蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
14話
敢えて辛辣な言葉を向けるなら、緑谷はザコ以下だ。身体能力も並よりちょっと上。個性を使えば体が壊れる。
ファンタジーなRPGならば中盤で出てくるような、一撃が重いけどそのあと何もしないターンがあるタイプのボス……いやボスにすらなってるのか怪しい。なんでこんな例えをしたかというと私が昨日、立方体なゲーム機のペーパーな配管工のRPGなゲームをしたからだ。カエルの音でビビるようなドラゴンは蛙吹でも生身で倒せると思う。あとビビアン可愛い。
いや、そんなことはどうでもいい。なんで私がわざわざ緑谷の話をしたのか、まあ最近面倒を見てあげてるのいうのもあるけど今私の正面で繰り広げられてる会話が原因だ。
「緑谷、お前オールマイトに目ぇかけられてるよな」
「ッ!?」
轟が緑谷に話しかけている。体育祭本番である今日、クラス全員が待合室で待機してるのでみんなが聞いている。私は端っこで目を閉じている。
「別に詮索するつもりはねぇけどよ、お前陽炎に訓練つけてもらってるらしいな」
「う、うん……相澤先生にもみてもらってるけど……」
「そうか……お前には勝つぞ」
わぁ、凄いね轟。自慢じゃないけど……私や爆豪だっている。個性の強さや今日までの色々を見てれば常闇や八百万もいる。そんな中、オールマイトという存在を引き合いに出してまでここで宣言したとなれば……
【教師、師匠、親に連なる存在が関係してんだろうなァ】
だよね相棒。だったら私にも来て欲しいな、『先生』っていう存在がいるんだから。
それにしても、あれから合計で4日ほど訓練つけてやったのにほとんど進捗がないのは緑谷もはや凄い。体育祭前に怪我しないように日和ってるんだろうけど、何故未だに右腕限定で5%が限界なのだろうか。っていうかさ、どうして右腕だけしか付与しないんだろうね。全身に同じのをやればいいのに。全部教えるのは緑谷の成長につながらないから私からは何も言わないけどさ。
そして、開会式が始まる。
『ヘイ!!刮目しろオーディエンス!群がれマスメディア!一年ステージの入場だ!』
プレゼントマイク先生の実況?司会?で私達が入場する。会場はとてつもなく広く、それに関わらず観客で埋め尽くされている。テレビで見たことあるとはいえ、ここから見る景色はすごい。
「選手宣誓!!選手代表1ーA 爆豪勝己!!」
「あれ、陽炎じゃねえの?入試一位だったんだろ?」
「……面倒だったから、辞退した」
「お前な!?」
切島が聞いてくるけど、素直に話した。あんなん誰がやっても同じだよ。それで、爆豪が壇上に上がって腕を上げた。ああやるんだ選手宣誓って。
『宣誓、俺が一位になる』
【クッハハハ!!言いやがったぜ爆豪!!やっぱアイツおもしれぇなァ!!】
凄いね。みんなからめちゃめちゃブーイング飛んでるよ爆豪。お前それ、もはや才能でしょ。
「ん?……へぇ」
壇上から降りてくる爆豪を見ると、一瞬目があってガンを飛ばしてきた。ふぅん……良いじゃん。本気で私に勝つつもりなんだ。轟とはまた違った感じにギラギラしてる。
【流石だなティーンエイジャー。っとと、まったく……言葉選びがこの世界に毒されちまってるぜ】
良いんじゃない相棒?貴方もこの世界の一員ってことだよ。
【おま……言うようになったじゃねえかクソガキ……】
相棒は相棒だよ。だって私の相棒だから。
私が相棒と会話してる間に第一種目目の説明があった。なんか障害物競走で、要はゴールまで1番にたどり着けば良いらしい。わかりやすくて良いね。
「スタート!!」
「やっぱそうくるよね轟」
スタート位置の最後尾で待機していた私。ミッドナイト先生の合図と同時に私は大きくジャンプしスタートゲートに掴まる。寒い、と思った瞬間には地面が氷漬けにされていて、不意を食らった殆どの生徒が足止めを食らっていた。A組の生徒達を除いて。
「お盛んだねぇ……」
体を切り離して足を救出する人。手を大きくして氷を砕く人。体を鉄にして同じく砕く人。100人以上の人の個性を見れる良い機会……合格しなかっただけでヒーロー課にはいない強個性の奴も多くいる。先生に良さそうな個性を見繕うついでに色々と見させてもらおう。
急がなくて良いのかって?何言ってんのさ。
私がこの程度のハンデで追いつけないわけがないじゃない。
「ぱっと見で増強系が10、シンプルな発動系が30、使い勝手が良さそうなのが……20かな?練習しないと行けなさそうなのが大半だね」
