蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
18話
「はぁぁぁぁ!!!!」
「うおらァァァァァァァ!!!!」
戦況が変わった。今まで攻め続けていた尾白の攻撃が弱まり切島も攻撃が通るようになっていた。しかし、やはり武術の心得がある尾白に対してステゴロ気質な切島では部が悪い。さらに独学による尻尾を交えた変幻自在の動きが切島を苦しめている。
それでも切島は負けていない。皮膚の硬化、爆豪の前騎馬を務めたのは伊達じゃない。尾白の攻撃を幾度となく受けても怯むことなくむしろ尾白に向けて歩みという名の攻撃を続けている。
尾白に教えてあげればよかった。はるか昔、中世と言われた時代のヨーロッパ。鎧を着た兵士が槍やら剣やらで攻撃をしていた頃、人の構造上鎧をつけることができない場所が必ずある。
関節だ。なんなら甲冑を着ると首すら動かせなかったとか。要は体を動かすためには少なくとも脇、股関節、膝裏は絶対硬くできない。
まあ何が言いたいかって言うと、切島が個性使って動き続けてる限り関節を攻めれば普通の人肌だ。
「はぁ……はぁ……がッ……!?」
「モロ……イッパツッ!!」
疲れか痛みか、ふらついた尾白の顎に硬化した切島の拳が決まった。尾白の体が浮き、ステージの際まで吹っ飛んだ時、尾白の尻尾が動いた。
「……Puls」
明らかに脳が揺れているはず、恐らく無意識かどうかすら分からないような刹那。耳がいい個性か私くらいしか聞き取れないような声で呟いた尾白はステージに尻尾を突き立て減速&完全停止。力の入れすぎで血管まで浮き出ているような彼の尻尾はもっと前へと彼の体を前方に投げる。
白目剥きながら空中で尻尾ごと体を回転させ遠心力を生んだ尾白は、まだ倒れないのかと呆気に取られている切島の頭に上から凄まじい勢いの蹴りを入れた。
「ウルトラァァァァァァァ!!!!」
悲鳴すらあげる隙間なく、切島は頭から地面へとめり込んだ。勢いのつきすぎた尾白はそのまま切島の後ろへとすっ転んでいきその場で倒れた。
「あれヤベェんじゃねえの!?お互いヤバいとこ入ってるって!!」
峰田が叫ぶ。しかし私は何も言わず見続ける。
そして……10秒が経った、15秒が経った、20秒が経った、30秒が経った。
「まだ……立てる……ッ!!」
切島が立ち上がった。元々全身を硬化させていたのだろう。脳天から蹴り入れられてもギリギリ意識を保てていたようだ。
「尾白君気絶!!よって勝者、切島鋭児郎!!」
歓声が会場を埋め尽くした。
「素晴らしい試合だった」
「互いに死力を尽くした……その上で切島君が立ったのか」
常闇と飯田が呟いた。そうだね、私もそう思う。
「まぁ……どっちが勝つかは、気合が大きかった」
「えぇ、お互いに意識を保つので精一杯でしょう」
私が言うと八百万が同意する。見せてくれるね尾白、良い試合だったよ。
そしてロボによる2人の救急搬送。切島はすぐ治るだろうけど、尾白は当分目を覚さなさそう。
ステージ修理のため5分ほど待機。セメントス先生による補修が行われ次の試合が始まる。と、その前に、私が見ていなかった時の試合が2試合あるらしい簡潔に内容を聞いた。まあこれといって特にいうことはない。芦戸VS庄田では芦戸が庄田の周りの地面を溶かし衝撃を加える隙を与えずアッパーを決めて勝利した。フィールドの有利不利が大きかった試合とも言える。
その次、常闇VS八百万。八百万が創造で作る隙をついてダークシャドウで押し出されたらしい。押し出すだけなんて常闇は紳士だねぇ。
そして最終戦。
「試合開始ッ!!」
爆豪VS麗日。
正直麗日では無理だ。でも言わない。明らかにみんな分かっている。分かっているはずなのに麗日に出来る事を言い合っている。
爆発。
低姿勢から突っ込んだ麗日に向けて無慈悲な爆破。吹き飛ばされた麗日はもう一度突撃した。
「……瓦礫が思ったより少ない……?」
「え、ああ確かに。爆風であんま見えないけど、あれだけ強烈な爆破したのにほとんどステージの破片が散らばってないよ!!」
私の呟きに耳郎が反応し、口田が頷いた。
「……低姿勢で突っ込んでるのは加速だけじゃないってことか」
上着を浮かせてダミーにしたりしているが無意味。爆豪の前ではどんな策も無力化され爆破される。
ふと見上げてみれば、いつの間に触ったのか大量の瓦礫が宙に浮いている。なるほど、低姿勢だったのは爆豪の爆破をステージに向けさせるようにするため、そして武器を蓄えるためということ。すごいね麗日。いや……もしや緑谷……?
