デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章 作:桁石スミオ
★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・廊下から謁見の大広間
壁のランプが煌々と燈り、照度を保っている長い廊下。
T字に形成されている交点、大きな観音開きの扉の奥には、謁見の大広間がある。
その扉から数メートル離れた場所に、ジャスティスとエンプレスが立つ。
真正面の通路から、ヒュウウウ・・・という冷気と共に、ゴースト軍団が押し寄せる。
先頭の第一陣、3色合わせて30体ほど。
ギンッ!と凄まじい視線で、蒼い瞳に輝きを宿すジャスティス。
既に脇構えにしている大剣を手に、ダッ!と床を蹴る。
見る見る距離が詰まる、双方。
ジャスティス、剣を構え直すことなく、ゴーストの集団に突入し、急に足を停める。
30体のゴーストが、生け簀に餌を放り込まれた魚のように、彼女に纏わり付く。
ひしめき合うゴーストの中心で、両目を閉じてじっとしているジャスティス。
ゴーストが身体に触れた、瞬間。
バチイッ!と、静電気のような音が湧き、驚いた様子でゴーストが離れる。
他の数体も同様に、彼女の身体に接近しては、音と共に急に脱している。
ジャスティスの両眼、カッ!と見開かれる。
直後。
瞬間的に橙色の霊力を放ち、大剣が閃く。
ブン! ザン! ザシュッ! ズバッ!と、目にも留まらぬ斬撃。
無残に散華するオレンジゴースト。声すら上げられず。
大慌てで離脱し、大広間の方向に飛行しようとする幾体かのゴースト。
そこに、ヒュンッ!と空を裂いて襲い掛かる、エンプレスの鞭。
薄青色の霊力光を纏い、正確にゴーストの身体を横断し、撃破していく。
ブルーとグレーの各ゴーストも、悲鳴すら立てられず消滅。
ニッ、と勝ち誇ったような笑みを向けるエンプレス。
その前方での、ジャスティスの攻撃は止まらず。
彼女の剣撃、まるで舞踏。
そして、数歩前に固まっている4体のオレンジゴーストに向け、跳躍する。
大上段に大剣を振り翳し、橙色の霊力を刃に込めるジャスティス。
ジャスティス「(高らかに)ジャスティス・クラッシュ!」
ゴーストたちに、渾身の力で剣を叩き付けるジャスティス。
大剣が、唸る。
ズドバアアアンンン!!!と、目も眩む閃光と火柱が、床より空間に噴出する。
飲み込まれ、ギャアアァァッ・・・と絶叫を残して霧散するオレンジゴースト。
第一陣と思しきゴースト30体、撃滅。
そして、ゆっくりと身体を起こし、大剣を脇に構え直すジャスティス。
清々しい笑顔を浮かべている。
エンプレス「ジャス子、調子いいじゃないのさ!」
ジャスティス「(振り向いて)まあね! 今までやられっ放しだった分、暴れさせてもらうよ!」
エンプレス「しっかし身体張ってゴーストに突っ込んでくなんざ、ちょいと無謀じゃないかい?」
ジャスティス「『ペンタクル』が効果出てるかどうかも試してみたかったんだ。ボクは一度憑依されてる。その時の感覚は忘れてないよ。だからゴーストに接近して、確認してみたんだ」
エンプレス「なるほどねぇ・・・で? 答えは?」
ジャスティス「(右手の指でOKマーク)バッチリ! 効果覿面だよ!」
エンプレス「そりゃあ良かった。安心して闘えるって訳だね。そんじゃ・・・(ペロ、と舌舐め擦り)アタシもいっちょやってやるか!」
廊下前方より、第二陣と思しきゴーストの群れが浮遊して接近。
おおよその数、40体ほど。グレーゴーストしか見当たらない。
ジャスティス「(息を飲んで)うわぁ・・・結構来たね。しかもグレーばっかりだ」
エンプレス「ジャス子、ここは任せてくれないかい? 久し振りに“女王乱舞”やってみたくてねぇ」
ジャスティス「(何かに気付き)そっか、あれだと何度も攻撃当てられるから・・・判ったよ。援護は任せて!」
立ち位置を入れ替える、ふたり。
エンプレスが仁王立ちとなり、右手に鞭を垂らして持つ。
ジャスティスはその後方2メートルほどの場所で、大剣を正眼に構えている。
急接近して来る、グレーゴースト軍団。
エンプレスまでの距離、5メートルを切る。
バッ!と両腕を頭上に掲げ、交差させ、両脚を広げ腰を落とすエンプレス。
エンプレス「(ギン!と凄まじい眼光)遊びは終わりだよッ!」
キンッ!と空気が鳴る。
次の、瞬間。
薄青色の霊力光を漲らせた鞭が唸り、前方に飛び出す。
バシュッ! バシュッ!と連続して、ゴーストたちに叩き込まれる。
更に、鞭の先端が加速し始める。
ズバババババババッッッ!!!と、驚異的な打撃をゴーストに加え続けている。
