場人物:「マジカルドロップ」シリーズより、デスとハイエロファント、ヤング(リトル)・フォーチュンとタワー、ワールド、マジシャンとハイプリエステス、エンプレス、ジャスティス、ストレングス親子、ガオガオ、エンペラー。「ゴーストロップ」「マジカルドロップV」より、ブルース、マッコイ、マッシュマン。
 注:台本形式読み物です。

 同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
 pixiv:https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663


【挿絵表示】



最終章第三話の壱:我らは、多くの患難を経て【前編】-1

デスとハイエロファントの物語:REBOOT

【 最終章第三話の壱:我らは、多くの患難を経て(前編) 】

 

 

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・謁見の大広間

 

 玉座から起立したまま、フォーチュンたちを視界に映しているマッシュマン。

 蔑み、見下した表情。両口角をこれ以上ないほど歪ませ、上げている。

 眼光鋭く睨み返しているマジシャン。霊力光を放つ右掌を掲げている。

 フォーチュンの両肩に乗せた両掌に、更に力を込めるハイプリエステス。

 やがて。

 それまで顔を伏せ、視線を投げていたフォーチュンが、一層頭を垂れる。

 

フォーチュン「(低い笑い声)ふっふっふっ・・・(少し顔を上げ)はっはっは・・・(がばっ、といきなり顔を上げて、一際高い笑い声)はーっはっはっは!!!」

 

 謁見室にいる全員の目線が、一気にフォーチュンに集まる。

 誰もが意表を突かれたように、驚きの表情。

 今までとは打って変わった、愉快そうなフォーチュンの笑顔。

 

フォーチュン「そうか! そうであったか! すべての点が! 線が! 全部繫がりおった! 全部納得じゃ! その話が真実なら! マッシュマン! そなたに感謝せねばのう!!!」

 

 直後。

 マジシャンとハイプリエステス、愕然とした表情へと変化させる。

 その目の前、すっ、と再び顔を伏せて俯くフォーチュン。

 口元には、意味あり気な笑みを湛えたまま。

 

ハイプリエステス「(声を震わせ)嘘・・・ざましょ?・・・」

マジシャン「(唖然と)フォーチュン・・・お前・・・何を言って・・・」

 

 ハイプリエステス、衝撃の余り彼女から手を離し、蒼褪めて凝視する。

 マジシャン、思わず右掌を下げ、霊力の光を消す。

 その眼前で、ニヤアリ、と歪んだ顔を更に歪ませ、目尻を下げるマッシュマン。

 

マッシュマン「(勝ち誇った嗤い)ムシュシュシュ・・・その通り、ゾ。フォーチュン、貴様は我輩と共にこのマジカルランドを滅ぼし、ゴーストの王国を築き、支配するのだ。さあ・・・我が娘フォーチュン、我が元に来い」

 

 ぴく、とフォーチュンのこめかみが反応する。

 マッシュマン、右腕を伸ばし、誘うように五指を内側に返す。

 沈黙。

 沈黙。

 長い、間。

 尚も、間。

 

フォーチュン「(伏せた顔から見える口角を上げ)・・・お断りじゃ」

マッシュマン「(ピク、と反応し)・・・何ィ?」

フォーチュン「(バッ!と顔を上げ)聞こえんかったのか? (明確な声で)お・こ・と・わ・り・じゃ!」

 

 何とも爽快そうな、曇りの欠片もない笑顔のフォーチュン。

 急な展開に、声を失ったままのマジシャンとハイプリエステス。

 意味不明といった様子のマッシュマン。

 少しの、間を置き。

 フォーチュン、マジシャンに視線を結んで、こくん、と首を縦に振る。

 何かを理解したような、安堵の顔になるマジシャン。

 続いてフォーチュン、ハイプリエステスに視線を結んで、こくん、と首を縦に振る。

 何かが解ったような、柔らかく温かい微笑みを、ゆっくりと浮かべるハイプリエステス。

 そしてフォーチュン、今度は抉るような冷たい目線を、マッシュマンに向ける。

 

マッシュマン「(怪訝そうに)聞き違いか? 断られたように聞こえたが?」

フォーチュン「何じゃ、聞こえておるではないか。断ったんじゃ」

マッシュマン「(意外そうに)貴様は我輩と同種の存在、ゾ? かつてマジカルランドの住人の魔力を集め、支配しようとしていたではないか? 今更何を・・・」

フォーチュン「(言葉を割り込ませ)じゃが断るっ!!!」

マッシュマン「(怒気を孕んで)何故断る!? 今しがた、我輩に感謝する、と言ってたではないか?」

フォーチュン「ああ、それは真じゃ。感謝しておるぞよ。仕方ない、一から説明してやるわ」

 