【アイツにちょうど良さそうなのもあんまりねぇな】
まあ、『先生』は最近シンプルな増強系の掛け算が楽しくて仕方がないみたいだし。まあ気持ちはわかる。バフごりごりに積んで一撃で敵を吹き飛ばすのは爽快感があって良い。
「あっれれぇ!?君A組だよね!!僕たちB組より優秀なはずのA組がこんな後ろにいて良いのかなぁ!?良いわけないよね!?」
なんだコイツ。ていうか誰?うざすぎて目を向けそうになったんだけど。
「…………じゃあ先行く」
「うわぁ!?」
加速。思いっきり踏み込むと地面が割れる音がした。あらら、ごめんね。
中団後ろから一気に先頭集団手前まで来ると、何故か人だかりができている。
「に、にげろー!!」
「むりむりむりーーー!!!!」
うわぁ、なぁにこれ。
人が吹っ飛び、逆走してくる生徒までいる。上を見上げてみれば、入試で戦った0ポイントのロボ。どうやら障害物一つ目らしい。よくみれば一体だけ氷漬けにされており地面を転がっている。
「どりゃあーーー!!はあ、俺じゃ無かったら死んでたぞ!?」
なんか出てきた。違う、切島だ。多分凍ったロボの下敷きになったんだと思う。
「ん?陽炎じゃねえか!!なんでお前がこんな後ろにいんだよ」
「他の人の個性見てた。どうせ後からでも追いつけるし」
「なるほどな。全然思いつかなかったぜ。ていうかお前しか出来ねぇだろそれ」
まあね。爆発的な加速力をどんな状態でも出せるなら話は変わるけど。
「それじゃ、先に行く。だいたい個性見たから、轟と爆豪抜かしてくる」
「自信すげぇな!?いや、お前なら出来るか。お互い頑張ろうな!!」
「うん」
切島はサムズアップすると埋まった下半身を個性を使いながら引き抜いた。
『ヒョウテキハッケン、コロス、コロス』
「ま、また来たぞー!!」
走り出そうと思ったら、ロボが前に出てきて邪魔してきた。面倒臭いし後ろの奴に任せようかと思ったら、ビビっているのか誰も率先して行こうとしない。
……切島、そんな期待するような目で見ないでよ。仕方ないなぁ。
「いや、だってお前がやる方が早いしな。よし陽炎!!A組の強さ見せてやれ!!」
「……はぁ、邪魔」
両足でしっかり地面を踏み込み跳躍。ロボの頭上まで来たところで右足をしっかり伸ばして回転をかける。あとはそのまま振り下ろすようにロボの頭に叩きつける。
『ヒーロー科A組陽炎、綺麗な踵落としでロボを一撃粉砕ィ!!アイツどうなってんの!?』
『入試のヴィランポイント1位だ。もちろん0ポイント敵も倒してのな。あの程度陽炎には障害にはなってねえんだろ』
実況プレゼントマイク先生、解説ミイラマン改め相澤先生だ。温度差がすごいね。
「じゃあね切島。また後で」
「ッ!!おう!!」
軽く激励したけど上手く伝わったらしい。サムズアップして私を見た。
「どけ……
今更ロボ程度とか……マキア相手にしてる方が楽しいね。お陰で筋肉ダルマとの戦闘は得意だ。
◆
「あ、睨美ちゃん。後ろにいたんだね」
「……麗日。行かないの?」
「ちょ、ちょっと怖くて……」
第二エリア『ザ・フォール』大きく穴が空いた中に点々と足場がある。そしてそれらがロープで繋がっている綱渡り。なるほど、爆豪に有利だね。擬似的に飛べるしアイツ。ていうかちょっと前の方に爆豪らしき爆発が見える。どうやら先頭はすぐそこらしい。
「じゃあ先に行く。また後で」
「う、うん!!って、どうやって……わっ!?」
どうやってって……跳ぶだけだよ。崖の縁に立ち前方に向かって跳躍。今の体はパンチの衝撃波が出るくらいには強くしてる。これくらいは問題ない。
『先頭争いしてる轟、爆豪がもちろんだがその後ろでもとんでもねぇことが起こってるぜ!!陽炎が足場と足場をひとっ飛びしてやがる!!兎かなんかかアイツ!?』
『どっちかっていうと蛇だ。体の使い方が上手い。着地の時受け身を取っていないが反動が少なく見える。着地と同時に膝を曲げるなどしてしっかり軽減している。それより……何足止めてんだバカども』
あらら、ドンマイ麗日。早く行かないと後で相澤先生にしばかれそう。
ぴょんぴょんと、それこそ兎みたく進んでいるうちに爆豪と轟に追いついた。
「あぁ!?遅かったじゃねえか蛇女!!半分野郎と一緒にぶっ殺す!!」
「陽炎か……悪いがお前は厄介だ。悪く思うなよ」
「……そうこなくちゃ」
そういう2人は私を見ない。なるほど、『目を合わせる』対策か。轟が私の前に氷壁を展開してきた。
「甘い」
殴る。それだけで氷はあっけなく砕け散った。
「なにっ」
「退いてろカス!!おらよぉ!!」
BOOM!!!!
