デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章 作:桁石スミオ
タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV90「怖ろしき終わり汝らを引きさらう Es reißet euch ein schrecklich Ende」より。
登場人物:「マジカルドロップ」シリーズより、デスとハイエロファント、ヤング(リトル)・フォーチュンとタワー、ワールド、マジシャンとハイプリエステス、エンプレス、ジャスティス、ストレングス親子、ガオガオ、エンペラー。「ゴーストロップ」「マジカルドロップV」より、ブルース、マッコイ、マッシュマン。
注:台本形式読み物です。流血の表現アリ。
同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
pixiv:https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663
【挿絵表示】
デスとハイエロファントの物語:REBOOT
【 最終章第二話の弐:怖ろしき終わり、汝らを引き攫う(後編) 】
★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・客間(10分後)
客間奥の扉が、ガチャ、と開き、フォーチュンが戻ってくる。
一仕事終えたような安堵の微笑みを浮かべ、12名が集う卓に歩み寄る。
室内の視線が、次々と彼女に結ばれ出す。
フォーチュン「(マジシャンの背中を見て)どうじゃ父上? 結界施術は済んでおるか?」
マジシャン「(フォーチュンを振り向き)大体は済んだであーる。しかし・・・(デスとハイエロファントに目線を移動させ)デスとエロファントが、施術を断ってな・・・」
フォーチュン「(驚き、やや苛立ったように)何故じゃ!? 何故結界を張らぬ?」
少し肩をいからせ、叱咤する如き目線を、デスとハイエロファントに投げるフォーチュン。
デス「(さも当然の口調で)ゴーストと闘った時、あたしが死神であることを連中は悟った。そして酷く怯えていた。あたしがどういう存在か理解出来るらしい。であれば、あたしに『憑依』されることはない」
ハイエロファント「僕の力に、ゴーストたちは近付いてこないんだ。だから、僕にも『憑依』されることはないと思うよ」
ジャスティス「(ふたりに視線を繋ぎ)でもやっぱり、使っておいた方がいいんじゃないかなぁ・・・」
ストレングス「(ふたりに視線を繋ぎ)万が一、ってコトもあるしね」
デス「逆、も考えられる。実際に闘った現状で、ハイエロファントとあたしはゴーストを拒絶出来ていることが判明したが、『ペンタクル』の結界を張ることで、反って出来なくなる可能性だってある」
ハイエロファント「(小さく頷いて)だから、デスと僕に使おうとしてたカードは、念の為に保管しておいてほしいんだ」
フォーチュン「父上、残りの『ペンタクル』は?」
マジシャン「エースとキング、の2枚であーる」
フォーチュン「(ふう、と息をつき、デスとハイエロファントを再度見て)・・・解ったぞよ。じゃが、くれぐれも無茶するでない。危険と思うたら、躊躇なく使え」
同時に、こくり、と頷くデスとハイエロファント。
マジシャン、残りの『小アルカナ』のカードをすべてケースに収納し、蓋を閉じる。
それを右手で、スッ、と示し、自分が座っていた元の椅子に歩を進める。
フォーチュン、カードの木箱に右掌を乗せて立ち、長テーブルの奥のエンペラーに視線を繋ぐ。
フォーチュン「待たせたのう、エンペラー。『小アルカナ』を渡す。武器系のカードはまだ未使用じゃ。残りの『カップ』『ペンタクル』と共に、そなたが持っておれ」
台詞が終わった直後、シュイッ!とケースを滑らせて投げるフォーチュン。
それは一直線にテーブル上を、斜め向かいに一気に、エンペラーの眼前に滑走していく。
パシイッ!と、押え付けるような動作で、右手で受け取るエンペラー。
一瞬、安心したような表情になり、顔を上げてフォーチュンと目線を合わせる。
フォーチュン「(真っ直ぐな目線で)活躍を、期待しておるぞ」
エンペラー「(ニイ、と口角を上げ)期待されちゃあ、仕方ないわねん」
フォーチュン、一度大きく首を上下に振り、今度はブルースとマッコイを見る。
フォーチュン「客人、度々ですまぬが・・・いつもの攻撃に霊力を乗せられるかどうか、幾人かで実践してみたいのじゃ。武器攻撃と魔術攻撃、どちらも試演してみて、確認してもらいたい。出来るかのう?」
マッコイ「(短く頷いて)そーだな、俺たちも見て判断した方が間違いないな」
ブルース「判りました。それでは、霊力を込めた攻撃、実際にやって頂きましょう。(一呼吸置いて、全員を見渡し)ジャスティスさん、お嬢さんのストレングスさん、こちらに出て来て下さいますか?」
ガタ、ガタ、と椅子を鳴らして引き、起立するジャスティスとストレングス。
ジャスティスは大剣の鞘を背負う。ストレングスはテーブルを回り込み、ジャスティスの横に来る。
ブルースとマッコイ、続いて椅子から立ち、ふたりに対面して並ぶ。
ブルース「いつもの戦闘の構えをして下さい」
ジャスティス「(大剣を、スラッ、と抜き、正眼に構え)これで、いいかな?」
ストレングス「アタイは構えとか特にないケド、(左足を半歩下げ、右拳を顔の前、左拳を腰辺りで握り)こんなカンジかな」
