デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章 作:桁石スミオ
★ 荒野・岩盤の玄室内
マッシュマンの魔術で建築された、岩盤ドーム内。
ハイエロファントのバクルスが放つ光で、内側は明るい。
防護光で成された半球体の隔壁には、無数の岩石や土板がへばり付いていて、外部は見通せない。
真っ直ぐに、バクルスを持つ左腕を上げた状態のハイエロファント。
彼の右傍らに寄り添って、大鎌を真正面で構えているデス。
デス「(チッ、と舌打ち)岩盤を操るとは、厄介だな」
ハイエロファント「周りも岩で押されている・・・魔法の炎や風なら消せるけど、岩や石そのものの場合、防ぐことは出来ても消すことは出来なさそう・・・脱出しても、魔術の効果がある内は危険だと思うよ。ここから何か技が出せればいいんだけど・・・」
デス「あたしの斬撃が届けば・・・」
ふと、自分の中の何かが引っ掛かる感覚を覚えるデス。
眉を寄せ、焦点を外した視線を斜め前方下向きに投げる。
デス「(考えている表情で)・・・斬撃・・・飛ばす・・・ミラクルビーム・・・」
【回想シーン】
フォーチュン城の客間、卓の上。
『小アルカナ』のカードが一瞬力強く白い光を放ち、その光は、クワッ!と球状に膨れ上がる。
そして、パシャーン!と、四方に弾けるように拡散する。
ハイエロファントの手の先、卓上の空間に、巨大なカップが出現。
直径30センチほど、高さ50センチほど、盃の部分でも25センチ以上の厚み。
虹色の色彩を放つ金色で、トロフィーと見紛うばかりの持ち手と装飾、紫と青色の宝石が幾つか埋まっている。
それは出現後、全員が凝視する中でゆっくりと卓上に着地していく。
マッコイ「(サングラスの奥の眼を輝かせ)おおーッ! スッゲー! でっかいカップが出た!」
ブルース「(サングラスの奥の眼を輝かせ)・・・しかも神々しい作りです。何とも素晴しい!」
フォーチュン「(不思議そうに)・・・妙じゃのう。カードの図柄と若干違いよる。色は金色で一緒じゃが、もっと単純な作りじゃった筈・・・持ち手などなかったし、宝石など埋まっておらんかった。装飾もここまで立派では・・・(一枚のカードを取り)『カップ』のクイーンほどではないが、まるで別物じゃ」
【回想シーン終了】
デス、ハッ、と閃いたように顔を上げる。
一筋の光明を見出した如く、意気に満ちた表情。
即座にハイエロファントを振り返り、真摯な視線を繋げる。
デス「試したいことがあるんだ、ハイエロファント」
ハイエロファント「何か思い付いた? デス」
デス「お前の『聖なる力』を、あたしの大鎌に掛けてくれないか?」
一瞬で、明察を導き出したように、口元を緩めるハイエロファント。
ハイエロファント「僕の力を、君の大鎌に込める、ってことだね?」
デス「(深く頷いて)そうだ」
眼差しを絡め合う、ふたり。
デス「城で『小アルカナ』のカップを具現化した時、お前が使ったカードだけが別の変化を見せた。『聖なる力』の作用かも知れない、と思ったが、少なくとも実体化した物体への影響は悪いものでなく、逆に良好なものになるとも判断した。あれがカード使用の時だけか、それとも大鎌にも通用する作用なのか、それを・・・今ここで試したい」
ハイエロファント「(微笑んで)判った、君の言う通りにしてみるよ。それで・・・ここから技を出すんだね?」
デス「(微笑みを返して)ああ。ここから・・・『聖なる力』を、あたしの大鎌で飛ばせるかどうか、やってみる」
ハイエロファント、左手のバクルスを真上に伸ばしたまま、デスの真後ろに立ち、右腕を前に回す。
そして、デスが構えている大鎌の刃の下側、握られている彼女の右手のすぐ上に沿える。
ぎゅっ、と強めに鎌の柄を握るハイエロファント。
彼の胸部とデスの背中が、法衣とマント越しに密着する。
ハイエロファント「(高らかに)聖なる力!」
途端。
デスの大鎌、パアアアアッッッ!!!と純白の光を発する。
刃と柄が、まるで炸裂寸前のような、目も眩む凄まじい発光。
余りの光量に瞼を伏せ、瞳を狭めるふたり。
少しの、後。
光が、四散する。
シュパ―――ンッ!!!と軽やかな音を響かせ、光の粒を残しながら膨れて散る。
その中から、再び姿を現した、大鎌。
デスの両手とハイエロファントの右手で握られた、大鎌。
全体が、金色。
柄が、黄白色と白金色の混じった、光り輝く煌き。
刃が、今までの姿より一回り大きくなっており、蒼い大きな宝石が埋まり、流線形の装飾を施されている。
そして大鎌全体を均等に覆っている、虹色の光彩。
明らかに格段の進化をしたような、変化。
言葉を出せず、暫く大鎌を見詰めている、ふたり。
ハイエロファント「(目を見開いて)これは・・・驚いたな・・・」
デス「(目を見開いて)予想以上だ・・・まるで・・・お前の杖と、あたしの大鎌が融合したみたいだ」
両目を閉じる、デス。
耳を澄ませ、何かの声を聞いている様子。
デス「聞こえる・・・こいつが・・・喜んでいる・・・こんなの初めてだ・・・(目を開け、ふっ、と笑い)大鎌が歓喜の声を上げている!」
直後。
デスの大鎌、ポウ・・・と純白光を纏う。
続いて、ポウ・・・と蒼白色の光が刃から湧き、切っ先に掛けて走り、固定される。
リ―――ン・・・という、鈴のような高周波の音が、鳴る。
先程と同じ態勢のまま、ハイエロファントを振り向くデス。
デス「右手は握ったままにしててくれ。力は抜いていい。後は、あたしが仕掛ける。大鎌は右横から、水平に振り抜く。上手くいったら、次は上段に振り翳す。動きを合わせてくれないか?」
ハイエロファント「(大きく頷き)うん、大丈夫、やってみるよ」
デス「(気迫の声で)頼むぞっ!」
ハイエロファント「(気迫の声で)任せてっ!」
デスが、大鎌を右側から後方に、引く。
ハイエロファントが、右手を鎌の柄に握らせた状態で、右から後方に身体を捻る。
ふたりが、すっ、と腰を落とし、両足を踏み締める。
大鎌の刃は、地面と水平に位置している。