蛇睨み 【All For 『All For One』】 作:ゼノアplus+
19話
『数々のヒーローを輩出してきたエリート一家の次男坊、飯田天哉!!VSどんな体してんだよお前!?130万Vの電撃を受け切り、目があった相手を石化させる現代のメデューサ、陽炎睨美!!』
どんな紹介だか、マイク先生のテンションの高い実況に会場も盛り上がっている。
「陽炎君、君と戦えるのを楽しみにしていた」
「……そう」
「君の蛇達もやる気十分だな!!」
個性バレしたということで特に隠す必要もなくなった髪の毛の蛇達を全員出してあげる。全員がしっかり飯田を睨みつけて己という個性の発動をまだかと待ち続けている。楽しそうだね君達。
「負けないぞ!!」
「私も」
「試合開始ッ!!」
ミッドナイト先生の合図で試合が始まる。飯田の行動は早かった。真っ直ぐ私へと突っ込んでくる。
「目を合わせなければ良いのだろう!?だったら目が合わないようなスピードを維持すれば良い!!」
まあそうだよね、飯田の個性ならそうするよね。
対する私は棒立ち……というわけでもなく、武術の型を構えその場で停止。私の習った八極拳はあの外道の我流ではあるものの、原初の八極拳からの派生だとギリギリ言える。超至近距離での一撃必殺、それが私の習った本来の型。緑谷相手に投げ技してたのは、【剛】ばかり成長させてる私に『先生』が【柔】も知っておきなさいと言ったため少し齧った。
目を瞑る。
「ッ!!君がその気なら、一撃で決めさせてもらうぞ!!トルクオーバー、レシプロバーストッ!!」
見てないけど見える。飯田のエンジンから蒼く炎が灯り極限までスピードが上がった。そして姿がかき消える。
「女性相手に思いっきり蹴りつけるのは不本意だが、君相手にそんなこと思っていられるわけがない!!」
声が聞こえたのは私の後ろ。私は振り向きざまに右足を少し上げ震脚。そのまま右肘を曲げ、超スピードで迫り来る飯田の体に叩きつける。
「『肘撃・轟破天』」
「がはっ……ッ!?」
私の踏み出した力強い一歩、すでにレシプロバーストで蹴り始めていた飯田に避ける術はなく私の肘打ちが綺麗に決まる。加速していたはずの飯田の体は私の一撃で綺麗に停止、真っ向から受けた衝撃が全身を巡っているだろう。
「マズいとこは外してる。致命傷じゃないよ」
「げほっ……うおぇ……
うずくまり、攻撃を受けた場所を押さえてえづく飯田のあり得ないというような顔。
「……まあそんなとこ」
激痛でそこまで頭が回らないのか、飯田は失念している。今私と目が合った。
そして同時に、飯田のエンジンが悲鳴のような音を上げてエンストした。
「時間切れが……!!……完敗だ。まいった」
「飯田君降参!!よって勝者陽炎睨美」
歓声が上がった。なんか私、一撃キャラみたく思われている気がする……が、敢えて言おう、計画通り。私のメインは『目を合わせる』を主軸に置いた搦手。世間様と私との情報アドバンテージの差こそ私の目的。
「動ける?」
「ああ、落ち着いた。まさか石化を使わせることが出来なかったとは……」
「違うよ飯田。使う暇が無かったから、こっちに切り替えざるをえなかった」
「なるほど……この試合、今後の糧にさせてもらう」
「うん」
飯田が握手を求めてきたので快く返し、互いにステージを後にする。控室でスマホを回収し電源をオン、特に何の連絡も来ていないのでイヤホンを挿しイヤホンを片耳だけあてがって観客席へと戻る。
「あ、睨美ちゃんおかえり」
「うん」
「飯田君を一撃とかすごい攻撃だったね!!」
「あれが最善手だった。石化は目が合わせられなかった」
ぶっちゃけあの蹴り食らってたら意識飛んでたかもしれない。狙いが完全に私の後頭部だったしあれは絶対に食らってはいけない攻撃だったと言える。
特にステージに破損もなかったのでそのまま次の試合、常闇VS芦戸に移る。
と言っても……ダークシャドウに酸は効くのか、とは薄々興味を持ってたけど……まさか無傷とは思ってなかった。そのまま押し切って常闇が勝った。ダークシャドウに私の『目を合わせる』は効くのか、いつか試したいね。個性因子の塊レベルだろうから望み薄だと思うけど実験しないとわからない。
そして2回戦最後の試合、爆豪VS切島。
