デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章   作:桁石スミオ

15 / 34
 「マジカルドロップⅢ」「マジカルドロップポケット」「マジカルドロップV」よりデスとハイエロファント主役。本編『しりぞけ、もの悲しき影』以降、及び最終章第三話の壱『我らは、多くの患難を経て【前編】』以後の、全編の最終章第三話の「後編」として執筆。2020年12月脱稿。ゲーム中に登場しないマジックアイテムが登場し、一部の主軸となっております。
 タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV146「われらは多くの患難を経て Wir müssen durch viel trübsal」より。
 登場人物:「マジカルドロップ」シリーズより、デスとハイエロファント、ヤング(リトル)・フォーチュンとタワー、ワールド、マジシャンとハイプリエステス、エンプレス、ジャスティス、ストレングス親子、ガオガオ、エンペラー。「ゴーストロップ」「マジカルドロップV」より、ブルース、マッコイ、マッシュマン。
 注:台本形式読み物です。

 同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
 pixiv:https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663


【挿絵表示】



最終章第三話の弐:我らは、多くの患難を経て【後編】-1

デスとハイエロファントの物語:REBOOT

【 最終章第三話の弐:我らは、多くの患難を経て(後編) 】

 

 

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・階段から玄関ホール

 

 玄関ホールへと下っていく階段の最上段。

 廊下からその縁に、ブルース、マッコイ、エンペラーの3名が走り込んで来る。

 途中の踊り場を経て、数十段の階段が緩やかな傾斜で伸びている。

 その先、眼下の玄関ホール、既に数多くのゴーストがひしめいている。

 正面玄関扉は閉鎖されているが、何処かしらか侵入した模様。

 

マッコイ「(昂ったように)おほぉ! 来てやがる来てやがるッ!」

エンペラー「(やや引き攣った声で)ちょっと! 多過ぎんじゃない?」

ブルース「私とマッコイが玄関ホールで掃討します! すべて掃討することは難しいので、エンペラーさんは階段踊り場を中心に、私たちの戦闘空域からそちらに向かうゴーストを叩いて下さい! 仮に撃ち漏らしても構いません! 後方の遊撃隊と最終防衛ラインの方々もいます! 無理はしないように!」

エンペラー「(ピシッ!と右手で敬礼)判ったわ! エンペラーにお任せッ!」

 

 ダッ、と3人が階段を駆け下りだす。

 途中、広い踊り場で急停止するエンペラー。

 ブルースとマッコイ、そのままの勢いで階段を走駆する。

 

マッコイ「ブルース! 右から左! オレンジ頼むぜ!」

ブルース「了解! ブルーは頼む!」

 

