デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章 作:桁石スミオ
★ 荒野
月を隠していたゴーストの大円盤が除去された夜空が、広がる。
蒼白色の、荘厳な光が満ち溢れる、荒野の中央付近。
言葉を失って、天頂に目線を向けているマッシュマン。
顎が外れんばかりに開口し、眼球を飛び出さんばかりに開眼している。
マッシュマン「(茫然と)馬鹿なッ・・・あそこは宇宙空間と変わらぬ筈!・・・あの位置まで攻撃出来るとはッ!・・・」
空中のマッシュマンから、斜め下方10メートル付近に並んで立つ、デスとハイエロファント。
ハイエロファントは、バクルスを左腕で構え、右手を添えて様子を窺う。
デスは、大鎌を身体の正面で、両手で持って構えている。
デス「(マッシュマンを睨み)絡繰りを破られた気分はどうだ? お前のご自慢のゴーストたちも、もう終わりだ。後はお前だけを“送れ”ば・・・全部終わる」
マッシュマン「(ふたりを見て、憤然と)戯れ言を抜かすな! 貴様らを斃してからが始まり、ゾ!」
ハイエロファント「残念だけど・・・(貫く視線で)これ以上は続けさせないよ」
すかさず、デスが地面を蹴る。
再び、目にも留まらぬ走駆で、マッシュマンを軸にした半径100メートルの周回軌道に突入。
タタタタタタタッッッ・・・と走行音が、微かな砂埃の大きな輪を地に画く。
通常の動体視力では捉えることが出来ない、彼女の姿。
マッシュマン、左右の腕を思い切り振り上げ、五指を開く。
右掌から、ゴウッ・・・と突風の球、左掌から、カキンカキン・・・と氷の棘を発生。
それを、デスが疾走を続ける円周の縁に向け、ブウゥン! バウン!と投げ落とす。
途端。
シュバウッ! バシュウッ!と、連続して発射されてくる、純白光の槍。
見事にマッシュマンの魔法攻撃を、ボアウン! ボシュッ!と撃破する。
キッ、とハイエロファントを睨むマッシュマン。
既に、ハイエロファントのバクルスの先端が、こちらに照準を合わせているのを確認。
間髪を入れず、マッシュマン、左掌を翳す。
ブォン・・・と、半径1メートルほどのワームホールが出現し、漆黒の口を開ける。
ハイエロファント「(高らかに)ミラクルビームっ!」
クワアッ! ズドムッ!と、宝玉からの白色光球が変化し、光線と化す。
マッシュマン、ワームホールを掲げたまま、疾駆するデスの動きを注視する。
ところが。
シュウウウウ・・・と、即座に萎んで消えてしまう、異次元の門。
マッシュマン「(驚愕)なッ!?」
すぐ眼前に、純白の光線が迫る。
回避が間に合わず、グバッ、と上半身を思い切り仰け反らせるマッシュマン。
弓形になった彼の身体の、僅か数センチを掠めて延伸する、ハイエロファントの技。
光線の通過する、顔のすぐ上の空気が、チリッ、と灼ける。
マッシュマンの額に、ジワ・・・と冷たい汗が滲む。
その背後、後方斜め下。
ズダッ!という、地面を思い切り蹴る音。
瞬時に宙を接近して来る、大鎌を振り翳したデス。
マッシュマンが驚きに顔を歪める暇もなく、斬撃が飛ぶ。
ザシュウウウッ!!!と、腹部で一刀両断される。
マッシュマン「(焦って)グウッ!」
デス、身体を翻し、着地の態勢に入る。
後に残ったマッシュマン、切り離された下腹部は、切断面からの蒼白い光に浸食され、消滅。
留まっている上半身の切った面、蒼白の発光が維持されている。
ふう、ふう・・・と肩で息をしているマッシュマン。苦し気な表情。
暫し、そのまま。
シュウウウウ・・・と漸く光を消し、抑え込んだ様子。