爆豪が前を向いたまま私に向けて両手から爆発。邪魔をしつつ加速していった。なるほど、そこそこ痛いね。
「楽しくなってきた」
最終エリアに到達すると、またマイク先生の実況が入った。
『最終関門は一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!』
地雷。たしかに地雷が埋まってると思わしき場所だけ地面の色が違う。一個だけ威力を確認しておこう。
ドカンと激しい音が鳴った。ああ、全然じゃん。そっか、じゃあ……走るか。
ズドドドドドドンッ!!!
『おいおいおいおい!?陽炎が地雷の爆風をものともせずそのまま走り抜けてやがる!!なんだありゃ!?』
「チッ……後続に道作っちまうが……仕方ねえか」
「蛇女ァ……殺す!!」
『轟、爆豪も追い縋る!!一位争いはこの3人で決まりかぁ!?』
ズドォォォォォォォォォォォンンンンンン!!!!!!!
「ッ、なに?」
「なんだ?」
「アァ!?」
3人して後ろを振り返る。なんとびっくり、今までと比にならない爆発が起き、その前をあの緑谷が飛んでた。ああ……良いね緑谷。期待以上だよ。だって期待してなかったもの。
「あは……急がないと……」
呆気に取られてる2人より先に前を向き走り出す。気がつけば緑谷は私達よりクビ差くらいで前にいる。そこでさらに驚くべき行動に出た。
ドンッ!!
「ッッッ!!!……やられた」
なんでか持ってた金属片。緑谷はそれを地面に叩きつけ前方の地雷をさらに爆発させて加速した。加速なのかなあれは。
【いや、意図的に吹き飛ばされたっていうほうが正しいだろ】
だよね。
「やっば」
今の爆発で私も少しのけぞった。意識外からの爆発で少し体が防御姿勢を取ってしまったらしい。でもすぐに走り出す。幸い轟と爆豪も今の爆発をくらったらしいから私は最低でも2位で確定だ。
「クソがァァァァァァァ!!!!」
後ろから声が聞こえたと同時に私もゴール。結果は2位だ。
「『目を隠す』」
緑谷にほとんどの人の注目がいっているうちに私は自分の姿を隠す。少し一人でいよう。幸い注目の的は緑谷、『目を奪う』個性が教えてくれる。
『先生』からは特に何も聞いてない。体育祭で仕掛けてくることもないし、特に結果を出せ、とも言われてない。恐らく見てるんだろうけど……(黒霧さんが)不甲斐ないことだけはしちゃダメだね。だって、褒めて欲しい。良くやった、って頭を撫でて欲しい。私にはそれだけで充分なのだから。
「上に行くものにはさらなる受難を、雄英に在籍するもの以上これから何度でも聞かされるよ!!これぞ、Plus ultra!!」
ミッドナイト先生が説明してる。私は2位。42位から5ポイントずつたされていくから210ポイント?
【205ポイントだバカ。単純に掛け算してんじゃねェ】
「そして予選通過一位の緑谷出久君持ちポイント1000万!!」
クイズ番組でよくある奴じゃん。
【闘争心を煽るにはこれくらいわかりやすくて良いだろ】
予選を通過した人達が獲物を狙う獣の目をしてる。A組も関係なく全員。
その後の説明を要約すると、種目は騎馬戦。15分の間でチームの合計ポイントが書かれた鉢巻の争奪戦らしい。チームは各自で決めること。
「それじゃあこれより15分!!チーム決めの交渉タイムスタートよ!!」
「睨美ちゃーん!!」
「陽炎どこ行った!?」
「え、やば」
個性使ってて良かった。まあ確かに私の『目を合わせる』があれば騎手も騎馬も関係なく全員石化。そのまま終了時間まで石化の時間調整して全部の鉢巻持ってタイムアップで勝ちなのだ。A組のほぼ全員が私狙いなのは仕方がないだろう。まあ、私決勝まで『目を合わせる』使えない縛りあるから関係ないけどね。
「なんでこんなに陽炎見つからないんだー!?」
「まさか会場にいないなんてことないよな!?」
いるよ。私、貴方の真横なんだけど上鳴。メリーさんでもやってあげようか?
「上鳴、ちょっといいか」
「え、なんだよ轟……」
あらら、早速チーム決めしてる。さて……じゃあ私も……まずは……あ、居た。
「ねぇ」
「ッ!!誰だお前……」
「私?私h……」
刹那、私の体は動かなくなった……あらま、マジか。じゃあよろしく、相棒。
【ったく、しかたねぇな……】
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
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アザミ
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クロハ
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カゲロウデイズ
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メデューサ
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ゴルゴン
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スネーク・アイ
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カンナ(永遠)
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サルビア(家族愛)
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エーデルワイス(大切な思い出)
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モミジ(大切な思い出)
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カエデ(大切な思い出)