蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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11話

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「……素晴らしい……!!あれがホンモノ……『先生』に匹敵するヒーロー!!」

 

 

私は今震えている。恐怖、違う。武者振るい、違う。

 

感動だ。個性、意識、覚悟、そして何よりあの瞳。あれがワンフォーオール、あれがオールマイト。そして何より……アレに選ばれた後継者というのがもっと気になる!!

 

【ありゃすげぇ……お前の中にいても伝わるあの気迫……いつかのアザミを思い出すようだ!!】

 

 

脳無と殴打を続けているオールマイト。その気迫は死柄木君の足を止めさせ、その場にいる全ての人間を魅了している。

 

 

「無効ではなく吸収なら限度があるんじゃないか!?私対策?私の100%を耐えるなら、さらにその上からねじ伏せよう!!」

 

 

覚悟が違う。理屈に見えて理屈じゃない。なるほど、『オールマイト』だ。

 

 

「ヒーローは常にピンチをぶち壊していくもの!!ヴィランよ、こんな言葉を知っているか!!」

 

 

凄まじい力と力のぶつかり合い、そして脳無の拳を弾き勝利宣言かのように答えを求めない問いを投げかけたオールマイト

 

 

「Puls ultra!!」

 

 

脳無を吹き飛ばすアッパーが炸裂した。脳無はショックを吸収しきれず天井を突き抜けて天の星となった。

 

 

【お前実況向いてんな】

 

 

いやいや、アレ見てほかに何が言えるの?私以外ほとんどすごいしか思ってなかったよ。でもこんなの見せられたら少し体が疼くね。久しぶりに悲鳴と耐久力がいい感じの脳無でもお爺ちゃんに頼もうかな。

 

【個性因子は貴重なんだから自重しろアホ。お前どれだけ個性無駄にしたのか覚えてねぇのか】

 

 

「チートが…!!」

 

 

そうは言っても実験体含めても7、8人くらいでしょ。私1人と比べて見てよ相棒。

 

【そりゃそうだけどよ……ていうか戻っていいのか?死柄木に助言とかした方がいいんじゃね?】

 

なんであんなカス以下に?

 

【お前のやる事は死柄木の成長促進だろ?あのままじゃオールマイトにやられてゲームオーバーだぜ?】

 

ああ、そういう事。心配ないよ。オールマイトなら動けそうもないし、体が震えてるからね。今死柄木君相手になんか言ってるのも強がってるだけだよ。老いたとはいえ、先生にやられた傷も響いてるんじゃない?

 

【なるほどなァ】

 

それにもうそろそろ黒霧さんが逃すでしょ。

 

【ほう……どうしてだ?】

 

分かってるくせに。

 

 

「1ーAクラス委員長 飯田天哉!!ただいま戻りました!!」

 

 

背後から声が聞こえる。ちゃんと死柄木君を見ると、個性発動に大事な右手から血が出ている。傷跡を見る限りだと銃で撃たれたらしい。

 

 

「戻るよ梅雨ちゃん。相澤先生は私が運ぶ」

 

「え、ええそうね。頼むわ睨美ちゃん。他の先生達も来てくれてるし、きっとリカバリーガールも……あら?睨美ちゃん個性使ってるの?目が赤くなってるわ」

 

 

蛙吹の言う通りだ。飯田は別にただ帰ってきたわけじゃない。雄英が誇るプロヒーロー職員を引き連れて戻ってきた。さっき死柄木君を撃ち抜いたのもスナイプっていう先生の銃。

 

 

「ワープの方を石化できないか試してる……出来てないけど」

 

 

嘘。『目を凝らす』を使ってるだけ。

 

 

「相澤先生、動かすよ」

 

「…………ぁぁ………」

 

 

か細いけど微かに聞こえた。普段だったら米俵みたいに持つけど、怪我が怪我なのでお姫様抱っこ。

 

【見た目幼女がボロボロのおっさん抱っこしてる絵面やべぇな】

 

誰が見た目幼女だ……私か……

 

 

「イレイザー!?なんてひどい怪我だ!!」

 

「早くリカバリーガールの所へ。渡すよ?」

 

「ああ、よく守ってくれた!!」

 

 

誰だったかなこの先生。

 

【ブラドキングだ。血を操る『操血』の】

 

ああ、いたね。B組担任だったっけ。ってあれ、一瞬目を離した隙に死柄木君が穴だらけだ。スナイプ先生殺す気かな???

