デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章 作:桁石スミオ
★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・従者控えの間
謁見の大広間からの廊下の突き当たりにある、別の広間。
扉の横の壁に、『従者控えの間』と記載されたプレートが嵌っている。
中規模の観音開きの扉を勢いよく引いて開き、室内に飛び込むジャスティスたち5名。
そこは、会議をしていた客間より、やや幅が狭いが奥行きは同等ほど。
壁や柱の随所に燈るランプと、天井の中規模のシャンデリアが、室内を明るく照らす。
駆け足で、全員が進入し終える。
途端。
目の前を、小さな円卓が飛んで横切る。
左側上手から、右側に並ぶ窓の方向へ、吹っ飛んでいく。
ドガッシャァァッン!!!・・・と窓枠とガラスを叩き壊し、外へと消えていく円卓。
突然の出来事に、息を飲んで停止する5名。
ジャスティス「(目を見開いて)えええっ! 何っ!」
ストレングス「(唖然として)机が飛んでたよっ!」
各位が、素早く部屋全体を見回す。
外部から聞こえる、重低音。
壁や床が微震を起こし、窓が軋み、置いてある家財道具が震動、跳躍している。
机から床に落下し、這い回るように動き、あるいは飛行する小物類。
目に映るあらゆる無機物が、命を持っているかのよう。
一時言葉を失う、全員。
ひたすら茫然と、その異様な光景を凝視している。
エンプレス「ゴーストの憑依なのかい!?」
ストレングス「ゴーストって! 物は通り過ぎちゃうんじゃなかったの!?」
急に、化粧箱らしき物体が、ヒュン!と空を裂いて向かってくる。
ガオガオの正面目掛けて、飛ぶ。
たてがみに下げるペンダントに、ポウ・・・と薄青色の光を湧かせるガオガオ。
ガオガオ「(腹筋に力を込めての声)ガアアオオオオォォッッ!!!」
ガオガオの咆哮と同時に、彼の口から霊力光が光線を成す。
飛来する化粧箱に直撃。
しかし、そのまま襲来してくる。
ガオガオ「(驚いて、素早く飛び退き)ウガウッ!」
軽やかに身を躱すガオガオ。
その空間を虚しく通り過ぎ、床に激突し、ガシャン!と壊れる化粧箱。
ガオガオ、やや血の気が失せた表情。
ストレングス「霊力の攻撃が効かない!? ゴーストじゃないの?」
ジャスティス「(左右に目線を投げ)多分違う! これは憑依じゃない! 別のおかしなコトが起こってるんだ!」
エンプレス「(チッ、と舌打ち)確かに一体もいないね・・・ゴースト相手ならまだしも、物が飛んでくるのは危険が大き過ぎる」
ストレングス(父)「全部ブッ壊すってものアリかも知れないズォ!」
エンプレス「(ストレングス〈父〉を鋭く見て)馬鹿お言いでないよ。アンタみたいな頑丈なガタイならまだしも、アタシの鞭じゃあんな飛来物にいちいち対応するのは無茶だよ」
ジャスティス「・・・とにかく! 部屋を出よう!」
直後。
バタ―――ン!!!と、大音響を立てて扉が、外側からひとりでに閉まる。
ハッ!と振り向く5名。
即座にストレングス、扉に慌てたように駆け寄る。
そして両掌を押し当て、ぐん!と力を掛ける。
微動だにしない、扉。
呼応するように走り寄り、娘と同様に両手を付けるストレングス(父)。
ふたりが、ぐぬぬぬ・・・と渾身の力で扉を押し始める。
びくともしない。
ストレングス「(息を詰めながら)・・・扉が・・・開かないっ・・・」
ジャスティス「(驚き)ええっ!」
ストレングス「まさか・・・閉じ込められちゃった!?」
急速に不安感を顔に浮かべるエンプレス。
踵を返し、部屋の反対側にある別の扉に目線を移す。
鞭を構え、室内の様子を窺いながら、慎重に歩を進めていく。
椅子や小さな机が、ガタン、ガタッ、と音を立てて動くも、寄ってくる気配がない。