今回の切島は自分から積極的に攻めた。ニトロのような汗で爆破を起こす爆豪は段々と調子を上げる。それを考えれば短期決戦を挑みたいのは分かるけど、連続爆破……マイク先生の言うところの絨毯爆撃が切島を爆豪まで近づけさせない。そのまま切島の硬化の綻んだところを一気に爆破し爆豪が勝ち上がった。
これでトップ4が出揃った。次から準決勝、1試合目は私VS轟、2試合目は爆豪VS常闇。
うへぇ……キッツ。やだなぁ轟とバトるの。緑谷と戦った時のリプレイ見せてもらったけど炎使うようになってるんでしょ?氷なら力押しで砕けるからまだ楽なんだけど、炎は無理だ。熱いのは好きじゃない。『目が醒める』個性で体の修復をしながらってやって良いなら轟程度余裕なんだけど……色々バレるから出来ない。拳も全力で振るえば風圧は出るけど轟が出す炎の火力によっては無理。
どうしよっ。
「睨美ちゃん、轟ちゃんとはどう戦うつもりなの?」
「……氷は砕く、炎は風圧でかき消す、近づいて目を合わせる……しかない」
「陽炎ちゃんでも厳しい相手なのね」
蛙吹の問いに悩みながら答える。
「……ごめん、ちょっとまだ纏まってない」
「ケロッ、私も話しかけて悪かったわ。準決勝、頑張ってちょうだい」
「うん」
皆に見送られながら控室に到着。改めてイヤホンを両耳にあてがって音楽を流す。緊張も解れるというもの……ん?
「緊張……してる?私が?」
【今までそんなこと無かっただろ。その感覚忘れんなよバカ】
体がうまく動かない。心なしか手が震えている……ような気がする。いや、大丈夫。なんたって私は『先生』の娘だ。あの人の顔に泥を塗るわけにはいかない……顔ないけど。
「よし、いける」
まあ、なんとかなるでしょ。
◆
「………」
「よろしくね轟」
だんまり。口数が増えた私に対して、緑谷戦で何か心境の変化があったのか余計に口数が減った轟。知ってる人からしたら盛り上がりに欠けるメンツだというだろう。
「緑谷戦、少しだけど見てた。あれは何?」
「……何のことだ?」
「試合が始まるからまた後で」
ここはステージ上、すでに私たちは向かい合っておりミッドナイト先生の試合開始の合図を待っている。
「両者準備はいいわね?」
私は無言で型を構える。それを見た轟も個性発動の準備を終え私を見据えた。
「スタートッ!!」
なめてるとしか思えないような氷結攻撃を躱し轟の真後ろに。
「なぜ炎を使わない?」
「!?」
いつの間にか居た私に驚くと同時に轟が右手をふるいまた氷結。
「初手、炎だったら熱さで多少はひるんだ。なんで?」
「お前には関係ねぇ……!!」
そっか。じゃあいいや。
「お前……なんで目を閉じてんだ」
「ハンデをあげる」
お前がそういうことするなら、私もそうしてあげる。氷結攻撃を躱し続け、躱せないほどのが来たら拳で砕く。
「お前が駆けつける現場の被害者はかわいそう」
「何を言って……!?」
そろそろ気づいてきた。轟の氷は私には対策しやすく無意味であること。
「川から救助された人は暖を求める。『プライドがあるので我慢してください、ごめんなさい』
ヴィランによって凍らされた人質相手に、『プライドがあるので溶かせません、ごめんなさい』
氷が効かないヴィラン相手に『プライドがあるから何とかして氷結を使おう、ほかの人ごめんなさい』
この間に一体どれくらいの人が犠牲になるのかな?」
目に見えて轟の顔が憤怒でゆがむ。見えてないけど『目を凝らす』で見てるよ。
「うるせぇ!!」
「おっと……」
轟の怒りの声と同時に、一瞬だけど左から炎が噴き出た。ああそっか、個性って身体機能の一つだから感情にも左右されるのか。
「この野郎……」
轟は右手をグーパーしながら私をにらみつけてきた。
「まずは一撃」
「がッ!?」
特に力を入れずに肘撃。後ろにのけぞった轟だけど、体全体を受け止めるような氷が右足から出てきて轟を支えた。
「飯田の時より威力が低いと思った?そりゃそうだよ、今のまったく力入れてないもの。炎を使えば有利になるかもしれないのに……ヴィランってこうやってヒーローをなぶって殺すんだよね、知ってた?」
「ゲホッ……さっきから、何を意味わかんねぇことを……」
「
「!!」
「遅い、大雑把、覚悟がない、そして何より弱い」
最初と同じように大規模な氷を生成し私を閉じ込めようとしてくる。超至近距離だったから反応する間もないと判断したんだろうね。