エンプレスの右腕、目にも留まらぬ速度で振り回されている。
その度にうねり、跳ね、まさに縦横無尽にダメージを喰らわせ続ける鞭。
既にその先端は、音速を超えている。
ゴーストの左右と前方より、確実に複数回の打撃を叩き込む。
パパパパパパパンッッッ!!!と、風船が割れたように消えるグレーゴーストたち。
エンプレス「泣きなッ! 喚きなッ! そしてッ!」
遂に、残り2体。
大きく後方に翳した鞭を、渾身の力で振り抜くエンプレス。
2体のグレーゴーストを纏めて、シュルン!と巻き付く鞭。
エンプレス「(轟く声で)女王様とお呼びッッッ!!!」
そのまま柄を一瞬大きく上げ、即座に床目掛けて振り下ろす。
鞭全体が蛇の如くしなり、波打つように動く。
バババンッ!と床石に叩き付けられるグレーゴースト。
ヒャアウゥゥ・・・と、嘆く鳴き声を残して、雲散霧消。
第二陣のゴースト40体、全滅。
束の間、静寂。
少し、間。
エンプレス、鞭を一気に戻し、パシッ!と丸めて持ち直す。
満面の、勝者の笑み。
後方のジャスティス、大剣を構えたまま、目を丸くする。
ジャスティス「(感嘆して)うっわー、絶好調だねエンプレス!」
エンプレス「(愉快そうに高笑い)おーっほっほっほっほ! こうでなくっちゃねぇ!」
振り向くエンプレスと、ジャスティスの目線が宙で繋がれる。
それから、大きく頷き合うふたり。
一方、その10メートル以上奥、謁見の大広間。
広大な室内奥、玉座の上方、天井付近に通気口のような間口がある。
その開口部から次々に流入して来る、数多くのゴースト。
更に天井の各所から、染み出したように湧いて出現している。
謁見室の上半分に滞留して、尚も数を増やしている様子。
その群れから次々と、雪が舞い落ちるように、フヨォ・・・と下降してくるゴーストたち。
深紅の長いカーペットの上、広大な室内のほぼ中央付近に陣取るストレングス親子とガオガオ。
距離を詰め、噛み付くような動作で襲い掛かる20体のゴースト。
ストレングス、両の拳と両の足先に、薄青色の霊力光を灯している。
ストレングス(父)、巨大な両拳が橙色の霊力光を帯びている。
ガオガオ、首筋からたてがみに下がるペンダントが薄青色の光の放っている。
既に、3名の戦闘は始まっている模様。
接近してくるブルーゴースト一体一体に、跳び込んで左右の拳を叩き込むストレングス。
喰らったゴースト、ブヒャァ・・・と潰されるような嗚咽で、砕け散っていく。
更にストレングス、前方宙返り、後方宙返り、回し蹴りなど、足技を繰り出す。
拳と足の波状攻撃が、息付く暇なくブルーゴーストを葬っていく。
グレーゴーストにも打撃を連続させ、跡形もなく散らせる。
その勢いで、部屋中を鞠のように跳び回って撃破を続けるストレングス。
まるで、舞踊。
ストレングス(父)、距離を詰めてくるオレンジゴーストに向け、右腕を引く。
間合いに入った瞬間、溜めた力を開放するように、鋭く拳を突く。
ズドンッ!と空気が割れ、ビギャァ!・・・と絶叫して破裂するオレンジゴースト。
尚も他のオレンジとグレーのゴーストに、左右を拳を交互に繰り出すストレングス(父)。
その度に大砲のような音が轟き、数多のゴーストが四散する。
時に、その拳圧の勢いで、2体同時に滅せられている。
途中、目線を合わせて頷き合うストレングス親子。
ストレングス「(笑顔で)よっし! イケるイケるっ!」
ストレングス(父)「(フン!と鼻息荒く)ウオオオッ! いっぱいブン殴れるズォ!」
一方、それまで前足に霊力光を溜めて攻撃していたガオガオ。
5体のグレーゴーストが、狙ったように眼前近くまで降下してくるのを確認。
ギラ・・・と“獣の王”足る威厳ある眼光を飛ばす。
そして、四本の脚を開いて腰を引いて落とし、身体を一旦後方に引く。
何かを、全身に溜めている様子。
ガオガオが下げているペンダント、一際大きく発光する。
ゴーストたちが、骸骨の口を大きく開ける。
直後。
ガオガオ「(腹の底からの発声)ガアアアアオオオオオォォォンンン!!!」
ガオガオの口の奥、喉から薄青色の光が放たれる。
空間が震撼し、彼の雷鳴の如き咆哮が、光の輪を纏った光線となって宙を貫く。
瞬時に飲み込まれる、5体のグレーゴースト。
ビリビリビリッ!と、凄まじい震動を起こすゴーストの体躯。
まるで感電したかのように、表面が震え、波打つ。
とうとう存在を諦めた様子で、ヒャオオオオ・・・と悲鳴を上げ、小さくなって消滅する。
ガオガオの咆哮とゴーストの鳴き声が残響となり、やがて治まっていく。
一瞬の沈黙が、訪れる。
ガオガオを振り返って、視線を繫げるストレングス親子。