続けて切断面から、ボゴ・・・ズボ・・・ボボボッ・・・と体組織を復活させるマッシュマン。
しかし、非常に遅く、体躯の完全な復元までに数秒を要す。
先刻までの瞬間的な再生は、ない。
地面に着き、改めて構えるまでにそれを視界に映し、マッシュマンを睨むデス。
マッシュマン、ぜーはー・・・ぜーはー・・・と荒い呼吸。体力が一気に失われた雰囲気。
デス「やはり再生速度が落ちているな・・・皆既月蝕がなくなった今、魔力も霊力も限界に来ているんじゃないか? マッシュマン」
マッシュマン「(憤怒の表情で)ふざけるなッ! まだまだゾォッ!!!」
マッシュマン、宙を後方に、ズウッ・・・と移動する。
突然。
ストーン・・・と、身体を垂直落下させ、大地に接するマッシュマンの体躯。
ふたりから、約20数メートルの位置。
急な動向に、思わず目を見張るデスとハイエロファント。
デス、機会とばかりに、身体を一旦低く構えて大鎌を強く握る。
マッシュマンが、ニヤアッ、と凄まじく口角を引き上げ、厭らしく嗤う。
ハッ、と猛烈な予感を感じ、デスを見詰めるハイエロファント。
ハイエロファント「デスっ! こっちへ来てっ!」
デス、眼差しを戻しながら、ダン!と地を蹴る。
速攻でハイエロファントの傍らに駆け寄り、彼と並んで態勢を整える。
その時には、マッシュマンの両腕は真上に振り上げられていて、両手を向かい合わせて掲げている。
彼の掌と掌の間の空間が、グニャアッ・・・と凹むように歪になる。
マッシュマン「喰らえェェイッッ!!!」
渾身の力で、足元に腕を振り下ろすマッシュマン。
途端。
荒野が、揺れる。
ドオオオオンンッッ!!!と、下から突き上げる轟音。
デスとハイエロファント、一瞬よろめくが、両足に力を込めて踏ん張る。
更に、ズズズズズ・・・ドドドドドド・・・と、地震のような振幅が大地に発動する。
ハイエロファント、先端の蒼い宝玉に光を灯し、左腕で高々と上げ、バクルスを垂直に持つ。
パアアアッ・・・と、半透明の白色光のドームが出現。
隣のデスを内に収め、直径3メートルほどの半球体を構築する。
ブアッ、と両腕を正面、ふたりに向けて掌を翳すマッシュマン。
直後。
マッシュマン周囲の地面が、ボゴッ! ボゴッ!と沸騰するように盛り上がる。
それが、ボゴゴゴゴゴッッッ!!!と、茶褐色の地面を一気に広がっていく。
あっという間に、デスとハイエロファントの立つ域まで飲み込み、尚も拡大し続ける。
光のドーム内のふたりの足元だけが、通常のままで残存している。
他の荒野は、直径200メートルに及ぶ範囲が、表層の土が捲られ、地割れが発生。
突如。
割れた大地の塊が、ゴウン・・・ズウッ・・・と、いくつも空中に浮かび上がる。
そして、ブウン・・・ブウン・・・と浮遊して飛行し始める。
瞬く間に宙を滑空し、デスとハイエロファントに接近。
ハイエロファントが張る防護壁に、叩き付けられるように衝突し、押し当てられる。
磁石に吸い付く鉄のように、ドゴン! ゴゴン! ドガン!と、次々に積み重ねられる。
ものの数刻で、デスとハイエロファントの姿は隠され、見えなくなる。
やがて、岩石と土板と岩盤で、巨大なドームが築き上げられる。
1メートル四方の岩の板が、荒野のあちらこちらから飛来。
それは大音響を立てて、折り重なって、一際大きな半球体の一部となっていく。
次々と、幾重にも層を成していく岩盤ドーム。
岩石、岩の板が圧力で軋み、ガゴ! ガゴ!と嫌な音を鳴り渡らせる。
左右の腕の間からその様を凝視して、ニイヤァッ、と歯を剥き出して嗤うマッシュマン。
口角は吊り上がり、口がUの字を描く。
凶悪以外の何物でもない、歪んだ顔。