せっかくなので閉じ込められてみる。めっちゃ寒いし、体中が痛い。
『ここまで身体能力だけでで轟の氷結攻撃を打ち破ってきた陽炎!!ここで氷の中に閉じ込められたァァ!!これは一撃KOか!?』
なわけないじゃんマイク先生。いつかのどんまいくんじゃないんだし。ああでも、このまま何もしなかったら行動不能判定とられるかな。出よう。
バキッ
「……マジかよ」
ピキッ
『なんだこの音ォ!?』
こういうことするんじゃないね、体痛いし寒いし眠くなってきたし。
『え、氷にヒビ!?オイオイオイオイウソだろ!?』
パリンッ
「だからこういうことになる……轟」
『氷の中から陽炎生還〜〜!!!!アレ!?もしかして俺らヤベェもん見てねぇか!?』
軽い破裂音を皮切りに崩れ落ちていく氷塊を背に、私は轟の前に降り立つ。
「終わりだよ」
「……!?」
唖然と私を見ている轟には無理矢理目を合わせる必要もなく、ただ目を見るだけで完全に石化させた。
「……」
無言で轟を持ち上げ場外へ。ちゃんと立った状態で下ろし改めて轟を見る。
(なるほど、イケメンって顔の造形が良い人間のことか。そう意味では確かに轟はイケメン……異形の人ってどういう判定になるんだろう?)
「轟君場外!!勝者、陽炎睨美!!」
「……酷い顔。轟、そんな顔でヒーローするつもりだったの」
とっとと会場を去る。ああ、どうせ次は爆豪だろう。弔君のための哀れで可哀想な糧は爆豪に決まっちゃったね。轟じゃダメそうだ、もしかしたら堕ちるかもしれない。どうしようもなく頑固な馬鹿の方があのクソ陰気臭い後継者候補には効くだろう。
【ひでぇ言われ様じゃねェか死柄木弔】
いや、だって……アイツだよ?
【クハッ、それはそうだけどよ】
廊下を歩いて客席に戻る。しかし、途中で強い気配があって面白そうだったので出逢いに行ってみた。
「む?君はさっきの焦凍の……」
「陽炎睨美、初めまして……エンデヴァー」
ああ、強いねNo.2。だからこそ……分かる。
「貴方の息子さん、ヒーロー向いてないよ」
「なんだと?それはどういう意味だ?」
急に顔を歪ませたエンデヴァー、ヴィランの方が似合ってんじゃないかな。
「憎悪と復讐に濡れた可哀想な目、きっと貴方のせいであんなつまらない闘いしか出来ない」
「ふんっ、反抗期なだけだ。奴にはオールマイトを超える義務がある。いずれ……いや、まさに先程貴様との試合で実感しただろう。強者との圧倒的な差というモノを。奴は強くなる。それにしても貴様……目上を敬うということを覚えた方がいい」
……テメェに言われたくねェんだよヴィラン顔。
【おいバカ、口調真似するな。似合ってねぇんだよ】
……『目を欺く』個性使ってなかったらキレてたのバレるとこだった。
「『エンデヴァー』は尊敬している。ヴィランの捕獲速度、街の治安維持、サイドキックや事務所の運営、何よりNo.2まで上り詰める貴方の手腕は私が考えるヒーローで唯一無二だと思う」
「嫌味にしか聞こえんな。オールマイトの生徒の俺への当て付けか?」
「あれはまさしくコミックの様な、概念的な意味での『ヒーロー』に過ぎない」
「……ほう?しかし奴は現にNo.1を維持し平和の象徴と祭り上げられているではないか」
私の言い方に思うところがあるのか、言ってみろと言わんばかりに口元をにやけさせて腕を組んでいる。腹立つなこのおっさん。
「自分の身を自分で守らなければならないという当たり前を忘れた現代の人間の心の拠り所、絶対の救世主を強いられているだけでしょ。当の本人がそれを望み、現にこの国の犯罪率の低さを見れば何も言えない。それは全てオールマイトへの批判と受け取られるのだから」
「個性社会を否定するというのか、貴様こそ、その強個性で雄英入学、体育祭準優勝以上確定という偉業を成しているだろう?」
「個々に宿る能力を『個性』と便宜した超常黎明期終わりの人間に問題がある。個人の『オリジナリティ』を『個性』と呼んだ元々の時代で考えれば、オリンピックで銀メダル確定というだけ。現に歴史を見れば素晴らしい競技選手は何人もいる。私はそれを勝ち取っただけ。あと別に『個性』を否定するつもりはない。守られることが当たり前の社会がおかしい、という意味」
「ヒーローを目指しているのに?」
