デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章 作:桁石スミオ
★ (翌日の夕刻)マジカルランド中央・フォーチュンの居城・城門近くの前庭
フォーチュン城の、城門と玄関の間に広がる、石畳と土の前庭。
陽が傾き、明るい朱色に満ち溢れている。
そこに集合している、15名。
ブルースとマッコイが、大理石で造られた正門を背に並ぶ。
それ以外の各位が、ふたりを囲むように扇型で立ち、身体を向けている。
タワーも、全員が陰にならない位置で、片膝を地に着けて控えている。
スーッ、と宙に少し浮いたまま、ブルースとマッコイのすぐ前に進むワールド。
ワールド「本当にお世話になりましたワ。マジカルランドの『天空の女神』として、改めて御礼申し上げます(頭を垂れ、再び顔を上げる)」
ブルース「いえ、私たちも皆さんに助けられました。こちらこそ、お礼申し上げます(頭を下げ、再び戻す)」
マッコイ「いろんな体験も出来たし、俺たちプロフェッショナルゴーストハンターの歴史に刻まれた、最高の時間だったぜ!」
ワールド「そう言ってもらうと、ありがたいですワ。本当は御礼として、マジカルドロップを持って帰って頂きたいのですが、(申し訳なさそうに)ドロップは別の世界ですと、願いを叶える効果を失ってしまうのですワ」
ブルース「そうですか・・・私のラボに持ち帰れれば、研究のし甲斐があったのですが、残念です」
マッコイ「まあ気にしないでくれ、女神様。土産話はいっぱい出来たんだ。もう充分貰ってるって」
柔和で、穏健な笑みを湛えるワールド。
ワールド「(優しい声で)またいつか・・・今度は、遊びにいらして下さいね」
マッコイ「(ニッ、と笑い)そうだな。今度はブルースの彼女も連れてくるぜッ!」
ブルース「(途端に顔を赤らめ、マッコイを見て)彼女じゃないっ!」
マッコイ「えーッ? 今更何言ってんだ? (ワールドに目線を繫げ)女神様、聞いて下さいよ。ブルースってば、リルリルって名前のエクソシストの彼女と、独立して除霊事務所立ち上げる予定なんだぜ。俺は相棒の将来の為に喜んで送り出してやろーって言ってるのに・・・」
ブルース「(真っ赤になって、大声)わざわざそこまで話さなくていいっっ!!!」
ストレングス「(感心して)うわー、アンタでもそんなにテレるんだ・・・驚いたなぁ・・・」
ジャスティス「(ニッ、と笑って)ブルースも隅に置けないねっ!」
エンペラー「ブルースッ! 恋はイイ物よ! お幸せにッ!」
ブルース「(湯気まで立てて)だからそんなんじゃないんですってば!!!」
マッコイ、肘で小突いて一層楽しそうな笑顔。
ブルース、頭を掻き、ふう、と大きく息をつく。
それから落ち着いた表情を戻し、デスとハイエロファントの目の前まで歩を進める。
4人がそれぞれ、斜向かいの位置に立つ。
ブルース「(コホン、と咳払いをして)デスさん、エロファントさん、本当にお世話になりました。この世界で最初に出逢えて、それがすべて最良の道へと繋がりました。あなた方ふたりに巡り会えて、本当に良かった・・・」
デス「あたしたちも、お前たちが最初に神殿に来なかったら、どうなっていたか・・・詳細な情報があったからこそ、全部終わらせることが出来たんだ。感謝する」
マッコイ「名残惜しいケド、もう帰らなきゃならない。今度来れたらまた、神殿にもお邪魔させてもらうぜ」
ハイエロファント「ええ、楽しみに待ってます。いつでも、寄って下さいね」
ブルースが、右手を差し出す。
ハイエロファントが、右手を差し出す。
強く、握手。
続いてマッコイが、ハイエロファントと握手を交わす。
そして、ブルースとマッコイ、デスとも握手を交わす。
固い、再会の約束の、結ばれる手と手。
それから流れるように、他の各位とも次々と握手を続けていくブルースとマッコイ。
タワーの下ろした右手の人差し指には、ガシッ、と両手を乗せて握る。
その度に繋がれる視線に、今回の闘いを乗り切ってきた想いが籠る。
ブルースとマッコイ、最後にワールドの前に戻り、握手をし合う。
ワールド、にっこり、と穏やかに微笑む。
そして手を戻し、キリッ、とした表情へと変化させる。
ワールド「では、そろそろ参りますワ」
カッッッ!と、ワールドの額の中央の『第三の目』が見開かれる。
3つの瞳で天を見上げ、掌を上向きにして両手を左右いっぱいに広げるワールド。
ワールド「集まりなさい! 虹の輝き!」
途端。
茜色に染まる空の方々から、ポゥ・・・と小さな光の粒が発生。
広い空の各方向から、次々と、雨のように降り始める。
それらすべてが、一直線にワールドに向かって、流星のように空から地上へ走っていく。