 

 

「アトハ我々二任セテ、君達ハ下ガッテイロ」

 

「はい」

 

 

カタコトに聞こえるのはエクトプラズム先生。数学の授業は分かりやすいけど途中で急にカラオケに関する問題を混ぜてくるのはやめてほしい。行った事ないし。

 

その後はなんやかんやで黒霧さんが死柄木君を逃して状況終了。特に面白いこともなかったね。早く帰ってゲームしたい。

 

【だったら久しぶりにシミュレーションゲームしようぜ】

 

あー……ありだね相棒。急にどうしたの?

 

【冴えを保つ秘訣ってな】

 

『目が冴える』から?相棒冗談言うんだね。面白くないよ?

 

【そんなつもりねぇよ!?】

 

 

相棒とそうこうしてるうちに警察も到着。中で生徒達にボコボコにされていたヴィランがまとめて逮捕されていく様子は壮観だね。私もいつかあの中に混じってなかったらいいけど。まあ、この国で私を捕まえられるヒーローなんて殆どいない。何故って?『目を奪う』からの『目を合わせる』ってどうやったら突破されるんだろうね。私が知りたいよ。

 

 

「…………つまんな」

 

 

本当につまらない。先生はいったいどんな教育をしたんだろう?脳無っていうおもちゃを楽しそうに見せびらかした挙句回収出来ずにやられる始末。当の本人は手やら足やら撃ち抜かれて重症。黒霧さんも先生の命令だから従ってるんだろうけど、きっと内心期待外れだろうね。

 

 

「君!!火災エリアにワープさせられた生徒で間違いないかい!!」

 

「……そうだけど?」

 

 

急に警察の1人が私の元に駆け寄ってきた。火災エリアの事と聞いて尾白も私の隣へ来たらしい。

 

 

「ヴィランの体が全く動かないんだ。君の個性だと言うのはそこの生徒君からは聞いてるんだけど、どうにか出来ないかな?」

 

「ああ……無理。私の石化は止めるだけ。一応後2時間もすれば解ける」

 

「に、2時間!?不味いな……輸送はどうしたものか……」

 

「……はぁ。尾白、ちょっと手伝って」

 

「え、ああうん。別にいいけど」

 

 

【お前、アレやんのか】

 

うん、面倒だけどその方が早いし。

 

私は、立っていた状態で石化させられ私たちの腹パンやらなんやらで気絶しているヴィラン共の前まで行く。

 

 

「……多少手荒でいいならなんとかする」

 

「仕方ないか。頼むよ」

 

「えい」

 

「えぇ!?」

 

 

無理矢理、腕と足を直立の状態にさせる。多分折れたね。

 

 

「尾白。その尻尾、さっき見た時結構筋力あったでしょ。締め付けでもいいから……よろしく」

 

「…………刑事さん……いいんですか……?」

 

「……いや、え、えぇ……うん?」

 

 

一匹二匹三匹と……自分でやっといてなんだけど、『目を合わせる』って結構硬い。そこそこ力入れないと動かせないし。でもまあ、気絶してるのに骨の折れる痛みで覚醒したはいいものも、口も固まってるから悲鳴も上げられないの可哀想だね。結局痛みでまた気絶してるし。かわいそ。

 

 

「……はい、終わった。それじゃ」

 

「え、ああ。協力、感謝するよ?」

 

 

なんで疑問系なんだろう。

 

 

「陽炎、無事でよかったぜ!!お前がヴィランのリーダーに突撃した時はどうなるかと思ったけどな!!」

 

「……切島、暑苦しい」

 

「おう!!すまねぇ!!でも俺はお前を尊敬してんだぜ?一人であの怪物を抑えてたらしいじゃねえか」

 

 

警察の人が引き攣った顔で立ち去った後、今度は切島、轟、爆轟(人殺してそうな目つき)がやってきた。

 

 

「抑えただけ。メドゥーサの石化も無理矢理破られた。主犯の手の奴にも直撃当てられなかった」

 

「謙遜すんな。お前は強い」

 

「……轟?」

 

「俺たちは足止めにもならなかった。お前は誰よりも早く噴水広場に向かい、誰よりも早く相澤先生や緑谷達を助けた。さすがだと思う」

 

「……はあ……?」

 

 

轟、こんなに喋る奴だったっけ?しかも超褒められるんだけど……

 

 

「結局、俺達はオールマイトに助けられた。コイツもな」

 

「……チッ!!うっせぇ半分野郎殺すぞ!!」

 

 

轟が親指で爆轟を差した。いつも通り悪態をついた爆轟だけど、なんかバツが悪そう。オールマイトに庇われたのが効いたのかな?

