デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章   作:桁石スミオ

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最終章第三話の弐:我らは、多くの患難を経て【後編】-3

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・尖塔の上空

 

 フォーチュン城の最も高い尖塔の、更に上空。

 マッシュマンが発生させたワームホール、直径10メートルほど。

 紫と黒色の混ざった濁ったオーラを、台風のように渦を成し続けている。

 内側の、上方に凹んだ漆黒の闇から、時折数体のゴーストが出現している。

 当初のような大群は、今は出てくる気配がない。

 暫くの、間。

 更に時間が経過する。

 突然。

 渦の“目”に当たる空間から、鳴動。

 ズズズズズズズ・・・と、重低音が聞こえ始め、周囲の空気を震わせていく。

 続いて、ホールの内部から、モヤアアァァァ・・・と大量の黒い霧状の気体が流出。

 渦の周回方向に合わせるように、シャワーのように城全体に降り注ぐ。

 見る間に降下し始め、靄と同様に城の敷地内空域を満たしていく。

 ワームホールから重低音、ズズズズズズ!!!と音圧を急上昇させる。

 城の建屋が、震動を開始。

 

 

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・フォーチュンの自室

 

 突如、外部から響いてくる重い音と、部屋を震わせ始める微震。

 フォーチュン、マジシャン、ハイプリエステスの3名、怪訝そうに、天井を見上げる。

 

フォーチュン「何じゃ・・・地鳴りか?」

 

 鳴動と震動が徐々に大きくなっていく。

 窓枠とガラスが、ビリビリビリ・・・と震える音を立てる。

 

ハイプリエステス「(不安気に)地震・・・ざますか?」

 

 揺れが来る予感を察知し、全員が身構える。

 しかし、大きな振幅は起こらず、ただ微弱な揺れがずっと継続している。

 長い、時間。

 3名が固唾を飲んで、目線を方々に投げている。

 急に。

 ズザアッ!と突然、ベッドがひとりでに、床を擦り動く。

 

ハイプリエステス「(悲鳴)きゃあっ!」

マジシャン「(振り向きながら)何事だ!?」

 

 思わず飛び退いたハイプリエステスの横で、天蓋付きのベッドが移動し始める。

 1度に10センチほど、前後左右に、ズッ! ザッ! ゾッ!と細かく往復している。

 唖然とそれを見る3人。

 ハッ、と気付いて部屋中を見回すフォーチュン。

 室内の家具が、すべて何らかの動きを発している。

 小振りの書斎机が、タン、タン、タンと踊るように跳ねている。

 付属の椅子に至っては、クルリン、と一脚を軸に回転まで行う。

 壁のランプはそのままだが、中の灯りが激しく揺れ、怪しげな陰影を醸し出す。

 

フォーチュン「(驚き)ベッドが動いておる! 机も! 椅子もじゃ!」

マジシャン「これはッ! 一体! 何が起こって・・・」

ハイプリエステス「(きっ、と眉を寄せ)ワールド様はあたくしが護るざますっ!!!」

 

 声を上げながら、勢いよくベッドに跳び乗るハイプリエステス。

 そのまま、ガバッ、と横臥するワールドに覆い被さる。

 ワールドの頭部を確実に保護する状態で、両腕をしっかりと回して抱え込む。

 そして固く瞼を閉じ、歯を食い縛る。

 その間も、ベッドの異常な動き、治まらず。

 

マジシャン「(息を飲み)プリエステス! 無茶をするな!」

フォーチュン「ゴーストは近くにおらん! これは憑依とも違う! 何が起こっておるのじゃ!?」

 

 きょろきょろ、と周囲に警戒の視線を送り続けるフォーチュン。

 

 

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・玄関ホールから階段

 

 ゴーストの侵入が止まっている、玄関ホール。

 その上方と、全周から轟いてくる重低音と微かな揺れ。

 ブルースとマッコイ、立っている場所から見える窓や天井に目線を投げる。

 エンペラーも、忙しく顔を振り、心配気な表情を貼り付かせている。

 やがて、玄関ホール内と階段に設置された調度品や家具が、異様な行動を始める。

 頭上のシャンデリアが大きく振られ、壺を乗せた台が、カタカタカタ・・・と揺れる。

 階段の最下段、左右に置いてある、高さ50センチほどの2体の石像が、フワ・・・と宙に浮かぶ。

 そして空中を移動し、暫く行ったところで重力に従い、落下する。

 ガッシャ―――ンッッ!!!と、破壊の音が響く。

 

エンペラー「(悲鳴)ウッキャァーッ! ビックリしたッ!」

 

 音とエンペラーの声に振り向く、ブルースとマッコイ。

 ホールの床に、粉々に砕け散った石像の破片が散らばる。

 ふたりの顔が、サアッ・・・と蒼褪めていく。

 

エンペラー「ちょっと! 今! そこの石像がひとりでに動いて落ちたわッ!」

マッコイ「(ギリ、と奥歯を噛み)ヤッベー・・・まさか、ここまででっかいヤツが起こってるなんてな・・・」

 

 ブルースとマッコイ、眉を顰めて床を睨み、それからエンペラーに目を向ける。

 相当の危機感を感じさせる、雰囲気。

 空振と周囲の微動が、尚も続いている。

 

ブルース「(真剣な声で)ポルターガイスト現象です!」

エンペラー「ポル・・・何ですって!?」

ブルース「ゴースト出現時に発生する超常現象で、霊障の一種です! 誰も動かしてないのに物が勝手に動き回り、移動し、時として人に害を成す場合もあります!」

エンペラー「(口を縦長に大きく開き、驚愕)ウッソォォ! ゴーストが物に憑りついてるのん!?」

マッコイ「憑依とは別物だぜ! ゴーストが憑いてるワケじゃない! だからポルターガイストには、霊力の攻撃が効かねぇんだ!」

エンペラー「そんじゃどーしたらいいのッ!?」

ブルース「(口元を、ギュッ、と一度引き締め)移動してくる物体から身を躱し、ゴーストを駆逐する・・・今は、それしか・・・しかし、ポルターガイストは長時間続く現象ではありません。今の波動が治まったら、原因を特定しに動きます」

マッコイ「(ブルースに視線を結び)もしかしたらよ・・・マッシュマンの野郎、ワームホール固定してゴーストを召喚してんじゃねぇかな?」

ブルース「(マッコイを見て、頷いて)なるほど、あり得るな・・・ゴーストの出現数から換算すると、かなり巨大なホールと見た」

マッコイ「そんだけ大きな異空間の穴を、ずっと開きっ放しにしてみろ。俺でも解るくらいの異状が出るぜ」

ブルース「(眉間に皺を寄せ)凄まじい量の瘴気が、ずっと流れ込むことになる・・・」

 

 顔を上げて、エンペラーに目線を繋げるブルースとマッコイ。

 

ブルース「エンペラーさん、原因究明に移行するまで、もう暫くここでの戦闘を継続します。くれぐれもポルターガイストでの物体の移動に気を付けて、ゴーストを退治して下さい」

エンペラー「(ゴク、と生唾を飲み込み)わ、判ったわ・・・」

 

 これ以上ないほど、不安そうな顔になるエンペラー。

 数枚の『小アルカナ』を持つ右手の掌に、冷たい汗が滲む。

 

 

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