 フォーチュン、深紅の細長いカーペットの上に歩を進める。

 噛み締めるように数歩歩き、謁見室全体のほぼ中央付近で立ち止まる。

 一度深呼吸をして、ふうう、と息を吐く。

 それから、マッシュマンに目線を放り投げる。

 

フォーチュン「確かにわらわは、マジカルドロップを自分で使う為に、この世界の魔力を独占しようと企んだ。じゃがエロファントに敗れ、赤子になり、それまでの記憶も封じられた・・・それから、今の父上、母上に育ててもろうた。(微笑んで)本当に幸せな日々じゃった・・・わらわが『運命の輪』と承知しておきながら、かつて魔術均衡を歪ませた元凶と知っておきながら、わらわに愛情を注いでくれたのじゃ・・・」

 

 目の端を、異様な物を見るように絞るマッシュマン。

 

フォーチュン「じゃがその日、マッシュマン、そなたがわらわの記憶を戻し、封印された魔力を開放した日、最大の親不孝をしでかしてしもうた・・・(ギリッ、と奥歯を噛み)今も悔やんでおる。しかし、安心せい、マッシュマン。(マッシュマンに目線を投げ)それをそなたの責任にするつもりはない。わらわの未熟さ、至らなさが原因じゃ。父上、母上の気持ちを踏み躙った贖罪は、これから生涯掛けても償うつもりでおる」

 

 他の誰も言葉を発さない室内。

 フォーチュンの一言一句だけが、清廉な響きを持って展開されている。

 

フォーチュン「記憶が戻って、わらわはここ、自分の城に戻った。そこで・・・タワーに再会出来た。(頬を染め)タワーはわらわの帰りをずっと待っててくれおった。本当に嬉しゅうて嬉しゅうて・・・そして決めたんじゃ。タワーとこの身が朽ち果てるまで添い遂げよう、とな・・・」

マッシュマン「(焦れたように)貴様の惚気話はいい! 我輩に感謝とは何故、ゾ!?」

フォーチュン「(呆れたように、ふん、と鼻で息をして)ここまで話してまーだ解らぬか? 察しが悪いのう」

 

 フォーチュン、両腕を体側で伸ばして突っ張らせ、ぎゅっ、と拳を握る。

 きり、と澱みのない両眼を、マッシュマンに向ける。

 

フォーチュン「父上と母上の恩恵を自覚出来たのも、タワーへの永遠の想いを抱けたのも、マッシュマン、そなたが記憶を呼び戻してくれたのがきっかけじゃろうが? これを感謝せんと何に感謝するのじゃ?」

 

 途端。

 明らかに気分を害した様子の顔をフォーチュンに対させるマッシュマン。

 それを目に映し、瞼を半分閉じて眉を寄せるフォーチュン。

 

フォーチュン「(嘲るように)どうしたんじゃ? 何かわらわの言葉に不満がありそうじゃな」

マッシュマン「不満だらけ、ゾ。感謝という割には、我輩と手を組む気はないのだな?」

フォーチュン「やーれやれ、これもはっきり言っとくしかないか・・・時間の無駄、なのじゃがのう」

マッシュマン「(苛つき)話せ! 何が不服、ゾ!?」

 

 次の、瞬間。

 フォーチュンの表情が、深い怒りの雰囲気を帯びる。

 今までになく鋭く、相手を貫通させるような眼光。

 

フォーチュン「(心底の怒気を含ませ)・・・誰が、誰の娘、じゃと?」

マッシュマン「(眉間に皺を寄せ)ああ?」

フォーチュン「(劈くような、大声)わらわはフォーチュン! マジシャンとプリエステスの娘、フォーチュンじゃ! わらわを娘と呼んで良いのは! 今の父上と母上だけじゃ! そなたのような下衆が! わらわを娘と呼ぶでないわ! 汚らわしい!」

 

 マッシュマンの顔が、一変。

 ピキ、と青筋を立て、見る見る憤怒の形相。

 

