蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
今が良い天気でありますように。
カゲプロ10周年、学生時代を共に過ごさせてもらったカゲプロに最大の感謝と祝福を。
13話
「何だよ出れねぇじゃん!何しに来たんだよ!」
麗日と峰田が教室の前の光景を見て声を上げる。緑谷との会話を終えた私も一緒に振り返ると、そこには他の科と思われる生徒達がA組のクラス前に集まり、教室の中を覗いている光景があった。なんで……と思ってると爆豪が、
「敵情視察だろザコ」
と吐き捨てるように言い、たむろしている生徒達の前に行くと……
「敵の襲撃を耐え抜いたヤツらだもんな、体育祭の前に見ときたいんだろ。そんなことしたって意味ねぇから。どけモブ共!!」
「知らない人のこととりあえずモブって言うの止めなよ!?」
相変わらずだね爆豪……さらにそこへ別の人が声を上げた。
「噂のA組、どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだよなぁ。ヒーロー科に在籍するヤツは皆こんななのかい?」
「あァ?」
生徒の群れを後ろからかき分けて一人の生徒が前に出る。青い髪の毛で眠そうな顔をした少年だった。……誰?
「こういうの見ると幻滅するなぁ。普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ」
「…………」
あぁ、信濃みたいなタイプね。まあ彼女はサポート科に入ってるけど。
「そんな俺らにも学校側はチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ」
「「「「「「!?」」」」」」
「敵情視察?少なくとも俺はいくらヒーロー科とはいえ、調子に乗ってっと足下ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しにきたつもり」
(((この人も大胆不敵だぁ!!)))
爆豪と大胆不敵君が睨み合ってる。ていうか、名前なんだろう?
「おうおう!隣のB組のモンだけどよぉ!敵と戦ったっつうから話聞こうと思ったんだがエラく調子づいちゃってんなぁオイ!!」
またすごい人来た。うるさい。切島みたいだね。
B組の生徒だというガラの悪そうな少年まで割り込んできた。爆豪に対して何か喚いていたが、それを無視して爆豪は帰ろうとしてる。
「待てこら爆豪。おめーのせいでヘイト集まりまくってんじゃねーか!!どうしてくれんだ!!」
切島は慌てて帰ろうとする爆豪を呼び止めた。別に、言わせときゃいいんじゃないの?
「関係ねえよ」
「あぁ?」
「上にあがりゃ関係ねぇ」
……良いね爆豪分かってるじゃん。そういうとこは好きだよ私。切島にそう言い残して爆豪は教室を後にした。さてと、私も早く行こ。
「……こんなとこで喚く時間あったら、少しでも自分磨きでもしたら?どいて……今から訓練だから」
髪の毛の蛇達をチラつかせると生徒達は……なんていうんだっけ、海割る奴。
【モーセか?】
そうそれ、そんな感じで私の道を開けた。これだから本能的に実力差もわからない奴らはダメだね。
◆
緑谷にアドバイスをお願いされた私。体操服に着替えて体育館γへとやってきた。到着するとそこには緑谷、さらには相澤先生もいる。何故だろう?
「緑谷が個性を使った訓練をするって聞いてな。また暴発されちゃ修復やら治療やらで合理的じゃねぇ」
なるほど、相澤先生らしい。つまるところ……
「……緑谷、信頼されてないね」
「うっ!?」
緑谷がよろけた。思ってたことをピンポイントで口に出されたらそりゃショックだよね。
「使用時間は18時までだ。しっかり励めよ」
「はい!!ありがとうございます相澤先生!!」
「……合理主義者こわっ」
先生はそう言うと入り口付近に椅子を用意してタブレット端末を弄り始めた。ここでも仕事か。
【俺くらいもっと軽く生きてりゃ良いのによ】
相棒は雑すぎ。私の中にいなきゃそこらでのたれ死んでると思う。