 ホールの床まで数段、ふたりが段を蹴る。

 宙に身体を躍らせながら、マッコイは薄青色、ブルースは橙色の霊力ボールを発生させる。

 見える範囲に蠢くゴースト、3色合わせて約50体ほど。

 ダン!と、双方が同時に床に着地。

 間髪入れず、ブンッ!と、マッコイが全身をバネにして、左方面に光球を放つ。

 即座に、ブァン!とブルースが鋭い射出で、右方面に光球を投げる。

 霊力ボールの延長線上の同じ色のゴースト、貫かれ、短い悲鳴と共に消失。

 それを見届ける前に、ふたりが動く。

 ブルースが右方、マッコイが左方に駆け出す。

 壁に当たり、跳ね返ってくる霊力ボールを、パシィッ!と鮮やかに捕獲する。

 すぐに、クルッ、と踵を返すふたり。再び床を蹴る。

 ブルースはホールの左側へ、マッコイはホールの右側へ向かう。

 そのまま互いに駆け寄り、擦れ違い様に振り被り、光球を構える。

 今度は床に、それを全力で叩き付ける。

 バ―――ンッッ!と、猛烈な威力で、跳弾と化す霊力ボール。

 当たった同色のゴースト、二度目の攻撃となるグレーゴーストが消滅。

 更に、バウン! バン! ババン!と、生き物のように飛び跳ねる霊力の球。

 床から壁、窓枠、柱と縦横無尽に叩き回り、ゴーストを掻き消していく。

 まるで玉突きを起こしたように、纏めて餌食となる。

 ブルース、マッコイ、自分の投げた光球をしっかりと目で追い、左右に展開する。

 そして霊力ボールを、パシッ!と再度掴まえ、視線を忙しく動かす。

 ブルースは橙色の、マッコイは薄青色のゴーストに照準を絞り、即座に投球。

 射抜かれたゴーストの残像を宙に残し、尚も跳ねて暴れる霊力ボール。

 逃すことなくグレーゴーストにも複数の打撃を与え、散らせていく。

 やがて、ふたつの霊力の球は、自然に透明になり、消える。

 僅か10秒足らずで、空域のゴーストは天井近くの数体のみとなる。

 高い天井近くの天窓のガラスを、じわぁ・・・と通過して侵入してくる後続のゴースト。

 それらが、玄関ホールへと降下し始める。

 鋭い眼光で睨み返す、ブルースとマッコイ。

 

マッコイ「(左掌を右拳でパン!と殴り)まだまだ! こんなモンじゃねぇだろッ!」

ブルース「(冷静な声で)ゴーストハンター相手に、無事還れるとは思ってないだろうな?」

 

 前面と左右面の壁からも、染み出すように現れるゴーストの群れ。

 完全に通過した2体のブルーゴーストが、急に加速して、急上昇してから階段へと飛来する。

 エンペラー、既に準備して手に持っていた『小アルカナのカード』を1枚翳す。

 

エンペラー「(少し上擦った声で)『ソード』の2!」

 

 右腕を左側から振り抜き、カードを投げる。

 ボッ!と小さな炎が噴き上がり、2本の小振りな剣が具現化され、飛んでいく。

 剣は、薄青色の霊力を光を纏っている。

 空中を向かってきたブルーゴースト、1体に剣が刺さり、ヒァァ・・・と声を上げて蒸発する。

 しかしもう1体は、スイッ、と避けてしまう。

 空振りした剣、壁に当たって、カラン、と床に落ち、煙のように失せる。

 そのまま、逃げるように横に寄り、ズウ・・・と壁に体を押し当てて、姿を消すブルーゴースト。

 

エンペラー「(悔し気に)あっちゃー、1本外したわん・・・投げて当てるのは厳しい、ってカンジかしら? フォーチュンみたいに操れればいいんだケド・・・」

 

 素早く、カードケースから幾枚かの『小アルカナ』を取り出すエンペラー。

 

エンペラー《あまり使うとカードがなくなっちゃうから・・・3枚くらいで試しましょーかね》

 

 玄関天井の方面から、空を切って飛んでくる5体ほどのゴースト。オレンジ4体とグレー1体。

 エンペラーの眼前、数メートルの位置まで接近。

 顔を上げて胸を張り、右手に持った3枚のカードを左側方に構える。

 

エンペラー「『ワンド』の2から4! ストレート!」

 

 勢い良く、水平に腕を薙ぐエンペラー。

 振り抜いた右手と同じ高さ、3枚のカードは扇状に等間隔で浮かぶ。

 ブワ、ブワ、ブワッ、と連鎖して風が湧き上がり、小振りの棍棒が9本出現。

 すべてが橙色の霊力光を放ち、綺麗な偃月の陣を空間に成す。

 途端。

 ブン!と左側に浮かぶ棍棒が、宙を回転しながら飛ぶ。

 先頭で向かってきたオレンジゴーストに命中。1体が弾ける。

 ブン! ブン!と続け様に発射される、残りの棍棒。

 一直線に残る4体に向かう。

 攻撃を喰らったオレンジゴーストは消滅。

 一度目の被弾のグレーゴーストが左に1体、回り込むように飛行する。

 エンペラー、右手を掲げ、クイッ、と左に指を動かす。

 最後に飛んでいった棍棒、軌道が僅かに左方向に変わる。

 やや弓形に飛んでいくそれが、グレーゴーストの側面を、シャッ、と掠る。

 グリン、と回転しながら、霊力光に塗されていくグレーゴースト。

 やがて、ヒャオウ・・・と奇妙な声を上げて、散華する。

 エンペラーに向かってきた5体のゴースト、消失。

 

