蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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1話

1話

 

 

 

 

〜とある真っ黒な蛇〜

 

 

ああ嫌な話だ。あれほど自由を望んだオレが、まさか自由に飽きるなんてな。楽しかったなァ……アイツに宿って繰り返したあの日々はよォ……まさか、たかだか奴らの寿命で解放されるなんて思っちゃいなかったがなァ。

 

 

 

 

それにしてもここは何処なのか?見たところあの世界並みの文明はあるみたいだがよォ……なんでオレがナニカに宿らずに散歩出来てんのかもわからねェ……まあ考えても無駄だ。自由になって散歩しすぎて逆に暇なんだ。面白いことでも起きねェかァ……?

 

 

 

 

コイツ……使えるなァ。ガキにしては良い願いだ。どうもオレは誰かの願いを叶えるために縛られてた方が楽しいらしい。貴音の言っていた縛りプレイってやつか。まあ、せいぜい頑張って生きてくれよォ?願い主様ァ……

 

 

 

 

 

なんだこの世界は!?アザミよりは弱いが、変な力を持ったヤツらが世界中に出てくるとはァ……マズい……これじゃあコイツ、すぐに死んじまう……嫌だ!!もう消えたくはない!!

 

かくなる上はコイツに……ッ!!

 

 

 

〜???〜

 

 

 

「……個性が奪えない。こんな事例は初めてだ。ただ……なるほど『蛇』か。『個性』にしては『普通』で必要無いね。……そういえば『蛇睨み』とか言うものがあった。最近は『目』に関する能力ばかりでつまらなかったんだ。実験でもしてみよう。もちろんドクターには秘密だけども」

 

(ッ!?これは……なんでお前達がここにいる!?……おいおい、なんだコイツ……こんなにすぐに『蛇』が揃っちまった……新しい『女王』を作ったとはいえ一度に全てが集まるなんてな。コイツには感謝しないとなァ……オレを引き剥がそうとしたのは許してやろう)

 

「……おぉ、思った通りだったよ。『蛇』と『目』は相性が良いみたいだ!!まさか10個も適合するとは……いや、相性がいいだけでこれほどの個性が適合するわけがない……よし、連れて行こうか。上手くいけば……弔の成長促進に一役買ってくれるね」

 

(まずいまずいまずいまずい!!化け物か!?アザミなんて比じゃねェ!!コイツは!!……コイツだけは!!関わらせちゃいけねェ!!)

 

「期待してるよ。名も知らない少女」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう『先生』。今日もスーツが似合ってるね」

 

「ああ、おはよう。そう言う君こそ今日も可憐だね」

 

 

とある薄暗い部屋で、1組の男女が親しげに会話をしていた。

いや、片方は明確には男かどうか分からない。その体格やスーツ、そして低い声からそう判断しているだけだ。なにせその男は首から上を骸骨のような意匠の仮面をしているからだ。

そして女……いや、見た目的には少女だろう。全てを飲み込むような美しいロングの黒髪が目立つ少女だ。普通の人間と一つだけ違うとすれば……少女の目は蛇のように縦に細いことだ。

 

 

「それで『先生』、こんな朝早くから何の用事?私じゃないとこんな時間誰も起きてないでしょ?」

 

「僕を相手にそんな態度で接してくれるのは君だけだから嬉しいよ。今までに奪った個性の一つのせいでどうも常日頃から威圧感が出てるみたいでね。気軽に話してくれるのは君くらいなのさ」

 

「いやあの……質問に答えて欲しいんだけど……」

 

「君は少し急ぎ過ぎなところがあるね。会話というのは人と人とのコミュニケーションだよ。これが出来なくては仲間も作れないし人から『対等』だと思われないからね。少しは会話を楽しんでみなさい。僕みたいに目も耳も鼻も無くなっては、純粋に楽しめるのは会話くらいなのさ」

 

「あ、はい……ご教授ありがとうございます?」

 

 

子供に聞かせるような自虐ではない。教育者のような言葉を言っておきながら明らかに教育上良くないのは彼なりのジョークだろうか?それにしては重いのはきっとたまに傷だろう。

 

 

「まあ寝不足は乙女の敵だからね、手短に済ませるよ。ヒーローになりなさい」

 

「寝不足っていうか睡眠いらないんだけど……うん、分かった。ヒーローにな……………る…………ん、んん?……どういうこと?」

 

