蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
15話
「はぁ……驚いた。コイツ、一体どこから出てきたんだ」
「どこからだろうなァ」
「ッ!?」
ハロー、体が動かない私だよ。なんでだろうね、ってまあ分かってるけど。
「お前……なんで動けて……ッ」
「お前如きが理解できることじゃねェんだよ。ほれ、起きろ相棒……いって……」
「…………あぁ、ありがと相棒。助かったよ」
ぺチッと私の頬が自分の手で叩かれやっと体が動いく。体が動かないってこんな感じなんだね、いやー知らなかった。相手には良く押し付けるのにね。とりあえず相棒と体の主導権入れ替えれて良かった。出来なくても髪の毛の蛇達が自主的になんとかしてくれてただろうけど。
「初めましてじゃないね……えっと……普通科の人。見ての通り、そういうの効かないから普通に話をしよう」
「……分かった。普通科、心操人使だ」
「ヒーロー科A組、陽炎睨m……っと、しつこい」
また意識を飛ばされた。警戒しすぎじゃない?
「ホントに効かないのか……」
心操が目を見開いて驚いている。もう抵抗の意思はないらしい。
「なんで俺の個性を知ってる」
「1種目の時に後ろから見てた。虚な目をした生徒が心操の神輿になってて気づいた」
「……はあ、なるほどな。で、俺に何の用だ?」
「チーム組んで。勝たせてあげる」
「……は?」
心操の個性、今のを見る感じ声をかけてそれに反応したら?ってところが発動のトリガーな気がする。私好みの初見殺し。
「騎手は心操、適当に煽るなりして声さえかけてしまえばいい。下の奴らも同じ」
「……まあいいか。他のメンバーはどうするつもりだ」
「1人は目星つけてる。もう1人は適当に洗脳してよ」
「お前な……」
ぶっちゃけA組はA組で固まってるし、心操の第一印象が2週間前のアレだからチーム組んでも連携がおぼつかなさそうなのは目に見えてる。
「俺と組んでお前にどんな得があるんだよ」
「諸事情で個性禁止縛りしてる。個性を知られてない貴方がいるのが1番勝ちやすい」
「……なんで初対面の相手をそこまで信用できる」
「信用はしてない」
「あ?」
「貴方の個性に期待している」
心操が目を見開いて私を見つめた。癖なのか頭をかいていた手を止めだらんと両腕が重力に引かれている。数秒そんな状態が続いた後、ニヤッと彼は笑っていった。
「んじゃ、俺もお前に期待して良いんだな?」
「愚問」
「交渉成立だ」
【義爛の悪いとこ、影響受けてるよなァ……】
悪どい笑みを浮かべながら握手。同時に個性を解除して私に対する認識を通常に戻す。
「あ、睨美ちゃんいたー!!って知らない人と一緒にいる!?」
「ケロ、あの人と組むのかしら」
そんな声が聞こえてくるけどごめんね皆。私、勝ちには貪欲なの。
「1人連れてくるから、後1人よろしく。無理そうだったら別に良いよ。騎馬の人数足りてるし」
「善処するが期待はすんな。当たり障りのない使えそうなヤツなんてヒーロー科にゃいねぇだろ」
「いないね」
「……そうかよ」
そうして私たちは別れる。さて、まあ皆ならわかると思うけど私が狙っているのは1人だ。
「尾白」
「わぁ!?か、陽炎さん……一体どこから」
「チームは?」
「まだだけど……あの、だから…」
1人確保、慈悲はない。簡単だった。
◆
『15分のチーム決め兼作戦タイムを経てフィールドに12組の騎馬が並び立った!!』
『ほう、なかなかおもしれぇ組が揃ったな』
放送席からそんな声が聞こえるけどまあいいや。
「心操、乗っていいよ」
「ああ頼むぜお前ら」
「こっちこそよろしく」
「………」
上から私、心操、尾白、庄田二連撃。最後のは心操が連れてきた人。彼によれば、『動けるデブ』らしい。どれくらいか聞いてみたところ、なんなら体育会系、とまで言わしめたらしい。良いね。
「ね、ねぇ陽炎さん……やっぱり洗脳は解いた方がいいんじゃないかな。流石に、気づいたら終わってるなんていうのは流石に……」
「……どうする心操?」
「解いてもいいが、今更同意得れんのか?」
「それは……」
正直、終わったあとは謝りに行くつもりだし誠意は見せるつもり。いくらヴィラン予備軍というか共謀者で犯罪者な私とはいえ義理は通す。いつかの日に出会った気前のいいヤクザのおっさんが、そこだけは守れってよく言ってた。最近は病院に入院してるらしいし、そろそろお見舞いに行こうか悩む。
「尾白が決めていいよ。時間ないから簡潔にね」
「…………ごめん、陽炎さん。心操?だっけ、解いてくれないか」
「分かったよ。肩でも小突いたら勝手に解ける」
「えい」
「ッ!?ここは……?君たちは!?」