虹を構成する七つの色が、それぞれ粒子となって移動し、光の筋を織り成す。
ワールド、両方の掌を上にして、スーッ・・・と真上に掲げる。
両手首を合わせ、双方の五指を杯の形のようにして、それを3つの目で凝視するワールド。
天空から飛翔してきた様々な色の光の粒が、一気に加速し、ワールドの掌に目掛けて集まり出す。
凄まじい勢いで、ワールドの手の中に流れ込んでくる、光の粒子。
集合して、段々と膨らんでいき、遂に30センチほどの光の玉と化す。
ワールド「我が名はワールド! 天空の女神の名に於いて命じます! (張りのある声で、高らかに)出でよ! マジカルドロップ!」
直後。
キュイイイイイイイ―――ンッ!!!と、高周波の音が周囲に響く。
一旦、1メートルほどに巨大化した光の玉が、一瞬で小さくなり、ワールドの両手の中に縮まる。
完全に光の放出が治まるのを確認し、掌を上にしたまま両手を下ろす。
水を掬うような形にした掌の上を、コロン・・・と転がる一粒のマジカルドロップ。
七色の輝き、生命の息吹のように鮮やかな光彩を放っている。
柔らかい笑顔を湛え、右手でドロップをブルースに差し出すワールド。
ワールド「あとはドロップを掲げて、願いを言えばよろしいのですワ」
ブルース「(感嘆しつつ)・・・いやあ、最後の最後に素晴しいものを見させて頂きました。マジカルドロップの作られる瞬間・・・感動で言葉が出ません・・・」
マッコイ「(ホーッ、と息をついて)何から何までスッゲーことばっかだったぜッ! マジカルランド、最高だなッ!」
受け取ったドロップを左掌に転がし、改めて凝視するブルース。
傍らで、じーっ、とそれに目線を固定するマッコイ。
彼らの装備したサングラスに、虹色の輝きが投影されている。
それから、踵を返し、ワールドたちに背を向けるふたり。
噛み締めるように歩いて少し距離を取り、巨大な門柱の真下で、くる、と再度身体を向ける。
数メートルの間隔で向かい合っている、ブルースとマッコイ、他の各位。
ブルース、右手人差し指と中指でドロップを摘み、ゆっくりと掲げて上げていく。
真っ直ぐに腕を伸ばし、空に向けて翳す。
ブルース「(ドロップを凝視し)ドロップよ! 願いを聞いて下さい! 私とマッコイを! 元の世界に帰還させて下さい!」
突如。
キュイイイイイイイ―――ンッ!!!と、高周波の音が周囲に響く。
同時に、パアアアッ!!!と七色の光が発生し、ブルースとマッコイを一瞬で覆う。
それは完全にふたりを包み込んだ後、更に照度を増していく。
見る見る色を濃くしていく、虹の光彩。
段々と霞んでいく、ふたりの姿。
帰還の時だと、誰もが認識する。
13名に向かって、バッ!と垂直に右手を突き上げるブルースとマッコイ。
マッコイ「(右手を大きく振り)みんなーッ! また必ず来るぜェッ!!!」
ブルース「(右手を大きく振り)それまで皆さん! どうかお元気でッ!!!」
ジャスティス「絶対また来てねーっ!」
ストレングス「待ってるからねーっ!」
ガオガオ「ウッガーォン!」
ストレングス(父)「ウオオオッ! いい筋肉作ろうヌァ!」
エンプレス「今度はアタシに城にも来とくれ! 歓迎するよ!」
ハイプリエステス「お身体大切にするざますよーっ!」
マジシャン「また酒を酌み交わそうであーる!」
エンペラー「また一緒に活躍しましょーね! “機動部隊”楽しかったわん!」
ワールド「どうぞ、お元気で・・・」
タワー「マタ・・・キテクレ・・・マッテイル・・・」
フォーチュン「(穏やかな眼差し)・・・達者でな。幾久しく、健やかに、な・・・」
デス「(柔らかい微笑み)またな・・・」
ハイエロファント「(柔らかい微笑み)またね・・・」
全員が、様々な笑顔。
直後。
パシュ――――――ッ!・・・と、瞬時に弾け、消滅する虹色の光。
ブルースとマッコイの姿は、ない。
残響と、小さな光の粒だけが、空を漂っている。
そして、静寂。
静寂。
暫くの間、彼らが転移した空間を眺めている各位。
少しの、後。
ふと、フォーチュンが、デスとハイエロファントの元まで速足で近寄る。
フォーチュン「デス、エロファント、少し良いか? 話がある」
デス「(瞬きを数回)何だ?」
フォーチュン「日程の件ぞよ。予定の打ち合わせをしたい。昨日の今日で忙しい思いをさせてすまぬが、決めておきたいのじゃ」
ハイエロファント「(即答)いいよ。今から打ち合わせても大丈夫だよ」
デス「(頷いて)ハイエロファントがいいのなら、あたしは問題ない」
フォーチュン、安堵の溜め息を吐き、ちら、とタワーの顔を見上げる。
それに気が付き、ゴウン・・・と短く頷くタワー。