エンペラー「(嬉しそうに)ウホッ! 少し動かせたわッ! アタシってばやれば出来るのねッ!」

ブルース「(玄関ホールから大声で)やりますねエンペラーさん! お見事です!」

マッコイ「(玄関ホールから大声で)イケるじゃん! スッゲーぜ!」

エンペラー「(高笑い)オーッホッホッホ! ざっとこんなモンよ! でも・・・」

 

 左右天井方面の空域から、一直線にエンペラー目掛けて飛来する7体のゴースト。

 

エンペラー(ギラ、とゴーストを睨みながら)ここで油断してたのが今までのアタシ・・・今日のアタシは一味違うわよッ! (カードを1枚取り出し)『ソード』のペイジ!」

 

 『小アルカナ』の1枚を、目の前に放るエンペラー。

 ボウン!とやや大きめの炎が湧き上がり、中から抜き身の件が出現。

 エンペラー、それを、パシィッ!と受け取ると、八双の構えを取る。

 手に持った剣が、ポウ・・・と薄青色に発光する。

 ギュン!と急激に接近するゴーストたち。

 

エンペラー「(気合一閃)どおりゃああああッッッ!!!」

 

 間近に迫ったゴーストに向けて、剣を叩き付けるエンペラー。

 最初の1体のブルーゴースト、真っ二つになって消え失せる。

 エンペラーの剣先が凄まじい速度で、8の字を描くように宙を撫で斬りにする。

 剣が、2色の霊力の光を点滅させている。

 ザシュッ! ズバッ! ドバッ!と、次々と斬撃の餌食となるゴーストたち。

 グレーゴーストも二度の攻撃を浴び、悲鳴を上げる暇さえなく蒸発。

 僅か数拍で、7体のゴーストは滅せられる。

 剣を下げ、フンヌ!と大きな鼻息をつくエンペラー。勝ち誇った笑み。

 玄関ホールでゴーストを掃討しながら、一部始終を目の端に映すブルースとマッコイ。

 

マッコイ「おおっ! 剣技もイケんだな!」

エンペラー「まあねッ! 昔取った杵柄、ってヤツよん!」

ブルース「いい調子です! 引き続き後衛はお願いします!」

 

 両手で握った剣が、役目を終えて霧のように消える。

 エンペラー、右手を拳にして眼前に掲げ、じっ、と見詰める。

 

エンペラー《ここでポカやったんじゃ、死神に顔向け出来ないものね・・・》

 

 右拳を、グッ、と痛いほど握り締めるエンペラー。

 

 

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・フォーチュンの自室

 

 開け放たれた扉から、自室内に駆け込んでくるフォーチュン。

 続いて走り込んでくるマジシャンとハイプリエステス。

 天蓋付きベッドには、ワールドが変わらず、眠っているかのように横たわっている。

 扉の反対側にある窓が、巨大な煉瓦の壁で外側から塞がれている。

 外の煉瓦は、薄青色の霊力光をぼんやりと発している。

 1枚の窓だけ、枠とガラスが割られて散ったようで、存在しない。

 フォーチュン、窓際に駆け寄り、迷うことなく右掌を挙げて、外から晒されている煉瓦に当てる。

 ぴた、と掌を密着させ、可愛らしい微笑みを浮かべる。

 

フォーチュン「(柔和な声で)タワー・・・よう頑張ってくれた。ワールドの護りはわらわたちが着くでな・・・」

 

 途端。

 フォーチュンが右手を当てた煉瓦の壁、ズウゥ・・・と窓から離れる。

 窓の外、中庭で身体を返し、顔を向けるタワー。

 全身を薄青色の霊力の光で染め上げている。

 タワーの緑色の左眼と、フォーチュンの金色の両目が、合う。

 眼差しが、深く、絡むように宙で結合する。

 

フォーチュン「(にっ、と笑顔で)思う存分闘え!」

タワー「(右拳を、ズゥ、と掲げ)ター! ワー!」

 

 マジシャン、一旦入室した身体を返しながら、ハイプリエステスに視線を繋ぐ。

 