君たち、そういう感じね君。
「庄田君だよね。先に謝っておくよ、ごめん」
「……もうすぐ騎馬戦が始まる。後でちゃんと謝るから今はチームとして戦って欲しい」
「洗脳したのは悪かったよでも、俺も必死なんだ」
「なんだかよく分からないが、今はつべこべ言っている暇はないのではなかろうか……分かった。協力しよう」
話がわかる。コイツ聖人か?薄い青色の髪の毛をしたぽっちゃり目の男子、B組庄田だ。
「基本は俺が洗脳して騎手に自主的にハチマキを渡させる。だから相手の騎馬は任せた」
「了解」
「崩されないように俺の尻尾でしっかりバランスを取るよ」
「ツインインパクトという、打撃を数倍の威力にしてもう一度同じ場所に発生させる個性です。足手まといにならないようにする所存!」
寄せ集めだし、組もバラバラ。でもどこか纏まっていて良いチームっぽい。私が前騎馬、右後ろに尾白、左後ろに庄田。騎手に心操。ハチマキは首にかけてる。
『STARTォ!!』
「決勝に行く」
周りが緑谷を囲み出した。まあそりゃそうだと言ったところ。1000000点なんて取れば勝ちなんだからみんな狙う。でも私たちの狙いはあくまで決勝進出。2位から4位までに滑り込めば良い。つまり、
「低ポイント騎馬を集中して狙う」
まずはあのツノが生えてる女子のチーム、芦戸じゃないよ?
「お前の角、短くねぇか?」
「ワット!?なんてこt……」
「どうした角取!?」
騎手が動かなくなった。騎馬も混乱してるみたいだし、
「心操」
「ああ、もらってくぜ。悪いな」
微動だにしない騎馬からハチマキを掻っ攫う。好戦的な奴らが緑谷の方に言ってくれてるおかげでやりやすい。人を使ったミスディレクションが自然に起こってる。
「ナイス心操君!!」
「素晴らしい!!次も行こう!!」
激しい抗争が行われてる緑谷の方に警戒が行きがちで私たちの方に全く気づいていないチーム。あと2組ある。
「……ゆっくりで良い。あんまり早く悪さして、気づかれても困る」
「なるほどな。で、どうすればいい?」
「もしかしたら轟が無差別に凍らせる可能性がある。あの黒髪の女子が騎手の騎馬と、眼鏡かけたガタイのいい男子の騎馬の後ろらへんで待機する」
「よし、じゃあ外周ギリギリから回ろう」
緑谷を見るとなんか飛んでる。麗日の個性かな?常闇と麗日が同じチームなのはわかるけどもう1人は誰だろう。メカメカしいからサポート科だとおもうけど。
………信濃どうしてるのかな。昼休憩にでも会いに行こう。
「庄田、B組メンツの個性聞いてもいいのか?」
「構わない。B組は物間を主軸に対A組を意識している。もちろん僕のようにあまり乗り気ではない者もいるが、これは騎馬戦。恨みっこ無しと言われている」
なるほどね。なんかやけにウザいヤツいたけどあいつが物間か。なんか嫌味ったらしいから敵視してるわけね。
「あの金髪……物間は?」
「触れた相手の個性を5分間コピー出来る。たまにコピーできないこともあるそうだ」
「へぇ」
なるほど、たしかに爆豪や切島の個性を使ってる。にしても5分か……競技の制限時間いっぱいでもなかなかだね。
「仕方ねぇ!!一旦別のやつから……いたぞ!!」
「庄田、アイツは?」
「鉄哲徹鐡、個性は体を鉄のようにすることができる」
切島みたいな感じ。まあ鉄だったら金属疲労でそのうち柔らかくなるはず。その鉄なんとかの騎馬がこっちに向かってきた。
「尾白は尻尾で後ろ支えてて。庄田は私の前方に個性設置。あの騎馬を私達の正面で足止めする。心操、宣戦布告の時に聞いたでしょ?アイツ多分煽りに弱いから物間か誰かの悪口適当に言って。人情に厚いタイプのはず」
「「「了解」」」
こんなに捲し立てたのはいつぶりだろう。いつもは『目をかける』で伝えれるから喋らないんだよね。
庄田を正面の位置に移動させ思いっきり地面を殴らせる。痛そうだけど怪我しない程度だし我慢してもらった。
「引きつけて」
「おうおうおう!!悪いけど庄田!!お前らのハチマキもらってくぜ!!」
「今」
「ツインインパクト……
「うお!?なんだぁ!?」
突然、鉄哲の真下の地面が破裂し騎馬の足が止まった。良いね庄田。さすがは名前が庄田二連撃なだけある。
「おい、お前らのリーダー……物間っつったっけ?散々A組バカにしてるみてぇだけど、人煽るほどヒーロー科ってのは暇なのか?やだねぇ……そんなんじゃ普通科の俺でも足元掬えそうだな」
「んな、てめぇ!!クラスメイトの悪k……」
「前騎馬のお前、ヴィランっぽい見た目してるよな」
「お前俺が少し気にしてることをぉ!?……ッ」
「右の黒髪……地味だな」
「人の心がねぇのかおm」
待って、え……?待って。心操強すぎない???嘘でしょ???