マッコイ「(腕組みをして)オッケーだぜ。そんで、頭ん中で武器や拳に光を出すようなイメージ・・・まあ、色はどっちでもいい」
ジャスティス、両目を閉じる。ストレングス、じっ、と右拳を見詰める。
ポウ・・・と薄青色に淡く発光し始めるジャスティスの大剣。
間髪入れず、ポウ・・・と橙色の光を放ち始めるストレングスの拳。
ジャスティス「(瞼を開き、感嘆して)ソードが光ってる!」
ストレングス「(目を輝かせて)アタイの拳も! すっごーい!」
ブルース「次に、今光っている色とは別の、オレンジはブルーに、ブルーはオレンジに変えてみましょう。これも頭の中で、その色を出す感じで大丈夫です」
自分の眼前の光に視線を繋ぐ、ジャスティスとストレングス。
同時に、一瞬だけ眉を寄せる。
ブイーン・・・と音を立て、薄皮を捲るように変化するふたりの発光。
ジャスティスの剣には橙色の光が、ストレングスの拳には薄青色の光が宿る。
ストレングス「(更に目を輝かせ)ホントだ! 色が変わってる!」
マッコイ「上手いぜ、ふたりとも。後は、実際にゴーストに打撃を当てりゃオッケー!」
ストレングス、拳を構えたまま、タンッ、と背中側に大きく跳ねる。
ジャスティス、くるり、と踵を返し、距離を置いてストレングスと向き合う。
正眼の大剣を、一度、八双に構え直すジャスティス。
僅かの、間隙。
ふたりの顔に、ニッ、と笑みが浮かぶ。
ジャスティスの大剣が、ブンッ!と横薙ぎに払われる。
ストレングスの右拳が、バババッ!と三度の突きを放つ。
続けて、目にも留まらぬ速度で、互いに攻撃を出し合うふたり。
まるで、武闘の組手を実演しているかの如く。
当たることはない距離で、交互に、呼応するように技を繰り出す。
その度に霊力が放つ光が、宙に綺麗な残像を描く。
舞い踊るような、ジャスティスとストレングスの動き。
他の同席者は、感心したような視線をふたりに結んでいる。
何十回の演武の、後。
大きく一歩前に踏み出し、タン!と同時に鳴らされるジャスティスとストレングスの右足。
互いに技を決めたような動作で、一瞬停止するふたり。
そして、スッ、と身体を起こし、構えを元に戻す。
少しの、間の後。
ブルース「(パン、パン、と拍手)お見事! 霊力の乗せ方も申し分ありません」
ジャスティス・ストレングス「「(同時にデスに身体を向け、身を乗り出すように)どう!? デスっ!」」
ふたりの燃えるような眼差しが、瞬時にデスに繋がれる。
デス「(ゆっくりと頷き、微笑んで)いい動きだ」
クルッ、と向かい合い、見る見る満面の笑みを浮かべるジャスティスとストレングス。
ジャスティス・ストレングス「「(グッ、と溜めて)やっっっ・・・(同時に跳ね上がり、パーン!とハイタッチ)たあっ!!!」」
エンプレス「(悪戯っぽく笑って)気が早いんじゃないかい? まだ闘ってもいないのにさ」
ハイプリエステス「でも、一安心ざますね。ゴーストに対抗出来そうで」
ジャスティスとストレングスの霊力の光が、フシュッ、と音を放って消える。
未だに笑顔のままのふたり、一度顔を合わせて頷き、自分が座っていた席へと戻る。
ブルース「ではもうひとり、フォーチュンさん、お願いします」
フォーチュン「(こくん、と頷き)うむ。今度は魔法じゃな」
ガタン、と椅子から立ち上がり、後ろに下がってブルースとマッコイを向くフォーチュン。
今度は、一同の目線が彼女に繋がれる。
ブルース「魔術の場合は、魔力を元に“無”から“有”を生み出すのですから、イメージに依存する割合が高いのです。霊力も同じ出し方で結構ですが、質の違う力を同時に出すので、多少難しいかも知れません。順番としましては、まず、霊力を手元に出現させるのが先ですが・・・」
言葉が終わる寸前、右掌を上にして胸の前に掲げるフォーチュン。
途端。
ポウ・・・と、薄青色の光が掌底から湧き上がる。
フォーチュン「(しれっ、として)こんな感じかのう?」
マッコイ「(驚いて)スッゲーな。一発かよ」
ブルース「(感心して)霊力出現は完璧です。続いて魔力を出し、いつもと同じように魔法を放つのですが、そうですね・・・霊力に魔力を乗せるような感覚で、術を使ってみて下さい」
フォーチュン、くるっ、と軽やかに踵を返し、身体を後方、客間奥の閉じられた扉に向ける。
光を放つ掌を翳し、右腕を伸ばし、据えた視線を放る。
フォーチュン「(張りのある声で)ダークホイール!」
直後。
ブオオオオッ!!!と、直径30センチほどの風の渦が、フォーチュンの掌を中心に縦回転を起こして発生。
渦は、薄青色の光が激しく回り、空気の層と光の層が二重になっている。
それが出現した、刹那の後。
ビュオオオッ!!!と、竜巻状となって扉との距離を一気に詰める。
そのまま戸に激突し、バッシューンッ!と四散して消える、突風と光の渦。
風圧で客間全体の空気が大きく何度も波打ち、同席者の髪を揺らす。
そして、静寂。
くるうり、と身体を返しながら、右腕を下ろして体側に付けるフォーチュン。
何事もなかったかのような表情で、ブルースとマッコイを見る。
ブルース「(パン、パン、と拍手)素晴しい! 霊力と魔力が綺麗に融合していました!」
マッコイ「(腕組みをして、感嘆したように)説明を聞いて一回で出来ちまうなんて、ホントにスッゲー!」
フォーチュン「こんなもんで良いのか? 意外と何とかなってしまうものじゃのう」
マジシャン「(フッ、と笑い)習うより慣れよ、であーるな」
ハイプリエステス「(にこ、と笑い)蒔かぬ種は生えぬ、とも言うざますよ」