デスとハイエロファントの物語:REBOOT 最終章 作:桁石スミオ
ブルースとマッコイ、元の座席に着席する。
フォーチュン、長テーブルの自分が座っていた椅子の前に立つ。
そのまま両手を卓上に付き、両側に並んで座る一同を見渡す。
フォーチュン「皆、自分の装備は良いか?」
ジャスティス「(大きく首を縦に振り)うん、大丈夫だよ」
エンプレス「いよいよかい。腕が鳴るねぇ」
エンペラー「(ふう、と息継ぎをして)ま、何とかなるんじゃない?」
フォーチュン「と、その前に・・・(デスとハイエロファントに目線を向け)デス、エロファント、そなたたちふたりで神殿に行き、マジカルドロップを取ってまいれ」
驚いたような表情で、一斉にフォーチュンを見る全員。
デス、これ以上ないほど眉間に皺を寄せ、フォーチュンに目線を投げる。
デス「(怪訝そうに)・・・ちょっと待て、ドロップは使えないのだろ?」
フォーチュン「ああ、今は使えん。じゃが、ワールドが目覚めたら使えるようになる」
ハイエロファント「(僅かな時間、考えた後)目覚めたらすぐに使えるよう、手元に置いておくんだね?」
フォーチュン「(頷いて)そうじゃ。ドロップさえ使えば、すべての闘いは一瞬で方が付く」
デス、一瞬で内容を悟り、表情を緩める。
フォーチュン「ドロップの所有権は、デスにある。そなたさえ良ければ、じゃが」
デス「所有権、ならばハイエロファントに引き継いでもらっている。あたし個人としては、全部願いは叶えた」
ハイエロファント「(デスに眼差しを結び)僕は、デスのドロップを預かっている、という立場だけど、僕たちふたりが良いのであれば、いざという時に使った方が争いを終わらせることが出来るね」
デス「(ハイエロファントと眼差しを絡め)お前がいいのなら、あたしは何の異存もない」
頭を深く、一度上下に振るハイエロファント。
再度フォーチュンに視線を繋ぐデス。
デス「判った。神殿に一旦戻るとする。だがハイエロファントは残った方がいい。『聖なる力』はゴーストを追い払う圧倒的な脅威となる筈だ。あたしひとりで・・・」
フォーチュン「(ピシャリ、とした口調で)ならぬ。ふたりで行け」
デス「(立ち上がり、跳ね返すような声で)何故だ!? あたし単独の方が効率的だろ?」
フォーチュン「効率非効率の話ではない。そなたたちふたりは、今回の闘いが終わるまで、何が何でも離れて行動するでないぞよ。それとも何か、別々にいたいとでも申すのか?」
デス「(響くような大声で)そんな訳があるか! ハイエロファントとなら! 片時だって離れ・・・」
はっ、と我に返るデス。
同席者全員の眼差しが、自分に結ばれているのを理解する。
銘々が、微笑ましそうな、あるいは爽快な笑みを浮かべている。
エンペラーのみ、妬ましそうな、また何かを言いたげな複雑な顔。
デスをしっかり見詰めて、にこにこ、と嬉しそうな笑みを向けるハイエロファント。
瞬時。
かああああっ・・・と、茹で上がったかの如く真っ赤に染まっていくデス。
フォーチュン、にやあっ、と笑う。
してやったり、という表情で、右耳に右掌を当て、上半身を傾ける。
フォーチュン「(意地悪そうに)はて? よく聞こえんかったのう。『片時だって』何じゃと?」
ボッスン、と座面の音を立て、糸が切れたように着席するデス。
そのまま身体を丸めるように縮こまり、瞼を閉じる。
デス「(消え入りそうな声で)・・・解った」
フォーチュン「(身体を戻し、右掌を向け)自発的な行動に感謝する。エロファントも、頼んだぞよ」
ハイエロファント「(大きく首を縦に振り)解ったよ。デスと一緒に、神殿まで行ってくるね」