結果から言おう、麗日は負けた。張り巡らした策を容赦なく一撃で粉砕された麗日は体力の限界でその場に倒れ伏した。
途中、戯言ほざいてたプロヒーローが居たけど、相澤先生が一蹴してた。転職サイト見ろは流石に笑いそうになった。あのプロ死ねば良いのに。
そして第二回戦の出場者が全て決まったことにより、少しの休憩を挟む。
「緑谷、アレ緑谷の入れ知恵?」
「ううん、麗日さんが自分で考えた作戦だよ。でも、あんな捨て身の作戦……」
「個性使うだけで捨て身になる緑谷に言われたくないと思う。あれだけ私が付き添ったのに指一本やりやがったヤツに発言権はない」
「ぐふっ……陽炎さん、お、怒ってる……?」
「……別に」
「陽炎君!?試合前から精神攻撃を仕掛けるのはやめたまえ!?」
「いや、そういうつもりじゃ……」
メンタルよ。緑谷の豆腐メンタルがいけない。
「……とりあえず、もうすぐ二回戦始まるから行けば緑谷」
「あ、そうだった。急がなきゃ!!」
私の助言に緑谷が走り出す。
「話を逸らしましたわね陽炎さん」
「……ちょっと何言ってるか分からない」
八百万から目を逸らしながら呟く。
「それにしても、緑谷と轟か……ぶっちゃけ轟一択じゃね?」
「陽炎はどう思うよ。体育祭前に一緒に訓練してたんだろ?」
「轟。ほぼ100%」
「だよなー」
復活した上鳴や瀬呂と話しながら私は考える。一緒に訓練したと言っても力の使い方をアドバイスしただけ。体を壊さずに使える個性の上限が5%の威力だとしても、ただの氷を砕くだけなら問題はないはず。しかし相手は轟、自分に向けて生成され迫ってくる氷を砕きながら接近できるかと言われれば無理だ。緑谷はまだ一瞬、放出することしかできないのだから。
「そろそろ試合が始まるぞ。陽炎君、僕たちも控え室に向かおう」
「うん」
飯田の一言で思考を中断、席を立つ
「頑張れよー」
「ああ!!皆に恥じない試合にしよう、陽炎君!!」
「……もちろん」
2人で少し話しながら移動、お互いの控室へ向かうため途中で別れる。
【騎馬戦で見せたあのスピード、どうすんだよ】
適当に躱すよ。どのみち飯田は私の目を警戒して目を瞑るか逸らすはず。戦闘中に敵から目を離すなんて愚行、普通ならしないけど私なら別。いくら超スピードとはいえ狙いが甘くなるなら付け入る隙は十分にある。
控え室に到着。特にすることもないのでスマホを開き中継を見る。
『全力でかかってこいッ!!』
緑谷が叫んでいる。見る限り右手の指は全て折れてる。左腕に関しては腕ごと折れているように見える。まあ内出血でサツマイモみたいなことになってるだけでもしかしたら折れてないのかもしれない。恐らくどうしようもないほどの激痛が全身を駆け巡っているはずなのに何故立ち上がるのか。
そして轟、ステージ全体が氷の破片が散らばっていたりしている。どうせいつものブッパだろう。恐らく100%の力を氷にぶつけて砕き続けた。でも右手が全滅したから左で撃ってたけど途中轟の起点で腕ごと使う必要が出てきたってことかな。
まあどうでもいいや。
私はスマホの電源を落とし束の間の精神統一をするために目を閉じた。
◆
緑谷視点
「うぐ……ッ」
指が痛い。でもいつもよりは痛くない!!陽炎さんとの特訓の効果が出てる。ギリギリ折れてない、内出血で収まってる……気がする。
深呼吸だ。
「スゥ……ハァ……」
100Wを、10分…いや、10秒でいい。轟くんとの間合いを詰めるのには…足に5%で、2秒でいい!!