「ハチマキを外して俺に渡せ」
「…………」
「ッ!?何をしているのですか!?」
左後ろの女子が驚いているが無意味。前騎馬と右後ろの騎馬が動けないから彼女も動けない。
「ありがとよ」
「ッ……あの凍ってる場所へ行く。足元凍らされてるのが3チーム。全部奪う」
運動神経の高い私達3人、私や尾白は武術の経験があり足の使い方もなっている。足取り良く移動して轟がやったと思われる氷漬けの地面がある場所に行った。そこでは障子を含めた3チームが氷で足を取られていてもたついている。つまり今がチャンス。
「心操、個性使わなくていいね?」
「ああ、この程度なら問題ない」
氷をなんとかしようと足元ばかりに気を取られてるバカが多い。
「ああ!?取られた!!」
「ッ、庄田!?」
「陽炎!?いつのまに……くそ、やられた!!」
《おおっと心操チーム!!正面から鉄哲チームを打ち破ったかと思えばここで轟の被害者を漁夫の利ィ!!》
《急造チームにしては良くやってる。荒っぽさが目立つがな》
ポイントうまうま。1000万持ち続けてる緑谷を論外とするならばおそらく2位。元々高得点を集めたような形になっている轟、爆豪チームにさえ、約8チームの合計ポイントは圧倒的。ここでどっちかを落とせば優勝は正直楽とも言えるけどそれは面白くない。何より実況席に目を向ければクライアント様がこちらを見ている。これ以上は適当に誤魔化すしかない。
「あとは逃げで良い。異論は聞く」
「俺はねぇ、決勝に行けるだけで充分だ」
「僕もだ。無理矢理とはいえ、実力でポイントをもぎ取ってきた。これ以上は望みすぎではなかろうか」
「俺もまあそうだけど……あんまり活躍してないんだよなぁ……」
尾白だけが遠い目をしてる。それ言ったら私は個性も使ってないのだから最初から最後まで何もしてない。
「……私に合わせられるだけでも相当。最悪私が心操おんぶするとこまで考えてたから感謝してる」
「それは俺の体裁が悪いから本当によかった」
小柄な女子におんぶされる心操。うん、絵面がすごいね。
「庄田、そこらじゅうの地面に個性使ってて。弱めで良いから」
「障害物競争の地雷原の再現……了解した」
「尾白、後ろからの不意打ちは任せる。この中だと範囲攻撃に1番対処しやすいのは尾白」
「オッケー、ここが正念場だからな」
「心操は極力温存。他の奴らに出来るだけ個性バレたくないはず」
「……なんでそこまでしてくれる」
チームを組んだこと?それとも騎手にしたこと?それとも慎重にやってること?そんなもの決まってる。なんたって私は自己中なのだ。規則に縛られる場じゃなければ、私が良ければ、面白ければ、楽しければ良い。
「後で私が面白くないから」
「……ははっ、面白いなお前」
結局、私たちの警戒も無駄になりそのままタイムアップ。1位轟チーム、2位私達、3位爆豪チーム、4位緑谷チームという結果になった。
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
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アザミ
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クロハ
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カゲロウデイズ
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メデューサ
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ゴルゴン
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スネーク・アイ
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カンナ(永遠)
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サルビア(家族愛)
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エーデルワイス(大切な思い出)
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モミジ(大切な思い出)
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カエデ(大切な思い出)