エンプレス「(ニヤニヤ、と笑い)いやぁ、デスはいつまで経ってもウブだねぇ。もう結婚して随分経つけど、新婚どころか付き合い始めの恋人同志よか照れまくってんじゃないのさ」
ストレングス「(満悦そうな笑顔で)そこが、デスのいいトコだからね」
ジャスティス「でも真面目な話・・・(キリ、とした表情で)お城とワールドは、ボクたちが護れるようなった。ゴーストと闘えるようになった。だからデス、エロファント、頼りないかも知れないケド、こっちにはボクたちがいる。キミたちが戻るまで、出来る限りのコトはしてみるつもりだよ。キミたちはキミたちの任務、ボクたちはボクたちの任務・・・(よく通る声で)それで、この闘いに勝つんだ!」
デス、落ち着きを取り戻す。
そしてハイエロファントと共に、ジャスティスに真摯な視線を向ける。
ジャスティス「(深い、透明な声色で)無事に、戻って来て・・・ボクたちも頑張るから」
デス「(凛とした声で)判った。任せた」
ハイエロファント「(一同を見渡し、清廉な声で)みんな、無理はしないでね」
フォーチュン「エンペラー、『ペンタクル』の残り2枚をふたりに渡しておけ」
デス「(右掌を向けて掲げ)いや、必要ない。そのまま保持して、こちらの万が一に備えろ」
フォーチュン「(眉を顰め)・・・頑なな奴じゃのう。自分たちの万が一は構わぬと申すか?」
ハイエロファント「(凛々しい声で)大丈夫だよ。万が一があっても、僕がデスを護るから」
途端。
再び、ボシウッ!と沸騰したように、見る見る朱に染まるデス。
今度は頭頂から湯気まで出ており、彼女の周囲が蜃気楼で揺らいでいるよう。
エンプレス「(意味深な笑いで)惚気、かねぇ?」
フォーチュン「(意味深な笑いで)惚気、じゃな。そこまで惚気られたら仕方ない。ふたりで乗り越えてまいれ」
ハイエロファント「(照れた微笑みで)別に惚気た訳じゃなんだけど・・・」
デス「(頬の赤みが取れないまま)・・・残りの『ペンタクル』は、ワールドに使えばいいだろ?」
急に、フォーチュンが俯き、唇を真一文字に結ぶ。
それを視界に捉え、即、冷静な表情を取り戻すデス。
フォーチュン「(頭をゆっくり左右に振り)駄目なんじゃ・・・『ペンタクル』の結界を張るには、対象者本人の発声が発動の鍵となる。今のワールドに結界を施すことは、出来ぬぞよ・・・」
デス「(深い響きの声で)そうか・・・」
フォーチュン「今回の闘いのひとつに、ワールドをゴーストから護る、も含まれるでな。いずれにせよ、わらわたちで何とかする。そなたたちふたりは、マジカルドロップを持ってまた戻って来い。(頭を下げ)頼む、ぞよ」
ハイエロファント「(柔らかい声で)・・・判ったよ」
ブルース、居住まいを直してフォーチュンに顔を向ける。
ブルース「(右手を挙手して)ひとつ、提案があります」
フォーチュン「何じゃ?」
ブルース「デスさんとエロファントさんが共に動く、ということですが、城内に残る我々も、最低ふたり以上で行動した方がいいと思います。ゴーストと闘う為の霊力の色は2種、つまり互いに別々の色を出して臨めば、複数のゴーストに同時に立ち向かえるのです」
マッコイ「共に組んで闘う相方のコトを、俺たちの世界じゃ『バディ』って呼んでる。今回はこの『バディ』を組んだ方がいいんじゃないか、って思うんだ。(ブルースを見て)ってコトだよな、ブルース?」
ブルース「(大きく首を縦に振り)マッコイの言う通りです。私とマッコイも『バディ』を組んで、長年ゴーストハンターとして闘ってきました。皆さんにも、是非お勧めしたいのです」
腕組みをして、納得したように頷くフォーチュン。