中央付近まで達した、途端。
天井から吊り下げられている中規模のシャンデリアが、大きく振られる。
照明部は天板擦れ擦れまで、何かに引っ張られるように持ち上げられる。
次の、瞬間。
ガクン、と重力が作用し、振り戻されるシャンデリア。
同時に、天井とを繫げている金具が、ブチン!と捩じ切られるように切断される。
灯りが、大きく揺らいで影を歪める。
シャンデリアが、エンプレスの頭上に垂直に落下してくる。
エンプレス「(一瞬、見上げ)・・・えっ?・・・」
直後。
大きな陰が、エンプレスに覆い被さる。
落下軌道上に跳び込んで来た、ストレングス(父)の姿。
両腕を大きく広げ、落下物との間の空間に、身体を割り込ませる。
目を見開くエンプレスの眼前、彼目掛けて落下物が到達。
ガッシャアアアア―――ンンンッッ!!!と、爆音が轟く。
シャンデリアがストレングス(父)の後頭部に、凄まじい衝撃で激突。
金属の本体が歪んで曲がり、チャリ―ン・・・チャリ―ン・・・と、水晶やガラスが四散。
ストレングス(父)の頭から転がり落ち、ガシャン・・・と床に着くシャンデリアの残骸。
息を止め、両眼を正円に近い形状にするジャスティス、ストレングス、ガオガオ。
エンプレスには、欠片ひとつ当たっていない。
その目の前、顔に暗い影を下ろし、ゆっくりと横倒しになっていくストレングス(父)。
そして。
ド・・・サ・・・と、残響を周囲に巻き、完全に横臥する。
息を思い切り吸う、ストレングスとガオガオ。
ストレングス「(悲鳴混じりで)とーちゃーんっ!!!」
ガオガオ「(驚愕して)ガアアウウウッ!!!」
涙を散らし、倒れた彼を見るストレングスとガオガオ。
ジャスティス、ただ茫然とその光景を見詰める。
エンプレス、足元に横たわるストレングス(父)を凝視して、立ち竦む。
彼の両目は閉じられ、意識を失っている模様。
更にその顔から、急速に血色をなくしていくストレングス(父)。
エンプレス「(蒼褪めて)あ・・・あ・・・」
ガタガタ・・・と震え始める、エンプレスの身体。
瞳には、ひたすらストレングス(父)の姿を焼き付けている。
両手で持つ鞭が、覚束なく小刻みな震動をしている。
突如。
右側全面に広がるすべての窓が、バ―――ンッ!と外側に一斉に開放される。
オオオオオオォォォォンン・・・という気味の悪い声と、猛烈な冷気が流れ込む。
間髪入れず、凄まじい数のゴーストが、一気に雪崩れ込んで来る。
ハッ!と窓の方向に目をやるジャスティス、ストレングス、ガオガオ。
ジャスティス「(喉元を、クッ、と一度鳴らし)ゴーストっ! まずいっ!」
わらわらわらわら・・・と、ひしめき合って襲来するゴースト軍団。
更に。
反対側壁近くに置いてある3つの椅子が、フワ、と宙に浮かぶ。
それらは紐で引っ張られるように、一旦天井近くに達する。
スィーッ・・・と、エンプレスの頭上、シャンデリアの吊ってあった空間に移動。
そして円を描くように旋回を始め、下方へと高さを狭めてくる。
ジャスティスとストレングスとガオガオ、ダッ、と床を蹴る。
素早く、エンプレスとストレングス(父)を背後に囲むような配置に立つ。
エンプレスは顔を伏せ、真一文字に唇を結んだまま、微動だにせず。
空中の椅子が、唸りを上げる。
螺旋の軌道で、ビュウッ!と飛来してくる。
同時に、パカァ・・・と大口を開けて襲い掛かってくる無数のゴースト。
次の、瞬間。
【4シーン同時】
ジャスティス、突撃してくる椅子を、バガン!と大剣で叩き割る。
ストレングス、右の正拳で、ドゴッ!と飛んで来た椅子を貫いて砕く。
ガオガオ、前脚で押さえ付けるように、ダンッ!と椅子を叩き落とす。
エンプレスの身体、突然白く発光。その光が、クワアアッッ!!!と大きく膨れ上がる。
【4シーン同時終了】