質問が多い……上から目線すぎる……いや、目上だし当然だけども。
「ヒーローに興味はない。父親になれと言われたからここに立っている。息子さんだって同じ様なモノでしょう?」
「ッ!!……それは」
苦虫を噛み潰した様な顔になった。緑谷戦の後何かあったのだろうか……?まあどうでもいいや。
「話を戻すけど、オールマイトより貴方の方がヒーローとしては凄いと思ってる」
「貴様、もしや俺のファンか?ならばファンサービスなどは受け付けておらんが」
殺すぞマジで。どこをどう解釈すればそういう結論になるのか毛頭わからない。まさかネタ?だとしたらギャグセンスのかけらもない。
「……目立つ個の成果よりも、目立たない多くの成果を評価している。まあ父親としてはどうしようもなく失格みたいだけど」
「さっきから褒めるのか貶すのか、よく分からんな。何が言いたい?」
「轟との試合がつまらなかった、という愚痴。
組織の長としては100点なのに教育者として、父親としてはどうしようもないんだねっていう煽り
そろそろ子離れして前に立ち導く者としてあるべき姿を見せろよっていう期待
ヒーローとしては尊敬に値するというフォロー」
「最後は余計だ」
「言いたいことはそれだけ」
そう言ってエンデヴァーの横を通り過ぎると、無駄にでかい図体がこちらを振り向き言った。
「待て」
「……何?」
「体育祭が終わったらエンデヴァー事務所に職場体験に来るといい。幸い指名は2名まで出来るからな、焦凍と共に指名しておこう。ネットニュースでしか知らないであろうNo.2ヒーロー、エンデヴァーの仕事を間近で見せてやる」
「……期待してる」
私の返事に満足そうな顔をすると、エンデヴァーは私とは逆方向へ進み始めた。
いや別に行くとは一言も言ってないんだけどね???
てか職場体験って何?指名?え、何、ヒーローってそんな偉そうなこと出来るの?エンデヴァーにぴったりじゃんあの厚かましい態度。ヒーロー名、傲慢を別言語に置き換えたものにした方がいいんじゃないの?いや、分かるよ?『エンデヴァー』って名付けるくらい積み重ねてるのは分かるよ?キャラ付けとして高圧的な態度を取るのも分かるけどさ。
とりあえずエンデヴァーの所は行かない様にしよう。私が行かないことを知ったらどんな感じなのかな?叫ぶのかな、もしかしたら髭みたいな炎の火力上がったりするのかな???職場体験終わったら轟に聞こう。あ、轟がエンデヴァー事務所行くとは決まったわけじゃないか。
人の嫌がること考えるのはどうしてこんなに楽しいのだろうか?
【長い、3文字で言え】
ウ・ザ・イ。
【……こういうとこ、ホントにあの魔王様そっくりに育っちまって……ハァ、昔のアヤノは純粋で楽だったんだがなァ】
睨美のヒーロー名(かっこ付きは花言葉)
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アザミ
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クロハ
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カゲロウデイズ
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メデューサ
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ゴルゴン
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スネーク・アイ
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カンナ(永遠)
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サルビア(家族愛)
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エーデルワイス(大切な思い出)
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モミジ(大切な思い出)
-
カエデ(大切な思い出)