フォーチュン「よかろう。専門家の発言じゃ、わらわたちもそれに倣うとしよう。であればまず、わらわはタワーとじゃな。(にぃ、と笑い)いずれ夫婦となる底力を、見せ付けてやるとしよう」
マジシャン「(フッ、と微笑み)ではプリエステスと、現役夫婦の凄さを見せるとしよう」
ストレングス「アタイはとーちゃんと! ガオガオも一緒で!」
エンプレス「ちょいとお待ちよ。そこ、3人かい?」
ストレングス「アタイとガオガオは一心同体だもん、離れて闘いたくないよ」
ストレングス(父)「(おずおずと)な、何ならエンプレス様、オ、オレと一緒に・・・」
エンプレス「(くる、とジャスティスに目線を繫げ)ジャス子、一緒に組むかい?」
ストレングス(父)「(背景暗転、チーン、と効果音)ガーン! だズォ!」
エンペラー「(ガタッ、と椅子を鳴らして立ち上がり)ちょっとォ! アタシの相方いないんだケド!?」
フォーチュン、一度テーブルの全員を見回して、エンペラーに目線を放る。
フォーチュン「(しれっと)そのようじゃな」
エンペラー「(怒声)あっさり言ってくれるわねェ! どーにかならないのッ?」
ブルース「エンペラーさん、我々と一緒に組みますか? 『バディ』は最低2名以上で構成すればいいので、それ以上の人数でも差し障りありません」
マッコイ「3人だと『バディ』っつーより、『チーム』だな。ゴーストと闘う“機動部隊”とか“タスクフォース”ってコトで」
エンペラー「“機動部隊”・・・“タスクフォース”・・・(陶酔したような口調で)何て美しくてカッコいい響きなのん!? アタシにピッタリの名称じゃないのッ! (コクコク、と頷いて)判ったわ! 組んであげるわッ!」
ブルース「(若干退いて)よ、喜んで頂けて何よりです・・・」
フォーチュン「(笑顔で)決まり、じゃな」
ブルース、両手を卓上に置き、腕を張って同席者全員を見渡す。
ブルース「皆さん、戦闘開始前に心得ておいて頂きたいことが、もうひとつ。今夜は皆既月蝕です。ゴーストは陽の光や月の光を嫌うのと同時に、闇に近ければ近いほど活力を増します。ですので、今夜は奴らがかなり活発になっているものと思われます。くれぐれも、油断なきよう」
ハイプリエステス「(意外そうに)皆既月蝕? 今夜が、ざますか?」
デス「ああ、真面に見たのは数年振りか。満月が完全に隠れている」
聞いてから、眼前のテーブル上に目線を投げるハイプリエステス。
右頬に右手を添え、何かを思い出そうという雰囲気の顔になる。
マジシャン「どうした?」
ハイプリエステス「(少し考えて)・・・いえ、ちょっと気になることが・・・後で調べてみるざます」
フォーチュン「客人、わらわたちはゴーストの特性や行動規則が知り得ておらん。戦闘配置は、専門であるそなたたちに決めてほしいのじゃが」
マッコイ「このお城の見取り図か何かって、あるかい?」
フォーチュン「(頷いて)あるぞよ。後ほど取ってくるでな、頼んでもよいか?」
ブルース「判りました。先程決めた『バディ』で、編成と配置を考えておきましょう」
フォーチュン「(微笑んで)助かる。この仕事が一通り片付いたら、旨い飲み物を馳走してやるぞよ」
マッコイ「(右手親指を立て)オッケー! 楽しみにしてるぜ!」
バッ!と右手を前方に向け、五指を広げて掌を掲げるフォーチュン。
フォーチュン「(轟くような、凛とした声で)では皆の者! 抜かりなく、じゃ!」
ガタガタガタッ!!!と、一斉に椅子が引かれ、全員が立ち上がる。
多くが、闘志に溢れた熱い眼差しを、フォーチュンに向けている。
デスとハイエロファント、互いを見詰め、覚悟と決意を秘めた眼差しを絡め合う。