【おいおい、お前の中に入るまでずっと一人旅だったんだぜ?少なくともお前よりは根性あるなァ】
あっそ。
「……で、自分の個性すら自由に扱えない緑谷は何が聞きたいの?」
「(なんか言い方に棘があるような……?)ま、まずは僕の個性について聞いて欲しいんだ。僕の『超パワー』は一度使うと威力が大きすぎて僕の腕が耐えられない……陽炎さんも、どうなるかは知ってるよね?」
「……ああ、さつまいもの皮みたいな色になってた」
「とある人から、レンジで温めてる卵を爆発させないようなイメージっていうのを教わって、それを実践してるんだけど……上手くいかなくって……」
何そのイメージ……最初から思ってたけど、変わった奴だね緑谷。
「……当たり前」
「え……?当たり前って、どういう……?」
「機械が自動でチンするまで温め続けるのに、なんでいつ爆発するかしないかがわかるの?」
「ッ!?!?た、たしかに……」
そもそも前提がおかしい。なんで緑谷はこんなに個性を使うのが下手なんだろう。
「……面倒くさい例え。でも、その考え方で言うなら……緑谷は最初から温めるW数が高すぎる、のかな?100W10分と500W2分じゃあ温まる速度がまず違う」
「……!!!!」
緑谷がすごい速度でボロボロのノートにメモを取り始めた。しつこいくらい思うけど、ちょっと真面目すぎるんじゃないの?目がなんかキマってる。
「でも、今の僕じゃ0か100かしか出せなくて……陽炎さんは素の身体能力が僕の個性くらい高いよね。どうやって制御してるのか参考に聞かせて欲しいんだ」
そういうことか。パワーがあるってだけで私に頼んだのね。
「どうやってって…………まあ、限界まで力を緩めてるとしか……今の力だと、普通の人が普通に箸を持つ行為でも、私がやると粉々になる。だから、緩めてる。数字にするなら……2%……くらい?」
『目を醒ます』で体を強く作り替えてからというもの、戻すのも面倒だしもう一度同じ体にするのもどんなだったか忘れそうだからこのままで生活してる。家に帰ってからご飯食べようとしたら力加減間違ってお気に入りだった箸が塵以下まで粉々になってちょっと泣きそうだった。
【正直笑いが止まらなかったぜ。アレは傑作だったなァ!!】
こういう奴がいるから余計に悲しくなった。通販サイトで同じものを買ったからもう良いけど。
「2%……!!今の僕の体だと…5%出せたら良い方かな……(ワン・フォー・オール……5%……!!)くっ!!」
「……おぉ」
緑谷の右腕に電が迸る。それでも緑谷はどこか辛そうな顔をしている……少し意地悪しようかな。
「……ストップ」
「うおわっ!?」
緑谷からは私が急に目と鼻の先に現れたように見えただろう。驚いてこけた。なんでか知らないけど顔も赤い。
「かかかk、陽炎さん!?な何を!?」
「力みすぎ」
「え……?」
「なんで個性を発動させることに慣れてないの?小さい頃からずっと一緒に育ってきた個性でしょ。右腕を上げるように、何も考えずとも一定の速度で道を歩くように個性を使わないと」
どうしてこう、緑谷は個性を『使う』ことに執着しているの?私ほどになれば息を吸うように『目を覚ます』でネットに入り、『目を隠す』で監視カメラにも映らずに18禁コーナーへ、『目を凝らす』で地球の裏側を覗き込む。
【えげつないことできる能力なのにやってる事が思春期のガキそのもので俺はある意味安心してるよバカ野郎】
「そ、それは…………」
「まあ、何か事情でもあるならわざわざ聞くことでもない」
「そういうわけじゃないんだ!!中学3年生の時に急に個性が発現したから……まだ個性を宿してからひと月も経ってないんだ……嘘じゃないよ!?め、珍しいけど医学的にもないわけじゃないらしくて!!今まで体にあった個性因子が急に活性化したとかそんな感じらしくて……(言えるわけがない……ワン・フォー・オールのことなんて……)」
「……は?」
今なんて言った……?『ワン・フォー・オール』って……『先生』と対を為す意味。緑谷の個性は『超パワー』じゃないの?いやいや……まさか、オールマイトと同じ個性なんて……!?