マッシュマン「(地の底から湧くような声で)下衆・・・だ・・・と?」

フォーチュン「(この上ない憤りで)下衆そのものであろうが! マジカルドロップを手にしたいのであれば、正々堂々正面から攻めて来れば良いものを・・・そちらの方が、まだ可愛げがあるわ。それをよくもまあ、反吐が出るような姑息な手段を次々と仕掛けてきおってからに・・・エンペラーを焚き付け、ジャスティスをかどわかし、挙句にワールドを襲いおった! 下衆と呼ばれるのが嫌なら! 腐れ外道の方がよいか!? 好きな方で呼んでやるぞよ!」

 

 ピキ、ピキ、と連続して、マッシュマンの顔に青筋が表面化する。

 全身からのどす黒いオーラが、更に濁り、ブワアァ、と天井付近まで立ち昇る。

 フォーチュンとマッシュマン以外の全員が、息を飲んで固まる。

 

マッシュマン「(怒り心頭で)キッ・・・サッ・・・マァッ・・・」

フォーチュン「それにのう、マッシュマン、今ここにおらんが、そなた・・・(眉を寄せ)この世界の死神と法王・・・そなたを追い出して叩き斬った張本人、デスとエロファントが怖いのじゃろう?」

マッシュマン「(絶句して)なッ!・・・」

フォーチュン「知っとるぞよ。そなたは先日、憑依した挙句の果てにエロファントに追い立てられ、デスに斬られたそうではないか? “紫の影”とやらで、それはもう見事に真っ二つ、と聞いておる。そなた本体かどうかは知らぬし、身体でも分割して送り込んだか判らぬが、無関係ではあるまい? じゃからふたりが城を出て行った頃合いを見計らって、ご丁寧にわらわたちの前に登場しおったのじゃろう? まーた斬られては堪らんからのう!」

 

 黙り込むマッシュマン。

 顔面にだけ憤怒を貼り付かせ、口を真横に固く結んで、睨む。

 全身を、少しずつ震わせ始める。

 暫く、そのまま。

 更に、そのまま。

 フォーチュンから後方にいる各位が、ハラハラしているような不安気な顔。

 

フォーチュン「(腕組みをして、ふっ、と嗤い)無言、ということは、図星、じゃな・・・しっかしまあ、よくそんな体たらくで大王とやらを名乗れたのう。世界の破滅? マジカルランドの支配? (ギン!と睨んで)はん! 舐められたものよのう! そなた如き腰抜けの小物が! わらわを使役出来るとでも思うたか! 寝言は寝て言うものじゃ! 笑わせるでないわ!」

 

 プチプチプチ・・・と、凄まじい数の青筋が、マッシュマンの頭部を埋め尽くす。

 白目を剥き、今度は明確な震えを全身で発する。

 マッシュマンの肩、両腕、胴体が、それに連動した周囲の紫黒色のオーラすらも震動している。

 フォーチュン、腕組みをしたまま胸を張り、ふっ、と右口角を上げる。

 

フォーチュン「(これ以上ないほど見下した声)おやぁ? 何じゃそのツマラナそうな面は? 仮にもこの『運命の輪』たるフォーチュンが感謝を述べたのじゃぞ。もっと喜ぶがよかろう? 第一そなた、何じゃったかのう? 自称ナントカ大王様とか抜かしておったな。忘れてしもうたが。(鼻で嗤い)それにしても、王様? 詐称にしてもつまらんな。今のそなたでは屑呼ばわりされても文句は言えんぞ? 王たる者、そんな辛気臭い面ではいかんのう。笑えぃ。支配者は常に勝者の笑みを浮かべるものじゃぞ。それとも何か? もう笑い方まで忘れてしもうたか? 仕方ない、直々に教えてやるわ」

 

 腕組みを解き、右足、左足を順に一歩前に踏み出すフォーチュン。

 両脚を肩幅に広げ、一度思い切り顔を伏せる。

 そのまま、停止。

 少しの、間。

 フォーチュン、非常に緩慢な動作で顔を上げ、やや胸を反らし気味にする。

 そして、文字通り見下した、虫けらを見るような目をマッシュマンに向ける。

 

フォーチュン「(ニィヤァッ、と嘲りの笑み)・・・こうするのじゃ」

 

 突然。

 ブッッチ―――――――ンンンンッッッッ!!!と、何かが切れる音。

 マッシュマン、爆発した如く顔面を崩壊させる。

 両目と口、眉、顔の皺が凄まじい角度で吊り上がっている。

 絵にも描けない、怒髪冠を衝く形相。

 グワバッ!と両腕を真上に上げ、渾身の力で振り下ろすマッシュマン。

 

マッシュマン「(超激怒)ウッガアアアアアアアアッッッッ!!!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。