蛇睨み 【All For 『All For One』】   作:ゼノアplus+

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12話

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雄英高校へのヴィラン襲撃翌日は休校になった。私、陽炎睨美は黒霧さんの迎えでお爺ちゃん…ドクターの研究所へとワープし『先生』と黒霧さんと一緒に食事をした。相変わらず先生は固形物を食べなかったけど、この日はなんか久しぶりに父さんとして一緒に過ごしてくれた気がする。一番嬉しかったのはやっぱり頭を撫でてもらえること。小柄な私の頭を包み込む先生の大きな手は安心する。最初の頃は洗脳系の個性で少しずつ私を洗脳したのかと思ったけど、どうやら先生は持っていないらしい。しかも最近はなんか私に対する態度も少しだけ穏やかな気がする。

 

結論:楽しかった。

 

 

【ガキレベルの感想だなァ】

 

相棒ひどい。この日の私は自分で言うのもなんだけど結構嬉しくてポワポワしてたと思う。

 

 

「陽炎〜って、寝てるのかな?」

 

「…起きてる」

 

 

右隣の席の芦戸が声をかけてきた。ちなみに今の相棒との会話はさらに翌日、休校明けの学校での朝。

 

 

「今日のホームルーム、誰がするんだろうねー?」

 

「……あの怪我じゃ相澤先生は無理」

 

「やっぱりそうだよね!!」

 

 

顔面やら腕やらいろんなところを骨折してるらしい相澤先生。でも正直脳無相手にアレくらいで済むのならすごい。

 

ちなみに今の会話の間に、飯田がなんか騒いでたけどどうでも良いことだったから無視した。委員長って大変だね。

 

 

「おはよう」

 

「相澤先生復帰はえええええ!!!!」

 

 

マジか、流石に驚いた。驚きすぎて思わず呆けてしまった。全身余すところなく包帯でぐるぐる巻きにされた相澤先生がいつも通りな声音で教室に入ってきた。

 

 

「先生、無事だったのですね!!」

 

 

無事ってなんだろうね相棒。私分かんなくなってきた。

 

【俺も相澤見たら無事の定義を疑うぜェ】

 

流石の相棒もこれには驚いてるらしい。ヨロヨロと教卓へ歩く先生は危なっかしく、いつ倒れるかちょっと怖い。

 

 

「俺の安否はどうでもいい」

 

 

私、あんまりツッコミする側じゃないんだけどこれだけは言わせてほしい。どうでも良くないと思う。

 

 

「そんなことより闘いはまだ終わっちゃいない」

 

 

闘い…?

 

 

先生の言葉に他のみんなもざわついている。私も口にしてはいないけど少し訝し気に先生を見た。

 

 

「雄英体育祭が迫ってる!!」

 

 

あっ、このパターン知ってる耳塞がなきゃ……

 

「「「「「「クソ学校ぽいのキタァァ!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

耳塞いだのに音が貫通してきた。絶対、耳郎が音を増幅したでしょってレベル。まあそんなこんな、先生から詳細を聞き体育祭まで残り2週間と言うことも聞いた。意外と日程が近くて驚いた。

 

【だからアレほど普段から予定表は見とけって言ってんだろ】

 

ハイ、スイマセンデシタアイボウ。

 

 

そして午前中の授業が終わり昼休みになった。

 

 

「昼ごはん……!!」

 

「陽炎ってば、すっかりランチラッシュの虜だね」

 

 

クックヒーローランチラッシュ。食堂の料理人で、彼の作る料理はとてつもなく美味しい。むしろこのために学校に来ているまである。

 

 

「陽炎、ちょっといいか?」

 

「……相澤先生?」

 

 

ウキウキで食堂に行こうとした私を止めたのは、ドアから顔を覗かせるミイラ…ではなく相澤先生。わざわざ教室までくるなんて効率厨の先生にしては珍しい。他のみんなもそう思ったのか私と先生に視線を行ったり来たりさせている。

 

 

「昼飯奢ってやる。一昨日の礼だ」

 

「……私、礼を言われるようなことしてないよ?」

 

「陽炎ちゃん、そんなに謙遜しなくていいのよ?貴女はずっと相澤先生を助けて、守ってたわ、ケロ」

 

「そういうことだ。俺が生徒に飯奢るなんて初めてのことだ。大人しく受け取っとけ」

 

「……分かった」

 

 

なんか、色んな人から視線を感じる。『目を盗む』。

 

(あの蛇女…体育祭でぜってぇぶっ殺すッ!!)