「困惑する君を見るのは久しぶりだね。実はね、僕は君以外にもう1人生徒がいるんだ。その子は、僕の後継者となる資格がある。これから(ヴィラン)達を纏めあげるリーダーになるのはその子だと思っているんだ」

 

「『先生』が……そこまでいう人だったら、そうなんだね。でもちょっと寂しいかな」

 

「寂しい?」

 

「私じゃ……ダメだったのかなって。これでも、実力だけはあるつもりだったから……頼ってもらえなくて寂しい」

 

 

しゅんと床に視線を落とした少女。会話から先生と生徒、という関係性は窺えるものも、側から見ればまるで親子のようだ。

 

 

「……は、ははっ、その気持ちだけで嬉しいよ。もちろん、君の事だって大切さ。だから君にしか任せられない頼みなんだよ」

 

「……詳しく」

 

 

マスク越しなので分からないが、どうやら笑っている様子の男は機嫌よさそうに少女の頭を撫でた。撫でられた少女も、気持ちよさそうに目を細めながら話の続きを促した。

 

 

「実はね、僕から君に教えられることはもう殆どない」

 

「……そんなことない」

 

「いや、君の学習能力は素晴らしい。教えたことは何でもすぐに吸収して応用させてしまう。まるで見聞きしたことを自分の記憶に()()()()()()()みたいにね。僕の生徒の中では1番の生徒だ。君は僕の自慢だよ」

 

「照れる」

 

 

ひたすらに褒めちぎられた少女だが、返した言葉とは裏腹に真顔だ。

 

 

「それにね、君はまだ表の世界では全く知られていないんだ、ヴィランとしてね。幸い戸籍だけはあるから今の君は唯の一般人だ」

 

「うん」

 

「僕達ヴィラン側にいて唯一の一般人。そんな君がヒーローになることで、僕の後継者と戦ってほしい」

 

「……それは、その人の成長を促すため?」

 

「物わかりがいいね。その通りさ。彼はまだ未熟……精神面でも肉体面でも個性面でも。だが、これからもっと成長する。いつかはヴィランの王としてね。強者である君に負け、考える事で彼はさらに成長する」

 

「ふーん……大体わかった。私は別にヒーローでもヴィランでもどっちでもいい。『先生』が喜んでくれるなら大した差は無いし。でもその人が弱っちかったら……()()()()()()?」

 

 

刹那、少女の纏う雰囲気が変わった。気がつけば少女の長い髪は逆立ち、まるで意思を持っているかのようにゆらゆらと動いている。そして何より特徴的なのは彼女の目。黒だった瞳はいつのまにか血のような赤へと変わっていた。

 

 

「構わないよ。そこで学ばない生徒はいらない。なんせ君がいるのだからね。彼を僕の後継者にしたのは一重に僕の因縁の相手への嫌がらせなんだ。ヴィランの王として……僕の後継者として最もふさわしいのは君さ。まあ、ヒーロー社会への不満が芽生えていないから今の君では無理だけどね」

 

「どっちでもいい。それじゃあ『先生』……ヒーローになるにはなにをすればいいの?」

 

「ふむ……何だと思う?」

 

「…………勉強する?」

 

「少し足りないが正解だ。君がこれから受験し通うことになるのは、日本最大のヒーロー科を抱えるまさにプロヒーロー養成学校、雄英高校さ。期待してるよ、陽炎 睨美(かげろう にらみ)……僕の義娘」

 

「任せて……必ずヒーローになってみせるよ。父さん……ところで学校ってどんな事するの?」

 

「ああ、知らないのも無理はないか。それじゃあ少し勉強の時間にしよう」

 

 

男は立ち上がり、部屋に備え付けられていた黒板に文字を書き始めた。しかし、その全ては点字だ。

 

 

「君が点字を覚えてくれて嬉しいよ。出来るコミュニケーションの幅が広がるからね。ははっ、歳を取りすぎたか最近物覚えが悪くてね。間違っていたら教えてくれ」

 

「うん、お願いします『先生』」

 

(……後継者を作るってことは、『先生』はもう居なくなるの?)

 

 

少女の疑問は、声に出る事なく彼女の中で消えて行った。

睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)

  • アザミ
  • クロハ
  • カゲロウデイズ
  • メデューサ
  • ゴルゴン
  • スネーク・アイ
  • カンナ(永遠)
  • サルビア(家族愛)
  • エーデルワイス(大切な思い出)
  • モミジ(大切な思い出)
  • カエデ(大切な思い出)
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