マジシャン「廊下からの侵入は、私が食い止める。プリエステスはワールドの傍で、ゴーストを撃退してくれ。天井や床から来るやも知れん。頼むであーる!」

ハイプリエステス「(どん、と胸を右拳で叩いて)任せてほしいざます!」

 

 中庭に、城の上空から無数のゴーストが降下。

 タワー、左右の拳を互い違いに振り回し、霊力光を全身に輝かせ撃破する。

 窓際に立つフォーチュン、左掌を掲げ、迫り来るゴーストに向ける。

 掌より湧く、橙色の霊力の光。

 

フォーチュン「(高らかな発声)ダークホイールッ!」

 

 ブオオオオッ!!!と、猛烈な突風の縦回転の渦が“目”を正面に向け、光を伴い発生される。

 渦は窓のすぐ外に固定されたように位置し、直径2メートルほど。

 まるで洗濯機に放り込まれた如く、3色のゴーストが20体ほど飲み込まれる。

 ヒャアアア・・・と、尾を引く悲鳴で消えていくオレンジゴーストたち。

 ブルーとグレーのゴーストが、遠心力で弾き飛ぶ。

 それらを、薄青色の霊力を掌から湧かせ、タワーの腕が薙ぎ払う。

 瞬時に、ブグシャッ、と潰されて消える残りのゴースト。

 一方、開けられたままの扉付近で、廊下に目をやっているマジシャン。

 わらわらわらわら・・・と、奥の方から押し寄せて来るゴーストの群れ。

 マジシャン、無言で、スイッ、と右手を挙げ、掌を垂直に立て、五指を開く。 

 橙色の霊力光が放たれ、指の狭間からマジシャンの眼光が鋭く睨む。

 一気に押し寄せるゴースト、各色合わせて30体ほど。廊下を埋め尽くしている。

 

マジシャン「(張りのある声で)マジカル・フラッシュ!」

 

 クワーッ!と、圧を包括する乳白色の光が、マジシャンの掌から膨れ上がる。

 直後。

 ズドーンッ!!!という大音響と共に、砲撃の如く射出される、魔法光。

 一瞬で直線上の空間、廊下いっぱいに広がって、猛烈な勢いで突き進む。

 まるで重機で踏み潰すように、圧潰されて消える多数のオレンジゴースト。

 廊下の空間すべてに、マジシャンの魔術が充満する。

 マジシャンの掌の霊力が、即座に薄青色へと変化する。

 魔術の光が、更に圧力を高め、グンッ!と伸びる。

 部屋の扉近くから、声すら上げられずに散っていくブルーゴーストとグレーゴースト。

 波が引いていくように、跡形もなく姿を消す。

 30体ほどのゴースト、殲滅。

 片や、ベッド近くに立つハイプリエステス。辞典を持っている。

 彼女の背後の壁から、ジワーッ・・・と出現する1体のブルーゴースト。

 姿を完全に実体化した途端、ハイプリエステス、くるっ、と身体を返して正対する。

 ブルーゴースト、クワァ、と口を大きく開いて、噛み付くような動作をする。

 それを物ともせず、分厚い辞典を両手で持ち、大上段に振り翳すハイプリエステス。

 辞典が、ポウ・・・と薄青色の霊力光を纏う。

 一瞬、何事かという様子で停止するブルーゴースト。

 

ハイプリエステス「(腹の底からの声)辞典クラッシュッ!!!」

 

 ブオンッ!と振り下ろされる辞典。

 ブルーゴーストの顔の中心を的確に捉え、一気に打撃を加える。

 ブッシャーッ!と、弾け飛んで四散するブルーゴースト。

 後の空間には、何も残らず。 

 辞典を手元に戻し、意気揚々とした笑顔のハイプリエステス。

 

ハイプリエステス「(ふんっ!と鼻息荒く)いくらでも掛かってくるざますっ!」

フォーチュン「(瞼を半分閉じ)流石、というか・・・何というか・・・本当に辞典で撃退するとはのう・・・」

マジシャン「まあ、私の頭も随分喰らった技だからな。破壊力は保証済みであーる」

 

 フォーチュンとマジシャン、苦笑いを交わし合う。

 それから再度、互いの魔術の放出した方向に目線を向ける。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。