 

(負けてられねぇ……クソ親父が見にくるんだ)

 

(やっぱすげぇや陽炎、俺も見習わねえとな)

 

(今度、組手でも誘ってみようかな?)

 

 

他にも色々と聞こえてくる。まあどうでもいいや、爆豪はシンプルにうるさいから本番で泣かす。

 

クラスメイトの視線を受けながら、私と先生は食堂でテイクアウトの唐揚げ弁当を奢ってもらい接客室で向かい合って座った。

 

 

「改めて、感謝するよ陽炎。お前のおかげで、俺はこの程度の怪我で済んだ」

 

 

座ったまま、先生は深く腰を折った。教師に頭を下げられるのってなんだかむず痒い。

 

 

「別に……あの場ではアレが最適解だっただけ。正直……でしゃばって説教されるかと思ってた」

 

「まあ、実力が未知数の相手に無謀だと一瞬思ったが……あのヴィラン相手によくやった」

 

 

やけに褒める。この三日間褒められてばっかりだ。

 

 

「あまり1人の生徒に肩入れするのは不合理的だか、本音を言えば陽炎、お前には少し期待をしている」

 

「へぇ…?」

 

「あまり表情を顔に出さないお前が、なんてことはない様子で活躍したことがクラス内で良い刺激になっている自覚はあるか?」

 

「……全然」

 

「…まあいい。本題はここからだ」

 

 

本題…?なんか面倒臭そう。

 

 

「昨日、職員と警察で会議があった。俺は絶対安静で病室からリモート参加だったが…」

 

 

絶対安静でも参加はするんだ…… その根性には素直に脱帽。

 

 

「今朝、俺は全生徒に平等にチャンスが与えられると言った。それを踏まえて俺は今からとても不合理かつ、不平等なことを言う」

 

「……あまり、勿体ぶらないで欲しい」

 

 

唐揚げが美味しい。食べながらでいいと先生は言ってくれたので遠慮なく頂いている。まあ先生的に言えば合理的な行動だね。

 

 

 「そうか、じゃあ単刀直入に言わせてもらうが陽炎、体育祭の決勝までは身体能力のみで動いて欲しい」

 

「……それは、()()()()他の生徒たちに平等にチャンスを与えるため?」

 

「……ッ!!その通りだ。理解が早くて助かる」

 

 

私が火災エリアでやったことが響いているんだろうな多分。何十人も一気に石化させたから。つまりは、一年生全員が参加する競技で私以外が確実に詰む可能性があると。

 

 

「私は平等でなくてもいいと言うこと?」

 

「お前……分かってて言ってるだろ」

 

「もちろん」

 

 

『ハンデあり』で私は他と真に平等になる。

 

 

「私の個性は、能力だけ見たら一見派手。でも使ってみると見た目で言えばせいぜい私の目が赤くなるだけ。実際には目立たないからスカウト目的のヒーロー達へのアピールには難しい。目立たずに仕事の遂行が出来るのだからヒーローとしては合理的だと思うけどね」

 

「ああ、目の個性という点では共通している俺もそう思う。そういう意味では、目立たない個性の持ち主には随分不合理な祭りだよ」

 

「つまるところ……『お前が優秀なのは雄英が保証するから、他の生徒を目立たせてくれ』でしょ?」

 

「その通りだ。俺の勝手な偏見だが、技術面、体力面、精神面、ぶっちゃけどれをとっても2年中旬程度の実力と教養はあると見た。チャンスを捨てろとは言わねぇ。他の奴のチャンスを潰さないでほしい、これが雄英の総意だ」

 

「……」

 

「もちろん断ってくれて構わない。学校側の勝手な買い被りだ」

 

 

『目を欺く』を使って目が赤くなるのを隠しつつ『目を盗む』で心の声を盗聴してるけど、特に嘘はついていない。相澤先生にしては珍しく申し訳なさが感じられた。

 

 

「……」

 

 

一緒に買ってもらったレモンティーを飲む。先生は私の返答を待っているのか、無言だ。

 

 

「……1つ、お願いがある」

 

「一応聞こう」

 

「捕縛布っていうやつ、教えて」

 

「ほう…それでいいのか?」

 

「先生には先に話しておくけど、石化の条件は対象が私の目を見ること。みんなは勝手に私が対象の目を見ることだと思ってるけど、ほんとは逆。だから先生みたいなアイマスクもいらない。つまりコスチュームといってもただの衣装で動きやすい以外の要素がない。捕縛布があれば捕まえて石化させてもいいしその逆でもあり」

 