 

 

「陽炎ちゃん、少しいいかしら?」

 

「あす…………梅雨ちゃん。なに?」

 

 

暑苦しい(物理的にも個性的にも)男共と話していると後ろから声をかけてきたのは蛙吹。何か不安げな顔をしてる。

 

 

「あの手のヴィランに足を掴まれたでしょ。その……」

 

「……ああ、あれか」

 

 

蛙吹が言いにくそうにしている。まあ私は『目を醒ます』の能力で勝手に体が『造り直される』し、痛いくらいで済む。

 

 

「大丈夫。ほら、何もない」

 

 

コスチュームは制作会社の意向でデザイン的に右足にしか装飾みたいなやつが巻きついてない。たまたま左足は何もなかったからコスチュームも壊れずに済んだ。蛙吹に見せると安心したように顔を綻ばせた。

 

 

「そう……無傷ならよかったわ……でもどうしてなのかしら?」

 

「私の個性は『メドゥーサ』。神話の登場人物の名前を冠するような個性……自分で言うのもアレだけど、格が違うんじゃない?」

 

「大胆不敵なことを言うのね陽炎ちゃん」

 

 

嘘だけど。今日だけで蛙吹に何度嘘ついたことやら。少し申し訳ない。

 

 

「……んじゃ、先帰る」

 

「ダメよ陽炎ちゃん」

 

「…………なんで?」

 

 

早くゲームがしたい。どうせ『目を覚ます』のせいで睡眠の必要がなくて時間だけが有り余ってるんだから余すことなくゲームしたい。

 

 

「この後警察の人の事情聴取があるわ。夜ぐらいまで帰れないんじゃないかしら」

 

「……は???」

 

 

キレそう。

 

【クハハ、退屈しねぇなぁ〜】

 

 

 

 

〜とあるバー〜

 

 

「そういえば、一人オールマイト並のパワーとスピードを持つ奴がいたなぁ」

 

『へぇ……?』

 

 

床に倒れ伏し、血溜まりを作っている一人の男。雄英から敗走した死柄木弔だ。彼はモニターに映る『sound Only』の声の主と会話している。

 

 

「それと……一瞬だけど脳無が瞬殺された。チビ女の目が赤く光って、脳無が石になった」

 

『ふふふ、そうか。その少女は強かったのかな?』

 

 

声の主は何やら上機嫌そうに死柄木に話しかけた。死柄木はそんな声音と、体の痛みにイラつきながら答える。

 

 

「あのクソガキ……絶対こっち側だろ。俺に向かって『死ね』って言いながら地面砕きやがったんだぞ?掠ってたら俺の頭が破裂してた」

 

『面白い生徒が居るんだねぇ……』

 

(……楽しそうですね)

 

 

黒霧はそんな女子生徒に殴られた首の鎧をさすりながら、仕える主の声音にため息をついている。

 

 

『良い経験になっただろう弔?脳無の犠牲もまあ仕方ないものだね。焦ってはいけないよ。ゆっくりでも、これから成長していけば良いのさ。ふふふ……!!』

 

 

(明日の準備でもしておきましょうか。睨美の好物……死柄木弔に見つからなければいいのですが……)

 

 

機嫌の良い主に、機嫌の悪い保護対象、そして翌日やってくるであろうこの2人をこのようにした元凶である人間。黒霧は戦闘の疲労や痛みが抜けきっていない中、とりあえず死柄木の治療を始めるのであった。尚、モニター越しの主に多少の苦言を申し入れることはしなかったそうだ。

睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)

  • アザミ
  • クロハ
  • カゲロウデイズ
  • メデューサ
  • ゴルゴン
  • スネーク・アイ
  • カンナ(永遠)
  • サルビア(家族愛)
  • エーデルワイス(大切な思い出)
  • モミジ(大切な思い出)
  • カエデ(大切な思い出)
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