まだ個性が発現してからひと月も経ってない?……準備やらを含めればオールマイトが雄英に赴任した時期と丁度一致する……?……いや、確実な証拠が無いね。まだ怪しいで止めよう……緑谷、やっぱり君は私を飽きさせない。
「陽炎さん……?僕、変なこと言ったかな?」
「……いいや、なんでもない。まあ……そういうことなら余計に個性使わないと。それこそ、今からずっと維持して」
「維持……?さっきの状態をずっとって事?」
「そう、私は常時この状態だから慣れてるけど、緑谷は個性を使うたびに一瞬力んで、それでも壊して、直して、また壊して……だから、個性を使ってる状態をずっと維持して……慣れて」
「個性を……維持……個性を……維持……個性を……維持!!」
風が吹いた。違う、緑谷から風圧が来た。たった5%でこれなの、緑谷。ポテンシャルだけはすごいねその個性。
「…………ッッッッッッッッッッッッ…………はぁ……!!はぁ……」
緑谷は一歩も動いていない。それどころか右腕で個性を使っただけ。それなのに彼は大量に汗を掻き、息切れしてる。訓練を見る限り体力はありそうだけど、極度の集中状態が原因かな。
「キツい?」
「うん……少し…はぁ……休んで……いいかな……?」
「どーぞ」
倒れ込むように緑谷は地面に座り込んでゆっくりと呼吸を整えている。
「腕、怪我してないね」
「え……あぁ、確かに……でも、ずっとこれを続けるのはまだ無理そうかな」
「息が整ったら次。立って」
「う、うん……」
緑谷を立たせて姿勢を正す。
「大きく息吸って」
「スゥーーーー…………」
「すごくゆっくり吐きながら個性発動、状態維持」
「ハァ…ッ……」
「辞めないで」
「ハァーーーー……ゲホッ……ゲホッ……」
途中で個性が切れてしまった。まあ初めてやるし仕方がない。
「はぁ……はぁ……ごめん陽炎さん」
「……何が?」
「こんなに真剣に考えてくれるのに、出来なくて……」
やはり彼は真面目すぎる。というか焦ってる?まあ気持ちは分からなくもない。ろくに個性を使えないのに『先生』の役に立とうとして個性の制御を失敗してた頃の私を思い出す。
「充分」
「充分って……僕、何も……」
「維持は出来てない。けど、制御は出来てる」
「え……あっ!!ほんとだ!!(そうだった、僕の課題は個性を制御することだったんだ!!いつのまにか弱い力で維持することばかり考えてたけど……やっぱりすごいや、陽炎さん!!)」
まあ、スタートが違う。まだ成長というものが存在してた頃の小さい私と、高校生の緑谷。ゲーム風にいうならステータスの伸び幅なんて違うに決まってる。
「多分、もっと弱めていい。それこそ1%や2%でも」
「陽炎さんって、そういう調整をどうやってやってるの?」
ああ、そういえば最初に緑谷が聞いてきたのってそれだった。
「生卵買って、割らないように指で挟んだり、片手で握ったりして力を入れる。割れたら……必死に殻を取ってスクランブルエッグ」
「な、なるほど……」
美味しいんだけど、飽きる。ケチャップ、塩、ウスターソース、挙げ句の果ては焼肉のタレなんかも試したっけ。
「多分……緑谷が個性使ってやったら、大量の血液が飛び散った殺人現場みたいなことになるからおすすめしない」
「サツジンゲンバ……!!」
「……まあ、後は弱いの維持する、でいいんじゃない?これ以上は緑谷の感覚次第だから何も言えない」
「ううん、すっごく参考になったよ!!ありがとう陽炎さん!!」
キラッキラした目で私のことを見てくる。そんなに感謝されるようなこと言ってないんだけど。まあもう一個言いたい事あるけど全部教えちゃ成長に繋がらないって『先生』も言ってたし、後は緑谷次第だね。
「……で、この後どうするの?まだ時間はあるけど」
「あー……考えてなかった……どうしようかな……終わるにしては早すぎるし」
「だったら陽炎。お前緑谷を投げろ」
「……先生?」
2人で悩んでいると、相澤先生が歩いてきて一言言った。
「最低限受け身は取れるみたいだが、緑谷は体の使い方がなっちゃいねぇ。その点、丁度お前は武術を会得してる。この際だから体で味合わせとけ。緑谷、戦いの痛みは爆轟やUSJで経験しただろうが、これからそんな泣き虫じゃやっていけねぇのは分かってんだろ」
「ッ、はい」
「陽炎にしっかりしごいてもらえ」
ニヤッと、先生は包帯越しでもわかるような悪い笑みを浮かべて言った。この人、作業しながら私達のこと見てたのか。
「緑谷……」
「へ!?……ど、どうしたの陽炎さん、そんな真面目な顔して……いや、あの……なんで無言でこっち近づいてくるのかな!?あはは……うわぁぁぁ!?!?」
「受け身取らないと危ないよ??」
この後むちゃくちゃ緑谷投げた。
「オールマイトさん」
「どうしたんだい相澤君」
「ぶっちゃけ、貴方より陽炎の方が教師向いてますよ。アイツ、教え方って奴が上手い。なんならオールマイトさんも陽炎がアドバイスしてるの見習った方がいいっす。隠し撮りした今日の映像渡すんで参考にでも」
「Whats⁉︎」
視聴後
「OH……教師として不甲斐ない……」
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
-
アザミ
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クロハ
-
カゲロウデイズ
-
メデューサ
-
ゴルゴン
-
スネーク・アイ
-
カンナ(永遠)
-
サルビア(家族愛)
-
エーデルワイス(大切な思い出)
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モミジ(大切な思い出)
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カエデ(大切な思い出)