(ワン・フォー•オール、5%!!)
「何……!?」
次、右腕5%!!
「ス……マッシュ!!」
入った。轟くんは僕に反応できてない。足も腕も壊れてない!!できた!!やっとできた!!でも、それ以上に…
「ぐぅう……!!」
最初に壊してしまった指が痛い。それでも氷結を防ぐにはあれしかなかった。今は次を考えろ!!
「なんでそこまで!!」
轟君の右足からの氷結を、同じように右足に5%で一瞬踏み込む…足りない、仕方ない!!
SMASH!!
「期待に応えたいんだ!!笑って応えられるようなかっこいい人に……助けてくれた人を、今度は僕が助けれるようなヒーローに」
オールマイトみたいなヒーローに!!
「なりたいんだ!!」
全力だ!!今の僕にできる
「全力を出さすに一位になるとかふざけるなって今は思ってる!!」
君にとってそんなに
それでも、君がエンデヴァーに囚われているというのなら、僕は君を!!
「親父を…「君の、力じゃないか!!」…!!」
君を助けたい!!
◆
ゴォッ!!っと爆音と揺れが控室まで届いた。
「……緑谷?」
嫌な予感がした私はスマホを取り出すが電源を落とした事を思い出した。内心、舌打ちしながら『目を凝らす』個性を発動。ステージを上から俯瞰するように全体を見る。
「なにこれ……」
無惨。ステージの状態はそう表現するしかない。煙で見にくいけど大量のセメントが散らばりステージはボロボロ。まるで爆発でもあったかのような現場に私は思わずつぶやいてしまう。
そしてステージの端で何か動いて見えた私は視点を移動させた。そこには気を失い体もボロボロになった緑谷が横たわっており、轟はステージ上で立っている。個性で見ているだけなので実況の声を聞くことは叶わないが状況は分かりきっている。
轟の勝ちだ。
こりゃステージの修復に時間がかかるね。尾白と緑谷のお見舞いにでも行こうか。
保健室に向かって歩いている途中、復活したらしい尾白と出会った。
「負けたよ……」
「良い試合だった。切島相手によく粘った」
「まさか一歩も下がらせることができないとは思ってなかったけどね」
「切島の根性勝ち」
「根性の鍛え方、切島に聞いてみるか」
尾白が間違った方向へ成長しようとしている気がする。まあいいか、あって困るものじゃない。
「じゃあ俺は観客席に戻るよ。陽炎さんも頑張って」
「ありがと」
尾白と話終わり保健室に到着。すでに麗日や飯田、峰田も来ていたらしい。
「緑谷」
「陽炎さん……」
腕に包帯が巻かれまくっている緑谷、なんか見慣れたな……
「制御できたよ、一瞬だけど……」
「ごめん、ほとんど見てなかった」
「えぇ!?いっつ……」
途中から見たし、すぐスマホ閉じたし。決着は見たけど。
「アンタが個性の使い方教えたんだって?よくやったよ。今までより断然マシな怪我だよ」
「……というと?」
「いつも通りなら、これから先右手が少し歪んでたかもしれないね。怪我することで成長が実感できるなんてふざけてるよ」
リカバリーガール、なんかすごい怒ってる。
「もっと訓練しなきゃ……また手伝ってもらえないかな陽炎さん」
「たまにで良いなら。私もこれから自分の訓練しなきゃいけないから。緑谷、惜しいとこまで来てる。でもまだまだ効率的な使い方に気づけてない」
「効率的な……使い方って?」
「自分で気づけ」
「うっ、ハイ……」
緑谷ならすぐ気づくでしょ。自己も含めた分析得意だから。
「大丈夫そうなら良い。じゃ」
返事を聞くことなく私は保健室を出る。なんか、師匠みたいなこと言って出てきちゃったな。別になんでもないのに。
そして待つこと10分ちょい。私と飯田の試合が始まる。
鎧云々の話は進撃の巨人の鎧の巨人の時の話から。それ以外のソースは無し。
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
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アザミ
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クロハ
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カゲロウデイズ
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メデューサ
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ゴルゴン
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スネーク・アイ
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カンナ(永遠)
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サルビア(家族愛)
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エーデルワイス(大切な思い出)
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モミジ(大切な思い出)
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カエデ(大切な思い出)