「なるほどな。身体能力とその拳法があるから武闘派だと思われがちだが、小細工をメインにすると」

 

 

あって使いこなせたら便利な捕縛布。小柄な私が応用すれば瀬呂のように立体機動も出来るかもしれない。

 

 

「ただ、その分先生の時間が減る」

 

「それくらいなら別に問題ない。俺1人の負担で済むなら安いもんだ」

 

「もちろん怪我が治ってからでいいよ」

 

「当たり前だ。俺が独学で編み出したものだ。口だけで指導するとか合理的じゃない」

 

 

交渉成立。いいね、これで手数と戦略の幅が広がる。

 

 

「まあ、わざわざお前をここに呼んだのはそういうことだ。なんだ、その……迷惑をかける」

 

「……でもさ先生、バレた時が怖いよ?特に爆豪、アイツとっても頭が回るからすぐバレると思う」

 

「これは毎年同じだから言うが、決勝ラウンドは一対一だ。お前と爆豪が直接対決するときだけ本気でやればいいだろ」

 

 

まあそれはそうだけどさー。そんなこんなで話は終わった。先生は律儀に私が食べ終わるまで待ってくれた。と、いっても私が最後の一口を口に入れる瞬間にジュッとゼリー飲んでた。合わせたのかな。

 

 

「……先生、早く治したいんだったらリカバリーガールに治療してもらうためにもっと栄養とったほうがいいんじゃないの?」

 

「すぐ治してまでやらないといけないことがないからな。この方が合理的だ」

 

 

さいですか。相棒、やっぱこの人ダメかもしれない。

 

【今更だろ。まだ入学して5日目なのになァ】

 

 

「ああ、もう一つあった」

 

「……?」

 

「お前、ぶっちぎりで入試一位だったから体育祭の選手宣誓やれ」

 

「え」

 

 

相棒、選手宣誓ってなに?

 

【『せんせーい!!僕たち私たちは、スポーツマンシップに乗っ取り正々堂々と戦うことを誓います』みてェなことを宣言するんだよ】

 

oh……私、声張れない……個性10以上使ってる時点で正々堂々としてない……

 

 

「2位の人にやらせといて。条件追加で」

 

「お前な!?……まあいいか」

 

 

相澤先生は仕方ないとばかりに目を瞑っている。そう言う部分では融通が効いて助かる。

 

 

「しかし陽炎……」

 

「……ん?」

 

「お前、意外とお喋りだったんだな」

 

「最近……自覚してる」

 

 

ついに先生に言われた。

 

 

「じゃあ、ご馳走様でした」

 

「おう、午後も気張れよ」

 

 

昼休み、有意義な使い方したね。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜放課後〜

 

 

「それじゃあ陽炎、また明日なー」

 

「じゃ」

 

「陽炎バイバーイ!!」

 

 

今日最後の授業も終わり、芦戸や上鳴が挨拶してきたので適当に返す。じゃあ私も帰ろうかな。

 

 

「陽炎さん、ちょっといいかな!!」

 

「……緑谷?」

 

 

なんかきょどってる緑谷が話しかけてきた。ちょっとキモいな……

 

 

「陽炎さんが良かったらなんだけど、個性の使い方についてアドバイスをしてもらいたいんだ」

 

「へぇ……?」

 

「もちろん体育祭のライバルになんで塩を送らないといけないっていう陽炎さんの疑問はもっともだし、でもやっぱり陽炎さんの個性といえば石化に目が行きがちだけどその小柄な体であのすごいパワーを制御してるって言うのも僕からしたらすごいんだ。僕のは発動型で一回一回パワーを体に込めないといけないんだけど「緑谷、ストップ」……ハッ!?ごごご、ごめん陽炎さん!!」

 

 

なんだコイツ…………なんだコイツ?

 

 

「まあ……別に暇だしアドバイスくらいいいけど……運動場の予約は?」

 

「一応、1人でも使えるようにとってあるんだ」

 

「……あっそう」

 

 

無駄に用意がいい……真面目なの?

 

 

「じゃあ体操服に着替えて体育館γに集合で!!」

 

「……元気良いね」

 

 

走り去っていった緑谷を横目に見ながら私は教室を出る。

 

 

「安請け合い、したかも」

睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)

  • アザミ
  • クロハ
  • カゲロウデイズ
  • メデューサ
  • ゴルゴン
  • スネーク・アイ
  • カンナ(永遠)
  • サルビア(家族愛)
  • エーデルワイス(大切な思い出)
  • モミジ(大切な思い出)
  • カエデ(大切な思い出)
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