ストレングス「(嬉しそうに)ガオガオすっごーい! 鳴き声で攻撃出来るんだ!?」
ガオガオ「(にまっ、と砕けた笑みで)ガアウッ!」
ストレングス(父)「驚いたズォ! 魔法みてぇだヌァ!」
突如。
オオオオオォォォン・・・と、上方より不気味な唸り声。
3名が同時に見上げると、大広間天井付近の間口から、一気に無数のゴーストが流入。
わらわらわらわらァッ・・・と、見る見る空域を埋め尽くしていく。
とてつもない後続の数に、先に浮かんでいたゴーストたちが押しやられるほど。
ストレングス(父)「ヌオ! 山ほど攻めてきやがった!」
ストレングス「(ストレングス〈父〉を見上げ)とーちゃん! 必殺技いこうっ!」
ストレングス(父)「(娘を見詰め、頷き)っしゃッ! 岩の代わりに霊力玉ブチかますズォッ!」
ダン!と左右の足を踏み鳴らし、肩幅にひろげるストレングス親子。
玉座の方向に身体を正対させ、両手に霊力光を漲らせる。
ストレングスは薄青色、ストレングス(父)は橙色。
ガオガオが床を蹴って、素早くふたりの後方に回り込む。
ゴーストの軍団、既に数え切れないほど。100体近く。
ストレングス親子、それにも怯まず、ギン!と睨み返す。
バン!と両腕を突き出して伸ばし、強く拳を握る。
ストレングス(父)「(重低音の声)愛とォーッ!」
ストレングス「(張りのある声)愛とぉーっ!」
コオオオオ・・・と、一際発光する、ふたりの両拳。
すかさず腕を戻し、脇を締め、両肘を腰に据える。
グッ、と膝を曲げて、足下に力を蓄積するような動作。
ストレングス(父)「(重低音の声)勇気のォーッ!」
ストレングス「(張りのある声)希望のぉーっ!」
ゴオオオオオオ・・・と、更に霊力の光が照度を増す。
バッ!と両腕を真下に下ろし、両の掌で包み込むように、光球を発生させる。
瞬く間に、猛烈な勢いで直径が膨らんでいく、霊力光。
同調した動きで、それをゆっくりと持ち上げ、頭上に掲げていくストレングス親子。
頭頂を過ぎ、やや後方に振り上げる頃には、ふたりの光球は巨大化している。
ストレングスは、2メートルの薄青色。ストレングス(父)は、3メートルの橙色。
その2個が、ズズズズズオオオ・・・と、威力が圧縮された雰囲気を放つ。
それまで接近していたすべてのゴースト、ビクゥ!と驚いて停止。
ストレングス(父)「(爆裂するような大声)マッスルボンバーッッッ!!!」
ストレングス「(劈くような大声)ワイルドボンバーっっっ!!!」
気合一閃。
振り被った巨大霊力球を、全力で投げるふたり。
直後。
ドオオオオオオンンン!!!と、部屋全体を震動させる轟音。
並んで発射された巨大な光球が、宙を抉り、砲撃となる。
直線上に存在するゴーストの群れが消し飛び、弾け、声すら上げられず散華。
周囲にいたゴーストも、磁場に吸い寄せられるように巻き込まれ、砕ける。
ロードローラーが走行した後の合材の如く、潰されるゴーストもいる。
やがて。
玉座奥の壁面に、ズッドオォォォォン!!!と衝突して炸裂する巨大光球。
次の瞬間、圧縮された霊力が一気に開放される。
ブワアアアアッッッ・・・と2色の光が、あっという間に壁全面に広がる。
それは競い合うように壁の表面を走り、ゴーストを飲み込んでいく。
波紋の如き波形を、奥から側面、天井、背後の扉付近まで拡散させる。
更に、天井通気口まで流れ込み、侵入しようとしていたゴーストを餌食とする。
最早、ゴーストの断末魔すら、確認出来ない。
静かに、霊力から派生した光の波、消えていく。
視界にいた全ゴースト約100体、殲滅。
静寂。
静寂。
投球の姿勢から、身体を起こして天井を見上げるストレングス親子。
緩やかに笑顔となり、目線を繋ぐストレングス親子とガオガオ。
ストレングス「(満面の笑みで、右拳を突き上げ)やったーっ!」
その、刹那の後。
後方から足音が聞こえ、振り向く3名。
タタタタタ・・・と、謁見の大広間内に走り込んでくるジャスティスとエンプレス。
ジャスティス、ぐるり、と室内を一通り見渡し、ニコ、と笑みを浮かべる。
5名が、円の立ち位置で身体を向け合う。
ジャスティス「さっすが! 強いね!」
ストレングス「(右手人差し指で鼻の下を擦り)へへっ、上手くいったよ!」
エンプレス「(天井から部屋を見回し)取り敢えずここは片付いたけど、どうする? 別な部屋に移動するかい?」
ジャスティス「(コクン、と首を上下に振り)そうだね。ボクたちは移動しながら闘おう」
ストレングス(父)「行くズォ! 次の部屋!」
ガオガオ「ガウッ! ガオッ!」
鮮やかに踵を返し、大きく開かれた扉から廊下に飛び出していく全員。
皆が、勇ましく凛々しい表情。